ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
結論から言えば、イリナの加入はいろいろと面白そうなことになりそうだ。
なんでも転生悪魔の技術を流用して生まれた転生天使になったらしく、それも大天使ミカエルのAという破格の待遇である。
まあ、彼女は後天的とはいえエクスカリバー使いに選ばれるほどの実力者だ。さらに和平会談の時にも事態解決のために尽力した人物でもある。そのうえ信仰心も非常に篤い。
ならば天使になってもおかしくないのだろうが・・・。いかんせんあの性格なので余計なトラブルを発生させる可能性があるので注意が必要ではある。
まあそれはそれとして運動会もあるので結構これが忙しい。
俺はとりあえず借り物競争に出ることになった。その人あたりからすぐにものを貸してくれるだろうというすごい理由で推薦されたのだが、まあいいだろう。
個人的には障害物競走に出たかったのだが、昨年フリーランニングの技術を流用してパフォーマンスする余裕をもって圧倒的トップに出てしまったことから、「勝負にならない」といわれてしまっては断念するほかない。
とはいえ借り物競争ではとりあえずのスタートダッシュの練習ぐらいしかすることがないのが残念ではある。
しかし、それゆえにいろいろと考えることもできる。
・・・ディオドラ・アスタロトというビッグな問題を何とかできないか考える必要がある。
奴のことを思い出したのでアーシアちゃんのほうを見てみるが、イッセーと一緒に二人三脚の練習をしながらも、時々表情が暗くなるところを見てしまった。
ディオドラ・アスタロト。魔王ベルゼブブを輩出したアスタロト家の次期当主候補。そしてアーシアちゃんが教会を追放にされることになった原因。
なんでも負傷した時にアーシアちゃんがつい治療しちゃったとかいう話だった。
・・・正直、疑問に思う点が多すぎる。
本部にもある程度内密な計画であっただろう聖剣計画での木場ならともかく、聖女オブ聖女な性格と能力をもつアーシアちゃんがいるような場所、それこそ教会側にとっては勢力図の中でもそれなりに後方の場所におかれているだろう。少なくとも、悪魔がすぐにでも入って攻撃できるような場所にはおかない。俺なら置かない。
そんなところになぜ、魔王血族であるディオドラが入る?
可能性としてはアスタロト家と内通している人間がそこにいて亡命を欲していたとかだが、それにしても次期当主自ら護衛もつけずに行くとは思えん。
そもそもそんな事態になれば相応の激戦になるからそんなあっさり発見できるような場所にも置かないだろう。
・・・なんか教会とアスタロト家の間で裏がありそうな雰囲気があるな。あいつの眷属の情報はもう少しで確保できるが、教会関係者がいないかどうかは念入りに調べよう。もしかしたら教会側との独自パイプぐらいは持っているのかもしれん。
しかしアーシアちゃんの治癒能力をもってしてもあれだけの傷跡が残るような怪我でよく逃げ切れたな奴も。
治療時間が足りなければあんなにひどい跡は残らないだろう。そこから推測されるダメージで逃げ切るとは、思ったより戦闘能力も高いのかもしれん。
・・・できる限り穏便に解決するためにも、いろいろと下手に出たほうがいいな。たとえば使用人とかの好みを聞き出して、ありとあらゆる方面から贈り物返しして牽制するとか。
いい加減荷物の置き場所にも困ってきたことだし、そのあたりも考えたほうがいいのかもしれん。
「・・・実質考え事のようですね」
と、その隣に掃除道具を持ったベルが近づいてきていた。
「やはり、ディオドラ・アスタロトのことですか? イッセーもそのことでいろいろと気にしているようでしたが」
最近こいつもイッセーのことイッセー呼びになってきている。
殴り合いにおいても体格的に近いから小猫ちゃんより相手になることが多いそうだし、なんだかんだで意気投合し始めているのだろう。
イッセーにしてみれば部長を超えるプロポーションの女性だから眼福だろうしな。
「まぁな。同僚のメンタル問題に気を使うのは当然ってことだ」
「イッセーから相談されましたが、あまりしつこいようならグレモリー卿経由で警告を入れてもらうというのはいかがでしょうか?」
「そりゃまあわかるけど、それで向こうの親まで出られたらさらにややこしいことになるからなぁ。せめてアスタロト卿の大体の性格を把握してからじゃないとさらにややこしいことになるのがオチだしなぁ」
ベルのいうことももっともだが、それで騒ぎが大きくなるとそれはそれで面倒なことになりそうだ。
問題はディオドラが告白してるってことにある。下手なゴシップ記事で「アスタロト子息とグレモリー眷属の禁断の愛!」とかやられたら目も当てられん。
「とはいえ、実質アーシア・アルジェントはイッセーに懸想しているのですからどうしようもないでしょう? リアス・グレモリーが相手の片思いを理由に手放すような人物ではないことはわかりますし」
それはベルに言われなくてもわかっている。
まさか部長に限ってそんな非道なまねはしないだろう。
とはいえディオドラがそういうたぐいかどうかはまた別の問題だ。もし強引な手段を取ろうとしたらまたそれはそれでややこしいことになるわけだからなぁ。
「・・・まあ仕方がない。その辺はおいおい何とかするしかないか」
「あまり無理しないほうがいいと思いますが? 兵夜は最近いろいろと動きすぎな気がしますが・・・」
「大丈夫だよ。こっちで記憶を取り戻してから、勉強とトレーニングを欠かさず続けることには慣れてんだ。一週間や二週間の徹夜ぐらいで今更根は上げないって」
俺としては安心させるために何気なく言ったつもりだったが、ベルはなんというかこっちをマジマジと見つめていた。
「・・・・・・イッセーと会う前から・・・ですか?」
「ん? 言ってなかったか? 学校で習う程度の勉強や、フリーランニングとかいった運動は保育園に入る前から練習してたぞ?」
ただでさえ、余計なもののせいでメンタル面じゃあマイナスだらけだったからな。せめてスペックぐらいはプラスにもっていきたかったんだが、そんなに意外だったか?
「驚きましたね。彼と出会う前からそんなに努力ができてたんですか」
なんか唖然とされてしまった。
むしろこっちが唖然としてしまうが、そんな様子をみて、ベルはふと苦笑した。
「・・・私が努力しようと思ったのは、ミカエルさまに拾われて、力になりたいと思ってからでしたから。・・・あなたは実質すごい方です。コカビエル相手に立ち向かったあの時からすごい方だとは思ってましたが、目を見張りますね」
なんかすごいものを見る目で見られると照れるな・・・。
「ま、まあ探せば努力する方法がいくつもあるところにいたからでもあるからな! そんなに気にすんな!」
なんかものすごい照れくさくなってきた。
さ、さて! 練習練習!!
さて面倒なことになりました。
「・・・部長、ディオドラはレーティングゲームの勝敗でアーシアちゃんを賭けてくる可能性がありますかね?」
「正直、ないとは言い切れないわね」
俺の期待薄な質問に、部長は額に手を当てて答えてくれた。
俺たちがこんな会話をしている理由は簡単だ。
・・・次のレーティングゲームの相手が、ディオドラに決まったからだ。
まさか、若手悪魔のレーティングゲームが一回だけで終わるとは思わなかったがコイツかよ。
さらに最悪なことに、ディオドラの眷属関連の情報がいくつか回ってきた。
いろいろといいたいことはある。あるがとりあえず一言だけ言おう。
こいつライザーと同類だ! 自分のところに女かき集めてハーレム作ってやがる!
眷属は実力重視なのか男の悪魔もいるみたいだが、ライザーとは違い眷属以外にも何人もの女を囲ってやがる。しかも人間の女とかもいっぱいいるみたいだ。
・・・まあアーシアちゃんが惚れてるのはイッセーだから偉そうなことは言えないのだが、なんというかものすごく差し出したくない気分がさらに上昇してしまうな、オイ。
「ひょ、兵夜ぁああああ」
ものすごい涙目でナツミが俺にすがってくる。
ちなみにイッセーたちは仕事中だ。この会話をあいつに参加させるとキレて暴走しかねん。
「アーシアどっかいっちゃわないよね? ずっといるよね!?」
「大丈夫だから心配するなナツミ。・・・少なくとも、アーシアちゃんはイッセーから離れる気はないよ」
敬虔なクリスチャンであるにも関わらず、一夫多妻確定コースのイッセーについていくぐらいだ。もう心底あいつに惚れているんだろうな。
だからアーシアちゃんのほうの心配はいらない。本当にディオドラが景品としてアーシアを要求したとしても、こっちがそれを蹴れば何の問題もないだろう。
まあ、あまりほめられた趣味ではないがサーゼクス様に頼るという方法もなくはない。向こうも現ベルゼブブを輩出しているのだから油断はできないが、幸いこっちには
油断はできんが突っぱねることはできるだろうな。
「とはいえディオドラの器量がどこまであるのかが心配ですね。・・・奴が典型的な貴族主義だとすれば、下級悪魔であるイッセーがアーシアに惚れられているというのはプライド傷つくでしょう?」
「あり得るわ。ディオドラは典型的な古くからの上級悪魔の思想を持っているもの。例え赤龍帝とはいえ、自分の好きな女に下級悪魔が寄り添っているのをいい思いで見るとは思えないわね」
同時に溜息をついてしまった。
「あらあら、我らが主と参謀は苦労してますわね。お茶が入りましたから一息つきません?」
「あ、いただきます」
・・・紅茶が、沁みるなぁ。
「とにかく、下手な難癖をつけられても困るし、何があってもディオドラは完膚なきまでに叩き潰さないといけないわね」
「全くですわね。かわいいアーシアちゃんを、本人が望んでもいないのに手放すなんてもってのほか。まだ少し抵抗はありますが、雷光を使うことも厭いませんわ」
二大お姉さまの戦意も漲っていらっしゃる。
とはいえあいつも若手悪魔の中じゃ腕利きの部類だろうし、手を抜いて勝てるわけでもないな。
さて、どう料理したものか・・・。
「・・・安心しなさい。私も手を貸すわ」
と、さっきまで沈黙していたアーチャーが静かにそう言い切る。
・・・なんというか、やばそうな怒りオーラが見えているのだが!?
「そ、そんなに嫌か?」
「ええ、あの男は本気で嫌ね。可能なら殺してしまいたいぐらい」
ものすごい勢いで敵視されてるなあいつ。何をしたらそうなる。
「私は女を食い物にする男は心の底から嫌いよ。あの男からはその手の類のにおいがプンプンする。・・・別に全員に対して誠実に対応するというのならまあとやかく言うつもりはないけれど、あれは間違いなく自分のおもちゃ感覚で扱ってるわね」
「やけに自信あるな。・・・とはいえ、そんなタイプだというならアーシアちゃんに近づけるのも避けたいな。・・・戦闘データ見て余裕で勝てそうなら、むしろこの提案を利用してこっちが勝ったら二度と近づくなというのもありか」
とはいえ逆転の可能性もあるし可能なら避けたいところだ。・・・ディオドラと現ベルゼブブとの関係がどれぐらいかも調べて、可能なようなら彼を味方につけれないか考えるか。
「わかった。とりあえず奴の女性関係についてもう一度調べなおそう。・・・幸い現ベルゼブブ側とのコネクションはできてるし、そのあたり本気で調べるべきだな」
念には念を入れたほうがいいとはいえ、何があるかわからない以上警戒は必須だろうな。
「不倫に報復をした英霊は言うことが違うわね」
「あらあら。これは浮気重視の私は意外と危険ですわね」
その恐ろしい第六感にビビる部長と、浮気志願なので思いっきり引っかかりそうなことにビビる朱乃さんはあえてスルーし、頭の中でプランを組み立て始める。
それなら探せば埃も出てきそうだ。とはいえその辺の防御も意識しているだろうし、この辺はグレモリー卿に頼んだほうがいいかもしれないな。
そんなことを考え始める俺の視界に、のぞき込むようなナツミの顔が映る。
「ね、ね、兵夜? ボクにできることある?」
期待半分心配半分なその顔に、俺はつい苦笑してしまった。
アーシアが心配だったり使い魔として手伝いたかったり、いろいろと複雑な感情が渦巻いているんだろうな。
だから、俺はその頭をやさしくなでることでそれに答える。
「必要になったらいうよ。だからそれまで力を溜めといてくれ」
「・・・うん!」
満面の笑顔で喜ばれるとちょっと照れくさいない。
「あら、兵夜はモテ期なのかしら?」
「アーチャーさん? マスターがボーダーラインを超えそうですわよ?」
「本当に超えるようなら令呪を受けてでもお仕置きするけど、まあこの子なら誠実に対応するでしょう」
何やら外野がうるさいんですけど!!
いやいやいやいや。これはアレだろ? 主人として懐かれてるだけだろ? 大丈夫だって。
だって俺問題児だぞ? だから大丈夫だろ!?
・・・イッセーのこと笑える立場な、恋愛方面におけるダメ人間だよな、俺?