ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
俺は曹操を前に、偽聖剣を展開する。
「驚いたね。てっきり紫藤イリナを投入するものとばかり思っていたよ」
曹操は聖槍を構えながら、そう言った。
「俺もそう思ったがやめといたよ。あいつまっすぐだから策士相手じゃ不利だろ?」
「なるほど、違いない」
奴はそういって笑うと、聖槍を突きつける。
「―正直、俺は赤龍帝の次に君と戦いたかった。・・・基礎戦闘能力ではグレモリー眷属でも戦闘要員で一番低いくせに、戦果においては赤龍帝に引けを取らないからね」
たしかに、言われてみればそこそこ戦果を挙げているな。
だがまあ、それは褒められたことでもないだろう。
「武装便りの反則技だ。自慢にはならないな」
「そうでもない。銃の打ち方を知れば幼児でも大人を殺しうるのは常識だが、技量がなければ難易度が高いことには違いない。。・・・知恵と武器の開発は人類の力で、それを使いこなしてこそ強者。そういう意味では、君は俺たちの理想形の一つといってもいい」
それゆえに油断はしてくれてない。
正直頭の痛い戦闘になりそうだ。
お互い、確実になんかハメ手を用意してるに決まってるしな。
「「まずは正面から―!」」
お互いに正面から突撃。
突き出される槍を首をひねって交わし、俺はブレードで切りかかる。
奴は槍をまわして石突で受け止めると、そこを支点にして一回転。真後ろから蹴りをたたきつけようとする。
だが、俺は前転してそれを回避。光魔力の槍で攻撃する。
奴は空中で体制をそらしてそれを避けると、今度は槍を伸ばして攻撃する。
それは翼で浮いてかわすが、とたん真下から水流が吹き上がる。
水道管を狙ったか。決定打にはならないが嫌がらせにはなるだろう。
だが、俺には効かない。
触れた瞬間に魔術で操作し、俺はそれを曹操にたたきつける。ちなみに硫酸を入れてダメージを狙っている。
しかし喰らってくれない。奴は聖槍をつかって空中で方向をかえ、槍を短くすることで一気に懐にもぐりこんだ。
装甲の薄いところを狙って膝蹴りが飛ぶ。俺はオーラを収束させてそれを防御。
その瞬間、奴はもう片方の足で組み付いて、力をこめて槍を振り下ろす。
ブレードでそれを受け止めながら、俺は結晶体を転移させ、暴発させる。
感づいた曹操は俺を足場にして距離を取る。
ここまで無言。そして短時間。
・・・やはりお互いにやりづらい。
「いいね! 赤龍帝のほうがやりやすいけど、こういう戦いも望むところだ!」
「言ってろ。お前の弱点は大体見切った」
ああ、こいつには簡単な攻略法が存在する。
俺は素早くイーヴィルバレトを展開すると、躊躇なく発砲する。
曹操は駆けだしてそれをかわすが、しかし一気に距離を取らざるを得なくなった。
「やはりそこを突くか! ああ、想定の範囲内だ!」
曹操もそこは理解していたのか、特に驚くことはない。
曹操の欠点は単純明快。
・・・耐久力が低い。
人間離れした耐久力をもつヘラクレス。防御系神器最高峰のゲオルグ。加護系の聖剣を使った聖剣の群れを使えるジャンヌ。氷の魔剣で障壁を作れるジークフリート。
ほかの連中が楯になる防御方法を持っているのに対し、奴の場合はそれがない。
ゆえに一撃当てれば一気に勝算は上昇する。そして、それならこっちもやりようはある。
ガトリングガン、ショットガン、そして爆発系攻撃。
面制圧の武装などいくらでもある。そして偽聖剣でクロスレンジにも対応できる。
間違いなく、俺が一番有利に対応できるだろう。
火炎放射器とかも持っているし。とりあえず徹底的にばらまくか。
その状況下なら接近戦はできない。
そして俺は直接倒す必要はない。
かみ合いのいい組み合わせにすることはできた。間違いなく有利にやり合える連中だ。
久遠とイッセーがなんか食い下がられているが、それ以外は基本的に優勢に立ち回っている。
そいつらが片付いてからじっくりと数で責めればいい。シンプルな能力だから数でかかれば優勢だろう。
積極的に首を狙う必要はない。この手のタイプは勝ちをあせったら間違いなく付け狙ってくる。
油断は禁物だが余裕は必要だ。
と、言うわけでじっくり足止めに徹させてもらおう。イーヴィルバレトはたくさんあるしな。
「やはり面倒だ! ならこれでどうだ!!」
弾丸をかわしながら、曹操は指を鳴らす。
とたん、例のごとくドラム缶どもが現れた。
「その程度で牽制になるとでも?」
俺はもう片方の手にもイーヴィルバレトを展開して一気に打ち抜く。
この手の雑魚殲滅はもう慣れた。今更不意打ちにはならない。
ゆえに曹操の方に意識を向けた瞬間、それは来た。
ドラム缶の一体が、やけに高速で迫ってきた。
イーヴィルバレトを収束させるが、なぜかあっさり弾き飛ばす。
「なんだと!?」
あわてて回避したが、その瞬間に曹操の姿が消える。
まずい!? 連続のイレギュラーにちょっとパニックになってる!!
とっさに、俺は結晶体を大量に展開し、風の魔術を発生させる。
牽制程度にしかならないが、とにかく思考を落ち着かせることが必要だった。
そして、それは役に立った。
気づいた時には、聖槍の切っ先が偽聖剣の兜部分をかすめていた。
しかも、生身に触れるギリギリの部分。あとちょっとずれていたら、最強の聖槍の聖なるオーラが俺に流れ込んでいただろう。
思わず冷や汗が流れる中、曹操は俺の至近距離で舌打ちする。
「・・・とっさの対応力もそこそこあるね。このコンボならいけるかと思ったんだけど、なめてかかってたな」
今、間違いなく姿を消してなかったか!?
「魔術か!?」
「いや、能力だよ。
不敵な笑顔を浮かべながら、曹操はわずかに距離を取る。
完璧に、槍の間合いだった。
「あまり使い勝手のいい能力ではないけど、一瞬のスキを突けるのならこれは便利だ。・・・それに、君は意外と型にはめやすいからね」
いまだ落ち着ききれてない俺を翻弄しながら、曹操は挑発目的で饒舌に語る。
「イーヴィルバレトの使い勝手がいいせいで、君はオゴボル―あのドラム缶もどきの正式名称さ―の相手をするときは高確率でそれを使う。もし通用しないのが一体紛れ込んでいたら隙を突けると思ってエデンに作ってもらったけど、やはり有効なようだ」
攻撃そのものにも隙がなく、しかも速度も速い。
この野郎、今まで手を抜いてやがったな!!
「さぁて、調子が悪いうちに畳みかけさせてもらおうか!!」
「いえ、もう終わりね」
待っていた声が聞こえてきた。
「・・・アーチャー!!」
真上から急降下してきたのは龍の外套を身に付けたアーチャー。
とっさに迎撃した八坂どのの攻撃を弾き、アーチャーは短刀をひき抜く。
まるで雷のようにジグザグになっているナイフ。普通に考えれば観賞用であり実用性は低いだろう。
だが、そのナイフの真骨頂は攻撃力ではない。
「
先端が少し刺さっただけで、最も重要な決着部分はついた。
そのまま少し震えた後、八坂殿は意識を失ってそのまま倒れ伏した。
「馬鹿な!? 制御が遮断された!?」
霧使いのゲオルグが、度肝を抜かれて愕然とする。
よし、これでとりあえず奴らの目的は水泡にきしたな。
「馬鹿な!? いくら魔術師の英霊といえど、ゲオルグが練った術式を一瞬で無効化するだと!?」
曹操すら驚愕する。
その瞬間にとりあえず透明化させたブレードを突き出してみるが、さすがにかわされてしまった。
曹操はかなり動揺していたが、やがて絡繰りに気づいたのか舌打ちする。
「・・・そうか、行動や成し遂げた伝承そのものが結晶化したタイプの宝具・・・っ! あらゆる契約の無効化がそのナイフの力か!!」
「そのとおり」
今更隠し通せないと判断したのか、アーチャーもそれをあっさりと認める。
「さすがに宝具を無効化することはできないけれど、魔術的な契約やつながりなら、どんな魔術だろうと私の前には無力ということよ」
割と本気でチート能力だったりする。
いかにサーヴァントといえど、超一流のサーヴァントが用意した工房を突破することはなかなか難しい。
その援護を受けたサーヴァントを相手にするのは、格の差があったとしても困難極まるだろう。
だが、アーチャーの宝具はそれをあっさりと無効化する。
ナイフ一本であらゆる魔術を無力化するこの一撃は、本来キャスターを相手にして真価を発揮する対魔術宝具。
イレギュラーな事態によってアーチャーとして呼び出されたからこそ、敵にとって最大限の脅威になる。
キャスターよビビって震えているがいい。貴様の天敵が今ここにその姿を高らかに見せつけたぞ!!
「京都とのリンクは断ち切られ、九尾の狐の制御も解かれた。・・・認めよう、少なくとも試合には負けたようだ」
頬をひくつかせながら、曹操は敗北を認めた。
ほかの連中もいろいろと敗北感をにじませている。
よし! これで何とかなったか!!
「・・・仕方がない。実験は中止しよう」
肩をすくめて、曹操はそう宣言した。
だが、その口元には嫌な笑みが浮かぶ。
「・・・じゃあ次は実戦テストだ。GSを使うぞ」
その言葉に、英雄派が全員目を見張った。
「おいおいちょっと待て! アレは危険すぎるから使わないんじゃなかったのかよ!?」
「曹操は大丈夫かもしれないけど、さすがにこっちは大変なのよ!?」
ヘラクレスとジャンヌが狼狽するが、しかし曹操は気にしない。
「幸い今はフィフスがついている。彼がいるなら何とかなるだろう」
・・・あいつここにいんのかよ!?
「フィフス。すまないがGSを出してくれ。グレモリー眷属にぶつけたい」
「おまえ時々すごい無茶するな、これが」
その言葉とともに、それは現れた。
妙に丸っこい、ずんぐりむっくりとしたデザイン。
だが、それはある一点をもってして脅威を感じさせる。
それはたった一つの言葉でわかる。
とにかく、デカい。
どう考えても50メートルはあるだろ、アレ。
そして、もっと恐ろしいことが分かった。
―離せ
―出せ
―許さん
―助けてくれ
―逃げるんだ
―殺してくれ
―なんでこうなった
―油断した
―離れるんだ
恨み言やらこちらに対する呼びかけやら色々あるが、共通するのはたった一つ。
言葉の節々から、妙な神々しさを感じさせる。
そして、厄介なことが一つある。
・・・数が多い。
10体はいるその巨人たちは、背中に大砲を構え、腕には斧を持っている。
オイちょっと待てなんだこれは。
明らかにいろいろとやばいだろうが。
「・・・極東の神格の波動。あなたたち、一体何をしたんですか!!」
「形質としては封印系神器に近いわね。・・・まさか!?」
その波動を感知したロスヴァイセさんとアーチャーが何かに気づく。
それを見て、曹操は自慢するかのように両手を広げた。
「そう。これは田舎の神社にいるような神々をこっそり誘拐して作り上げた人造神器さ。コードネーム、GOD SEAL。文字通り神を封印した、神の器にふさわしい正しい意味での人造神器!!」
な、なんつーもん作り上げやがった、こいつ等!!
「さあ、実戦テストに付き合ってくれ。一応言っておくが、仮にも神を宿している以上、並の上級悪魔じゃ歯牙にもかけないぞ!!」
ついに発動、アーチャーの宝具。
洗脳しまくりの英雄派にとって天敵といっていい能力。アニオタwikiでも書かれてますが、条件がそろえばチートの極みなんですよね、コレ。
結果的に英雄派の作戦はこれで台無しになりましたが、しかし本番はここから。
キャスターがいろいろと頑張ってくれております。