シンフォニアディズ   作:連蓮漣煉

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プロローグ


プロローグ
人生終了ジャストタイム


 ――……自分という存在が時としてわからなくなることがある。

 

 なぜ自分がここにいるのか、なぜ自分が生きているのか。そんなことが時として頭によぎるのだ。

 学校でおちこぼれの不良として謙視され、ついに高校を退学。強制的といえど、自分の居場所なのではないと思った俺は学校からの強制退学をしたあの日もそう思った。

 そんなダメダメな人生を送り続けてなにが楽しいのかなんて、自分のほうが聞きたいくらい自分でもわかってなどいないのだ。

 ……なんで、こんなよくもわからない人生が始まってしまったのだろう。

 きっかけ、といえば思い当たるのは、一年前に起きた“あの事件”がきっかけなのだろう――

 

 その頃の俺の家庭は、どちらの意見にもついて行くことの出来なくなった両親によって離婚が決定していた。

 元々一人っ子だった俺は、両親はどちらかが俺を引き取ることでもめあいになった。しかし、自分はどちらにもついて行かなかった。――一人で生きて行くことを選んだのだ。

 その頃の俺は、親というその存在自体が嫌いだった。

 毎日が地獄、人を恨み、そして……“死ねばいい”……そんな、殺人衝動にもかられていた。

 自暴時期とか、そんなレベルはとっくに通り越していた……

 今にも人を殺してしまいそうなほどに精神が安定していなく、暗闇のまっただかな生活していた。

「病んでいる」その言葉は俺にとってかなり適切だ。

 さほどもめることもなく、あっさり一人暮らしの生活を受理され、最低限の家とお金。最低限のぬくもりとして“柊裡音(ひいらぎりおん)”という俺の名前だけを残し、離婚は確定された。

 やっと一人暮らしになれて、少しは落ち着いた。本当に、少しだけ……――

 一人の暮らしの生活というのは、慣れが基本というがそれはまったくの間違いだと、俺は思う。一人暮らしというのは、ある意味、それまで溜め込んでいた負のオーラをどれだけその生活で吐き出すことが出来るかによって変わってくるのだと思う。

 だから、吐き出すのに時間のかかる俺はまったくをもってなにもできていなかったのだ。

 

 ――それが約一年前の俺だ……。なにも出来やしないのに、出来ている気になっていて、強気になっていた馬鹿な自分。そんな時、“あの出来事”が起こったのだ。

 

          ◆

 

 ほぼ、全体的に森や山しかないのに有名な観光スポットして知られるH町が俺の住むとこだった。

 電車通学で学校に通うにも、行きだけで一時間半もかかるというド田舎から学校に通わなくてはならない。

 だから毎日続けるのも俺の意識を損なうために、通うことを途中で放棄することも多々あり、出席日数などとっくに過ぎ、留年決定を高校一年そうそうから果たしたのだ。

 つるむ友人など一人もいず、教師の目は完全に俺を敵視、二学期中間からなど一回も学校に出などしなかった。そのため、学校教師に呼び出されることが多々でる……。

 ――学校にも不利益なんだ、君みたいな子は!

(黙れ……)

 ――親は離婚し、出来そこないの親ともなれば子の方も同じくらい出来そこないか……

(黙れッ! 黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ……――)

 なんで、俺だけがこんなことにならなきゃいけねぇんだよ……ッ!

 

 ――やり直したい(、、、、、、)原因がある(、、、、、)その根本的な部分から(、、、、、、、、、、)……。

 

          ◆

 

 あの後乱闘を起こした俺は、学校をあえなく退学を果たすことになった……。

 

 外は馬鹿みたいにカップルやら、お祭り、そんなことで賑わっていた。

 生活費に困り始めていために、外には出なくてはいけなかった。

 バイトを探しても、自分の成績やら目つき、言葉遣いなど意味わからないことばかりを並びたてられ落ちる。その繰り返し……――

 やっと見つけたバイトも、よくて二日、最悪一時間でクビにさせられる。なにをやっても長続きをしない……。

(世の中全部クソだッ)……ずっと思っていた思いだった。

“街中で流れる報道ニュース”はいつもうるさくて、俺に時間浪費させることしかしない……。

 だけど、今日はふと目が留まるニュースがやっていた。

 

 ――全身バラバラ殺人……被害者はとある男子高校生。身元が判別できなくなるほどにひどいありさまで見つかり、制服がA高校の男子制服だったために性別が判明。

 右腕が今だこの事件で見つかっていないという……どっちにしろ、俺には関係のない話だな。

 

         ◆

 

 クリスマスの時も同じことをしていた。でも、結果は同じ……――

 町までバイトを探しに出ても、仕事を見つけることはかなわなかった。

 疲れ果て、公園のベンチにもたれ掛け、グチッていたことをよく覚えている。

 そんな時、ふと思った……

 

 ――一から、すべてをやり直したい……。

 

 叶わぬ願いだとしても、誰かが叶えてくれるわけでもないのに願っていた。

 もう、自分がよくわからない。なんでここにいるのか……、なんで生きているのか……。

 そんなどうでもいいことが頭をよぎった瞬間――……自分の目を、目の前のある一点にとどめられたのだ。

 

 色素ない髪、雪のように肌が白い少女……。その少女はどこまでも美しく、どこまでも――白かった。

「美しい」そんな一言でとどめられる言葉なんかじゃない。それを超えるほどの美しさを持つ少女が現れた。白いワンピースのような物を着て、髪を二つに結んでいる。そして、決定的なまでその存在をしらしめるであろう少女の金色の目が印象的だった。

 その少女に言葉を失った俺に、少女の視線がこちらに向けられた。

「ああぁ……?」

 向けられた視線に俺は少女に威嚇する。――さっさとどっかに行ってくれと言わんばかりに……。

 少女の口が開いた。

 

「……“貴方はもう死んでいるのに、なぜそれ以上願う必要があるの?”」

 

「……はぁ?」

死人(しじん)、今のあなたはそれ……。“世界に取り残された”のよ、あなたは――」

「……意味……わかんねぇよ……。勝手に、人を死んだことにしてんじゃねえ!」

 

「否ね、あなたは“確実”に死んだ。死神の、この私が言うわ」

 

「意味わかんねぇこといってんじゃ――」

 しかし、俺はそのとき、確かに聞いた。

 自分は、こんなおかしな世界で一人で生きて行くものなのだとずっと思っていた。つまんなくとも、この現実が永遠に続くと思ってた。

 ……でも――

 いつもうるさく、気を落ち着かせることもできない街中に流れる大音量のニュース速報から突然判明したバラバラ殺人の被害者の名前が――柊裡音と報道され、自分の名前だと気づくまでは……。

 

 そこで自分の「本当」の現実が終わることを、突然とまでに知らされ、自分の中にある何かが「ここで終わりだよ」と告げるかのように――

 目の前の、現実を強制的にのみ込まされている様な感覚だった……


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