ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
「面倒極まりないんだよ、サイラオーグ・バアル!!」
高速での打ち合いをしていたフィフスがそういった瞬間、サイラオーグ・バアルの動きが一瞬止まる。
なんだ?
視線を向ければ、彼の腕にめり込むように、小さな玉がたたきつけられていた。
指弾か!? だがあのサイズであそこまでの威力があるわけが―
「気の流れが乱れています! あれですぐには動けません!!」
子猫ちゃんが声を張り上げる。
おいおい、それってまずくないか?
その嫌な予感を的中させるかのごとく、フィフスが彼の体に手を当てる。
「組成分解。万物は塵へと返る!!」
魔術詠唱! まずい!!
とっさに割って入ろうとするが、それより早くサイラオーグ・バアルの体が破裂したかのように血をまき散らす。
「ぐぉ・・・っ!?」
さすがにダメージがひどいのか、サイラオーグ・バアルが倒れ伏す。
俺は何とか割って入って距離を作るが、これはまずいぞ!?
「錬金術の応用による細胞破壊か!?」
「そういうことだ。一応魔術師として魔術による攻撃手段ぐらい作ってるってね」
得意げにフィフスがそういってくるが、マジ最悪な攻撃手段がありやがるな、オイ。
打撃技が非常に強い挙句、組技などでこれをされたら生身の連中なら即死だってあり得るぞ。
くそ! アーシアちゃんは一体どこに―
と、視線をイッセーの方に向けた瞬間、閃光が放たれた。
紅い輝きは力強く、その近くにいた部長たちすら包み込む。
な、なんだ一体!?
その光景にその場にいた全員が度肝を抜かれる中、紅の中に白い輝きが映り込んだ。
『・・・大丈夫、彼は今から復活するよ』
聞き覚えのない声だが歴代赤龍帝の関係者か誰かか?
『僕は彼が取り込んだ白龍皇の力に宿った残留思念だ。今は乳龍帝が忙しいから親切で声をかけている』
白龍皇の残留思念!?
っていうか乳龍帝って! あんた今シリアスな展開なんですけど!?
俺としては思いっきりツッコミを入れたかったが、残念だがそれどころではない。
正直どう反応していいのかすらわからない状況下で、白龍皇はさらにとんでもないことを言い放つ。
『―さあ、覇を捨て去った新しい天龍の目覚めの時だ』
その瞬間、イッセーの体からさらにオーラが放出される。
『BustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBustBust!!!』
オイちょっと待て。その音声どうよ?
「・・・頼むからもうちょっとまじめにやれよこのクソ雑魚ドラゴンがあああああああああ!!!」
フィフスが天を仰いで絶叫するが、だが仕方がないといえば仕方がない。
なんたって、あいつはおっぱいドラゴンだからな!!
と、光に包まれていた部長たちのおっぱいが一斉に共鳴するかのように輝いた!!
「いやぁん!?」
「む!? これがイッセーのおっぱいパワーアップか!」
「あらあら。ついに私もなるんですのね」
「・・・なぐるのは我慢」
「イッセーさん!」
口々にみんな反応するが、しかしこれはどうにかならなかったのだろうか?
と、などと思っている間に輝きが強くなり、イッセーに向かって収束していく。
「・・・悪い皆。またせちまったな」
そして、イッセーが立ち上がった。
「もう大丈夫! 俺が、なんとかする!!」
待たせてんじゃねえよ、この野郎!!
「イッセー! もういいのか?」
「ああ。こっから先は、俺たちのターンだ!!」
俺の問いかけにも元気よく答えるイッセー。
ああ、ついに復活しやがったか!!
さあ、こっから先が本番だぜ、フィフス!!
イッセーSide
フィフスが俺に、化け物でも見るかのような視線を向けてくる。
「・・・本当にうざいよお前。薄っぺらいくせにわけのわからない理屈でポンポンと立ち上がりやがって。・・・本当に、死ね」
いうが早いか、一瞬で踏み込んで俺に迫る。
すでに滅龍魔法もしっかり発動させていて、殺す気満々の攻撃だ。
だけどなめんじゃねえ。
今の俺は、さっきまでとは一味違うぜ!!
「我は万物と渡り合う龍の豪傑なり!!」
いうが早いか、俺の全身から赤いオーラがあふれ出す。
そのオーラをまとったまま、俺はフィフスのこぶしを受け止めた。
「―っ!? 固い・・・いや、受け止められる!?」
衝撃を吸収されて、フィフスが舌打ちする。
いや、ダメージが入ってないわけじゃない。滅龍魔法の炎はしっかりと俺の体を焼いている。そこまでは防ぎきれてない
だけど、こぶしの攻撃力は完ぺきに防いだ。それだけの出力がこのオーラにはある。
そして、オーラはフィフスのこぶしを焼いていく。
「攻性の防御フィールドか!? 面倒な能力を!!」
「そういうこった!!」
顔面狙いでこぶしを叩きつけようとするが、フィフスは素早くのけぞるとそのままかわして、飛び退く。
これが、俺の新しい力の
だから機動力は低下しないので、このまま接近して追い打ちを変えることもできる。
灼熱を身にまとってフィフスを相手に、オーラを身にまとってい連続で打ち合える形態だ。
「・・・倒せはするが面倒だな。ここはホームらしく数の利を生かすとするか!!」
フィフスが指を鳴らすと、ディオドラの時に出てきたでかい砲台や、ビーム砲のついた戦車がポンポンあらわれる。
あらら。まだこんなに戦力残ってたのかよ。
しかも混戦状態の俺たちを囲むようにあらわれやがった。
この野郎、味方ごと巻き込む気か!
「ホムンクルスもただじゃないが、お前ら相手なら安い買い物か。・・・反撃するなら構わないが、味方を巻き込んじまうかもなぁ!!」
さすが悪役、マジ卑怯な手段を!!
だが、今の俺には通用しないんだよ!!
「我は万物を灰塵と化す龍の賢者なり!!」
オーラが止まり、鎧に新たなパーツが接続される。
それは、京都でつかったキャノン砲。
だけど、それだけに終わらない。
同時に両腕も輝き、巨大なガトリングガンが形成される。
「
いうが早いか、俺はガトリングガンを手当たり次第に発射する!!
「え、ちょ!? イッセーストップ!?」
「おま、ちょっと待て!?」
ナツミちゃんと宮白があわてるけど、その辺は何の心配もない。
ガードが間に合わなかった二人をすり抜けて、弾丸は戦車をあっという間に破壊していく。
さらにキャノン砲からもビームをぶっ放し、こちらも味方をすり抜けて歩く砲台を一気にぶち抜いていく。
「て、敵味方識別能力だと!?」
フィフスが目を見開いて驚愕する。
そう、神すら撃ち抜く龍の賢者の弱点克服は二つ。
一つはガトリングガンの弾幕を使うことによる連射速度の低さを補う自衛能力。
もう一つは、味方すら巻き込みかねない広範囲攻撃の安全を確保する。敵味方識別能力だ。
俺が味方と思っている連中には、この状態の砲撃は一切通用しない。そういう能力が追加されてるんだよ!!
「チッ! 止めなさい、バーサーカー!!」
レイナーレが指示をだし、バーサーカーが血まみれだと勘違いするぐらい真っ赤な体で突進する。
「強大な戦いも我には無意味! 敵意が我に戦いを続く!!」
うん。相手したくないね。
そういえば宮白が言ってたっけ。
サーヴァントは単独行動スキルがなければマスターが必須だから、マスターを狙うのが基本戦術だって。
じゃ、俺もそうしよっかな
「我は万物を引き離す龍の聖騎士なり!!」
詠唱と同時に、武装が分解されて今度はブースターに変化する。
鎧はパージされないけど、その分出力がはるかに上昇したこのスラスターなら、バーサーカーの速さなら簡単に引き離せる!!
「かっ飛ばすぜ!
文字通り一瞬でバーサーカーを引き離す。
狙うは本丸!!
「レイナーレぇえええええ!!」
「ちっ! 面倒な元カレね本当に!!」
レイナーレもスラスターを展開すると、俺たちは超高速でぶつかり合う。
さあ、決着つけようか、レイナーレ!!
Other Side
フィフス・エリクシルは心から舌打ちした。
実に心から腹立たしい相手が復活してしまった。
初めて会ったときは、警戒には値するがその程度だと思っていた。
生まれて十年以上たっているのにもかかわらず、最近になってようやく覚醒した程度の弱い赤龍帝。間違いなく、記録上ここまで目覚めるのが遅かった二天龍は存在しない。
なにより、ハーレムを目指しているといいながらその努力は大したことがないと言わざるを得ない。意志力の勝負になれば間違いなく歴代どころか全神滅具使いのなかでも最低基準の弱さだと確信した。
仲間の為なら犠牲をいとわないその精神性は逆転の目を生んではいるが、不完全な禁手なら自分でも十分勝算はある。ヴァーリと戦って勝てるはずがない。どう高く見積もっても歴代最弱の称号は免れない。ちゃんと警戒していれば一矢報いられることもない程度の相手ではあった。
だが、あの男は初戦でヴァーリを追い込んだ。
覇龍すら使えないほどに叩きのめされたヴァーリが油断していたのは事実だが、しかしあの展開は間違いなく想定外だ。
乳が小さくなると聞いて戦闘能力が向上する二天龍など聞いたことがない。
ゆえに、撃破できると思ったタイミングではかなり全力をもって撃破を狙ってきている。
過剰戦力を投入してきたこともあったし、数ある強化プランの中から滅龍魔法を選んだのだって、このわけのわからない成長率を持つ兵藤一誠を倒すためだ。
心身共に歴代最弱でありながら、わけのわからない突破力をもつ兵藤一誠に対し、警戒を怠ったことなど一度としてない。
この突然の事態においても、レイナーレの強化が間に合ったことで最も優位に行動できたはずだ。実際、兵藤一誠はその薄っぺらさをはっきりと示して倒れ伏した。
それがなぜこうなった?
「なんなんだあの男は・・・っ!」
腹立たしさを拳を握ることで現したフィフスの前に、人影が立つ。
素早く意識を切り替えて視線を向ければ、そこには血まみれになったサイラオーグの姿があった。
目はうつろ。明らかに意識がはっきりとしていないのがまるわかりだ。
・・・冷静に考えれば、この男も最上級の脅威になりかねないのは変わりない。
ここで仕留めておくのが最良かと判断し、しかしフィフスは動きを止める。
・・・サイラオーグ・バアルの隣に、透けた人影が寄り添っていた。
生霊の類と判断できるが、このタイミングで登場にフィフスは虚を突かれる。
「・・・ちなさい」
その生霊は、決してやさしい言葉をかけたりはしなかった。
「立ちなさいサイラオーグ! 今この場で、あなたが立たずにどうするのです!!」
その人影は叱咤していた。
「今眷属が、血を分けた家族が、並び立つ仲間が戦っているというときに、あなたが戦わずしてどうするのです!!」
さすがにスパルタではないだろうかと正直本気で思っている。
あの技は決まれば勝てるといっても過言ではない、フィフスの技の中でも対人必殺性に優れた奥の手だ。これまでの体制側との戦いでも、多くの敵を屠ってきた。
神経に攻撃を与えるハサンの攻撃によって生じた隙を突いたおかげで完璧に決まっている。はっきり言って死んでないのが脅威といっても過言ではない。
正直少し同情しているが、それがよくなかった。
「あなたがここで倒れれば、あなたの進む道を信じてすすんできたものたちはどうなるのですか! あなたのいのちはもう、あなただけの物ではないのです!!」
女性の叱咤は、確かにサイラオーグに届いていた。
少しずつ、確実に力が入っていく。
それに危険を感じて動こうとするが、一歩遅かった。
「・・・貴方は勝てると、信じていますよ。・・・立ちなさい、サイラオーグ」
「ぅ・・・ぉおおおおおおおおお!!!」
灼熱をまとった拳を、サイラオーグは間一髪受け止める。
衝撃破だけで要塞すら砕きかねない拳を、しかし揺らぐことなく受け止めきった。
「俺は・・・負けん! 冥界にあだなすお前たちは、俺が必ず倒す!!」
「舐めるな筋肉達磨!! 今のお前がどうやって俺を倒す!!」
フィフスの余裕は正しい判断であった。
身体能力の差は滅龍魔法で克服している。
技量においては年季の差ゆえにこちらが上だ。
そして消耗においては間違いなくこちらがはるかに少ないのだ。
そして、さらにその上を行くべくフィフスは命ずる。
「火炎弾投入!!」
魔力を込めた音声に、要塞のシステムが起動する。
そこかしこから穴が開き、火炎瓶が投入される。
瞬くまに部屋中が炎で埋まり、そしてそれはフィフスにとって最高の戦場へと変化したことを意味する。
炎を喰らい、炎をまとい、炎龍と化す火の滅龍魔法使い。フィフス・エリクシルの本領が発揮された。
「前回と一緒にするなよ大王子息! 今回は完全にこちらのホーム! ボロボロのお前がどうやって勝てる!?」
それは、間違いなく事実だった。
今のフィフスは文字通り神とも殴り合える。それだけの戦闘能力を発揮できた。
だが、一つだけ失念していることがある。
「・・・あのルールでは使いようがなかった、もう一つの奥の手を貴様に見せよう。レグルス!!」
「承知!!」
サイラオーグの命に従い、獅子王の戦斧が舞い上がる。
重力に従いサイラオーグの元に降り立つと同時、2人の体が閃光へと包まれた。
「
獅子がその身を鎧へと変化させる。
大王の体を包み、そしてその肉体をより強靭に。
それを見た瞬間にフィフスは悟った。
この魔力を持たぬ大王は、魔力などよりはるかに強大な力をすでに手にしていたのだと。
「
「完璧に独立している神器で禁手に至るか。・・・つくづく最近の神滅具はイレギュラーが多いなこれが」
頬を引くつかせながら、フィフスはしかし下がらない。
今更神滅具の禁手風情でビビるつもりは毛頭ない。
必要とあるならば、神すらこの手で殺すと誓っているのだ。
「来いよ大王。龍を屠る魔法の使い手が、今更魔王風情にビビルとでも?」
「なら向かおう。フィフス・エリクシル・・・貴様を、冥界の脅威と認定する!!」
火龍と獅子が、今ここに相対する。
今この場において、最も苛烈な肉弾戦が展開された。
Side Out
はい、イッセーのパワーアップは真女王ではありません。
いや、これは結構最近まで悩んでたんですが、真女王が出てからトリアイナって影が薄いじゃないですか?
それについていろいろと思うところがあったんですが、最新刊のイッセーのパワーアップの形式も考えて、ちょっとイッセーを魔改造しようと決意しまして、思い切ってここから変えていくことにしました。
今回の形態はわかりやすく言うと「特化形態を上位にした」です。ちなみにこれ以降イッセーは当面の間女王にプロモーションできなくなります。
基本的には長所を伸ばしつつ欠点をフォローする形に。イッセーて基本的にド直球タイプなので全方位万能形態よりこういったほうが相性いいような気もしまして。
四章以降も切り札として使っていける万能タイプとして活躍させていくつもりなので、そのあたりも意識していただけると嬉しいです。