ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
イッセーSide
・・・やりやがった。
あの野郎。ちゃっかり神格の力の制御に成功してやがった!!
余りの光景に俺たちも度肝を抜かれていた。
おいおいおいおい、聞いてねえぞ!?
『・・・おいアーチャー!! 神格の力の制御にまで成功したなんて聞いてねえぞ!? そういうことは出し惜しみするなよ!!』
アザゼル先生も解説の立場を忘れて大声を上げるが、その耳元に魔法陣が展開したかと思うと、なぜかものすごい頭痛をこらえているかのような声が聞こえてきた。
『言うわけないでしょう。まだ未完成よ、アレ』
未完成? いやいやいやいや、成功してるでしょう?
『・・・拒絶反応が強くてお腹に槍が刺さっているかのような苦痛が走るのよ。しかも消耗も激しいから実戦運用なんて不可能ね』
・・・へ?
いや、えっと、それマジ?
『終わったら丸一日は寝たきりでしょうね。よくやるわね』
心底呆れた口調で言ってるけど、明らかにそんな内容じゃないんじゃないか!?
宮白、無茶しすぎだろ!?
『・・・どうした? まさかこの程度で戦意喪失とでも言うんじゃないだろうな?』
激痛に耐えてるとは思えないような、しっかりとした声で、宮白は一歩一歩サイラオーグさんに近づいていく。
その姿からは、割と怖い感じがしてちょっと近づきずらい。
『恐ろしいな。俺をその鎧の力を使って倒すためだけにそこまでするか』
『当たり前だろう? 腹が立っているとはいえ、俺はあんたに敬意は払っている。これぐらいはするさ』
サイラオーグさんは全身からオーラみたいなものを出している。
だけど、それでも体中でくすぶっているところがある。
その光景を静かに見つめながら、宮白はポツリとつぶやいた。
『・・・正直、自分でも恵まれすぎているとは思っている』
どこか後ろめたい響きがあった。
『先天的特性に頼る固有結界をもち、現在社長で当時重役な父を持ち、サーヴァントを召喚し、慈愛あふれる主に仕え、信頼できる仲間たちとともにあり、自分を理解し愛してくれる女性にあふれ、何より最高の親友とともに生きることができる。・・・いや、これが恵まれてなかったら何が恵まれているんだってぐらい恵まれてる』
なんか後半ものすごいぶっちゃけたような感じになったけど気持ちはわかる。
っていうか、ナツミちゃんたちより後に俺? だからお前はどんだけ俺のことが大好きなんだと。
『はたから見ればやっかみどころかねたまれたとしても全くおかしくないだろう。正直逆恨みにはなるが怨恨で殺されそうになってもおかしくないと自覚している』
そういってから一息つき、宮白は静かに立ち止まった。
『・・・だからこそ、それだけ恵まれている分の成果は出さなきゃならない』
その神気の出力がどんどん上昇していく。
その力にサイラオーグさんが物理的に押されるなか、宮白は腰を深く落として身構える。
『いくら驚異的な修練を積んでいるとはいえど、いや、積んでいるからこそ、この壁がでかいことを教えてやるよ。・・・熱心な研究家であることをお教えしよう』
神聖なる力が収束して、いくつもの砲弾として形成される。
『・・・来い。俺はともかく英雄と神々を舐めてかかった報い、最高の試練となって報復しよう』
そっから先はマジでサイラオーグさんに対する試練だった。
接近しようとしても神気に阻まれてできない上に、少しでも動きが止まれば砲撃が叩き込まれる。
しかも一発一発が今までの宮白の比じゃない威力なうえに、数も多くて回避も難しい。
・・・俺が初戦で手加減されたうえで圧倒されたサイラオーグさんを、間違いなく圧倒している。
『これは、これは・・・あれ? なんか主人公を追い込んでいるラスボス臭がしているんですが宮白選手!?』
『・・・あいつ怒らせると怖いからなぁ。ディオドラのやつなんて二日に一回のカウンセリングがないと情緒不安定になって尋問できないしよぉ』
ドン引きする実況に先生がとんでもないことを言っていた。
そういえば、宮白って本気で怒るとマジで何しでかすかわからないところがあったっけ。
なんていうか、甘いところは甘いけど、甘くする必要がない相手にはとことん冷たいっていうか容赦ないっていうか。
それが本気で怒っているから始末に負えない。
サイラオーグさんはオーラをまとってセントを行っているけど、それらすべてを防ぎきって、宮白はさらに上を行く。
『見る限り宮白選手の圧倒的有利といったところですが、それでもサイラオーグ選手はしのいでいますね。正直、なんでまだ戦えているのかわからないのですが』
『サイラオーグ選手は肉体を鍛え上げた末に純粋な生命力の高まったオーラを身にまとっていますからね。それが神のオーラを防いでいるのでしょう。そうでなければあれだけの猛攻に耐えることは彼でも不可能です』
『とはいえ宮白のやつ、祝福の聖剣を使って増幅されているだけあって退魔の力に一点特化した神格といってもいいからな。対悪魔に限定すればグレモリー眷属で一番強いだろ、こいつ』
実況の疑問にチャンピオンが応え、そこにアザゼル先生が宮白側の補足をする。
ああ、聖剣使った神様なら確かに悪魔殺しの力とか強すぎそうだからなぁ。あの状態の宮白と勝負したら、俺瞬殺される自信あるぞ。
『どうした? これはただの貰い物の力だぞ? 研鑽もまだできていない研究段階の試作武装だ! 慣らしもろくに終わっていない力に圧倒されるとは次期大王が聞いてあきれる!!』
あおるだけあおりながらも宮白は詰将棋のように冷静に攻撃を加える。
気づけば、最初は十回に一度ぐらいだった命中が二回に一回ぐらいになっていた。
「攻撃を加えながら回避パターンを解析して、相手の移動を誘導しているのか」
木場が目をせわしなく動かしながら感心する。
さすが頭脳派。マジギレしていても冷静だ。
それでも何とかサイラオーグさんが対処できているのは、スピードでサイラオーグさんが上回っているからだ。
攻撃と防御は相性差で宮白が有利だけど、基礎スペックの高さと機動力と戦闘技術ではサイラオーグさんが有利なんだ。
だから追い込まれているけど何とか食い下がっている。宮白は激痛に耐えながらだから消耗が激しいだろうし、この調子だと逆転される可能性だって間違いなくあるぞ。
そのあたりについて俺が心配しかけたとき、宮白が軽くため息をついた。
『このままだと時間切れだな。・・・仕方ない、動くか』
そういったとき、サイラオーグさんはいったん距離を取っていたタイミングで―
『―行くぞ』
―気づけば、その目の前に宮白が迫っていた。
『なんと―』
驚愕するサイラオーグさんの顔面に、宮白の肘が叩き込まれる。
のけぞってとんだサイラオーグさんよりも早く後ろに回り込んだ宮白は、そのまま空中に蹴り飛ばす。
そこから先は目にも見えない高速攻撃が叩き込まれる。
サイラオーグさんも反応して迎撃するが、圧倒的なオーラに体が焼けつき、思うように反応できない。
そのまま地面へとたたきつけた宮白は、しかし激痛のせいか一瞬止まる。
その隙を、サイラオーグさんは見逃さなかった。
『油断したな』
一瞬で腰を落とし、拳を構え、そして全力で振りぬく。
その瞬間、コロシアムの壁が余波で吹き飛ぶほどの一撃がぶっ放される!?
えええええええええ!? パンチで離れたところがぶっ壊された!?
どんな破壊力だよ!? 龍剛の戦車よりも凶悪じゃねえか!!
『こ、これは見るだけで痛い!! 宮白選手、これは立てないか!?』
実況もそんなことを言うけど、チャンピオンと先生は驚かない。
『いや、当たってませんね』
チャンピオンが冷静に告げる中、宮白の姿が映し出された。
『・・・惜しかったな』
サイラオーグさんの真後ろに、宮白が立っていた。
サイラオーグさんが振り向くより先に、宮白の蹴りがその延髄に叩き込まれる。
『グォ・・・っ!?』
痛そうな声をだして、サイラオーグさんは壁にたたきつけられた。
宮白はよろめきながらも、しかしかろうじて立って視線を向ける。
『は、ハハハ・・・。奥の手まで使わせるとはやるじゃねえか。アーチャーにも内緒にしてたんだぜ、コレ』
乾いた笑い声を挙げながら、宮白はしかし油断なく構えながらサイラオーグさんを見据える。
サイラオーグさんも壁に手を突きながら、しかし立ち上がった。
『なんだ・・・その速さは』
ふらつきながらも振り返り、怪訝な表情を浮かべる。
『急激にスピードが上昇した。・・・その状態を維持するには、祝福の聖剣に力をすべて注がなければいけないと思っていたのだが』
『まあ正解だ。神格の力を活性化させるにはそれだけの力を入れる必要がある。・・・が、神格の力を注ぎ込めば聖剣の力を活性化させることができるのもまた真実』
肩で息をしながら、宮白は自慢げに両手を広げる。
『八百万の神々のバリエーションは神話体系でも正真正銘規格外。そして俺は数十の神の力を与えられて神格化したイレギュラー。当然その力と相性のいい聖剣を利用すれば、ほぼ何でもありだこの野郎!!』
力強く地面を踏み鳴らしながら、宮白は一歩前に出る。
『いやあなたね。そんなピーキーな応用技術、まず私に相談しなさい』
『神嫌いのお前に神の力を利用した技術を開発させるのも気が引けてな。できるところは自分で何とかしようとしたまでだよ』
アーチャーさんのツッコミも、宮白は苦笑交じりにスルーした。
どことなくふらふらしながらも、宮白はしっかりと地面を踏みしめてサイラオーグさんへと一歩一歩迫る。
そんな時、サイラオーグさん側から大声が上がった。
『さ、さささサイラオーグさま!! アレを使ってください!! アアアアレなら勝算だって十分にあります!!』
スパロとか言ってた子が大声を張り上げる。
・・・え、サイラオーグさんってまだ隠し玉あったの!?
だけど、サイラオーグさんは声を張り上げてそれを否定する。
『断る! アレは冥界の危機に使うと決めたものだ!! 俺はこの身一つでこの男と戦うのだ!!』
怒っている感じでサイラオーグさんはそう言い放ち、そして静かに構えを取る。
『今この場で、あの力を使ってどうなると―』
『く・・・くっくっくっくっく』
・・・宮白がサイラオーグさんを遮るかのように嗤いはじめた。
すいません怖いんですけど親友!?
『はっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは』
ああ、俺は付き合いが長いからよくわかる。
あれは―
『ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッッ!!!』
大声で笑いながら宮白はラジカセを取り出してスイッチを押す。
―ダダンダンダダン! ダダンダンダダン! チャララ~チャ~ララ~・・・
「先生宮白止めて!! アレマジで怒ってる時のテーマソング!!」
やばいやばいやばい!! アレは本気でヤバイ!!
かなりハイレベルで怒ってらっしゃる!!
『ふ・・・ざけんなのこの才能ゼロの筋肉達磨が!!』
一瞬で迫ると、サイラオーグさんの攻撃を完璧身無視してその顔面に全力のパンチを叩き込んだ!!
うっわ戦術完璧に無視だ。アレはプッツンしきってるぞ。
『こっちにルール違反の武装能力使用を要請しておいて、そっちは実戦用の能力出し惜しみだ? いい度胸してんじゃねえか、ああ!?』
しかも再び圧倒している!?
散々殴りつけた後、こめかみに後ろ回し蹴りと叩き込んで吹っ飛ばしてから、光の槍を展開して投げつけようとして、かろうじてブレーキをかけて踏みとどまった。
『耐えろ・・・耐えろ俺! この手加減野郎にこっちも本気を出してやる必要は・・・ない!』
あ、我に返った。
そのあとマジでぜえはあいいながら息を整えていたが、宮白は思いっきり中指を突き立てた。
『てめえそんなんでイッセーに勝とうとかふざけんじゃねえぞコラ!! アーチャーの技術超えようとか舐めてんじゃねえぞコラ!! 俺の親友と相棒馬鹿にすんのもいい加減にしろクソ野郎!!』
マジな怒りを込めた宮白の叫びに応えるように、サイラオーグさんはゆっくりと立ち上がる。
相当ダメージが入っているのかその動きはゆっくりだったが、その視線にはまだ力が残っていた。
『・・・すまなかった。確かに相手に全力を求めておいて、こちらが力を出し惜しみするなど無礼以外の何物でもない』
一呼吸した後、サイラオーグさんの力が爆発的に上昇した。
いや、これはパワーアップしたんじゃない・・・。
『まあ、正直予想はしていた』
静かに、宮白は冷静さを取り戻してそう告げる。
『久遠があそこまで大暴れした以上、気の運用を狙うのは当然のことだろう。アザゼルの話では純粋な闘気を操るのは珍しいようだし、歴史ある技術として活用されいてる
『そうだ。わかりやすく研鑽方法を示してくれた彼らのおかげで、俺は新たな高みへと至ることができた』
神気を極限まで高める宮白と、闘気を極限まで高めるサイラオーグさんが、語り合いながら一歩一歩前に近づいていく。
『さあ、俺は文字通り俺が出せるすべてを今出したぞ? そちらも出し惜しみをするのは失礼だと思わないか?』
『それを言われると返す言葉もないな。・・・出し惜しみなしなら言いわけ保険も必要ないか』
サイラオーグさんの言葉に応え、宮白は大量の水と聖剣と呼び出す。
「ついに、あれを抜くか」
その聖剣をみて木場が目を見開いた。
「木場が作ったのか? あれ、一体どんな聖剣なんだ?」
「
・・・へ?
「宮白くんがヴェネラナ様の協力をもらって開発した、以前から研究中だった対サイラオーグ氏用の秘密兵器さ」
なに作っちゃってんの宮白!?
「まあ、アーチャーさんは協力してないからそこまで出力は高くないんだけどね。せいぜい普通の聖魔剣と同等程度の効果しかないさ」
その聖魔剣ってエクスカリバーと互角じゃありませんでしたっけ!?
『・・・ちなみに聖水もバアル家用限定特化型だ。いずれは各種上級悪魔専用の聖水を作ってみたいと思っている』
『面白いものを作ってくれる。ああ、それを超えてこその勝利だとも・・・!』
不敵な笑みを浮かべているであろう宮白の言葉に、サイラオーグさんはさらに闘志を高めている。
どこまで対サイラオーグさん用の準備整えてたんだよ、あいつ。
『・・・補足すると、黒魔術などの呪術を参考にしたブースト作用を参考にして特攻作用を作り上げたものよ』
『『聖』剣や『聖』水に黒魔術掛け合わせるとか、あいつの発想は頭おかしいレベルだな。外装の聖剣といい時々突拍子もない発想出すからビビる』
アーチャーさんの補足説明に、アザゼル先生が割と本気で呆れていた。
うん、俺もちょっとツッコミ入れたくなった。
そして、俺たちがそんなことをしている間に二人の距離は縮まっていた。
どっちの攻撃も届く距離で、2人は正面から向かい合う。
『・・・この一戦、死戦と決めた。死んでも恨むなよ、宮白兵夜』
『こっちのセリフだミスター。勢い余って浄化されても責任は取らないのでそのつもりで』
静かに戦意を高め、2人は一瞬静かになる。
誰もが何も言えず、かたずをのんで見守る中、2人は同時に攻撃を放とうとし―
『―さて、スパナとってくれスパナ』
そんな意味不明なセリフとともに、俺たちの周りの空間が一気にゆがんだ。
Side Out
いいところで邪魔が入りました!!
いや、この章ってうまい具合にオリジナリティを出すのが難しいんですよね。マジで。
だから何とか独自色を出そうと頭をひねった結果こんなことになりました。