ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

128 / 361
なんというか、一話当たりの感想の数が、最近外伝の方が多い気がするのはなぜだろうか?


まさかケイオスワールドありきの外伝が本編より読者が多いわけないだろうし、どういうこった?


無駄なき音程の琴弓

「ナツミ!!」

 

 俺は砲撃を避けながら、あわててナツミに激を飛ばす!

 

「任せな馬鹿ご主人!!」

 

 それを一瞬で理解したナツミは、ベールフェゴルに変身した。

 

 そしてそれとほぼ同時に転送を実行。

 

 かろうじてイッセーをかっさらった!!

 

「でかしたナツミ!! 今夜はお前だけ、だし巻き卵だ!!」

 

「カッハハハ!! よっしゃあ!!」

 

「・・・い、生きてる!! ナツミちゃんありがとう!!」

 

 ・・・とはいえ、この状況下は非常にマズイ。

 

 想像以上に敵の量が増えて危険すぎる。

 

 この相手をするのはさすがに不利だろう。

 

 数ならこっちが上だと思っていたら、いつの間にか数ですら圧倒されていたとかどんなチートだ。

 

「宮白! 宮白のことだからなんかないか?」

 

「スマン! 俺もさすがにこっち方面の対策はしてない!!」

 

 数で圧倒されるとかは想定外だった!!

 

 イッセーには悪いが今の状況ではなすすべがない!!

 

 と、そこに砲撃が叩き込まれたのであわてて回避する。

 

 クソが! とにかくあれを何とかしないことには、小雪と朱乃さんの無事も確かめられない!!

 

「イッセー! とりあえずあのデカブツを片付けるぞ!!」

 

「おう!!」

 

『威勢がいいのは認めるがぁん、果たしてこいつを倒せるのかなぁん?』

 

 砲撃が一斉に叩き込まれるより早く、俺はある物を転送する。

 

 敵の弾丸は徹甲弾。その貫通力を利用してダメージを与える物理攻撃タイプの弾丸だろう。

 

 その超高速を最大限に生かした武装なのは認めるが、しかしその程度の対策は当の昔に用意している。

 

 錬金術の粋を集めて開発した、衝撃を拡散させる特殊魔術式装甲版。ピンポイントでダメージが収束するタイプであれば収束するほど、その防御力を発揮する特別性だ。

 

 もちろんそれで防げる威力には限界があり、この嵐を防ぐには薄いぐらいだが、そこはちゃんと考えてある。

 

「イッセー譲渡!!」

 

「おうよ!!」

 

 イッセーの譲渡で装甲の強化度合をさらに一気に急上昇。そのままさらにロケット推進式のブースターまで出して一気に突進する。

 

 威力が馬鹿でかいのでさすがに抵抗はあるが、しかしこの出力なら何とか押し返せる。

 

 あまりの乱射にあっという間に装甲はボロボロになるが、しかし貫通には成功した。

 

『な、なんとぉん!?』

 

「それじゃあ―」

 

 俺がブレードを展開した右足に光魔力を施し、

 

「さっさと―」

 

 イッセーがその左腕に全力を込め、

 

「「吹っ飛べこの野郎!!」」

 

 その胴体を吹っ飛ばす!!

 

 至近距離からの強大なパワーによる蹂躙と切断には耐え切れず、そのまま上半身と下半身は分断しながらぶっ飛んだ。

 

 よし、面倒な奴は1人片付いた!!

 

「なかなか面白いな! だが我を忘れてもらっては困るぞ!!」

 

 そしてそこで出てくるか悪神ロキ!!

 

「おぉっとさせないよ!!」

 

 と、魔法攻撃をフィネクスの再生力で突っ切ったナツミが一気に組み付く。

 

「カッハハハ!! 今のうちにとりあえず小雪や朱乃の無事を確認して来い!!」

 

「でかしたナツミ!! 明々後日はスパニッシュオムレツだ!!」

 

 とにかくまずは安全確認!

 

 そのあとすぐに助けに戻るから少しの間だけ我慢してろ!!

 

「逃がすと思うか! 我が子に牙を突き立てる逸材と赤龍帝、どちらもこの場で―」

 

 魔法攻撃を放とうとしたロキの腕が固まる。

 

「・・・これ以上余計な騒ぎはよしてもらいましょう」

 

 ベル!! ナイスタイミングで来てくれた!!

 

「実質任せてください!! さあ、早く!!」

 

「サンキューベル! 大好きだ!!」

 

 急いで俺たちは二人の元へと向かう。

 

 ・・・大丈夫か、2人とも!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・誰かにかばわれた。

 

 そう小雪が思ったのは、自分の体の感覚からだった。

 

 今まで幾度となく戦いにさらされてきたからわかる。これは痛覚がマヒしているわけではない。

 

 それなのに、あれだけの攻撃をくらっていたくないのなら、自分は誰かにかばわれたのだろう。

 

 だからそれを確認して、小雪は驚くより先に納得してしまった。

 

「・・・バラキエル」

 

 ・・・ボロボロのバラキエルがそこにいた。

 

「な・・・なんで」

 

 愕然とする朱乃が、倒れるバラキエルをあわてて支える。

 

「・・・お前まで、失うわけにはいかない」

 

 本心からのその言葉に、朱乃は言葉をなくしてうつむいてしまう。

 

 それを見て、小雪はこの状況下にもかかわらず苦笑してしまう。

 

 ああ、やっぱり朱乃はバラキエルのことが好きなままだ。

 

 母親を失った悲しみに耐えきれなくて、殺しに来たものたちが殺す動機として黒い翼を持つものたちに責任を押し付けることしかできなかった。

 

 どうせなら殺した退魔のものたちを恨めばいいというのは、賢しいだけの馬鹿者たちの発想だろう。

 

 齢10にも満たぬ子供に何を求めるというのだ。そこまで冷静に考えられるのなら、そもそも我を失うほどショックを受けたりしない。

 

 そのまま思い続けてきた朱乃は、普段のお姉さまじみたところよりもずっと子供なんだろう。そんなことは最初っからわかっていた。

 

 ・・・そんな彼女にここまで凝り固まったものを押し付けたのは間違いなく自分だ。

 

 対処できるだけの能力を持っておきながら、しかしそれを行使しなかったがために、自分だけでなく彼女の大切なものを奪い、ここまで長い間しこりを残した。

 

 子供でいたかった。ただ、守られる子供という立場に甘えていたかった。

 

 魔術師として行動し、その過程で学園都市に入るという、子供が経験しないような腹黒い取引で生まれ故郷から永遠に離れた。そのままつかまって実験台として扱われた。そして挙句の果てには、それでも死ぬことが怖くて殺す側に回ってまでどん底を這いずり回った。

 

 そこから解放されたことがうれしくて、そこに甘えて依存した結果がこの惨状だ。

 

 と、その耳に音が聞こえる。

 

 振り返れば、そこにはボロボロのフェンリルがいた。

 

 どうやらこちらを狙っているようだ。

 

 まあ、バラキエルは間違いなく最強レベルの敵の一人だ。片づけれるタイミングで片づけるのは当然のことだろう。

 

「・・・させねーよ」

 

 対戦車ライフルを呼び出し、静かに構える。

 

 今、この親子は分かり合えるのかもしれない。

 

 自分はこの時を長い間待っていた。

 

 自分の罪ですれ違った親子が、今その関係を修復しようとしている。

 

 それは贖罪ではないが救いではある。

 

 その逢瀬を邪魔することは許さない。

 

 ゆえに、この命をそのために燃やそう。

 

我が牙は必ず敵に食らいつく(dens226)

 

 敵が動くと同時に静かに告げる。

 

 その姿は消え去るが、しかしそれはもう意味がない。

 

 彼女が口にしたのは魔法名。

 

 彼女の世界の魔術師が己につける絶対の誓い。

 

 彼女が誓ったのは必中。

 

 ゆえに、その牙は必ず相手に突き立つ。

 

「―――――――ッ!?」

 

 自分の後ろで、フェンリルが光の弾丸を受けて怯む。

 

無駄なき音程の琴弓(フェイルノート)。・・・味はどうだい?」

 

 その動きが止まった次の瞬間には、その口の中に銃身を突っ込んでいた。

 

 フェイルノート。かの円卓の騎士が持っていたとされる、無駄な矢を放ったことがないとされる伝説の弓。

 

 その伝承を基に作り出したこの魔術は、単体では何の意味も持たない。

 

 放った神秘的な攻撃を、必ず相手に命中する場所に転移させる。

 

 ゆえに別途で攻撃手段を調達する必要はあるが、しかしそれゆえに莫大な効果を発揮する。

 

 あの世界で人のみで人を超えた耐久力を生み出すものはごくわずかだった。

 

 ゆえに、弓矢程度の威力の一撃でも放つことができれば、対人戦において彼女の力は文字通り必中にして必殺。

 

 それゆえの魔法名。文字通り、彼女の牙は必ず相手に喰らいつく。

 

 もう数十年といってもいい年月使ってこなかった弾丸の手ごたえを感じ、小雪は引き金を引き絞った。

 

 口腔内に全力の光力を叩き込まれ、フェンリルは絶叫を挙げて暴れだす。

 

 その勢いで弾き飛ばされた小雪は、しかし決して動揺しない。

 

 自分の火力が足りないのは重々承知している。まさか一撃で殺せるだなんて思ってもいない。

 

 ゆえに今度も繰り返そう。

 

 連射が利かないのが欠点ではあるが、しかし確実に当てれるというのは十分すぎる。

 

 一発でだめならば二発あてる。二発でだめなら三発当てればいいし、それでだめなら四発あてればいい。

 

 水滴でも何度も当たればいつか岩を穿つように、繰り返し続けるというのは間違いなく力だ。

 

 ならこの一撃を当て続けよう。

 

 それで贖罪となるのならば、この命など惜しくはない。

 

「お代わりはまだあるぜ、ファック狼―」

 

「―もういい」

 

 ―その引き金が、動かなくなった。

 

 視線をずらせば、引き金の周りには水が集まり、それが動きを止めることでストッパーとなっていた。

 

 そして、自分の体も羽交い締めにあっている。

 

「落ち着け小雪。・・・俺たちが来た」

 

 蒼い鎧が、金色の鎧を封じている。

 

「兵夜? お前、邪魔するな!! 何を考えてんだ!?」

 

「こっちのセリフだ!! お前ボロボロだろうが!!」

 

 鎧の隙間から流れ落ちる血を見ながら兵夜が叫ぶが、小雪は意に介さない。

 

 そんなものは最初っからわかっている。

 

 自分たちの魔術は異能に対抗するために凡人が生み出した力だ。

 

 ゆえに後天的に異能をもった能力者が使えば、即死すらありうる拒絶反応を受けることになる。

 

 転生して生まれ持った能力になったとはいえ、能力は能力だ。そんなものを使えば拒絶反応が体を襲うのは当然だろう。

 

 ハーフ堕天使となったことで頑丈さで無理やりある程度防ぐことはできる。その生命力の多さを使えば何度も使うことだってできる。

 

 そしてその結果は体に現れて自分が死ぬことだって十分あり得る。

 

「んなこたー解かってんだよ!! 邪魔するな、今ここで動かなくってあたしはどうやって罪を償えば―」

 

「余計にトラウマ背負うんだろうが、馬鹿!!」

 

 張り上げた声をさらに上回る声が響き渡った。

 

「・・・俺だって二度死んだ身だ。命の天秤を傾けるとき、俺たち(転生者)は自然と自分の重さを軽くするのはわかる」

 

 ・・・ふと気づくと、その手が震えているのがわかった。

 

「・・・だけど、そんな俺たちを大事に思ってるやつだっているんだ。それは、わかるだろ?」

 

 ああわかる。

 

 アザゼルは問題も多々起こすが、両親を失った自分の面倒を見てくれるだけでなく、ややこしい設定を背負っている自分を色眼鏡で見たりせずに接してくれた。

 

 バラキエルは妻を失う理由の一つである自分を許し、強くなるための特訓にも付き合ってくれた。

 

 朱乃だって、今はまだ距離を取っているが、それでも自分を敵視することはなかった。

 

「・・・最終的に切り捨てるのはいい。だが、それでもリスクをできる限り少なくしなくては、失った後のそいつらに余計な傷を作るだけだ」

 

 振り返ってみれば、兵夜は苦笑していた。

 

「お互いいろいろと面倒な価値観持ってるしな。・・・俺がやりかけたときは止めてくれ」

 

「だけど、だけどあたしは・・・」

 

 心底心配しているその顔を見ても、小雪はどうしても納得がいかない。

 

 ほかの連中がどうだか知らないが、少なくとも小雪は自分を罪人だと思っている。

 

 明確に、自分の力を使って解決できる時に行動を起こさなかった。

 

 そのせいで長い間余計なしこりを残してしまった。

 

 今、それを払しょくする機会があるのに、ここで自分が動かないなんてありえない。

 

 普段強がっていても自分は弱い。弱いから殺し殺される世界で生きていくことを選んだ。そして弱いからそこから逃げてなくしちゃいけないものをなくしてしまった。

 

「これは・・・あたしの罪の清算なんだ」

 

「別にここで死ななくてもできるだろう」

 

「正直、もう耐えられない」

 

「肩を貸すぐらいしてやる。休憩したいなら言ってくれ」

 

「・・・なんで、そこまでしてくれんだよ」

 

 お前には、2人も愛してくれる人がいるだろう?

 

 そんな意味を込めた疑問に、兵夜は少しそっぽを向く。

 

「・・・あいつら基本まっすぐだろ? 性質の近い同類に感情移入して何が悪い」

 

 顔が赤くなっているのが鎧越しでもわかる声だった。

 

 正直馬鹿かといいたくなった。

 

 確かにこいつは裏で非道に手を染めることも厭わないが、方向性が違う。

 

 こいつは確かに非道も行うが、それでいて自分の中ではやりすぎない。

 

 自分は生きるためにどこまでも非道に手を染めた。間違いなく兵夜よりはるかに深いところまで踏み込んでいる。

 

 だから本当の意味で一緒にすることなんてできないし、近い人種であることは認めても自分のほうがはるかに悪質で悪辣なはずだ。

 

「一緒に・・・すんなよ」

 

「いいからしとけよ。そっちのほうが、気が楽だろ?」

 

「う・・・」

 

 確かに気は楽になりそうなので反論しずらい。

 

「・・・支えがほしいなら手伝ってやるよ。どうせ一人いるんだから、もう一人ぐらいなってやる」

 

 その言葉はとても甘美だった。

 

 ・・・正直に言えば、小雪は兵夜たちほど支柱がない。

 

 アザゼルは確かにそれに近いが、それだってある意味で一線引いているところがある。むしろ自分が面倒見る側にたつ意識を、意図的に持っている気がする。

 

 朱乃は立場的にぴったりだが、罪悪感があってどうしてものしかかれない。何より、小さな子供にそう強いれるほど、自分は寄りかかれる性分じゃなかった。

 

 外道を行き過ぎたがゆえに、表の光によりかかることが怖かった。

 

「ほら、俺は結構外道だから、休みたいのならそういってくれ。・・・大好きな同類がいなくなるよりかは、ずっといい」

 

 ・・・つい、その言葉にグッと来てしまった。

 

「てめー、狙ってるだろ?」

 

「ああ。俺は大好きな奴が無事でいるなら、泥に被るぐらい平気なんだ」

 

「・・・あいにく、あたしもだよ」

 

 なんか馬鹿らしくなって苦笑してしまう。

 

 でも、もっと頼っていいのかもしれない。

 

 あんな一夜限りの関係じゃなく、もっと普段から人に頼ってもいいのかもしれない。

 

「・・・じゃあ、証明してくれよ」

 

 頭部の鎧をとき、視線で答えを促してみる。

 

 もっとはっきり言ってもいいのかもしれない。と、いうかもっとすごいことをしているのだからわざわざあいまいにする意味もない。

 

 とはいえ今はこれが精いっぱいだ。あいにく素直になるにはひねくれた時間が長すぎる。

 

「はいはい。欲しけりゃ自分でしろ」

 

 視線を逸らしたまま鎧を解く兵夜の顔は、地味に真っ赤だった。

 

 ・・・なんだかそれがカッコいいというかかわいくて、ちょっとおかしくなった。

 

「んじゃまあ、弱った時は支えてくれよ、・・・旦那様」

 

 ・・・初めての口づけは血の味しかしなかった。

 

 それが自分らしいと思うと、なんだかむしろホッとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 




小雪の魔術は条件次第ではかなりチートです。


なにせ必ず当たるので、防御力が低い相手には一発で戦局をひっくり返しかねないチート中のチート。

木場とかにとっては本来天敵といっても過言ではないスペックです。・・・堕天使の肉体強度を踏まえることで、相打ちには持っていける奥の手にふさわしい攻撃方法。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。