ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
ぜひ拝見してください。
「とはいえ実質大変ですね。いろいろと出かけすぎな気がするのですが」
空飛ぶ馬車を護衛しながら、ベルはそう溜息をついた。
まあ、気持ちはわからなくもない。
やれキャバクラやれナンパやれ寿司屋など、はたから見ればやりたい放題やってるからなあの爺さん。
イッセーに至っては高校生という理由でキャバクラで遊べなかったので嫉妬で狂い掛けてる。
覇龍になってオーディンと激戦繰り広げたりしないだろうか? 頼むから押さえろ頼むから今度海外の裏モノDVD買ってやるから。
「色欲にかられた神は苦手だわ。早く会談が始まってくれないかしら」
アーチャーも結構キレ気味だ。
まあ、恋心をこじらせた神のせいで、いらん人生の黒歴史を作られたからな。その手の類は色々とあれだろう。
ギリシャ神話って不倫とか多かったらしいからなぁ。振り回された側としては色ボケ爺は嫌な部類か。はやく酒屋に頼んだ高級エールが出るといいんだが。
「まあそこまで言わなくてもいいと思うけどな。あれでなかなか抜け目がないし」
「あら、そうなの?」
意外そうな顔を向けるアーチャーに、俺は資料を転送するとそれを見せる。
「全部調べたわけじゃないが、調べたオーディンが言った場所は、近隣若しくは施設そのものが日本異形関係とそれなりに関わりを持っている。この調子じゃあ偶然と考えるのは出来過ぎだろう」
「なるほど。ふざけたふりをしているけど、神話体系の頂点としてやるべきことはしているようね」
「と、いうかそれに気づいたんですか!? やはりすごいですね・・・」
なんかベルが俺を見る目にすごいものが混じってる気がするが、それはまあいい。
とはいえ、まあ趣味も兼ねてるとは思うけどな!
だってあれイッセーと同じにおいするもん! あれ絶対スケベなのは素だって!
とはいえ警戒は厳重にしなければ、何分オーディンが言っていたことが気になる。
どうやら今の政策に反対する連中がいるようだ。その連中が仕掛けてくることを警戒しているからこそ、こっちに来た可能性は十分にある。
・・・もうちょっとサービスしてくれてもいいんじゃないだろうか? あの爺、冥界のメディアにぱっとみふざけすぎの今の状況チクるぞこの野郎。
まあいい。後でこっそり血でももらえないか聞いてみよう。・・・主神の血液とかすごいことになるかもしれん。あれ? 報酬それで十分すぎね?
と、妄想しすぎていると視線が変なところに行きそうだ。前を向かないと―
「まて、そこで止まってもらおう」
祐斗Side
目の前で、とんでもないことになってきている。
北欧神話に連なるトリックスター。日本での知名度でいうならオーディンさまをも上回りかねない悪神。悪戯の神、ロキ。
オーディンさまの懸念はこの男だった。ヴァルハラにおける現方針反対派の筆頭だが、彼が襲撃してきたのだ。
まさか主神の命を狙うところまで行くとは、どうやらよほど腹に据えかねているようだ。
「まあ、聖書の教えの多神話体系に対する侵略は本当にひどかったからなぁ。唯一神を奉ずる一神教だからほかの神話より排他性が強かったし」
宮白くんはそんなふうに同情票を出していたが、しかしその気配はすでに消え去っている。
理由は明確だ。僕も彼ほどではないが怒りに燃えている。
フェンリルに部長が狙われ、イッセーくんがかばって傷を負った。
神喰狼、フェンリル。
神すら確実に殺せる牙を持つ、天龍に匹敵する能力を持つロキの最高傑作。
ロキは確実に会談を阻止するため切り札を切っていた。
そして、それによってイッセーくんが負傷した。
・・・間違いなくブチギレている。
「・・・アーチャー、ナツミ・・・ああ、・・・たのむ」
念話の内容が口から出ているが、宮白くんはそれに気づかずにその手に結晶体を呼び出して構える。
「消し飛べ駄犬!!」
火、氷、風、雷などの色とりどりの魔術の群れがフェンリルに襲い掛かる。
次の瞬間、フェンリルはそれらを意にも解さず突破すると宮白くんを狙う!
宮白くんらしくもない! いつもの彼ならもっと策を練るはずなのに!!
完全に頭に血が上っている宮白くんは、制止する間もなく正面から突撃する。
正面戦闘じゃ偽聖剣は赤龍帝の鎧に劣る。このままじゃ―
「・・・なんてな」
ニヤリと、兜越しで見えないが、しかし宮白くんは確かに嗤った。
次の瞬間、宮白くんの真後ろにフェンリルが転移した。
「カッハハハ! この馬鹿狼が!!」
ナツミちゃんの嘲笑まで聞こえてくる。
宮白君自らおとりになって、ベールフェゴルの転移能力を利用した!?
特殊な結界で覆われたフィールドに侵入できるほどの転移能力を持っていたのは知っていたが、まさか他者を転移させることもできるのか!!
そして、転移したフェンリルの脚先にはアーチャーさんが、杖を構えて悠然とたたずんでいた。
その後ろには、巨大な魔方陣が形成され―
「まずは一本」
ピンポイントでフェンリルのつめを一本へし折った!!
「なんと!? まさか我が子に牙を突き立てるか!!」
見事に一矢報いられ、ロキがわずかに感嘆する。
だがその表情には余裕が見える。
「だが、一本へし折ったぐらいでフェンリルが止まると思うな!!」
フェンリルはもう片方の足でアーチャーさんに襲い掛かる。
アーチャーさんは龍の外套を展開するとそれを受け止めるが、パワーの差があるのか弾き飛ばされる。
「さすがに神獣となると強大ね。兵夜、まだ行けるかしら?」
「当然。どてっぱらに一発いいのを叩き込んでおきたいところだな」
偽聖剣のオーラを増大させながら、宮白くんはフェンリルをにらみつける。
とはいえこの戦力は強大。もうひと押し欲しいところだが―
「ほう? 思ったより戦えてるじゃないか」
・・・こんな時に!?
「ヴァーリ・ルシファー!!」
聞こえてきた力強い声に、思わず振り仰ぐ。
そこには仲間たちを連れ立って、ヴァーリ・ルシファーが宙に浮かんでいた。
「うっわ~。なんか面白いことになっとるなぁ」
ムラマサが物珍しげにフェンリルやロキを見るが、その隣では美候が暴れだしたいのかうずうずと体をゆすっている。
この状況下で三つ巴はマズイ!
だが、ヴァーリたちの視線は僕たちには来ず、フェンリルとロキに向けられた。
「初めまして、悪神ロキ。今日はお前を滅しに来た」
・・・ヴァーリは僕たちを狙う気がないのか?
戦闘狂なのは知っていたが、まさかこの状況下でロキを狙うとは。
強大な敵意をたたきつけられ、ロキはしかし不敵に笑う。
「二天龍を見れたことだし、今日は引いたほうが得策か」
片手を上げると、フェンリルが反応して後ろに下がる。
そのまま転移用の魔法陣を展開しながら、ロキはオーディンさまを見据えて堂々と宣言する。
「だが、会談は必ず阻止させてもらう! それまで震えながら過ごすがいい!!」
その言葉を最後にロキとフェンリルは転移する。
・・・旧魔王血族の次は正真正銘の神が相手か。
正直、荷が重いと言わざるを得ない。
僕らは生き残ることができるのだろうか・・・?
Side Out
今回は区切りがよかったので短め。
今後の展開のためにベルとのフラグ立てを努力してみました。
兵夜のヒロイン四名は、それぞれ惚れた根幹の理由が微妙に違っているのも努力してます。
ナツミ・・・自分を救ってくれた王子様(この辺、イッセーのフラグ立て基本パターンも近い)
久遠・・・自分に近い道を歩く同類としての共感(兵夜ヒロインの基本パターンでもある)
小雪・・・ある意味で同じ「裏の存在」としての潜在的な共感意識(他ヒロインとはまた少し違った微妙なアナザーパターン。基本ライトタイプのD×Dでは基本出来ない方向性)
この三人に対して、ベルは自分の上を行く先達としての尊敬を根幹におこうと思っております。
兵夜含めた四人と比較して、ベルは生前において自分の特殊能力で利益どころか損しかせずに死亡しているのが特徴的です。ギリギリで近いのが小雪ですが、彼女は魔術師として普通に生活していたので、しょっぱなからどん底状態のベルとは方向性が違います。
そういう意味では裏社会にどっぷりつかっている小雪とは別の意味でアブノーマルでもあります。久遠とナツミは闇ではなく表の側面で、ある意味でグループ分けされているわけです。
そういう意味なので小雪編であるラグナロク編での小雪フラグは、ちょっとダーク方面が中心になると思います。ベル編もダーク要素が強くなるかもしれないので、その辺はご了承ください。