ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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要塞、突入します!

 

 アメリカ合衆国は、間違いなく世界最強の軍隊である。

 

 他とは数も資金も桁が違う。技術水準そのものが圧倒的である以上、一対一(サシ)で戦えば負けることなどありえない。世界全部を敵に回しても勝てるとすら言われたことがある。

 

 そのアメリカが、先進国の協力を得ているのにもかかわらず圧倒されている。

 

「わが軍の損害はどうなっている!?」

 

「すでに戦力の二割を損耗! イギリスの艦隊は壊滅しています!!」

 

「制圧された船は十隻を超えました!! 戦闘中の船も十隻はあります! そのすべてがこのままでは一時間と保ちません!!」

 

「ドイツ軍の旗艦、制圧されました! 指揮系統が混乱状態です!!」

 

「インド軍は壊滅状態! フランスの艦隊も損耗率が限界です!!」

 

 なんだこれは、どういうことだ。

 

 技術水準において世界でも上位を占めている先進国の連合軍が、第三世界にまるで歯が立っていない。

 

 しかも、その被害のほとんどが白兵戦で制圧されるという悪夢以外の何物でもない光景が広がっていた。

 

「なんだ、なんだ、なんなんだ!? どこからあんな技術を開発した!?」

 

 まるで外側から与えられたとしか思えない。それほどまでに技術革新が進みすぎている。

 

 奴らは科学の発達した異世界から、力を与えられたとでもいうのか?

 

 くしくも正解を引き当てながら、艦隊司令官は撤退命令を下すことすら考えていた。

 

 このまま行っても兵士が無駄死にするだけだ。直接戦闘では勝ち目がない。それを司令官はしっかりと理解していた。

 

 核戦争の引き金を引くかもしれないが、核兵器による焦土作戦ぐらいしか勝算が思い浮かばなかった。

 

 本気でそれを進言するべきか。彼がそう考えてその時、オペレーターが大声を上げた。

 

「し、指令!? 後方からマッハ6で飛翔する物体があります!?」

 

「なんだと!? 聞いてないぞ!?」

 

 そしてそれが何だというのか。

 

 たった一つの超音速物体など、奴らの力では即座に撃墜されるのがオチだ。

 

 そう考えたが、しかし次の報告に目を丸くすることになる。

 

「げ、迎撃ミサイルをすべて喰らいながら、高速飛翔物体敵陣を突破!!」

 

 そのあまりにも非現実的な情報に、司令官は目が点となった。

 

「と、とにかく撤退信号を出せ! あんな理解不能な物体、奴らも少しは混乱するはずだ、その隙に撤退する!」

 

「よろしいのですか?」

 

 副官が念のために尋ねるが、しかしこれはどうこうしようもないだろう。

 

「まったく勝ち目がない。少なくともこの倍の戦力がなければ戦いにもならないだろう。他国の艦隊にも通達しろ。犬死をするか生き残るか、とな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 のちに、この司令官の判断は英断と称賛されることになる。

 

 なぜなら、撤退が遅れた艦艇はそのすべてが無残に沈むことになるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Gで死にそう・・・」

 

「大丈夫か、宮白」

 

 割と本気でグロッキーになっている俺に、イッセーが心配して声をかけてくれる。

 

「おい早く復活しろ! 敵が一気にファックに来たぞ?」

 

 小雪がそう告げるが、しかし第一波は気にしなくてもよさそうだ。

 

 ・・・いま、軍事基地で竜巻が十は発生している。

 

 なんだこの天変地異。すごいよ俺の女。

 

「んじゃぁ作戦どうり、クロウ・クルワッハ。人の姿のままでひっかきまわせ。久遠とベルは監視」

 

「いいだろう」

 

「了解了解ー」

 

「承知いたしました」

 

 クロウ・クルワッハは陽動担当。とりあえず一番扱い悪くとにかく敵をひきつけてもらう。

 

 とはいえ立ち位置が立ち位置だから監視は必要なので、ぱっと見ファンタジー要素低めの久遠とベルで監視。

 

「んじゃ、適当に引っ掻き回したらあたしはデータを取りに行くぞ。ナツミ、サポートまかせた」

 

「まかせとけ!」

 

 科学知識に一番明るい小雪はデータの回収及び技術水準がどこまで上がったかの確認。ナツミがその護衛。

 

「たぶんリゼヴィムは親父さんたちと一緒だ。というわけで二天龍はタッグでよろしく。俺とアーチャーは・・・」

 

 イッセーとヴァーリは当然のごとく本命をつぶす。

 

 そして、俺とアーチャーは・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 基地内に潜入するが、俺たちはスムーズに進んでいた。

 

 なにせ魔術による対科学術式は順調に研究されている。赤外線センサーぐらいならどうとでもなる。

 

 そして、ゆえに俺は目的地にたどり着いた。

 

 ターゲットは通信設備。俺の推測が正しければ、ディハウザー・ベリアルはそこにいる。

 

「・・・これが、その王の駒だ」

 

 そして、皇帝は王の駒の存在をぶちまけていた。

 

「いま公開しているリストこそ、その王の駒を使用している者たちだ。嘆かわしいことに、トップランカーの中にも何人も存在している」

 

 そして彼はそれ以上の情報を流出しようとして―。

 

「悪いがそこまでだ」

 

『通信を遮断するわよ』

 

 アーチャーが通信を遮断し、俺はディハウザーの前に姿を現す。

 

「・・・たしか、宮白兵夜くんだったかな」

 

「アウロス学園で会った時以来ですね、皇帝。・・・あんた今核爆弾のスイッチ押し掛けたぞ」

 

 感情的になりすぎて、冷静な判断力を失っているようだ。

 

「なんであのリベラルお人よしの良心の結晶みたいなサーゼクスさまですらこの情報を公開しないか考えたことあるか? ・・・悪魔が終わりかねないからだよ、この毒は」

 

「なるほど、王の駒までならともかく、レーティングゲームの不正の公開は冥界政府の転覆を意味すると」

 

 それはそれで問題だが、たぶん想像が甘いな。

 

「政府の転覆及び政治的混乱期は、あまりにも強力な劇薬だ。・・・今の腐敗した貴族連中に反乱を起こされたら、悪魔は滅ぶぞ」

 

「だが、ほかの神話体系との和平が進んでいるこの状況下ならその是正も可能だ。彼らの力を借りれば抑えらえるとは思わないか?」

 

「その結果傀儡政府になったらどうするつもりだ。悔しいがハーデスは氷山の一角でしかなく、海面の下にいる連中は、隙を伺っているんだぞ?」

 

 そう、嘆かわしいが神話体系を過度に信頼するわけにはいかない。

 

 オーディンの爺さんなど穏健なやつらもいるが、どさくさに紛れて三大勢力の地位を貶めたい輩は腐るほどいる。ハーデスが過激すぎただけで、隙を見せれば食らいつく連中はごろごろいるだろう。

 

 そんな状況下で政治的空白期を作れば、悪魔の命綱はほかの神話体系に奪われる。

 

 いくらなんでも危険すぎる。これを認めるわけにはいかなかった。

 

「王の駒については俺も少なからず噛んでいる。代用品作って一個横流ししろとゼクラム・バアルに交換条件だされてな。この時点でダメージが確定してるんだよ」

 

「保身だけではないから目をつむれと? 悪いが、それを許容できるなら最初からこんなことはしていない」

 

 だろうな。出なけりゃこんな大騒ぎは起こさない。

 

 ああ、どうせ実力行使になると思ってたよ。

 

 ベリアル家には魔力特性として「無価値」がある。

 

 これは、特殊能力の類を封印する能力と考えていい。ライザーとレイヴェルを瞬殺したのも、おそらくは不死の特性を無価値にしたのだろう。

 

 まともに喰らえばそれで終わる。こと一つの能力を中心としているイッセーなどの神器所有者としては致命的だろう。

 

 だからこそ、俺だ

 

「言っとくが、俺があんたの裏切りを察して何の対策を立ててないとでも?」

 

 いうが早いか、俺は注射器を自分に突き刺す。

 

 作ったのは特別製の血清。ベリアル家から血を収集し、それをベースに無価値の血清を作り上げた。

 

 これで無価値は無力化できるが・・・。

 

「だが、それだけでは無意味だろう?」

 

 即座に放たれた攻撃をかわし切れず、偽聖剣が一部砕ける。

 

 すぐに修復するが、しかしやはりまずいか。

 

 だがまあ、それも対抗できる範囲内。

 

「おいおい皇帝、俺がわざわざ()()()()()()()()、後ろめたさだけじゃないんだぜ?」

 

 蒼穹剣の時間はしっかり稼いでいる。

 

 ああ、アンタ相手に出し惜しみはしない。

 

 だが、たかが魔王クラスが主神クラスとやり合えるこれをどうさばく?

 

「アーチャー! 呪詛をかけ続けろ、弱体化をすればそれでいい!!」

 

『ええ、呪いは魔術師の本分。任せなさい』

 

 そしてこっちはサポートも万全!

 

「悪いが将来的な俺の義妹をだまし討ちしてくれたんだ、落とし前はつけてもらうぞ、皇帝!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




王の駒は許す。と時間稼ぎもかねて許してくれる当たり、兵夜は人はいいが性格は悪い。


それはともかくここまではフィフスにとって都合よく進んでいます。

イッセーは少人数で行動して、敵の三強もうれしい誤算。









そして、そこからどうなるかはもう少しです

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