シンフォニアディズ   作:連蓮漣煉

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Aパート


Aパート
願光クリアオブリージュ


 H町のG地区――そこに俺の家はある。

 あたりはとっくに暗く、まさに夜と呼ぶにふさわしいくらいに暗闇の世界に変わっていた。

 家の居間で、テーブルを向かい合いで座る。

 他人から見ると見合いか何かなのかと思われそうな光景だが、実際問題は違う。

 

 家に帰り、すぐに万能地デジ化テレビを使って、ばらばら殺人の情報を聞いたが、リーゼの言ったとおり、被害者は俺〈柊裡音〉だった。

 ばらばら殺人として、大胆にも道端でその死体は発見されたらしい。頭部、腹部、足部はすべてそろっているが、なぜか右手だけが見つかっていないという。寒気が走り、自分の体が見つかっていないの聞くと不気味になってくる。

 死体から発見された学生手帳で身元を発見。

 幸いにも、その学生手帳に書かれていたのは俺が住んでいたまえの家のために、現在俺が住んでいるこの場所はまだ発見されていない。

(でも、いずれここも離れたほうがいいか……何かと面倒なことになる前に……)

 

「死んだことについては……このニュース速報見て、わかった。死んだのは、今から大体二日ほど前ってとこか。自分が何で死んだのかは、このニュースの情報聞けば一発でわかる……」

「そう……」

「でも、わからないことが一つだけある。なんで犯人は俺を狙ったのかだ。俺は他人との接点はおろか、家族との接点もいまいちだった。そんな俺を狙う理由がその犯人にはあったのか?」

「……ないとまでは言い切れない。そこまでワタシに詳しい情報は知らされてないから。でも、それ以上知ってあなたにとって何になるの?」

「――何にもなんないだろうな」

「じゃあ、何で?」

「知らねえよ。でも、感覚として言うなら、自分のことだから……なのかもな。他人のことに関しちゃ、俺は知ったことじゃない。でも、自分が関係しているなら、それはもう自分の問題。だから知りたい。……ま、そんな感じだな」

「……真っ当な意見。普通の人ならそこは『なにがなんでも』というところなのに」

「俺もそんなつまらないことをいう人間だと思ったか? それは、俺をなめてる感想として受け取っていいのか?」

「違う」

「じゃあなんだ」

「……わからない」

「なんだ、そりゃ……」

 感覚のズレってやつなのか? ま、興味ないから別にいいんだけどな。

 

「とりあえず、自分の最後はわかった。次に教えてもらいたいのは――」

「死人に、ついて」

「そうだな」

 はっきりいって、それが一番よくわからない。幽霊やゾンビなら、なんとなくどんな風になっているのかが想像できる。でも、これは別だ。聞いたこともなければ、自分の状態がどうなっているのかさえいまいちだ。

『何も変わっていない』それが素直な感想。どこも異常になっている部分が見られない。

「見た目じゃ、どこも変わってねえよな……」

「実際そう」

 リーゼがそういう。

「はっ? じゃあ、どこが変わったんだよ。幽霊みたいに壁をすり抜けるとか、ゾンビみてぇに打っても切ってもしなねえのか?」

「違う。見た目も外見的にもなにもかわってない。変わったのは、もっと根本的な部分」

 根本的……?

「今のあなたには……自分という存在、今生きる意味を知る力がある」

「今生きる意味? それってどういうことだよ?」

 

「……死人は人間と違って、寿命が存在しない。しかし、死人が死なないわけでじゃない。自分の生きれる『時間』というものが存在するの」

 

「時間……? それって、今もこくこくと減っているのか?」

 こくっ。リーゼが頷く。

「でも、あなたは死人として転生したばかり。少なくとも、後半年は生きられる」

 それでも、短いんだな……。

「でも、それと力とは何一つ関係がないじゃねえか」

「死人はあなた一人ではないの、何百……何千人も死人は存在する。あなた一人が死人というわけじゃないの」

「――!?」

「その中には、時間が残り少ない死人だっている。時間は死人同士でしか奪えない。だから戦うの。自分の運命をかけて」

「……マジ、かよ」

 いまどきそんなリアル体感バトルをやってはやるのか?

「少なくとも、この町にはあなたを抜いて六人の死人がいる。少なくとも、その中の一人か二人と接触して、戦う可能性もある」

「そのための力ってわけなのか? でも、それってよ……」

 ――いくらなんでも、出来すぎている(、、、、、、、)んじゃないか。まるで、そうなることを望んでいる(、、、、、、、、、、、、)かのように。

 

 その言葉を俺はのみこんだ。なにか、嫌な予感がしたからだ。

 

「いや、なんでもねえ……」

「……そう?」

「力の話に戻ってくれ」

 こくっ。リーゼが頷く。

「力は、あなたの願いを媒体に、構成されているの。願いの本質がその力の特性を生み出している」

「はあ? 意味がわからない。つまり、どういうことなんだよ?」

 リーゼはしばし言葉を選ぶ。

「……つまり、願いによって、その死人が使う力は違う」

「あ、ああ! なるほどようやく理解できたぞ」

 つまり、使う人によって能力は異なるってことか。

「じゃあ、俺の願いは――」

「あなたの願いは『根本的な部分に戻る』こと」

「その願いを糧にして出来た俺の力ってのは……いったい――」

「ここから、ワタシにもわからない」

「ワタシにもわからないって……死神もいい加減だなぁ~」

「実際に見てみるしかないと思う」

「……それも、そうか。……じゃあ、俺はなにをすればいいんだ?」

「力は個々によって違う。それはあなたが見つけるしかない。なにか手がかりになるものはないの?」

「……あのな、俺がそんなもんしるわけねえだろ! 第一、自分がばらばら殺人巻き込まれていたこと事態しらな、かっ……た――」

 リーゼが首をかしげる。

「……? どうしたの?」

 

 そういえば、俺の右手だけはこのばらばら殺人の中で見つかっていない。なのに、今の俺にはちゃんと右手が存在する……――

 

「手がかり……発見した」

 俺は自分の右手を正面へ持ってくる。

「そう……。じゃあ、頭の中で思い浮かべて。自分が思った願いを――」

 俺は意識を右手に向けながら、頭の中で思う。

 

 ……すると。

 

「っ!?」

 なんの予兆も、タイミングもなしに自分の腕が白く燃える炎に包まれた(、、、、、、、、、、)のだった。


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