ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
Other Side
「実質、こんなものですか」
ベル・アームストロングは数十の悪魔を殴り倒し、残心をした。
悪魔側が空から攻めてくることは想定の範囲内。そのためこちらも相応の準備をしてきたのだ。
それが、人間の対空兵器の運用。対空砲や地対空ミサイルを調達し、それらによって空を飛ぶ悪魔を迎撃することである。
実際、その手の対策や研究もおこなわれていたため比較的楽に行動できた。
火力においても何とか十分。今回の模擬戦は下級がほとんどを占めていることもあり、30mmサイズの砲弾などで十分ダメージを与えることができた。
高射砲や対空ミサイルの近接信管や誘導装置も、異世界技術などを中心に改良し、対人ロックが可能になったことで解決する。
そしてその対空砲の迎撃の中、ベルたち一部の空中戦可能な戦力が、切り札を運用して上級悪魔の迎撃を行っていたのだ。
正直心臓に悪いが、ほとんどのメンバーは自発的に志願した。
要はそれだけ不満があったということだろう。いいガス抜きの機会だし、これは兵夜の慧眼とエルトリアの暴走に感謝するべきだろう。
・・・実際のところ、誘導技術などに関しては兵夜が
とはいえ、初戦はこちら側が大きく有利になっている。
これで悪魔側も即座に同じ手段はとらないだろう。これで今回の模擬戦を主導した者たちの思惑通り、全力でのぶつかり合いである泥仕合に移行するはずだ。
「・・・とはいえ、勢い余って戦局が傾きすぎましたね。このままだと実質こちらの圧勝でしょうか?」
ベルとしてはできれば兵夜たちにも善戦してほしいのだが、しかし自分から協力することはできない。
ミカエル達の心労を解決するためにも、自分にできることは全力でやる。
あいにく自分は頭が悪いので、あまり頭脳派なことはできない。やってくれと頼まれたことを全力でやるのが精いっぱいだ。
さて、兵夜たちはどうやって反撃するだろうか?
と、思った瞬間下の地面が爆発した。
「・・・兵夜様ですか?」
どうやら、自分の大好きなご主人様は、ワンサイドゲームは好まないらしい。
Side Out
「さて、これで一矢報いること程度はできたかな?」
さすがにワンサイドゲームは悪魔側が限界だと思ったし、とりあえずの支援はしておくことにした。
やったことは単純明快。カメラによる遠隔発動型のミサイルを使って対空砲をいくつか破壊することだ。
さすがにここまでハリネズミの防御陣を作ってくるとは思わなかった。いきなりここまでやられると、今度はこっちの不満が爆発する。
できる限りお互いにすっきりするぐらいぶつけ合ってくれなければ、不満がたまって結局またクーデターが起こってしまう。
と、それはともかく戦局はどれぐらいかというと、すごく早く減ってるな。
「あ、宮白くんおかえり。それで戦況はどれぐらい?」
「現段階で悪魔側が残存数約7000で教会側が約9500だ」
教会側が大幅に有利な展開だな。
特に、得意な空中戦を抑えられたのと英雄であるイッセーがやられたのがでかい。
イッセーの方は保守派がメインだから転生悪魔であるイッセーの人気はそこまでではないのでましだが、空を抑えられたのがひどいな。
対空兵器で迎撃とは考えた。人間の技術も捨てたものではない。
「まあ、全力で殴り合った方がお互いすっきりするからねぇ。俺もあとで殴りに行った方がいいかな?」
「そ、そそそそれはそうでしょう。天使にたいするふふふ不満もいいっぱいありますし」
デュリオとスパロが後片付けをしながら相談するが、しかしこれは面白い展開になってきたかな?
悪魔側も不意打ちのダメージは回復してるだろうし、このまま一方的な展開にはなりえない。
これなら狙い通りの泥仕合。全力を出し切ってもろとも倒れればいい。
「さて、これならどうなるか分かったもんじゃないな。俺たちも戦闘の準備はした方がいいぞ?」
ふっふっふ。この調子で不満を噴出させるといいわ和平反対派共!
そして発散できたところで仲良くしようか。なに、利権は安く譲ってやる。
大規模模擬戦二日目。俺たち糧食班は前線に糧食を届けに移動していた。
対空砲火が危険なうえに大量の食べ物を運ぶので、車を使って移動中だ。
「女の子はーねー♪ ラブリーデビールー♪」
「ささささすがにそれは不謹慎ででです!!」
久遠がノリノリで歌いだしたので、スパロが思わず注意するが、しかし前線までは安心だからな。
しかし戦闘は膠着状態。あの時点から数の減りは目に見えて少なくなったな。
まあ、序盤のカウンターをもろに喰らって悪魔側がビビったのが大きいだろう。ましてや得意の空中戦で大打撃だ。
これで人間界に対する警戒が強くなりすぎなければいいんだが・・・。
と、考え込んでたらすでに味方の前線に到着。
「さて、ついたぞー。こっから徒歩で配給だぞー」
「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」
糧食班にそう告げながら、俺たちは流れ弾を気にしつつ食事を提供しに行く。
「おら前線の泥だらけで汗臭くなった野郎ども! 飯だ飯だ、感謝にむせび泣きながら食えよー」
「今日のお昼はホットサンドイッチとクラムチャウダーだよー。おいしいよー」
「な、ななな並んで並んでください! 大丈夫ぶぶぶ、数はちゃんとありりりますから」
三人でさばきながら食事を提供しつつ、俺は前線の方を見る。
二日目も中盤だし、そろそろ悪魔祓い側も攻勢を再度仕掛けてきそうだが、さてどうなるか。
「久遠、どう思う?」
「向こうも食事時だから大規模構成は仕掛けてこないと思うけどー。隙ができるタイミングだから少数精鋭で来るかもねー」
なるほど、これは警戒するべき内容か。
食事は楽しんで行うものだし、ここは俺たちが体を張らないとな。
と、いうわけで軽食をつまみながら少し前線に顔を出す。
この向こう側で、ベルはいったい何をしてるんだろうか。
ああ、会いたい。会って話がしたい。
・・・ゲン・コーメイに乗り換えたのか、それともそんなことは俺の杞憂か。
とにかく、俺はベルと一度真剣に話をするべきだった。
うん、これ大事だよな。俺はこのあたりの考えが足りていなかった。
ヴァスコ・ストラーダには感謝しなくてはいけない。あの人マジモンの聖職者だよ。
・・・と、俺の視界に接近してくる悪魔祓いが入ってきた。
どうやら本当に仕掛けてきたらしい。
「さて、糧食班としてはおいしい食事の邪魔をっせるわけにはいかないわけで―」
俺は突撃すると同時にイーヴィルバレトを展開。
同時に小型ゴーレムを付加した迫撃砲を出しまくり、近距離に狙いをつけて撃ちまくる。
悪魔祓いの足が止め、そのあと落ちてくる榴弾でとどめを刺す作戦だが、どうやら思った以上に思い切りが強い。
結界系の魔法か神器を保有しているらしく、彼らを壁にして無理やり突進してこようとしてくる。
おかげで榴弾の被害は最小限だ。まあそれはそれでいいが、これでやることが増えた。
「なら近接戦闘だ。試作品の破壊力を試させてもらおうか!!」
俺は駒を戦車に変えて魔術強化。発生した莫大な筋力を最大限に生かす武装を展開する。
錬金術で錬成した超質量金属による大型メイス。下手な防御など力技で吹き飛ばす!!
「さあ、相手をしてもらおうか!!」
祐斗Side
宮白君が戦闘を行っているころ、ぼくたちもまた戦闘を開始していた。
食事時に攻撃してくるとは無粋な敵だよ。それ相応のお仕置きってものをしないとね。
「集団戦ならやりようはある。さあ、これを喰らってみるといい!!」
龍騎士を作り出し、ぼくは戦闘を開始する。
悪魔祓いの数はそこまで多くない。やはり向こうも食事中であり、回せる人数はそう多くないのだろう。
ならばやりようは十分になる。今の僕達なら並の悪魔祓いが束になってかかってこようと負けはしない。
「つ、強い!」
「これが聖魔剣の木場祐斗か!?」
素早く悪魔祓いを倒しながら、僕は警戒する。
確かに彼らもフリードと渡り合えるほど優秀だが、おそらく敵の主力はこんなものではないはず。
正直に言えば、ぼくはこの戦いでエクスカリバー使いとの戦いを熱望していた。
・・・一度は使い手を倒すことで発散したはずのエクスカリバーへの恨み。だけど、最近ぶり返してきている。
フリードを圧倒的に上回る使い手が何人も出てきたことが原因だろう。真に全力を発揮できる使い手と戦い、そのうえで勝ちたいという願望が生まれていた。
自分でもよくないこととは思うけど、これはあくまで模擬戦だ。レーティングゲームのシステムを流用しているから死にはしない。
だから、思う存分発散したいと思っていた。
「・・・まだ出てこないのか、エヴァルド・クリスタリディ!」
できれば戦場で相対したい。
今度こそ、真なるエクスカリバーの使い手を倒したい。
「・・・猊下と直接会いまみえたいとは、悪魔というものは本当無礼なものだ」
と、若い悪魔祓いが姿を現す。
どうやら彼がこの部隊のエースのようだ。。
だが、今更悪魔祓いが一人や二人増えたところで―っ
そう思ったその時、僕は彼の手に持っている剣を見て動きを止める。
あ、あれは・・・馬鹿な!!
「ならば私が、エクスカリバー使いがお相手しよう!!」
な、なんだって!?
まさか、エクスカリバーのレプリカは量産されていたのか!?
Side Out
木場がエクスカリバーと相対していたころ、俺もまたエクスカリバーと戦闘を繰り広げていた。
「偽聖剣の技術は教会に流出させてはいたが、まさか量産しているとはな!!」
「量産? 偉大なるエクスカリバーにそんなバカげた真似ができるわけないだろう!!」
破壊の聖剣の力でメイスをぼろぼろにしながら、聖剣使いは俺に怒鳴ってくる。
・・・ああ、その辺の配慮は足りなかった。反省反省。
って、だったらなんでここにエクスカリバーがあるんだよ!!
レプリカも量産してないんだったら、最強のクリスタリディに渡してるはずだろ!?
どうやら敵は破壊の聖剣ぐらいしか本領を発揮できないようなのでまだましだが、だからこそ疑問が残る。
七分割された方をレプリカにしたわけではあるまいし、どういうことだ?
と、いうより思った以上にできる!! 質量武器はやりすぎだった!!
もう割り切ってメイスを捨てると、対ブレード用の十手を取り出し迎撃を再開。同時に速度重視の騎士に変更して戦闘を行う。
ええい、いろいろと面倒なことになった!
だが、お前は俺たちをなめているぞ、聖剣使い!!
俺は素早く飛び退りながら、奴を誘導する。
そうだ、そこだ!!
「・・・ぬっ!?」
次の瞬間、聖剣使いがつんのめった。
「これは・・・糸!?」
ちなみに蜘蛛の糸だ。ほら、獲物を捕まえるときに使うタイプ。
そのすきを逃さず俺は光の槍を乱射。同時に、今まで動いてなかった久遠が強襲を仕掛けた。
「はい終了ー!」
「グアぁ!? む、無念・・・っ」
エクスカリバー使いは連携攻撃に対処できず倒され、そしてそのあとエクスカリバーが姿を変える。
糸状に変化したエクスカリバーは、糸状に変化するとそのままするすると後ろに下がっていく。
それを見て、俺はこの仕掛けの絡繰りを理解した。
「・・・なるほど。擬態の力で糸でつながった二刀流にして―」
「―そ、そそそそれを聖剣使いに持たせて数をふふやしたんですか!?」
スパロが驚愕するのも無理はない。
相当距離が離れているといってもいいだろう。それをレプリカでするというのなら相当の技術だ。
これが、助祭枢機卿、エヴァルド・クリスタリディか・・・っ
「こりゃ、余計な情報を提供する必要はなかったか?」
うわぁ、厄介なことになってきたぞ、ホント
エクスカリバーの擬態って、応用すればこういう使い方できると思うんですよ。