ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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筆のノリがよかったので本日は二度掲載!


第156話

 

 戦場となるフィールドは、シンプルなコロッセオだった。

 

 下手なトラップを仕掛けることもできない、ある意味不利な地形だろう。

 

 ・・・まあ、自分でもいろいろと無茶を言った自覚はあるし、ちょっとリスクがでかいとも思っている。

 

 間違いなくよくて賛否両論の展開だろう。それは仕方がない。

 

 だが、それでもこの試合だけは一対一でやりたかった。

 

 この武装は、レーティングゲームで使っていいような武装ではない。

 

 あくまで実戦を視野に入れ、サーヴァントと戦うことを前提にし、同格の相手と戦うことを考慮に入れてない武装。それが、偽・外装の聖剣(フェイク・エクスカリバー・パワードスーツ)だ。

 

 それを、あろうことかあの男はレーティングゲームで試合したいと言い放った。

 

 ・・・正直に言おう。腹が立った。

 

 彼女が作り上げた、試合で使ってはいけない力を持った武装を、それを使った上で倒すといい放ったのだ。

 

 俺はともかく、彼女を舐めるなよサイラオーグ・バアル。

 

 俺の相棒であるアーチャーの矜持を傷つけるような物言い、断固反省させてやる・・・っ!

 

「・・・いい目をしている。確かに、俺をこの試合で倒すつもりで、それだけの策を弄しているのだろう」

 

 静かに、しかし怒りを見せてサイラオーグは一歩前に踏み出した。

 

「だが、俺の眷属を愚弄した罪は償ってもらうぞ」

 

 言った瞬間、奴の姿が掻き消えた。

 

 なるほど確かに、これは反応できないだろう。

 

 ・・・今までの俺ならな。

 

「舐めるな」

 

 真正面から現れたサイラオーグの拳を、俺は回し受けの要領で受け流す。

 

 同時に一歩踏み込み、カウンターの一撃を叩き込んだ。

 

『これは意外! 先制攻撃は宮白選手!? カウンターが完全に決ま・・・った?』

 

 実況が疑問形になるのも仕方がない。

 

 何しろ、俺の攻撃は効いていないのだから。

 

「動きは速い。だが、それだけだな」

 

 静かに、そうはっきりとサイラオーグは言い放つ。

 

 一応破壊の聖剣の力全振りでいれたんだが、それでも通用しないか。

 

 さすが戦車に昇格したイッセーですら実力を封印して優位に動くだけのことはある。

 

「この程度なら俺の眷属は皆勝てるぞ。自身の過信を嘆くといい」

 

 肩すかしを喰らって腹が立ったのか、かなりマジギレしている様子だ。

 

 まあ、破壊の聖剣使ってこの攻撃力なら仕方がないか。怒りもする。

 

 仕方がないから―

 

「ミスター。実は俺・・・」

 

 どうしようもないから―

 

「・・・得意なのは祝福(ブレッシング)なんだ」

 

 ―本気を出そう。

 

 出力の大半を祝福に回し、当たった部分にオーラを加える。

 

 奴の攻撃が入る直前、その出力で弾き飛ばした。

 

 くらったサイラオーグは十メートルぐらい飛ばされるが、中で身をひねって素早く着地する。

 

 だが、その頬は聖なるオーラで焼け付いていた。

 

 ・・・よし、攻撃は届くか。

 

「過信を嘆くのはアンタの方だ。俺はともかく偽聖剣を舐めるなよ?」

 

 こいつはエクスカリバーとしての機能に限定すればオリジナルには確かに劣る。それは認めよう。事実だ。

 

 だが、そのかわり何度も改造してかなり改良されている。

 

 防毒機能はついている。水中でも活動可能。システムの応用で宇宙服としても運用できる。あと空調機能も付けてもらったりしている。気配遮断機能も付いているので、透明や夢幻を使えば隠密や諜報にも使うことができる。

 

 偽物であるがゆえに本物にない力を持ったのがこの武装。多機能性ならオリジナルを凌駕する。

 

「ほかのオプションは使わない。痛覚干渉も使わない」

 

 タイミングはつかめた。迎撃は完璧に間に合わせる自信がある。

 

「この戦いに言い訳は使わせない。負けたのは偽聖剣以外の要素があったからだ。痛みを無視できたので我慢比べて負けたんだ。・・・そんな言い訳抜きで、『神代の魔術師の傑作を舐めプして全国ネットの注目試合を初戦で負けた』という大恥を、バラエティ番組のネタとして提供してやる!」

 

 油断はしないが容赦もしない。

 

「・・・叩き潰すっ」

 

「・・・面白いっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、誰もが予想外の展開だったろう。

 

 シトリーとのレーティングゲームを見たことがある者なら、誰もが宮白兵夜は策を弄するタイプだと知るだろう。

 

 グラシャラボラスとのレーティングゲームを見たことがある者なら、サイラオーグこそ正面突破の名を体現するものだと知るだろう。

 

 ゆえに、この戦いは透明と夢幻と擬態を最大限に生かして翻弄する宮白兵夜に、サイラオーグが正面からどうやって打破するかという展開を予想するはずだ。

 

 だが、現実は違う。

 

「「おおおおおおおおおおっ!!」」

 

 真正面から、2人が激突して拮抗している。

 

 その光景を見て、誰もが熱狂していた。

 

『これはいい意味で予想外!! 正面衝突、正面衝突です!! 鍛え抜かれた肉体と、鎧を生かした聖なるオーラの真正面からのぶつかり合いだぁあああっ!!』

 

 実況が盛り上げるなか、宮白兵夜はサイラオーグバアルと真正面からぶつかり合った。

 

 圧倒的なまでの身体能力差。若手において足下に及ぶ者すらいないそのパワーを発揮するサイラオーグに対し、自身が最も得手とする聖なるオーラを高めてぶつけるという、シンプルな方法で拮抗しているのが宮白兵夜。

 

 悪魔の天敵ともいえる聖剣の真骨頂。その絶大なまでの相性差で、宮白兵夜は圧倒的な出力差を覆す。

 

 悪魔でありながら聖剣使いであるという自身の特性を最大限発揮し、あえて策を弄せず真正面からの正面勝負。

 

 そのわかりやすい接戦に、観客は文字通り湧き上がる。

 

 ・・・この試合を見ているレーティングゲームに一家言ある者は、皆、宮白兵夜はサイラオーグに負けると踏んでいただろう。

 

 サイラオーグの戦闘スタイルは完成されて隙がない。そして相手を舐めることなく、正面から評価して正面から叩き潰す。

 

 それを可能とする鍛え上げられた肉体は、ハッキリ言って小細工など文字通り粉砕するであろうし、シンプルな正面勝負でこそ真価を発揮する。

 

 正面から勝負しないものを無理やり同じ土俵へと引きずり込みかねないその能力は、策士にとって天敵といっても過言ではない。

 

 戦略を戦術でひっくり返しうる切り札。一騎当千の具現だった。

 

 しかし、それを真正面から拮抗に持ち込むことに成功している。

 

 小細工が通用しないのなら、正面から勝負するための細工を弄する。

 

 それこそが、宮白兵夜がサイラオーグ・バアルを打倒するための作戦だった。

 

 強大な悪魔に対し、強大な天敵の力を持って、正面から相手を撃破する。

 

 その戦闘は、まさに成功していた。

 

 サイラオーグの攻撃は収束させたオーラによって受け止められ、聖なるオーラを収束した一撃は、サイラオーグの体を確実に焼いていく。

 

 今、場の流れは宮白兵夜が支配していた。

 

「・・・見事だ。口だけではないその戦いぶり、敬意を表する」

 

 殴り合いながら、サイラオーグは歯を剥いて笑う。

 

 今、目の前の敵を自分好みの相手だと確信しての笑みだった。

 

「いいだろう。その戦いぶりに敬意を表して、我が好敵手と認めよう!!」

 

 次の瞬間、サイラオーグの四肢に文様が浮かび、そして消え去った。

 

 彼の力を封じる封印の解除。それが意味するのは、彼の力がフルに発揮されるということだ。

 

 次の瞬間、兵夜が弾き飛ばされコロシアムの壁面へとたたきつけられる。

 

 轟音とともに瓦礫が吹き飛び、土煙が浮かび上がる。

 

『これは決まったぁ! サイラオーグ選手の本領発揮に、兵夜選手耐え切れず弾き飛ばされる!!』

 

『あの状態のサイラオーグ選手の近接戦闘能力は最上級悪魔でも戦闘スタイル次第では上回れますからね。偽聖剣の想定対象は上級の上からを相手としているようですし、さすがに出力差で上回られたのでしょう』

 

 解説役として選ばれた、サイラオーグ陣営のコーチ役であるディハウザー・ベリアルがそう評する。

 

 その光景に誰もが息をのみ、その言葉が正しいことを理解する。

 

「宮白!!」

 

「兵夜!!」

 

 陣営で見守っていたイッセーとリアスが声を挙げ、ほかの仲間も思わず目を背けそうになる。

 

 それほどまでの明確な一撃で、思わず負けを確信するような吹き飛ばされ方だった。

 

 偽聖剣の性能は、パワーと耐久力では赤龍帝の鎧に劣る。そして、赤龍帝の鎧でもただでは済まないような一撃だった。

 

 誰もが宮白兵夜の敗北を脳裏に浮かべ、しかし対峙しているサイラオーグだけは思わなかった。

 

「・・・時間を稼ぐつもりなら構わないが、油断を誘えると思っているのなら無駄だといっておこう」

 

 静かに構えを取り、一切の油断をせずに鋭い視線を向ける。

 

 その右手は、確かに赤く染まっていた。

 

 そして、それは血ではなく自身の炎症によるものだった。

 

「攻撃に対して対処そのものは間に合っていた。・・・まだ動けるだろう?」

 

「別に時間稼ぎのつもりはない。・・・単純に激痛にもだえてただけだ」

 

 煙の中からある意味情けない返答が返ってくるが、それ以上におかしな事態が発生した。

 

 油断なく構えるサイラオーグの体から、煙が発生し始める。

 

「これは・・・っ!」

 

 驚愕するサイラオーグ以上に、その戦闘をモニタリングしている人々が驚愕する。

 

 モニター越しでもわかるその気配は、明らかに浄化のそれだった。

 

『こ、これは一体!? 解析班の送ってきた情報によると、オーラの質が急激に変化しただけではなく、出力が大幅に上昇している!!』

 

 観客がかたずをのむ中、宮白兵夜は姿を現した。

 

 そして、その姿は明らかに何かが変わっていた。

 

 今までの強い悪魔とは何かが違う、全く別の存在を意識させる力が放たれる。

 

「何を驚く? 祝福の聖剣は神聖な力を強化する聖剣だぞ?」

 

 正面からサイラオーグを見据え、そして兵夜は強者の視点でものを言った。

 

「ちゃんと調整を施せば、神の力を活性化できてもなにもおかしくないだろう?」

 

 







エクスカリバーは使い手で相性があるのは原作でも出てますが、兵夜の最も得意とするのは祝福にすることにしました。そこ、こいつ悪魔だろとかいわない。



・・・最も得意なのは明言してなかったと思うがうっかり書いてないか心配なので後で見直そう。




そして土壇場で何とかしやがりましたこのコンビ。

ことごとく雑魚いといわれてきた男、宮白兵夜。神格化制御で一気に食い込んでまいりました。特に祝福を応用する都合上、対悪魔によるブーストは上昇しっぱなし!

自分でも思うがとことん対悪魔に特化してるなこの男。

なんというかアイテム使って変身する仮面ライダー的な戦闘能力強化になっております。




とはいえそこまでうまい話でも無かったり。その辺についてはまた次回。

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