ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
さあ、ここからは反撃タイムです!!
真後ろから襲い掛かる薙刀を、側転して避ける。
すでにこの攻撃がくるのも何度目だろう。
恐ろしいのはこの空間転移、どういう理屈か魔力感知が非常に難しいということだ。
空間をゆがめているのだから、普通は転移した瞬間に位置が把握できなければおかしい。その手の対策を万全にとってきたはずだ。
なのに感知が難しい。
不幸中の幸いは、この攻撃が至近距離からくるということだ。
リーチの長い薙刀でそんなことをすれば使いづらくなるので逆に対処はしやすくなる。おかげで何とかもろにダメージをくらうことだけはなかった。
「しぶといですね」
「個人的には勝つより負けないを重視しているもので!!」
とっさに距離をとって、聖水入りの弾丸を装填したショットガンおよびガンド撃ちによる弾幕攻撃を叩き込む。
強敵と戦闘することを視野に入れて、神器の運用はどちらかというと制御はともかく手加減は視野に入れていない。
可能な限り損傷を少なくしなければいけない。宝石魔術も防御中心で行かせてもらっている。
とはいえそれにこだわりすぎて負けたらそれこそ意味がない。必要と判断したならば躊躇なくいかせてもらう。
正直ゼノヴィアの援護もしたいところだが、それをしようと視線を逸らせば、その瞬間に後ろから攻撃がやってくる。
おかげで戦闘状態の想定もできないという迷惑なありさまだ。
とはいえこのままやられるつもりは毛頭ない。
そもそも、この戦闘で本命は木場で会長を強襲することだ。
将来を見越して持ち味のパワーを生かす方向で強化しているイッセーやゼノヴィアはもちろん、俺も対英霊戦を視野に入れているので強化武装の大半はパワー重視だ。
ゆえに、聖なるオーラによる追加攻撃が可能であり、小技に長ける木場が本命。
まさか会長も第四のルートまでは想定していないだろうし、この混戦状態なら不意打ちの可能性は十分に―
「ああ、会長はすでに本陣から移動していますのであなたの作戦は通用しません」
「マジで!?」
やばい!? 作戦が台無し!?
「そしてあなたはここで終わりです。・・・ソーナはあなたを最も警戒していた。こちらの策に感づかれる前に撃破させていただきます」
弾幕を避けた副会長が車の陰に隠れる。
正直この展開も想定外だ。
ポールウェポンを使う副会長は、車が乱立している中に入ると一気に戦闘が難しくなるから、積極的に侵入しないと踏んでいた。
だが、空間転移の仕組みを見破られないように、むしろ目くらましに多用してくる。
そして再び後ろからの攻撃だが、いい加減ワンパターンなのでとっさに飛びのいて対応。
そして振り返った瞬間にはすでに副会長の姿は消え―
「ああ、そういうことでしたか」
正面から飛び上がった副会長の一撃を、ショットガンを楯にかろうじて防いだ。
「・・・!?」
「いやすいませんね副会長。周囲警戒のために使い魔と視覚を共有させてもらいました」
背中に蜘蛛の使い魔を出したおかげで、何とか空間転移のタネが把握できた。
・・・影を利用した空間移動。つまり影に潜って影から飛び出ることで移動するのがこの戦闘の種だ。
一気に全身が姿を現すわけじゃないから、それを想定していた感知魔術でも感知が難しかった。
だが、種さえわかればある程度の警戒はできる。用は足元に常に注意を放っていればいいだけだ。
「・・・じゃあまあ、そろそろ反撃させていただきますよ?」
祐斗Side
高速で振るわれる如意棒もどきを、僕は身をひねって回避する。
本来、食品を置く棚が乱立している状況下において棒術は真価を発揮しない。
そこをついて、短めの聖魔剣による接近戦に活路を見出そうとしたが、しかし相手のほうが一枚上手だった。
この如意棒のようなアーティファクトの能力は非常に単純だった。
長さと太さを自由自在に変更できる。とても分かりやすく、しかし厄介な能力だ。
「はぁああ!!」
長めの警棒ぐらいの長さにした由良さんと、近距離での攻撃をぶつけ合う。
二刀流にすることで手数で上回ったかと思ったが、どういう理屈か今の由良さんの身体能力は下手をすれば禁手状態のイッセーくんとも並びかねず、パワーで押し返される状態だ。
間違いなく強敵だ。しかも聖魔剣を切り替えて不意打ちしようにも、その身体能力は激しく強化されておりギリギリのところで対処される。
ならば機動性で翻弄しようにも、アーティファクトの伸ばせる限界はどうやら非常に長いらしくそれもむり。二十メートル近く離れたところから攻撃を受けたときは危なかった。
しかも時折あの高速移動で距離をとったりつめたりして攻撃を入れてくる。
今まさに、完璧に翻弄されていた。
だが、それでも勝算は十分にある。
確かに宮白くんは戦力計算で致命的なミスを犯していたのかもしれない。
だが、戦場の把握においてはこちらのほうが優勢だ。
それを今から見せつける!
戦闘しながらようやくたどり着いたのは小麦粉売場。
万が一戦闘状態になった時のために、宮白くんがプランを立てた戦闘用の攻略場所だ。
「・・・さすがに、ここまで来られるとは思わなかった」
すぐに僕に追いついた由良さんが、油断なく獲物を構えながら僕を鋭くにらむ。
「だがここまでだ。この直線的な場所では、こちらのほうが有利だろう」
確かに、一見すれば彼女のほうが有利だろう。
あの神速の移動法がある以上、直線的な機動では僕のほうが劣る。
そして横への移動が難しいこの状況下では、僕の機動性能は逆に封じられているようなものだ。
「・・・決着をつけよう、
通路一帯に風の魔剣を生み出して一気に面制圧を行う。
だが、それを斜め上に飛び上がるように高速移動することで一気に交わした由良さんは、天井を蹴ってこちらに急降下する。
「これで終わりだ!!」
「ああ、・・・君がね」
僕は二種類の聖魔剣を呼び出した。
イッセーSide
通路の向こう側から、爆発音が響き渡った。
『ソーナ・シトリー眷属の戦車一名、リタイア』
「んなっ!? な、何があった!?」
「え、由良先輩!?」
まさかいきなり本陣で大爆発するとは思ってなかったのか、匙と後輩の兵士が驚いてその方向を振り返る。
だがそれは隙だらけのうっかりミスだ。
その瞬間は逃しはしない!!
『リアス・グレモリー眷属の僧侶一名、リタイア』
「ってぇえ!?」
いきなり耳に入ってきた言葉に、俺もつい度肝を抜かれてしまった。
んでもって慌てて振り返ったら、こっちもあわてて振り返った匙と目が合った。
「・・・おい、なんだよアレは」
「いや、そっちこそなんだよ」
「いや、俺たちは食料品売り場だしニンニクつかってギャスパーくんをやっつけようぜって話になって。会長がさすがにニンニク対策は特訓の内容に入ってないだろうから可能性は十分にあるっていってたから、ついでに調理器具使ってペースト状にしたりガーリックバターも使ったりでちょっと桜花が徹底的に装備をしてて」
「いや、宮白は本陣強襲が失敗したら、小麦粉売場で粉塵爆発起こしてとりあえず1人片付けろって。前から考えてたのか木場に対爆発の加護を与える聖魔剣と、一定範囲の粉を排除することに特化した聖魔剣作らせてたみたいで」
何とも言えず沈黙してしまった。
なんていうか、反応に困ってつい動きが止まってしまう。
そんな俺たちを叱責するように、後輩たちからの怒声が響いた。
「せ、先輩! 漫才やってる場合じゃないです!!」
「イッセー先輩! すでに二分経ってます! 早く禁手化を!!」
「「・・・あ!?」」
あっぶねぇええええ! かろうじて耐えきったの忘れてたよ!
すでに強化武装もボロボロだし、いい加減禁手化しないと身が持たねえ!!
「と、とりあえず
俺はあわてながらも急いで鎧を身にまとう。
全身から強烈なオーラがはなたれ、それが鎧と化して俺の体を包む。
間違いなく今の匙は強敵だ。この時間で一気に叩き潰す!
「反撃タイムと行かせてもらうぜ、匙!!」
「来やがれ兵藤! 返り討ちにしてやらぁああああ!!」
真正面から殴りかかるが、匙は伏せてそれをかわすと、ラインの一つを俺の体にくっつける。そのまま飛び上がると、さらにラインを天井へとくっつけた。
そのまま匙がラインを縮めれば、その勢いで俺の体は引っ張られて、その勢いで天井の照明にたたきつけられる。
「なめんじゃねええええ!!」
だが俺だって負けちゃいない。
引っ張られながらも匙の体をつかむと、たたきつけられた勢いで天井にたたきつけ返した。
そのまま重力に従って落下をはじめながらも、俺と匙はこぶしをたたきつけあう。
「部長の乳首に触れて覚醒したこの赤龍帝の鎧、発動した状態で負けてたまるか! 部長の乳首にかけて!!」
「ふっざけんな乳首って頭おかしいのか!! っていうか裸見るとか添い寝するとか風呂入るとか乳首ふれるとかうらやましいなオイ!! 俺にもちょっとぐらい分けろ!!」
「うるせえこの野郎! 別にエッチなことしてるわけじゃねえんだからそこまで言うことねえだろうが!!」
「死ねよお前マジで!! そんだけしてもらえば十分だろうがこの野郎!!」
いつの間にか地面に墜落していたが、そんなのが気にならない勢いで殴り合う。
禁手化して圧倒的なスペックさを発揮しているはずなのに、匙の奴は一歩も引かなかった。
「出来ちゃった結婚どころか手を触れることすらできない俺の身にもなれ!! しかも会長のファーストキスは・・・ファーストキスはぁあああああああ!!」
「・・・あ、ごめん。俺のファーストキスは部長のファーストキスだったから」
「本当にマジで死ねっていうか殺してやるよぉおおおおお!!?」
あれ!? なんかむしろ押されてるよ!?
「お、落ち込んじゃダメです先輩! 私のファーストキスは残ってますから!!」
なんか外野が何か言ってるけど、俺も匙もそんなことを気にしている場合ではない。
「裸どころか下着姿も、そもそも夏休みに生徒会全員で来たっていうのに水着だって拝んでないんだぞ!? お前はいいよなぁプールで美女二人がオイル塗る塗らないで喧嘩するぐらいでよぉ!!」
「お前はあの壮絶な戦いを見てないからそんなことが言えるんだ!! 俺だって一度殺されたりボコボコにされたりひどい目にあってんだ、役得ぐらいあってもいいだろうがぁあああ!!」
殴られたら負けじと殴り返す。
もうこの流れは意地だ。
男としての意地と根性で殴り合う。
だけど、それでも今の俺の性能は基礎からして違いすぎる。
少しずつ、少しずつだけど押し返し始めていた。
「そもそもハーレム王になる俺の夢には程遠いんだよ! こんなところで躓いていられるかこの野郎!!」
それで、匙は倒れない。
「・・・ああそうかよ。だがなあ、俺だって夢のために頑張ってんだよ!!」
ラインの一つが証明があったところにつながり、そして匙の拳が俺にぶつかる。
それと同時に、鈍い痛みが全身を走った。
「ぐ、ぐああああああ!?」
『まずいぞ相棒! あの男、電流をラインでお前に流している!!』
なんでそれで感電してないんだよ!?
『思った以上にあの神器の能力を使いこなしているようだ。多少は感電しているだろうがダメージと言えるほどではない』
「いっただろう? 俺だって特訓してるってよぉ!!」
電流を流しながら、匙はさらに拳を叩き込む。
タンニーンのおっさんが言っていた。こもった一撃は強力だって。
それが今なら痛いほどよくわかる。
これが、思いのこもった一撃ってやつか。
「誰だって、真面目に勉強して学べば程度はともかく普通は成果を出せる。そんな日本じゃ当たり前のことが冥界じゃできない。それを何とかしたい会長の想いを、俺も絶対に叶えたい!!」
痺れて動きが乱れた瞬間を、さらに連続して拳が叩き込まれる。
「俺だって叶えたい。教師になりたい! 人に何かを教えたい!!」
『ソーナ・シトリー眷属の兵士一名、リタイア』
いつの間にか小猫ちゃんが会長の兵士を倒していたけど、だけど手出しはしてこない。
「なんで俺たちの夢が笑われる必要がある!? 何かおかしいことを言ったかよ!?」
違う。手を出さないんじゃなくて出せないんだ。
畏怖すら感じる匙の気迫に、完全に飲まれている。
「だったら結果を出して黙らせる! そのためにもお前は叩き潰す!!」
俺はその姿に、恐怖すら感じた。
だけど・・・。
「ああ、そうかよ。だけどなぁ!!」
右腕で匙の腕をつかむと同時に、奥の手を発動させる。
『Divid!』
白龍皇の籠手。
ヴァーリから奪った白龍皇の力を発動する俺の奥の手。
発動しても成功するかどうかが微妙な挙句、成功しようが何しようが生命力を削るから、アザゼル先生にも仕様は控えるように言われていた。
だけど、それじゃあこいつには勝てない。
ここまで根性入れてきた相手に、そんな気構えで勝てるものかよ!!
「俺だって気合い入れてここまで来てんだ!! 来いよ匙!! この程度で俺はやられないぜ!!」
さあ、決着をつけようか、匙!!
Side Out
・・・ちょっと色々あって活動報告に新ネタを出してみました。
思いついた方がいたらぜひどうぞ。お待ちしています。