ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
途中で漫才入ったせいで距離を取られたが、しかし俺たちを舐めてもらっては困る。
なにせ機動力に問題があるという欠点を指摘されたばっかりだからな。悪魔の身体能力を生かした代物を用意させてもらったのだ。
「テレレテッレレ~! ロケットエンジンー!!」
「言ってる場合か宮白ぉおおおおお!」
「ちょっとこれ加速しすぎ! 勢い余って追い抜くんじゃないの!?」
その心配はご無用。距離が二キロを切った時点で自動的に爆発するから!
え、巻き込まれる? いやいや俺たちがその程度の爆発で大したダメージを負うわけがないじゃないか。
圧倒的な戦闘能力=防御力をもつ俺たちだからこそGの影響をある程度無視できる。悪魔万歳!! 上級相当万歳!!
といっている間にロケットエンジンは爆発。見ればユーグリッドも唖然としているのか動きを止めていた。
そして奴も観念したのか、ゆっくりと地面へと降りていく。
俺たちはそれに対応して同じように地面に降り立った。
「人間の科学力も舐めたものではないですね。まさかこうも簡単に追いつかれるとは」
「お前ら人間舐めすぎだ。そんなんだから種族として滅亡の危機にさらされるんだよ」
俺は皮肉を返すが、しかしこの状況はまだ面倒だ。
なにせロスヴァイセさんを確保している以上人質作戦が通用するわけだからな。
「さて、一応投降勧告はしておいてやろう。偽物とはいえ赤龍帝相手に殺さずになんて真似は狙わない。戦闘するなら殺されることを覚悟してもらおうか」
こっちも仲間も誘拐されて気が立ってるんでな。
テロリスト相手に容赦するつもりはないんだぜ、この野郎。
「因みに、お前が何でそんなことを参加しているのかについてはお前をとっ捕まえてからじっくり専門家に聞き出してもらっておこう。時間稼ぎはさせない」
余計な会話をするつもりはない。こういう連中はこっちの神経を逆なでするついでにやるからな。イッセーたちには毒すぎる。
「あとロスヴァイセさんはちゃんと離せ」
「それはできません」
やけにしっかりとロスヴァイセさんを抱き寄せながら、ユーグリットは断言する。
何やら狂気すら感じさせる熱意だが、一体何があった?
「一体どうしたというの? ロスヴァイセの論文はあくまで未完成、666の封印を解除するには力不足だと思えるのだけれど?」
部長もそう思うだけある。そう、いくらなんでもなりふり構わなさすぎる。
ましてや東京のど真ん中だなんていうところで接触を仕掛けてきたのもキツイ。考えればあれだってナンセンス極まりない接触だ。俺だったらもっと考えて行動する。
こいつ、何を考えている・・・。
「・・・彼女はそれだけの価値があります。我々の元へ来れば、その力を余すことなく再現できるでしょう。なにせ、彼女の研究は封印の解除を通り越して、封印技術そのものの解明に辿り着いているのですから」
「はぁ!?」
おいおいおいおいだから何でグレモリー眷属はどいつもこいつもチートぞろいなんですかオイ!!
こ、コレな何があっても連れ去られるわけにはいかなくなったぞ! 再封印が可能になるだなんて重要すぎる。
だが、ユーグリッドはそんなことはどうでもいいかのようにロスヴァイセさんの髪をなでる。
「何より似ている。あなたたちも、彼女は我が姉に似ていると思いませんか?」
・・・・・・・・・・・・・・・はい?
「えっと、え?」
何を言っているのか全く分からなかったので、つい聞き返した。
え? えっと、え?
「・・・あ、あなた、ロスヴァイセがグレイフィアと似ているから誘拐しようとしたの?」
あ、そうそう。部長さすがです。俺もそれが聞きたかった。
「ええ! 彼女は、彼女は私の新しい姉になってくれるかもしれないのです!」
そこはかとなく元気にいってくれているところ悪いが、そこまで言うほど似てないだろう。
酒が絡むとひどいことになるという点においては確かに似ているがせいぜいそれぐらいだろう。
そんなこじつけレベルの状況ですら我慢できずに東京のど真ん中で接触してこようとは・・・。
「イッセー。さっさと終わらせるぞ、このシスコン末期すぎて隔離必須だ」
「宮白ひでえな。ま、気持ちわかるけどよ」
叩き潰す確定。容赦なく全力で叩き潰させてもらおう。
「怖い怖い。では、こちらも相応の手段を行わせてもらいますよ」
そういった瞬間、後ろの方で爆発が起きた。
どうやら裏切っていた魔法使いは爆弾に細工されていたようだが―
「―安心しろイッセー。内通者が改造されている可能性は考慮していたからな。ゴーレムに運ばせているからそこまで被害は出ていない」
「これはこれは、あんなところを守るためにそこまでするとは意外です」
ユーグリッドは割と本気で嘲笑する。
「あの程度の悪魔があんな場所で学んだところで、なれるものなどたかが知れている。そんな無駄な行動に何の意味があると?」
「それが分からないからお前はその程度なんだ」
じつに下らんことを言ってくれるおかげで、俺は少し頭が冷えた。
心底馬鹿げている。お前たちは何もわかっていない。
「なるほど確かに、勉強したからって魔力の量が大きく変わるわけじゃない。所詮下級悪魔の限界なんてたかが知れてるし、上級なんて基本は努力しなくてもそのはるかかなたを飛んでいるだろう」
ああ、ゆえに悪魔という社会は血統が重要なポジションを占める。
これをなくすことはできないだろう。人間とは違い血統で明確な差がある以上、血族主義は永久に名を遺す。
「だが、誰が魔力だけで話をした?」
それは魔力だけのことだ。
「魔力だけで計算ができるか? 魔力だけで三角測量ができるか? 魔力だけでエンジンが作れるか? 答えはノーだ。・・・学校っていうのは、そういうことができるようになるところなんだよ」
その辺りが分かってないからお前たちはあれなんだ。
「彼らは確かにその大半が下級のまま終わるだろうし、中級に上がれる連中も数えるほどだ。だが、その中で明確な武器を持って人生を充実させることができる」
俺は、いろいろ見てきた人たちを思い出す。
「できることは少なくとも、そのできることで上級にも真似できない連中はこれからどんどんここで増やされていく。そして冥界の世界は大きく変わっていくだろう。それは人間社会では珍しくもない光景で、彼らはその方法を持って発展してきた」
そう。悪魔はこれから人間のやり方を吸収して更なる発展を遂げる。
それの邪魔をするというのならば・・・。
「旧時代の老害には消えてもらおう。ここは未来ある若者がそれをつかむ方法を学ぶ園だ。これ以上は邪魔をさせるつもりはない!」
「兵夜・・・」
「いいこと言うじゃねえか、宮白!」
うちの赤い夫婦もノリノリなようで何よりだ。
さて、そろそろ反撃するぜ?
「これは怖い。ですが、こちらには人質がいるのをお忘れですか?」
と、ユーグリッドはロスヴァイセさんを引き寄せて楯にする。
「あなた方の性格なら危害は加えてこないでしょう。私もできれば避けたいですが、しかし念には念を入れませんと」
「こ、の、野郎・・・っ」
冷静にテロリストらしい真似をしてきて、イッセーは割と本気でブチ切れかける。
「私だって使いたくはないのです。ロスヴァイセは私の姉になってくれる人ですし、何より神喰いの神魔は殺しに来かねませんから」
ふむふむ。なにせ前科があるからそりゃ警戒されるか。
「なるほど。ロスヴァイセさんの研究の詳細を教えたのはあれか。こっち側に価値があることを教えて俺を躊躇させるのが狙いか」
「それもあります。あなたの性格なら封印が解かれた時のことを考慮するはずですし、その最適解を自分から捨てるのはさすがにためらうでしょう?」
駆け引きはとっくの昔に始まっていたか。ふむ、わかってるじゃないかユーグリット。
だがまあ。
「仕方がない。こうなれば俺も奥の手を切ろう」
「お、おい宮白! お前まさかロスヴァイセさんを殺そうなんて言うんじゃないだろうな!?」
「兵夜! 主として命ずるわ! 絶対にロスヴァイセを生かして助け出すこと!!」
「あ、あの~。二人とも少し落ち着いてください。確かに宮白くんならしかねないですけど味方に言うセリフじゃありませんよ?」
「意外と落ち着いてますね。もしかして一緒に来てくれる気になってくれましたか?」
なんか微妙にグダグダになってんな。
「まあ安心しろイッセー。こんなこともあろうかと備えは万全だ」
「お、おお! 期待していいんだな?」
「もちろんだイッセー。京都でうっかり大失敗をしでかしたからな。こうなることが読めていて対策の一つも立てないほど俺は馬鹿じゃない。ルーマニアでも言ったろ、何かあった時に対処する余力が俺には必須だって」
と、言うわけではい発動の指パッチン。
Other Side
次の瞬間、鮮血がロスヴァイセの胸元から噴き出した。
完璧に、何があったのか誰一人として理解できなかった。
特にユーグリットの驚愕は大きかった。
なにせ宮白兵夜がいざという時身内を殺す判断ができるのは京都での英雄派との戦いで実証されいてる。
結果的に未遂で済んだものの、あれは割って入ることに成功した兵藤一誠と代替案を提供した神々の意地が原因だ。それがなければベル・アームストロングは宮白兵夜に殺されていただろう。
ゆえにロスヴァイセには防護術式をいくつもかけている。宮白兵夜の戦闘能力では突破するのに溜めがいるような強固さのはずだ。
それを、一切突破することなくロスヴァイセの胸から鮮血が噴き出ている。
そのありえない光景に思考が止まった瞬間、すでに宮白兵夜は動いていた。
「隙だらけだぜ、ユーグリット」
一瞬でリリスを拘束した礼装がユーグリットの動きを封じ、さらに高出力の光が彼の視界を奪う。
「寝てろ。おきたときから尋問のスタートだ」
顔面に上級天使クラスの光力が叩き込まれ、ユーグリットは昏倒する。
そして支えを失ったことで倒れるロスヴァイセを、兵夜は優しく抱き留めた。
「大丈夫ですかロスヴァイセさん。ちゃんとつけてくださってよかったです」
「全く。意識まで失うなんて聞いてませんよ? そういうことはちゃんと言ってください」
「すいません。気絶ぐらいしたほうが死んだと勘違いすると思ったんですよ。血流を止める術式も仕掛けようかと思ったんですが、それだとさすがに危険じゃないですか」
「本当に危険すぎです」
ため息をつきながら、ロスヴァイセは拘束を解いて立ち上がる。
そして肌に浮かんだ鳥肌を隠すかのように肌をなでた。
「姉の代用品とかすごいひどい扱いを受けました。顔がいいだけにかなり嫌な気分です」
「・・・ド級の変態という意味では赤龍帝にふさわしい男だった。自他ともに認める変態のイッセーが一番まともって何かがおかしい」
倒れたユーグリットを見下ろして、2人はげんなりとした表情を浮かべる。
「まあ、首魁の側近ともなれば持ってる情報もかなりあるだろうし、コレで情報戦で優位に立てるといいんですけどね。アサシンに脅されてる連中はまだたくさんいるだろうから総合的に不利なんだよなぁ、こっち側」
「まさか私の研究が封印を施せるものだったなんて自分でも驚きです。かなり早くに見切りをつけていたはずなんですが、なんでこんなことになったのでしょうか」
一仕事終えた気分からか、2人は肩をすくめるとそのまま振り返る。
・・・そして怒りに燃える二つの赤を発見した。
「宮白」
「ロスヴァイセ?」
「「・・・あ」」
説教は正座必須だったことを付け加えておく。
Side Out