ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

155 / 361
グレモリーVSバアル、開戦です!!

 

Other Side

 

「・・・いろいろとファックな問題が出てきたが、大丈夫かね?」

 

 そんなことをぼやきつつ、青野小雪はチケットに書かれている自分たちの席を探して歩いていた。

 

 リアス・グレモリーとサイラオーグ・バアルのレーティングゲームが始まるまであとわずか。小雪たちはいろいろと用意しながら観戦準備を整えている。

 

 すでにビールもお菓子も大量に買い込み、準備は万端だ。

 

 因みに、持ち込みOKなのにもかかわらずあえて値段が高くなっているご当地価格の店で買って現地の経済活性化に光景する当たり、小雪は本当に人がよろしい。

 

 しかもツレの分も自分が払っているのが彼女の人徳だろう。

 

「実質その通りですね。兵夜さまはいろいろと動いてましたけど、言ってはなんですがうっかり癖があるのでしんぱいです」

 

「だよねー。・・・策士としてはめちゃくちゃ優秀なくせにアレのせいで台無しなんだよご主人は。・・・よく今まで死ななかったよな」

 

 いろいろぞっこんなベルでもツッコミを入れざるを得ず、サミーマモードでナツミもぼやく。

 

 宮白兵夜は間違いなくグレモリー眷属の中でも異才である。

 

 言ってはなんだがパワー重視の戦闘要員がメインのグレモリー眷属において、テクニック重視の政治方面を得意とするそのポテンシャルは、ある意味でグレモリー眷属の穴を支えているといってもいい。

 

 テクニックだけなら佑斗もいるが、政治方面において彼の能力は間違いなく傑出している。と、言うより同年代においては規格外のレベルだろう。

 

 そこに聖剣因子や魔術回路などをフルに導入し、あらゆる手段をもってして足を引っ張らないどころかかなりの戦果を挙げるあたり、イッセーが表のエースで佑斗が影のエースなら、彼は総合的に見て裏のエースといっても過言かもしれない。

 

 実は旧魔王派幹部のシャルバ撃破に大貢献したギャスパーは真のエースを名乗っていいのではないかと小雪は思っている。男性陣は男の矜持をしっかり維持しているようで何よりだ。

 

 特に作戦立案能力はグレモリー眷属において重要だろう。

 

 土壇場で頭に血が上った状態ですら、相手の戦力を冷静に見極めて次の戦闘での勝利の布石を打っておく手腕。場数を踏んでいる現代都市関係での戦闘での対処の仕方。相手の戦力を正確に把握し、優勢な相手をぶつける戦術眼。戦闘に特化しているグレモリー眷属において、間違いなく貴重な戦術の祭を持った人物だろう。

 

 惜しむらくは、強化武装の性能を高めることにこだわった結果、レーティングゲームでの使用が禁止されるような反則技術まで使われていることだろう。

 

 だが、それはこの試合においては関係ない。

 

 サイラオーグ・バアルの意向により、この試合に限り戦闘能力を低下させるようなルール制限は一切取り払われている。

 

 イッセーの変態技も兵夜の反則武装も使用可能。本来ならあり得ないような破格の待遇である。

 

 戦闘に関してもシンプルなルールになると思われる。ましてやサイラオーグの身上から言ってあまり搦め手には走らないであろうことは明白。

 

 一度共闘したことがあるから、小雪もナツミもベルもよくわかっている。

 

 サイラオーグ・バアルという男はどこまでも王道を走る男だ。小細工はあくまで添え物程度で何よりその拳で生涯を破壊することを選ぶ。

 

 兵夜はそこを躊躇なくつきそうな極悪なところがあるが、こちらも基本的には王道を通るリアス・グレモリーが主にいるのである。意向を汲んでひどいハメ手は避けるであろう。

 

「で、ファックなことに結局あいての兵士についてはわからない、と」

 

「みたいだな。俺様の経験上、あれはサイラオーグじゃなくてアイツの上役が何かたくらんでるんじゃねえか?」

 

 最大の懸念事項はそこだろう。

 

 スパロ・ヴァプアルともう一人の兵士の戦闘能力が未知数である。これが懸念事項だ。

 

 スパロは戦闘向きの性格でないことはすでに分かっているのでまあこれは仕方がない。サイラオーグなら要所要所での戦闘に参加させる程度にするだろうし、どちらにしてもサポート向きだろう。

 

 だが、問題はもう一人の兵士。

 

 仮面で素顔を隠している。名前も公表されていない。先日のインタビューでもサイラオーグは説明を避けた。

 

 ・・・共闘した三人だからこそ理解できる。サイラオーグのやり口ではないだろう。

 

「バアル家は実質大王家であることのおごりによる血統主義にして魔力主義。サイラオーグ・バアルはある意味厄介者でしょうからね。関係は実質微妙でしょう」

 

 ベルの言う通り、サイラオーグの存在はバアル家にしてみては厄介者だろう。

 

 高い魔力による行動をよしとする古き名門の家系において、魔力すら持っていない異端中の異端がサイラオーグ・バアルである。

 

 ましてや、彼が標ぼうするのは実力主義社会。結果として高い能力を持つのなら、それ相応の地位につくことが誰でもできる世界である。

 

 血にこだわるバアル本家の方針とは真っ向から対立するだろう。その状況下で次期当主となった彼の実力には恐れ入る。

 

「カッハハハ! 面倒なもんにこだわるお偉いさんよりかは話が分かるじゃねえか。ご主人にとっても好都合だし、さっさと当主になってくれないもんかねぇ」

 

「ファックなまでに同意見だ。・・・まあ、今のところはそううまく行ってないわけだがな」

 

 ナツミに同意しながらも、小雪はそううまくいかないことを理解している。

 

 大王派は革新的な元魔王側の対立派閥としては最有力だ。

 

 おそらく、その時期筆頭となるにふさわしい人物の選定も行われているだろう。

 

 その波に対抗するためにも、サイラオーグ・バアルはこの注目集める一戦を乗り越える必要がある。

 

 とはいえ、個人的にはグレモリー眷属に勝ってほしいと思ってしまうのが人情である。

 

「なんていうか、本当にファックにままならねーもんだな」

 

「そりゃまあ愛する男に勝ってほしいのは女の性だからなぁ」

 

「兵夜さまの勝利をなんだかんだで願ってくれて、実質うれしいです」

 

「あーまーそうだ・・・な」

 

 思わず同意してしまってから、小雪ははっと我に返ってしまった。

 

 いま、自分は公衆の面前で何を発言した?

 

「実質小雪ちゃんも兵夜さまが大好きでよかったです」

 

「しかたねえだろ。小雪はツンデレだからなぁ」

 

 振り返った先にはニコニコしているベルとニヤニヤしているナツミ《サミーマ》の姿。

 

 小雪はその姿を確認して、しかし両手がふさがっていることに気づく。

 

 サミーマはそれがわかっているからニヤニヤしているのだろう。コレなら自分がダメージを受けることはないと。

 

 その余裕っぷりとみて、ただでさえ頭に血が上っているのにさらに血が上った。

 

「・・・ピンポイント空力使い発動」

 

「ヘブッ!?」

 

 ・・・今の小雪は遠隔攻撃ができるのでその安心は勘違いだと、小雪は身をもって教えさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 佑斗Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レーティングゲームの試合形式はダイス・フィギュア。王が一つずつサイコロを振り、そこから出た目に応じた駒価値の人物だけが戦闘を行うレーティングゲームのルールの一つ。

 

 そして、サイラオーグ氏の駒価値は十二。

 

 彼が破格の戦闘能力を持っていることを思い知らされる。はたして、僕らのメンバーでそれと同じ駒価値に人数を合わせても、太刀打ちできるものがどれぐらいいるか。

 

 できれば彼相手には総力戦を行いたいところだがそうもいかないようだ。

 

 そして、目の前で部長がダイスを投げる。

 

 モニターに転がるダイスの姿が映り、そしてその数がわかる。

 

 双方共に、六。合計は十二。

 

 いきなり最高の数が出てくるとは思わなかった。

 

 とはいえ、観客のイメージなども考えるならいきなり氏が出てくることはないだろう。

 

 想定するならば戦車二名といった複数名。もしくは駒価値七といわれている例の兵士か。

 

 部長や僕たちが出すメンバーを決めようと、一度集まろうとする中、しかし1人だけ前に出るものがいた。

 

「・・・悪い」

 

 宮白くんが、それだけ言うと一人で前に出る。

 

 その光景はモニターにも映し出され、観客たちの注目を集めていた。

 

 全員の注目を集める中、宮白くんは堂々とそれを受け入れる。

 

「・・・あえて不敬な物言いをしよう、サイラオーグ・バアル」

 

 名指しで氏を指定し、彼は指を突きつける。

 

一対一(サシ)で勝負してもらう」

 

 え?

 

 いや、一対、一?

 

『『『『『『『『『『ええええええええええっ!?』』』』』』』』』』

 

 観客から驚愕の声が響き渡る。

 

 当然、イッセーくんやギャスパーくんも大きな声で驚いていた。

 

 当然だ。レーティングゲームの序盤から、いくら出せるとはいえあえて氏を名指しで指名し、しかも一対一だなんて!!

 

「兵夜!? どういうつもり!?」

 

 部長が叱責の声を挙げるが、宮白くんは氏に視線を向けたまま、鋭くなった表情を向ける。

 

「独断専行謝罪します。・・・ですが、いくらなんでもこれは卑怯すぎる」

 

 宮白くんは偽聖剣を手にもつと、それを皆に見えるように掲げる。

 

「・・・この武装はあなたから投入の許可を得たものだ。それに答えないようではむしろこちらの度量がうかがわれるが、しかしただ使うのは明らかに道理に反する」

 

『ほう?』

 

 氏がそう返すと、宮白くんは苦笑する。

 

「この武装は最初からレーティングゲームでは使用できない反則技術を使用して、圧倒的強者を倒すために作り上げたものだ。あなたの要望に応えるためとは言え、これを使った上でさらに味方と協力して運用したり、駒価値の近い相手に使うなど、卑劣以外の何物でもない。いくらなんでも俺にも意地がある」

 

 そういうと、宮白くんははっきりと断言した。

 

「ゆえに、最強のアンタを一対一(サシ)で倒す以外に、この力を使っていいはずがない。そうでなければ観客(オーディエンス)にも申し訳がない。・・・違うか?」

 

『・・その言葉、俺の眷属たちに対する侮辱と受け取ってもいいが?』

 

 かすかに怒気をにじませながら、氏はそう尋ねる。

 

 確かに、傲慢といっても過言ではないだろう。

 

 氏以外の相手と戦っても勝負にならない。彼はそういっているのだ。

 

「その言葉こそ、俺の英雄(サーヴァント)に対する侮辱だろう?」

 

 宮白くんはそういい返す。

 

「俺はともかくあいつの作ったこの武装が、一介の眷属悪魔風情と渡り合う程度の武装であるなど、彼女に対する愚弄に過ぎない」

 

 静かに、威圧感すら見せつけて、宮白くんは言い放つ。

 

「宣言しよう。このレーティングゲーム。俺が全力のあなたを倒して・・・一試合で終わらせる」

 

 静かに、しかし心からの決意を秘めて宮白くんは宣言した。

 

 この大観衆の中、初手からここまでの大言。

 

 試合の結果次第では、彼の評判は地に落ちる。

 

 宮白くんがそこまでのリスクの把握をできないわけがない。

 

 わかったうえで、しかしそれを宣言したのだ。

 

「史上最高の赤龍帝になるであろう男、兵藤一誠を倒したいというのならば、まず俺を一対一で叩きのめせるようになってから来てもらおうか!!」

 

 全てのリスクを承知のうえで、しかし彼はは決意した。

 

 アーチャーさんの作り上げた武装の数々を振るう相手は、サイラオーグ・バアル以外にないと信じるから。

 

「俺はともかく彼女の作った武装を馬鹿にするなよ!! 持てるすべてを使ってでも、俺はあんたを叩きのめす!!」

 

 この、全世界が注目している試合で、彼は不退転の決意を固めたのだ。

 

「あんたが全力の俺たちを相手にしたいように、俺もこの武装を使うにふさわしい戦いを所望する!! さあ、神代の魔術師の英知の結晶を前に、次期大王にして次期魔王を狙うものはどうこたえる!!」

 

『・・・そこを突かれては、俺も応えないわけにはいかないだろう』

 

 静かに、氏が一歩前に出た。

 

『リアス。お前はどうする?』

 

「・・・仕方がないわね。ここまで来て撤回するわけにもいかないし、この子の想いもわからなくはないわ」

 

 部長は心底頭痛をこらえながらも、苦笑を浮かべて宮白くんを見る。

 

「兵夜! 言ったからには勝ってきなさい!! 負けたら承知しないわよ!!」

 

「当然!! 1ラウンドでケリをつけます!!」

 

 偽聖剣を身にまといながら、宮白くんが宣言した。

 

『こ、これはいきなりとんでもない試合になってきました!! 第一試合から指名されてサイラオーグ選手が参戦!! 前代未聞の展開になります!!』

 

 アナウンサーも戸惑いながら、しかし実況として場を盛り上げる。

 

『第一試合、サイラオーグ選手対宮白兵夜選手!! 駒価値差11の、前代未聞の戦闘です!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 

 




こういう時、久遠は別行動にせざるを得ないので面倒だ。と、今更ながらにちょっと後悔。





そして兵夜が割と本気でマジギレしました。

結構切れやすいタイプな兵夜ですが、それでも「相手が罵倒してくることを想定する」ことによってあれでも結構我慢指定るタイプだったり。

今回、バカにしてこないだろうと予測していた人物からの無自覚舐めプ発言に割と本気でブチギレてた上に、マジな勝算をつかめたことで暴走しました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。