ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
Other Side
誰が見てもわかるぐらいに、兵藤一誠は動揺していた。
「どうしたのイッセーくん? 怖いなぁ、昔の女に向ける視線じゃないよ?」
無邪気な笑顔を向ける少女をみて、兵藤一誠は完全に我を失っていた。
そして、その様子を見る誰もが、その無邪気な笑顔が表面的なものでしかないことを理解した。
それほどまでに、その少女からは悪意しか感じないのだから。
「く、くるな、来るなぁ!!」
衝動的に放たれるドラゴンショットを前に、その少女は一枚のカードを取り出した。
「―
呼び出されるのは一つの装備。
下半身を覆い、まるで翼のごとく広がる機械仕掛けの鳥を手にした鎧が形成される。
次の瞬間、少女の姿が掻き消えた。
「な・・・どこに―」
「ここよ。イッセーくん」
一誠の背中に、柔らかな感触が触れた。
それが少女の乳房であることを理解した瞬間、兵藤一誠の記憶が一斉にあらわになる。
―死んでくれないかな。
笑顔でいわれたその死刑宣告。
そして貫かれる体の感触。
それを笑顔で見つめる少女から生える黒い翼。
それらすべてを思い出した瞬間、その視界に懐かしいと思いたくもない黒い翼が映る。
「過程はともかく、イッセーくんのおかげで私はとっても強くなれたわ。・・・とても地獄のごとき苦痛だったけどね」
「それは仕方がない。中級堕天使が上級を超える力を手にするには相応の苦痛が必要ってもんだろこれが」
高速でサイラオーグと打撃戦を繰り広げるフィフスが当然のようにそう言い放ち、少女は苦笑する。
「まあ、おかげで最高峰の堕天使とも並び立てるようになったからいいわ。・・・こうしてお礼もできるもの」
まるで拭けば飛ぶような紙細工に触れるかのように、柔らかな手が赤い鎧をなでる。
その感触は鎧の生で感じないが、もし感じていたら自分は正気を保てていないと、一誠は自覚する。
「・・・レイナーレェ!!」
一誠にまとわりつく少女を排除するかのように、怒気のこもった声とともに、リアスが滅びの魔力を放出する。
上級悪魔でも喰らえばただでは済まないような高出力の攻撃を前に、しかし、レイナーレと呼ばれた少女はあわてない。
その背に生やした黒い翼から光が漏れると同時、それを真正面から受け止めた。
わずかな拮抗のあと、その力はあえなく霧散する。
そして、レイナーレは無傷だった。
「ああ、いいわ。以前なら跡形もなく吹き飛んでいたその力を跳ね返してこそ、自分が強くなったって実感できる」
目を見張るリアスを憐れみながら、レイナーレは自分の翼をなでた。
「思えばあの時ほど絶望したことはなかった。そして、私は助け出された後で地獄を見たけれど、その苦しみが今の私を強くしているわ」
「何が絶望ですって? 自業自得でしょう!!」
消滅の魔力を再びほとばしらせながら、リアスは怒りの表情を見せる。
「イッセーをだまして殺し、さらにはアーシアの神器を奪い取って始末しようとし一度は殺しておきながら、よく偉そうなことが言えたものね!? ましてやそれであのアザゼルに取り入れるとでも思っている愚か者がよく偉そうなことを言えたものね!!」
「イッセーくんを殺したのは命令だけど、それ以外は否定はしないわ。フィフスにもことごとく馬鹿にされてるもの」
苦笑とともにレイナーレはそう認め、そしてしかし否定するかのように超然とした姿を見せつける。
「でももう構わない。もはやアザゼルに認められるだなんて小さなことは言わないわ。・・・私自らが最強の堕天使として高みに立つ」
その姿を見て、リアスは目を疑っていた。
イッセーの力を見誤っていたと気づいた瞬間に器の小ささを露呈していたあの時の矮小な中級堕天使はそこにはいない。
力に酔っている節はあるが、しかしそれ以上に冷静におのれを見据えている。
正真正銘叩き潰され、しかしそこから這い上がったことで、確かにこの女は成長していた。
そして、そのきっかけとなった男は間違いなく狼狽していた。
「あ・・・あ・・・ああ・・・」
「あら? まだおびえてたのイッセーくん?」
とたんに年頃の女子高生といったかわいらしい声を作り、レイナーレは無邪気な笑顔を見せる。
「禁手にも目覚めていなかったあの時でも倒せた私相手にビビルだなんてどうしようもないわねぇイッセーくんは」
ダメな子を可愛がるかのような口調で、レイナーレは指を伸ばす。
その指先が触れた瞬間、一誠は爆発した。
「
瞬時に両腕の装甲を増大化し、全力の拳を叩き込もうとする。
直撃すればたいていの堕天使は一撃で倒れ伏すであろう攻撃を前に、しかしレイナーレは平然とする。
その全身を光をまとった翼が覆い、そして正面からその拳を迎撃した。
「・・・お前が勝てるわけないだろうが、これが」
フィフスがその光景を見ながら、兵藤一誠を嘲笑う。
「レイナーレは確かに強者にすり寄る弱いところがあったが、自らすり寄るための努力を行って高めようとした。至高の堕天使になろうとする努力を行っていた」
それは、無傷といってもいい。
「ハーレムだったか? お前はそんな夢を昔から持ってたらしいが、そのために一体何の努力をしてきた? せいぜいが女の多い学校に入学しただけだろうが」
それは、通用していないという言葉を具現化する。
「自分のスケベ根性を制御するやら、勉強を努力して成績を上げるやら、身体能力を鍛えてスポーツ優秀になるやら、料理を勉強してモテル特技を身に着けるやら、リアス・グレモリーに拾われる前にやることはいくらでもあっただろう?」
それは、おっぱいドラゴンのファンにとって絶望だった。
「モテる努力も一切せず、やれ悪魔になったらハーレム作れるかもしれないといわれてから努力をする時点でおまえは薄っぺらいんだよ」
それは、この光景を見るものすべてにとって衝撃だった。
「人間社会だってイスラム教権とかなら複数の配偶者を持つことができる。そうじゃないにしたって金持ってるやつが愛人持ってるなんてよくある話だ。・・・そこに至るまでの努力をしない時点でよわっちいなこれが」
兵藤一誠は、目の前の光景を否定したくてたまらなくなった。
「・・・こんなものなの、イッセーくん?」
余裕の笑顔を浮かべて、レイナーレは不思議そうに首をひねる。
そして、その表情が酷薄なそれへと変わると同時、莫大な光の槍が生み出された。
「これに負けたっていうんだから、昔の私は本当にダメな堕天使だったわねぇ」
それに反論することもできないまま、一誠は一太刀で切り伏せられた。
佑斗Side
この女、笑えない冗談みたいなことを言う癖に戦闘能力は非常に高い!!
四人がかりだというのに、攻撃に映る暇もないほどの無数の砲撃が僕たちを襲い続ける。
「これが、これが全裸を愛し、色欲を愛し、淫乱を愛する者の力なのよぉん!!」
「・・・すごく叩き潰したい」
子猫ちゃん我慢だ!! 今感情的になると間違いなく僕らは殺される!!
あまりにも強敵すぎてどうしようもない。
ザムジオ・アスモデウスと並び立つもの名だけはある。この戦闘能力、下手な最上級悪魔にも匹敵する!!
「並び立ちたいなら一日一S○Xすることから始めなさぁい!! まずはそれからよぉん!!」
でも真似はしたくない!!
そして悲しいことに今の僕たちではこの人を超えることはたぶんできないだろう。
下手をすれば本気を出したサイラオーグさんに匹敵するだろう。いや、それどころか超える可能性もあるかもしれない。
ロキやアザゼル先生にも並び立つであろう最高クラスの強者の力がそこにあった。
しかも、おそらく蛇は使っていない。
間違いなく相手をしてはいけないタイプの危険人物だ。
このままだと確実にマズイ!!
と、攻撃がそれて後ろの壁が次々に破壊されていく。
くっ! 自分たちの陣地だというのにお構いなしか!!
「・・・この程度なのぉん? だったらそろそろ終わりにしようかしらぁん」
勝者の余裕すら浮かべて、エルトリアがさらに大量の魔力を展開する。
このままだとまずい―
「―なら、こんな程度ならどうだ?」
そう思った瞬間に、後ろから莫大なオーラが通り過ぎた。
「え、ちょっとうそ―」
突然のことで対応が遅れたエルトリアを飲み込んだその一撃は、そのまま壁をいくつも破壊していく。
さらに、後ろから放たれた光が僕たちの負傷も回復していった。
この二つの力は!
「ゼノヴィア、アーシアさん!!」
ここにきて二人が来てくれたのか!!
最高のタイミングだ!! 助かった!!
「いやいや、舐めてもらっちゃぁ困るのよぉん!!」
オーラを突破したエルトリアが無数の魔力を一斉に砲撃する。
だが、そこに無数の魔法の砲撃が相殺するように叩き込まれた。
そして、その合間を縫って雷光がエルトリアに叩き込まれる!
「私を忘れてもらっては困りますよ!!」
「あらあら。歯ごたえのありそうな方がついにやってきましたわね」
ロスヴァイセさんに朱乃さんも!! なんていいタイミングで来てくれたんだ!!
「や、やってくれるわねぇん・・・」
さすがにダメージが入っているようだが、それでもエルトリアは立ち上がる。
だが、その周囲の空間がブレたかと思うと、そのままエルトリアは地面にたたきつけられた。
「悪いが、俺たちも忘れてもらっては困るね」
サイラオーグ氏の騎士の1人が、その眼を輝かせて彼女を見据えていた。
視覚干渉系の神器だったはずだ。やはりこの手の類は強力だ。
これで戦況はひっくり返せたはず。今このタイミングで決める!!
「ゼノヴィア! ここで決めるよ!!」
「ああ。あれはあのザムジオと並び立っていた女だ。ここで仕留めねば何をしでかすかわからない!!」
あの時、僕らの目の前に現れたエルトリアとザムジオ。
後のもう一人も含めて、おそらくはザムジオと並び立てる戦闘能力の持ち主なのは間違いない。
あれだけの戦闘能力を持っていたであろう人物と並び立てるものをほおっておくわけにもいかない。
ここで、可能な限り早くしとめる。
「これは・・・きついわねぇん」
距離を一気に詰められながら、エルトリアは自重するように苦笑した。
そして―
「だったら、これぐらいの反撃は許してくれるかしらぁん?」
虚空から一枚のカードを取り出した。
・・・まずい! アレは―
「―
レイナーレ、超強力。
D×Dの作品である以上、主人公がイッセーの活躍を食うのは避けられないところがあります。
だが自分はイッセーが大好き。できることなら活躍させたい。
と、いうことでイッセーに対して強敵を出して、その相手との戦いなどで代用しようと考えました。
その相手として最も適切なのは、イッセーが異形社会に入る原因にして、一度殺したレイナーレが最も適切だと思ったのです。
そのため、レイナーレはこれからもイッセーの宿敵として第四章でも立ちふさがります。
・・・まあ、そのため全部見せるわけにはいかないのが難点なのですが。
そしてエルトリアの強化プランはネギまから。
・・・実はギリギリまで禁書の方の強化プランで構築する予定でした。レベル3ぐらいの空間転移能力で、質量のない魔力攻撃をつかったファンネルみたいな攻撃をつくるよていでした。
ただ、ネギまの予定だったグランソードの方がいいプランが見つからず、エルトリアの性格上こっちのネタを利用すればいいクロスオーバーにしていいオリジナルアーティファクトになることに気づき、急きょ方針変更しました。