ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
「・・・とまあ、そういうわけでこの襲撃の大半は漏れていると考えていい」
俺は、あつまった者たちの前でそう告げた。
上級悪魔、宮白兵夜。
今回の反撃作戦、そのメイン攻撃担当の立案者として、特例でこの地位が与えられた。
本当にイッセーより先に上級悪魔になるとは思わなかった。これ絶対先輩方が嫉妬してるだろう。
リベラルすぎるようちのトップ。もうちょっとこう、厳格にだねぇ。
まあ、そういう愚痴は後にしておこう。
「真正面から攻撃を開始するやつらの人数も内訳も、九割はつかまれているだろう。戦闘用ホムンクルスや急成長させたクローンなど、寿命が数か月でもおかしくない連中も、タイミングさえ読めればちょうどいい時期に調達可能だ」
そう、この情報は間違いなく漏れているから、対抗準備も高水準だろう。
おそらく、弱みをつかまされている連中はその軌道修正というか微調整に全力を尽くさせられる羽目になったはずだ。
こういうのは、一度反抗させて叩き潰すという過程が割と効果的だ。
反撃は無意味だと思わせることもできるし、やれるだけやったと諦観させることもできる。
ああ、そういう意味ではフィフスはうまいことやっている。
だが―
「だが、この襲撃方法だけは読まれない」
俺は、はっきりと断言した。
この襲撃方法は土壇場までアザゼルと俺だけが詳しく知っていた方法だ。これを急ピッチで用意するのは苦労したが、絶対に信頼できる味方にもあまり話さないようにしていた以上、フィフスも完全に読み切れない。
じっさい、イッセーたちは割とビビっていたりドンビキしていたりしている。
まあそうだろう。俺もぶっつけ本番でやるのは心臓がバクバクしている。
「対転移フィールドを大量に設置しているいまのクージョー連盟本部に、即座に奇襲をかけるにはこの方法が一番だ。そのための準備は徹底している」
そこまで行ってから、俺は姫様に場を移した。
「・・・本作戦の代表を務めるリアス・グレモリーよ。まずは、ここに来てくれたことに感謝を捧げます」
そういって一礼する姫様は、そしてまず前提条件を告げた。
「まず第一に。・・・どうあがいても、私たちは敗者だわ」
そう、俺たちは致命的に敗北した。
こうなれば、今の世界の在り方は大きく変わってしまうだろう。
それは、この場にいる多く者達が望まない方向だといっても過言ではない。
だが、それでも―
「負けっぱなしで納得できないでしょう?」
それが、俺たちの共通認識だった。
そうだ。このまま負けっぱなしだなんていられない。
だからこそ、こんなところに出張ってるんだ。
「勝つわよ! 勝って、世界を覆したツケをフィフスに払わせるの!」
姫様は、次期当主であることを理解させる威厳をもってそう告げる。
その言葉に、全員が気合を入れなおした。
「さあ、私の愛しい同士達! フィフス・エリクシルを滅ぼすわよ!!」
・・・施設中から歓声が響き渡った。
待ってろよ、フィフス。
ここからが反撃の時だ。
Other Side
フィフス・エリクシルは襲撃の連絡を聞いて目をさました。
だが、別の驚くことは何もない。
なにせ、この時期での襲撃は指示通りだ。
弱みを握っている要職の連中全員に、技術提供と引き換えに襲撃をこの時期にするように通達していた。
だいたい、一度も襲撃が行われないだなんて全く想像できない状況だ。
ことがことである以上、三大勢力どころかあらゆる神話体系が危険視する。そしてそのため下手に抑え込んでも爆発するだけだ。
だから、完全にカウンターを打てるタイミングに爆発を誘導した。
彼らをここで完膚なきまでに蹂躙すれば、二度目を行おうとは思わないだろう。
「それで? 敵の戦力はどんな感じだよ」
「想定通りの規模よ。最上級悪魔タンニーンに龍王もほぼ全員が参戦。そして高位の神も何人かいるわね」
なるほどそれは情報通り。
だが、そんなものでは自分たちは倒せない。
「じゃあレイナーレ。あいつらを解き放ってくれ」
「はいはい。人使いのあらい代表だこと」
そして、そいつらが解き放たれようととしたその瞬間―
「・・・フィフス様! 大変です!」
オペレータの一人が声を荒げた。
「慌てるな。アザゼルは俺が誘導することなんて見抜いてるから隠している札は想定の範囲内だ」
そう、これはお互いの読みあいである。
仮にも数千年生きてきたアザゼルと、読み合いで圧倒できるなど思っていない。
あの男ならこちらが戦闘開始のタイミングをコントロールしていることには気づくだろう。だからこちらがつかんでいない戦力を用意することは想定できていた。
第一D×Dの主力であるグレモリー眷属が一人も前線に出てきてない時点で、そんなことは予測できている。
だが、いったいどうやって襲撃を仕掛けるのか。
絶霧のデータ解析で手に入った対転移能力は完璧だ。これを突破して入ろうとして、そう大量に送り込むことは主神ですら不可能だと断言できる。
加えて、迎撃ミサイルは大量に開発済み。結界の外側から来たのなら、撃ちまくれば数割は減らせるだろう。
そして、いったいどこからくるというのか。
だが、次の発言はさすがに想定外だった。
「・・・この基地の上空から、高速で飛来してくる物体多数! 百・・・二百・・・もっとあります!!」
その言葉に、フィフスは目を丸くしながら上を見上げた。
「お、お、お、
Side Out
今頃フィフスの奴も度肝を抜かれているだろうな!
『宮白ぉおおおお! 本当に大丈夫なんだろうな!?』
イッセーが通信越しに悲鳴を上げるが、俺はまあ大丈夫だろうと思っている。
「大丈夫大丈夫、いい加減減速もしてるし、今からポッドが壊れても死にゃしねえよ。・・・酸素ボンベ替わりの人工神器は渡されてんだろ?」
『そりゃそうだが、減速が追い付かずに激突したら上級悪魔クラスじゃねーとしぬぞ?』
小雪の科学的知識に基づく意見に、通信越しでかなりの悲鳴が上がった。
まったくお前らは馬鹿なのか。敵本部に少数精鋭の効果強襲なんて死ぬ覚悟もなく参加するなよ。
『いや、戦闘にもならずに死んだらさすがにショックだと思うんだけど?』
ああ、そういうことか。ありがとう木場。
『でもこれワクワクするねー』
『ふふふふふ! 大気圏降下はロボットアニメの定番! ああ、生きててよかった!』
『まさか宇宙空間から攻めるとは思わなかった。私は興奮してきたぞ!!』
久遠やらシーグヴァイラやらゼノヴィアやらがそれぞれテンションを上げるが、うん、俺もちょっとスリルを感じてる。
クージョー連盟の本部に対する強襲は困難を極める。
普通に学園都市技術による迎撃網がすごすぎる。あの強襲艇は何度も使えんというか、ほとんどのメンバーがGで戦闘不能になる。
かといって転移で行けばいいかというとそれも無理。単純に妨害術式が万全で転移できない。
ゆえに考えられたのが宇宙空間からのトップアタックだ。
転移妨害の装置は地上に設置されているらしく、高さに関しては比較的ましだった。上に高高度に転移して射出し、宇宙空間から降下を仕掛けるのだ。
アザゼルと暇つぶしもかねていろいろ動いていたが、まさか使うことになるとは思わなかった。
だが、これが最も効果的な戦術だ。
まさかフィフスもSF方面で攻められるとは思ってないだろう。科学技術では木原を保有する禍の団が圧倒的に有利だ。
ゆえに、その盲点を突いて強襲する。
海から仕掛けてくる連中はそのためのおとりだ。おそらくそれでは防衛網を突破できない。
目論見は短期決戦。特攻じみた戦法でフィフスを倒してトリプルシックスを確保。それをもって禍の団を混乱状態に貶める。
トリプルシックスは撃破じゃなくて確保がミソだ。なにせサマエルの毒を量産できる以上、グレートレッドの命は常に危険になる。
だからトリプルシックスをグレートレッドの護衛に使う。それによって抑止力にすることで、大幅に弱体化するであろう禍の団を抑止する。
二度目はない。フィフスもこちらの弱体化を狙って一度は許しているが、二度目以降は躊躇なく本当にグレートレッドを殺すだろう。
こういう脅しというのは、本当に実行するからこそできるのだ。できないと思われたらその時点で意味をなさない。
奴はそれをわかっている。だから絶対に逃さない。
だから、俺たちはここで勝つ。
さんざん引っ掻き回してくれた礼を、十一の利子で返してくれるわ!!
反撃開始!
フィフスたちは科学でアドバンテージをとっているという自信があります。そして、それはまごうことなき事実です。
だからこそ、科学による想定外の不意打ちがきく。しかも皮肉も聞いてる
禁書目録を参加作品に入れている最終決戦として、これはまさしく面白い展開だとは思いませんか?
因みに、書き溜めているところでは最終バトルである兵夜VSフィフスの中盤ですね。そのあとワンアクション入れて最後の処刑用BGM。そして最後にちょこちょこやってからエピローグ。
因みに、後日譚というか一種の番外編を計画中。
いや、このままいくと兵夜の家族とかグランソードの能力とかが出せそうにないんで、そこらの補填とかを踏まえてやっていこうかな・・・と。
そのあたりも終わらせれば、D×Dも最終巻に行くと思うので、そうなってからさらに番外編第二章としてアザゼル杯をやってみようかと思っております。
まあ、予定は未定なのですがね