ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
さて皆さん、帝釈天とフィフスがやり合ったのは覚えているかな?
フィフス・エリクシルの行動は迅速だった。
この男の目的は、最初から最後まで鎖国地帯の成立。
アフリカ大陸そのものを、世界から隔絶させることがあの男の目的である。
そのためのアサシンの運用は完璧だった。
冥界政府のスキャンダルの確保など序の口以外の何物でもない。あれはむしろテストといっても過言ではない。
A+ランクの気配遮断と霊体化を併せ持つアサシンの隠密能力は、アフリカの国家のほとんどを掌握することに成功する。加えて学園都市の技術は彼らを釣る餌としては十分すぎる。
飴と鞭。人を釣る基本中の基本にして、ある種の究極。それを確保することにしたフィフスは、交渉において埒外の能力を発揮していた。
もともとそこまで狙っていたわけではない。
単純戦闘能力だけではアインツベルンは勝てないと判断したフィフスは、サーヴァントの戦闘能力をサーヴァントに殺されない程度しか求めなかった。
むしろマスターを自分で殺すことを考慮した。それも魔術戦という魔術師のプライドを完全に捨てた。そのために百年も格闘術を研鑽し、そして英霊の領域にまで到達させた。
フィフスが求めたのは単純戦闘能力ではなくそこから先だ。戦略、謀略、策略。そういった戦闘を行うまでの流れや、何よりサポート能力というアインツベルンにかけた者を求めていた。
そのためキャスターかアサシンを求めて確保したが、ここまでのチートを手にしたことは奇跡といっても過言ではないだろう。
その悪徳の奇跡が、フィフスをここまで強大にさせたといっても過言ではない。
アフリカの諸国を支配下に置き、加えてアフリカの神話体系すら協調体制を作り上げた。
基本的には弱みを握り人質を取ったが、しかし彼らにとっても利益がある話だ。
なにせ言い訳がある状況下で、三大勢力や大手神話体系をぎゃふんといわせられるのだ。逆らうよりは言うことを聞いた方が得がある。
そして、キャスターの存在が莫大な利益を与えた。
基本的に快楽主義の愉快犯であるキャスターは、聖杯戦争の勝利ではなく大きな騒ぎを起こすことを望んだ。
そんな彼の技術は、英雄派の神滅具の禁手と相性が良すぎた。
リバースエンジニアリングという手法がある。
完成品から逆の道筋をたどることによって、設計から作戦原理をたどり、製造法まで解析する手法だ。
いわゆるパクリだが、しかしそれを舐めてはいけない。
自分たちが持っていない技術を習得する。これは技術力の差を埋めるのに非常に有効を通り越して必要不可欠の手段だ。それが相手側にとっても失われた技術であるのならなおさらだろう。
神器の技術を利用して、完成品を作り出す能力。英雄派は英雄という特別を夢想するあまり、これの利点を軽視しすぎた。そしてフィフスたちはそれを利用した。
彼らはすでに絶霧と魔獣創造のデッドコピーすら生産している。
神滅具の上位を劣化品とはいえ生産できる。
もはやこの時点で、彼らは一勢力などという次元を超越していた。
『初めまして。俺はクージョー連盟盟主にして、
全世界にBGM付きで通信をつないだフィフスは、そう名乗った。
『後半はわかる奴だけわかっていればいい。それはともかく、俺たちが言うことはただ一つ』
同時に流される映像は、誰もにとっても悪夢だった。
百メートルを超える身長をもつ巨大な人影が、合計で百は存在している。
異形社会はその正体を一目で看破した。こと悪魔ならすぐにわかるだろう。
豪獣鬼。冥界を恐怖のどん底に落とし込んだ化け物が、どん底に落とし込んだ数を圧倒的に上回る数存在している。
そして、その化け物は霧に包まれて消えていく。
・・・誰もがまだわかっていなかったが、獣鬼には一つの命令が下されていた。
魔獣を量産しながら潜伏しろ。そして世界を混沌に落とせ。
その命令を下した当人は、映像越しにはっきりと断言する。
『世界を崩壊させたくなければ俺たちにかかわるな。夢幻を滅ぼされたくなければ神ですら手を出すな』
人間社会に、異形社会に、フィフスはそう告げた。
そして、それだけの意図に説得力を持たせるため、フィフスは告げる。
『これから、それを無視したらどうなるかを教えよう』
次の瞬間、クージョーノケイ本部から、巨大な戦艦がとびだった。
全長は1km近いその巨大な戦艦は、亜音速で戦場へと疾駆する。
ステルスなど一切考慮してないそれに気づいた残存艦隊は、混乱しながらも対応としては最善策を打った。
すべてのミサイルを集中投入。なんとしても撃破するべく攻撃を開始する。
それが交渉を行わないことを把握した。自分たちを滅ぼすつもりであることも把握した。最大の脅威であることも把握した。
だが、それらは何の意味も持たなかった。
すべてのミサイルをわざと受けながら、その戦艦は艦隊の上まで到着した。
そのあとは圧倒的だった。
終了までにかかった時間はわずか一分。
それだけで、数十もあった連合艦隊の残存勢力はすべてが撃破された。
そのあまりの事態を起こした戦艦は、そのままゆっくりと侵攻を開始。
その脅威に対して、世界各国が核ミサイルを発射して対抗する。
そして、十発以上の核ミサイルを直撃しながらも、その戦艦は小動もしなかった。
その戦艦の名前こそトリプルシックス。
一分子単位でトライヘキサの細胞を浸透させた、世界最強の機械兵器である。
そして、その猛威を振るわれる映像は世界各国に生中継されていた。
『わかっただろう? 抵抗は無意味だとは言わないが、最強戦力はこちらにある』
悠然と微笑みながら、フィフスはそう告げる。
『まあ、それで引くわけではないからもう少し痛めつけておくとしよう。・・・既に全世界の核ミサイル発射基地をハッキングして、核ミサイルの六割を発射した』
そして、さらに爆弾発言を告げる。
『爆発するのは仕掛けてきた国家、その主要都市の上空。発生する電磁パルスで都市機能がマヒするので、当面の間は復興に努めるといい』
その言葉に、世界中の人々が表情を引きつらせる。
この文明世界、普通の人類は基本的に電子機器を使用して生きている。まともな都市は基本的に依存しているといっていい。
そんなものが破壊されれば、世界の機能は完全にマヒするだろう。
そして、すでに発射されたというのだ。
おそらくこの映像が途切れたその瞬間が、自分たちの地獄の始まりだ。
そう絶望する人々の前で、フィフスは安心させるかのようにほほ笑んだ。
『・・・それはそれとして、我々は世界中の主要国家の食品産業にかかわり、ある種類の薬品を混入している』
さらりと告げられた言葉に、さらに多くの人々が供覧した。
これまでの話だけでも最悪だというのに、挙句の果てに薬を混入されいている。
死を覚悟するものすら多発する中、しかしフィフスは安心させるようにそう告げる。
『大丈夫だ。それはお前たちを殺すようなものではない。むしろこの音楽とともに、超人へと進化させる』
そう告げるとともに映像は移り変わる。
それは、世界最強国家であったアメリカ軍を蹂躙する映像。
『これは、その薬と音楽によって頂上の力を得た者の恩恵を得たやつらの戦闘だ。・・・まあ、約六割は大した力を得ることがないんだがこれが』
そんな情報を告げた後、フィフスは告げる。
『重ねていう。夢幻を殺されたくなければ手を出すな。・・・一度ぐらいは暴走と認めるが、それ以上は問答無用で殺す』
そして、通信が打ち切られた。
この警告の通り、世界全土の都市上空で核兵器が一斉に起爆。発生したEMPにより、世界主要都市の八割が機能停止した。
加えて世界全土の人間の中から、炎を出すなどの特殊な力を持つものが頻発。その力に恐怖し、そして陶酔した者たちによる犯罪により、世界全土の治安は犯罪都市が平均値となるほど悪化する。
クージョー連盟に対する対応どころか、都市の治安を維持することすらまともにできない世界各国は機能を停止し、世界は一挙に暗黒時代に突入する。
十年以上に続く世界暗黒時代の幕開けは、こうして切って落とされた。
Side Out
フィフスがやったこと:絶霧と魔獣創造をドーピング剤で暴走させ、結界装置や魔獣をリバースエンジニアリング用に大量生産していた。
はい、文字通り世界が大混乱です。神話、人間の区別なくばらまかれた隠密特化型豪獣鬼で物理的にやばい上に、都市機能は八割がマヒ。そして元凶にはうかつに手が出せなくて、暴走した能力者による犯罪行為にも気を付け粘らなない。
文字通り反撃は一回が限界です。と、いうより一回ねん出するのも苦労するレベルです。