ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
イッセーSide
「あ、イッセーいたぁ!!」
城のほうに急いで戻っていく途中だった俺の耳に、ナツミちゃんの声が響く。
「ナツミちゃん! 大丈夫かよ!!」
「うん! いろいろ面倒だったけど大体片づけたよ!」
そういって笑顔でVサインする後ろではボコボコになった吸血鬼たちが倒れ伏していた。
うわぁ、すごいレベルでボロボロになってやがる。ナツミちゃん強いもんなぁ。
「っと、宮白のことを忘れてた!! 急いで助けに行こうぜ! 地下だったよな」
「そうだった! 兵夜うっかりしてないか心配だよ」
うん、うっかり敵陣のど真ん中に入っちゃってるからすごい心配だ。
ヘラクレスとジャンヌがいるから善戦しそうだけど、蒼穹剣は一対一じゃないと真価を発揮しないし心配すぎる。
あいつ癖が強いのよく使うから意外とハメ技が効くんだよなぁ。なんか変な失敗してないといいんだけど。
「よっしゃ! とにかく急いで宮白のところに―」
その瞬間、すぐ近くの地面が爆発した。
くそ、こんなところで敵襲かよ! 今度は一体誰だ!!
煙が少しずつ晴れる中、それを振り払いながら一人の男が。
「見つけたぞUMA!」
「にゃあああああああああああ!? ふ、ふんどし・・・ぃ」
またふんどし!?
あ、ナツミちゃんが失神した!!
「しっかりしろナツミちゃん! この野郎、もう出てくるな!!」
おのれふんどしめ! 今真面目にやってる最中なのにかっこうがこのルーマニアでもふんどしだから緊張感が出てこない!!
「そんな恰好で寒くないのかよ! 死ぬぞ!!」
「気温というものは気合いで変更できるものだ。近づいてみろ、あったかいぞ?」
気合いってそんな便利なものだっけ!?
と、とりあえずさっさと片付けて宮白の援護に行きたいけど、そんな余裕は全くない!
っていうかナツミちゃんが気絶してるこの状況下で俺はふんどしを何とかできるのか?
「と、言うわけで猫娘をprprhshsするために邪魔だぁああああ!!」
ふんどしが全力で殴りかかってきて、俺は戦車形態になって何とか防御する。
くそ! 一撃で鎧が半壊した!? どんだけ馬鹿力なんだよこいつは!!
いくら転生者だからって人間だよね!? なんなんだこの戦闘能力は!!
「くそ! ナツミちゃんには手は出させないぜ!!」
俺は勢いよく殴り返すけど、ふんどしはそれを片手で受け止める。
「ふ! この程度の実力ではどうしようもない。赤龍帝の力を鍛える前に気合いを入れなおすといい」
「いや、もうこれ気合とか言う次元じゃねえだろ!!」
「オッパイにかける気合いを思い出せ! さあ気合いだ!!」
いや俺的だしおっぱいおっぱいいってるけどそれ奮起してお前になんか得あるの!?
「さあ、気合いを入れろ!! 出なければ勝ち目がないぞ!!」
そんなことを言いながら、ふんどしはものすごいいきおいでパンチを繰り出していく。
くそ、目が追い付けない!!
こいつ本気で強すぎる! 一応宮白が対抗策ぐらいは立ててたけど、俺じゃあそれはできないしどうすればいい!?
攻撃が鋭すぎてこのままじゃ勝てない! 俺がどうしたもんかと思ったその時、視界の隅に白い輝きが映った。
「どうした兵藤一誠。意外と苦戦しているようじゃないか」
「・・・ほう? また新たなUMA、白龍皇アルビオンか」
おいおいマジかよ。まさかお前まで参戦かよ。
「だが俺としても君に死なれると困る。どうせ邪魔してくるだろうし、ここは共闘と行こうじゃないか」
お前が来るのはびっくりだぜ、ヴァーリ!
「なんだよ、てっきり来ないのかと思ったぜ」
「悪かった。アザゼルより先にこっちに向かったんだが、聖十字架の使い手に出くわして戦闘することになってな」
聖十字架って確か神滅具の一つだよな。
おいおいそいつまで禍の団なのかよ! 聖遺物なのに全員テロリスト側とか冗談じゃないって!
「ふむ。ヴァルプルガは抜けられたか。・・・まあいい、これでUMAを二人も見ることができた。prprし放題で最高だ!!」
よだれを垂らしながらふんどしが興奮する。
うん、絶妙にきもいよね! ナツミちゃんは気絶してよかったかも!
『ふんどし・・・尻!? くそ、意識が・・・意識が遠のく!』
アルビオンがいきなり悲鳴を上げ始めた。
どんだけお尻にトラウマ感じてるんだよ! 意識なくすほどってそんなにひどい目合ったの!?
くそ、お尻がどうだの言ったのは俺じゃなくてヴァーリだから俺に責任押し付けるなよ!? もとはといえばおっぱいドラゴンな俺のせいだけど、俺が名のったわけじゃないんだからね!!
『しっかりしろ白いの! この程度で意識を失っているようでは、ファーブニルとあった時に死ぬぞ!!』
ドライグがなんか微妙にずれたフォローを入れるけど気持ちはわかる。
アーシアのパンツと引き換えに頑張るドラゴン。間違いなく変態の極みで、もはやどうしようもない。一緒にされたらショックで死ねるぐらいにはどうしようもないっていうか、一緒にしてるやつがいないことを真剣に祈るぐらいにはどうしようもない。
頼むから一緒にしないでくれ! 俺は確かにスケベだけど方向性が違うからね!!
「ふんどしで白目をむくドラゴンか。実にUMA的で興奮するな!」
お前もう帰れよ! ナツミちゃんが顔を真っ青にして痙攣してるから帰れよ!!
「しっかりしろアルビオン。三蔵法師に出会って薬を処方してもらっただろう。俺がついているからな」
ヴァーリも真剣に困っているようだ。意外といいやつだよねお前。
『頑張るんだ白いの! おれなんてお前のずっと前からおっぱいドラゴンだの言われてるんだぞ!! 気づいたら幼児退行していたらしいし記憶を失ていた時期だってあったんだ! それに比べれば呼吸困難など序の口だ!』
ごめんねドライグ! 今度宮白に頼んで少しは抑えてもらうよ。
自分でも正直どうかしてる気はしてるんだ。今度は気を付けて何とかしてもらうからね!
くそ、このままじゃなんか空気が微妙な感じになってくる!
宮白は大丈夫なのか!!
Side Out
疲れた。本気で疲れた。
しかも蒼穹剣はこれで打ち止めなので、できれば強敵と当たりたくない。
いや、使った後のこともちゃんと考えてはいるけどさ、だからってそれを使えばとんでもなく負担が出てくるのは当然なわけでね?
まあそんなわけなので、とりあえず俺は吸血鬼たちの拘束を行っている。
休憩したいけどいつ増援が来るかわからないし、終わったらヘラクレスたちを追いかけたほうがいいんだよなぁ。さすがに疲れたから休憩したいけどそんな余裕はないんだよぁ。
ああもう、いきなり蒼穹剣が必要な展開とかインフレが激しすぎだろうに。聖杯で強化されてなければ使うこともなかったものの、そういうわけにはいかないから無理がある。
敵もちゃんと考えているということか。さっさと蒼穹剣を無駄打ちさせることを考えているようだ。
「まああの二人なら並大抵の相手は突破してイッセーと合流するだろうが、クロウ・クルワッハとかリゼヴィムとかいろいろやばいからな。終わったらさっさと追いかけないと」
しかしのどが渇いた。寒いから湿度が低いせいかのどが乾燥しているようだ。寝起きだったし水分が不足してるな。
「お疲れちゃ~ん。はい、コレ俺からの差し入れだよん」
「あ、助かる」
おお、この水上質な天然水だ。
間違いなく金かかってるタイプだろう。これは非常に都合がい・・・い
「どわああああああああああああああああああ!?」
「おいおいこの人全然気づかず飲んだよ。ツッコミ待ちだけど天然で反応したよ毒入れたほうがよかったかね」
と、隣にリゼヴィムが!?
「まさかこんな陰気なところにやってくるとはな! おおかたマリウスがやられるのを待ってたってことか?」
「おうよ! ぶっちゃけいろいろうざかったしお馬鹿だったからね! やられてくれたらそれはそれで都合がよかったんだよ!!」
サムズアップして応えやがったよこいつ。
「まあそれはともかく、俺としちゃあおたくといきなり殺し合うつもりはないわけなんだよ。ちょっとでいいから俺の話聞いてくんない?」
・・・時間稼ぎにはちょうどいいからとりあえず聞くだけ聞いたほうがいいか。
俺の内心を呼んだのか、リゼヴィムはにやりと笑う。
「俺はさあ、君たち転生者の存在を知った時、ものすごいむねがドキワクしたんだよ」
俺たち転生者の存在?
「だってお前らはこれまで俺たちが知ってきた世界とは全く別の世界からきた存在だ。俺たちが見てきた世界とは似て異なるすんげぇ世界がいっぱいあって、そこにはいろんな人々が不思議な力を使ってる。この枯れたおじいちゃんの胸にもきらきら光るものがいろいろとでてくるねぇ」
いわれてみれば確かに興奮する連中はかなりいるだろう。
ファンタジーならよくある展開だが、異世界の実証とかかなり興奮するはずだ。
ましてや自分たちの世界とはよく似ていて異なる世界。第二魔法の概念とも近くて異なるその世界は、好奇心を刺激するという意味なら間違いなくトップクラスだ。
俺だって、そういう意味なら間違いなく興奮する。第二魔法の概念とも違い、しかし単なる異世界とも違う。そんな世界の存在が実際にあるだなんて年頃の男ならよだれを垂らして失神するレベルの最高峰だ。
「そいて、俺たちの目の前にそれが手に届くっていう実例が出てきた。・・・お前さんがかかわったあの戦闘だよ」
実例?
・・・確かに転生者は実例だが、あれは異世界の実証にはなっても特殊な事例が原因だからこっちに引き寄せるという効果はあっても、こっちから来れるという実例にはならなかったはず・・・。
・・・・・・・・・待て。
いた。異世界からやってきて戻ったとしか考えられない事例が、確かに一つ俺たちの経験の中に合った。
「乳神か!?」
「ピンポーン! そう、あれこそ異世界からアプローチして戻ってきた実例。異世界の実証どころか異世界に戻る・・・そう、『異世界に移動する』ことができる実例の実証さ!」
そう語るリゼヴィムの表情は正気を失っているとしか思えなかった。間違いなく、気がくるっているとしか思えない狂人のそれだ。
「そこで俺は思ったのさ。・・・だったら異世界に侵略することもできるんじゃないかってな!」
Other Side
「異世界の侵略!?」
レイナーレが漏らしたその単語に、リアスは目を見開いた。
確かに自分の下僕である兵夜はある意味で異世界の存在だし、イッセーに至ってはそこからさらに未確認の異世界の神と接触するということを起こした。
純血の悪魔という観点でいうならば、自分が指折りで異世界にかかわっている悪魔だという自負もある。
だからこそ、そんな馬鹿な真似を見過ごすことなどできるわけがない。
「リゼヴィムの目的がそれなら、なおさら見過ごすわけにはいかないわね!!」
今までも手を抜いてきたわけではなかったが、リアスは本気で魔力を込め始める。
奥の手を発動する必要がある。
異世界の侵略などという非常事態はまさに前代未聞。このまま見過ごせばその被害は自分たちだけではすまなくなる。
その決意を決めたリアスに、レイナーレはあきれたかのように肩をすくめた。
「悪魔とは思えない発言ね。仮にも悪の文字を冠すのなら、面白そうぐらいのことは言えないわけ?」
「ふざけたことを言うのね。何のかかわりのない人々を己の愉悦のために傷つけるだなんて、目の前で行われていて見過ごせるほど愚か者になり下がったことはないわ」
心からの言葉に、レイナーレは首を振るとそのまま距離を取ろうとする。
会話をして時間稼ぎをするつもりだったが、どうやらそんな隙を作るつもりもなかったようだ。
なにぶんこの技は時間がかかる。逃げに徹されたらどうしようもない。
「まあこっちとしてもいろいろあれだけど、もっと危機感を持った方がいいわよ?」
「なんですって?」
レイナーレの捨て台詞は、間違いなくこのルーマニアで最も危険視するべき発言だった。
「だって、グレートレッドがいなくなったらこの世界は大変なことになるんだもの」
Side Out
因みにリゼヴィムが兵夜がいるときにピンポイントで説明したのにはわけがありますがこれは次回。
転生者の存在そのものはかなり前から出てきてたけど、リゼヴィムが今まで侵略を行おうとしなかったのはこっちから行けるかがわからなかったからということにしました。そこにやってきたうえに戻っていった乳神の使いが出てきたことで本格的に動き出したというわけです。