ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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イッセー、ピンチです!

 深夜の駒王学園。悪魔が契約を遂行するための時間帯。

 

 俺は、駒王学園に足を運んでいた。

 

 深夜の学校って、やっぱ雰囲気が違うな。

 

 よく怪談の舞台になるだけあって、どこか奇妙な違和感を感じる。

 

 しかも、本当に悪魔がいるって言うんだから雰囲気抜群。

 

 しっかし、昨日の匙との話は目から鱗だった。

 

 神器の練習がてら話を聞いてみたんだが、どうも転生悪魔といってもいろいろと種類があるらしい。

 

 その昔、悪魔は多くの軍勢を率いて戦うのが一般的だったらしい。

 

 だが、大昔の三つ巴の争いで悪魔はその数の大半を減らしてしまった。軍勢を形成するなど冗談でも無理なぐらいだ。

 

 それによって転生悪魔と言う制度を作ることになったのだが、そこで悪魔は一工夫を加えることにしたらしい。

 

 それが悪魔の駒(イーヴィル・ピース)だ。

 

 王である爵位持ちを中心とする、チェスを模した悪魔の駒。

 

 すなわち、女王、騎士、戦車、僧侶、兵士。

 

 人間からの転生者が多く、当時悪魔の間でチェスが流行っていたこともあって造られたそれは、それぞれの駒に合わせた特性が付加された。

 

 スピードの騎士、魔力の僧侶にパワー&ガードの戦車。

 

 それらすべてを組み合わせた女王。

 

 そして、ポテンシャル次第でそれらに化ける兵士。

 

 それらによって構成される、少数精鋭の悪魔の軍団。

 

 それは、悪魔の間で人気と成り、模擬戦であるレーディングゲームを開催するにも至った。

 

 まだ若いので匙の王は参加したことはないそうだ。おそらくだが、グレモリー先輩もそうなんだろう。

 

 いつかはイッセーも参戦することになるのだろうか。

 

 なぜだろう、女悪魔にスケベな視線を向けているイッセーの姿が目に映るようだ。

 

 そんな風に歩いていると、懐に入れた携帯が鳴り響く。

 

 歩きながら表示を見れば、それは俺が仕事する時に知り合った男の一人だ。

 

 こんな時間に何の用だ?

 

「もしもし? こんな時間に何の用だ?」

 

『ああ、サブのやつに何かあったみたいなんだが、アンタ知らないか?』

 

 たしか、この学園の近くに住んでるとかいう奴だったな。

 

「いや、知らない。何かあったのか?」

 

『それがあいつ、これから悪魔を召喚するからこっち来いとか言ってやがったんだよ』

 

 ・・・何考えてんだアイツ。

 

 それだけ言ったってキチガイ扱いされるだけに決まってるだろうが。

 

 と、いうよりコレどうしたらいいんだ。

 

 本当にいるから行けばどうだとか言うべきだろうか。

 

『そしたらそいつ「あれ? 来ないぞ?」とかなんとか言っててよぉ』

 

 前言撤回。ややこしくなりそうだから行かせたらイッセーに悪い。

 

 自転車でいくんだからそりゃ時間はかかるだろう。十中八九イッセーが呼ばれたに違いない。

 

『そしたら今度は宅配便が来たとかで、十分前から切れてんだけど全然つながんないんだ』

 

「なるほどねぇ。ま、もうちょっと待ってみたらいいんじゃねぇの?」

 

 適当に相手をしてから電話を切る。

 

 悪魔召喚を他人に自慢するとか面倒だな。

 

 と、そんな電話をしていたら旧校舎に到着。

 

 手土産のお菓子はちゃんと手に持つビニール袋にもあるし準備OK。

 

 俺は部室の前まで来ると軽くノックした。

 

「すいませーん。宮白ですけどいいですかー」

 

「ええ、入ってらっしゃい」

 

 許可をもらえたのでドアを開けて入室。

 

 見れば、やはりというかなんというか、イッセーだけがいなかった。

 

「イッセーは仕事中ですか先輩?」

 

「ええ。先ほど契約が来て、そちらに向かって行ったわ」

 

 サブ、お前のもとにちゃんと悪魔はやってくるぞ。だから安心して待っていろ。

 

「イッセーに会いに来たのかしら? ごめんなさいね。タイミングが悪かったみたい」

 

「いえ、気にしないでください。・・・あ、これ手土産ですが良ければどうぞ」

 

 外出してるのは大体予想済みだからな。

 

 ま、帰ってくるのを気長に待つか。

 

「粗茶ですが」

 

「あ、すいません姫島先輩」

 

「うふふ。名前で呼んで構いませんわ」

 

 え、いいの?

 

 思わぬ申し出にちょっと戸惑うが、さらに横の塔城も、

 

「私も名前でいいです」

 

 なんてことだ。

 

 学園の有名な女の子たちが、名前でいいだなんて嬉しいこと言ってくれてるぞ。

 

「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいますよ。朱乃先輩、小猫ちゃん」

 

 と、くればだ。

 

 流れからいってグレモリー先輩や木場とも名前で呼ぶ流れか?

 

 ふむ。学園の有名人と名前で呼ぶ関係になるというのはなかなか感慨深いものがあるが・・・。

 

 あくまでイッセーの親友で事情を知っているだけでしかない俺が、そこまで好待遇なのもいかがなものか。

 

 と、そんなことを思った時だ。

 

 ドアが乱暴に開いたかと思ったら、木場があわてた顔で入ってきた。

 

「部長! イッセー君が向かった先に『はぐれ悪魔祓い(エクソシスト)』が!!」

 

「なんですって!?」

 

 悪魔祓い!? 名前からして状況最悪じゃないか。

 

「まずいわね。・・・宮白兵夜君、悪いけど―」

 

「だいたい状況はわかりました。イッセーをお願いします!」

 

 グレモリー先輩はすぐにうなづくと、魔法陣を展開する。

 

 たぶん転移の魔法陣だろう。オカルト研究部全員がそこに集まる。

 

「兵藤くんのことは任せてくれ」

 

「・・・いってきます」

 

「うふふ。大船に乗った気持ちで待っていてください」

 

 すげえぞオカルト研究部。

 

 なんか無駄に頼もしい。

 

「さあ、イッセーを助けに行くわよ!」

 

 そんなグレモリー先輩の掛け声とともに、四人は転移していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正直本気で心配だったが、イッセーはボロボロではあるが無事に帰ってきてくれた。

 

 まさかこの日本で銃創を拝むことになるとは思わなかった。

 

「イッセー! お前大丈夫か」

 

 それでも心配でついそう言ってしまうが、イッセーの表情はつらそうだ。

 

 だが、それは傷によるものではなかった。

 

「俺は大丈夫。でも・・・」

 

 この表情は傷の痛みに耐える奴じゃない。

 

 なんとなくだが、そう思った。

 

 とはいえ、何も説明されていない今の状況じゃどうしようもない。ここはもっと重要なことがある。

 

「グレモリー先輩。悪魔祓いがいるのはわかりましたが、はぐれとはどういうことでしょうか」

 

「悪魔祓いには二通りあるわ」

 

 グレモリー先輩はイッセーの傷を治療しながら答えてくれる。

 

「一つは、神の祝福を受け、神や天使の力を借りて悪魔を滅ぼす正規の悪魔祓いよ」

 

「と、言うことははぐれは違うと?」

 

「ああそうだよ」

 

 俺の疑問に木場が答えてくれる。

 

「悪魔祓いは神の名のもとに行われる聖なる儀式。信徒にとってそれは行為そのものではなく行為によって神のために尽くしているということが生きがいになるんだよ」

 

「ところが、はぐれと呼ばれるような方々はこの行為そのものに生きがいや楽しみを感じるようになった者たちなのです」

 

 朱乃さんが引き継だ説明に、俺はなるほどとうなづいた。

 

 つまりは悪魔限定の快楽殺人鬼。

 

 戦争とかと同じだな。あくまで目的のために殺しをするのであって、それを楽しむようになっちゃただの危険人物だ。

 

「そういうのって向こうで取り締まったりしないんですか?」

 

「基本的に教会側も追放したり裏で始末したりするのですが、それらを逃れるエクソシストも少なからず存在するのですわ」

 

「朱乃の言うとおり。そして、そういう輩は堕天使のもとに走るの」

 

 堕天使。

 

 グレモリー先輩の言葉に、俺は退治した堕天使を思い出した。

 

 そういえば、あいつらも光を使ってたな。

 

「堕天使も、天使と同じように光の力を与えることができる。大昔の争いで悪魔と同じように数を減らした堕天使たちは、私達と同じように下僕を集めることにしたの」

 

 またわかりやすい展開だな。

 

「なるほどね。悪魔を殺したくてたまらない外道エクソシストと―」

 

「悪魔が邪魔な堕天使がは利害が一致したってことですか?」

 

 俺の言葉をイッセーが引き継ぎ、グレモリー先輩はうなづいてくれた。

 

「そういうこと。悪魔狩りにはまり込んだ危険なエクソシストが堕天使の力を借りて、悪魔と悪魔を召喚する人間に牙をむいたの。さっきの少年神父は典型的なはぐれ悪魔祓いね。リミッターが外れている分正規の悪魔祓いも危険だわ。イッセーが言った教会は、天使ではなく堕天使が集まっているところだったようね」

 

 面倒な話だ。悪魔になるとそんな危険な連中の相手をしなくてはいけなくなるだなんて。

 

 ・・・ってちょっと待て。

 

「おま・・・イッセー!? 悪魔が教会って何考えてんだ!」

 

 思わず叫んでしまった。

 

 至近距離だったのでイッセーが顔をしかめるが、そんなことを言っている場合ではない。

 

「悪魔と天使が敵対しているだなんて、俺でも一瞬でわかるぞ。何考えてんだよお前は!? 死ぬの? 死にたいの!?」

 

「み、宮白ストップ! 声が大きい! 傷に響く!!」

 

「・・・自業自得」

 

 もっといってやって小猫ちゃん!

 

 だが、イッセーはハッとすると表情を真剣なものに変える。

 

「そうだアーシア! 部長、俺はあのアーシアって子を・・・」

 

「無理よ」

 

 イッセーの言葉をグレモリー先輩が遮る。

 

「あなたは悪魔。彼女は堕天使の僕。相いれない存在同士よ。あの子を救うってことは堕天使を敵に回すということ。そうなれば、私達も堕天使と戦わなければならないわ」

 

 その言葉に、イッセーは苦い顔で黙りこむ。

 

 きっと、こいつの中でそのアーシアってこと先輩達を天秤にかけているんだろう。

 

 だけど、たぶんそれができるほどこいつは大人じゃない。

 

 俺は、この会話には割って入ろうとはしなかった。いや、なにも事情を知らない俺に、割って入る資格はない。

 

 だけど・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・よし。これでだいぶ楽になるだろ」

 

 次の日、俺はイッセーの傷に治癒魔術をかけていた。

 

 最も、完全に治すつもりは俺にはない。

 

 悪魔の回復力でも一日で完治するということはないだろう。もし気づかれれば怪しまれるし、イッセーに隠し通せるとも思えない。間違いなく俺の正体がばれてしまう。

 

 なので、ある程度治療したらそのあたりで終了だ。

 

「サンキュー宮白。おかげで助かったぜ」

 

「気にすんな」

 

 ちなみに、今日イッセーは学校を休んでいる。

 

 グレモリー先輩が怪我を心配して悪魔家業を休みにしてくれたらしい。

 

 イッセーも思うところがあるだろうし、学校も休むことにしたようだ。

 

 ちなみに俺は学校にはもちろん行く。

 

 と、言うことで

 

「じゃ、俺は学校いくわ」

 

「ああ。ホントありがとな」

 

 俺はイッセーと別れるとそのまま学校に向かおうとして―

 

「ま、そういうわけにもいかないか」

 

 途中で道をそれた。

 

 ちなみに、事情は既にイッセーに聞いている。

 

 なんでも道に迷っていたシスターを教会まで送って行ったらしい。

 

 あいつらしいというかなんというか。

 

 どうせあいつのことだ。放っておいたら一人で勝手に突っ走ったりする可能性がある。

 

 だったらまぁ・・・やるしかないよな?


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