東方天狗物語   作:藤村藤村

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第弐話です。
今回はもの凄くへたくそです。
とってもとっても温かい目でご覧下さい。


第弐話 天狗の子孫

「………………? あれ?」

 

 少年は目を覚まし、ふと呟いた。

 そこは畳張りの和室だった。

くすんだ色をした襖。古そうな畳。障子は穴こそ開いていないが長い間使われているのか、所々剥がれかかっている。

 

「僕は何で寝ているんだ?」

 

 そう言いながら目をパチクリさせる。

 

「というか台詞にデジャヴを感じるぞ」

 

 ――気のせいだろうか?

 少年は寝た状態で考える。しかし、頭が良く回らない。霧がかかったように記憶が再生できない。

 きっと寝起きだからだろう。

 そして、しばらくその体勢でいると「起きます」と言って上半身を起こした。その際に背中からポキポキと小気味よい音が聞こえた。なんて事はなかった。

 

「あれ? 鳴らないの?」

 

 そう言いながら少年は背中をさする。

 その時に気付く。自分が今まで寝ていたところに布団が敷かれていることに気付く。

 

「ふうん? …………ふむ」

 

 少年は布団を検分する。

 見る、触る。

 しかし、分かる事はそれが布団であるという事だけだ。

 

「布団っスよ。まごうことなき布団っス」少年はつまらなそうに呟く。「――ん?」

 

 目を覚ましてからしばらく経ったので、少年の頭が正常に働きだす。

 

「何で背中が鳴らなきゃいけないんだ」

 

 沈黙。

 思考。

 しばらくして思い出す。

 

「………………………………………………ああ」

 

 少年は思い出した。

 謎の樹海で目を覚まし。

 考えて。

 現れて。

 後ずさって。

 踏んで。

 鳴って。

 見つかって。

 逃げて。

 また現れて。

 曲がって。

 落ちて。

 囲まれて。

 突いて。

 構えて。

 宣言したことを思い出した。

 

「………………………………………………うわぁ」

 

 少年の顔が紅潮する。

 

「うわあああああ! 恥ずかしい! 恥ずかしいぞぉ!」

 

 少年は何故か悶え始めた。

 四苦八苦。

 七転八倒。

 

「何だあの台詞! 何なんだあの台詞はああああ! とてつもなく中二臭い、中二臭いじゃないかああぁぁ! 恥ずかしすぎる! 誰か! 誰か俺を殺してくれええええ!」

 

 頭を何度も何度も畳に打ち付ける少年。

 傍から見ると頭突きの練習をしているように、見えなくもない。

 三十回程、頭突きを畳に喰らわせた所で少年の動きが停止する。

 

「中二病は不治の病だ」少年は唸るように呟く。「根本的な治療法が無く、誰にでも発症しうる病だ。自然治癒されることが多いが、僕の場合、慢性気味になってる。痛くて痛くて堪らないっすよ(自分の奇行が)」

 

 慢性中二病。少年の言葉を聞く限り恐ろしい病気なのだろう。

 今は関係の無い話だが。

 

「うう、死にてぇ……」

「せっかく助けたのに死んでもらっちゃ困るわ」

「せっかく助けたのに死んでもらっちゃ困るぜ」

 

 唐突に、何の前触れもなく、襖が開いた。

 そして、目に映るのは紅白と白黒の人影。

 紅白の人影は、黒髪の少女。袖が無く、肩と腋の露出した赤い巫女服。頭の大きなリボンが印象的。

 白黒の人影は、金髪の少女。つば広のとんがり帽子。レースをあしらったエプロンドレス。そして何故か、天狗の面を付けている。

 二人の少女――というか金髪の少女を見て動きが止まる。

 ――ふむ……ミスマッチ。

 しばらくの沈黙。

 

「まぁ、何だ…………。とりあえず――」

 

 少年は一拍置いて言った。

 

「僕の面を返せ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「幻想郷?」

 

 幻想郷についての説明を受けた少年はしばし沈黙する。

 

「そうよ。今の説明で理解できた?」

 

 幻想郷の説明をした後、巫女服の少女は少年に確認をとる。

 

「理解はできたが信じ難いと言った感じだな」

「そうでしょうね」

 

 少年と少女二人がいるのはとある神社だ。博麗神社という名前らしい。

 そこの社務所で少年と少女二人は話をしていた。

 卓袱台を挟んで対峙するように話をしていた。

 

「幻想郷……。幻想郷ねぇ」

 

 少年はぶつぶつと呟く。

 また、しばしの沈黙。

 

「そういえば、お前の名前はなんて言うんだ?」

「え?」

 

 巫女服の少女の隣で天狗の面を眺めていたとんがり帽子の少女は唐突に口を開いた。

 

「だから名前だよ、名前。お前の名前まだ聞いてなかったろ」

「ああ、そういえばそうだったな」

 

 少年は納得し、改まって名を名告る。

 

「僕は(あかがね)赤銅(しゃくどう)。赤を銅で挟んで銅赤銅だ」

 

 少年は堂々と言った。

 

「あかがねしゃくどう?」

 

 とんがり帽の少女はオウム返し聞き返した。

 少年――赤銅は漢字が分かっていないんだろうなと思った。『赤を銅で挟んで』という台詞が反って分かり難さを助長したのかもしれない。赤銅としては分かり易くするための台詞だったのだが。

 

「えっと、金銀銅の銅で『あかがね』。赤蜻蛉の赤とまた、金銀銅の銅で『しゃくどう』だ」

 

 赤銅は漢字を丁寧に説明する。二度手間だよなぁと思った。

 とんがり帽の少女は「ふうん」と言った後「変な名前だな」と続けた。

 

「なはは、よく言われるよ」

「それと言いにくい。舌を噛みそうだ」

 

 とんがり帽の少女は名前についての文句を何のためらいもなく言う。

 

「う~ん。それなら赤の字とでも呼んでくれよ」

 

 少女の文句に何も言わない赤銅。お人好しなのだろうか。

 

「わたしは霧雨魔理沙、普通の魔法使いだぜ!」

 

 とんがり帽の少女――魔理沙は決め顔で言った。

 赤銅は『普通の魔法使い』という台詞に少々引っかかったが気にしないことにした。

 続いて巫女服の少女が、

 

「博麗霊夢よ」

 

 と名告った。

 魔理沙と違い、簡潔な自己紹介だった。いやこれが普通なのだろう。赤銅や魔理沙の自己紹介が長いのだ。

 

「よろしく、御両人」

 

 少年はにこやかに笑う。

 

「自己紹介はこの辺にして。なぁ魔理沙、いい加減僕の面を返せ」

 

 先程のにこやかな笑顔から一変、赤銅は真剣な眼差しで魔理沙を見る。

 

「ああ、悪い悪い。いいお面だからつい見入ちゃったぜ」

 

 魔理沙は赤銅の真剣な表情を見て少し驚き、すぐに面を手渡す。

 

「ところで赤銅。そのお面を手離す予定とかあるか?」

「…………あるわけないだろう」

 

 油断したら盗まれる。そんなことを思いながら面を側頭部に取りつける。

 

「これは大事な物なんだよ。貸すのもなるべく避けろって言われてたし」

「誰に?」

「僕のじいちゃん。もう死んじゃったけどな」

 

 死。

 その単語のおかげで場の空気が僅かに重くなる。

 だが、そんな空気を物ともせず霊夢は口を開く。

 

「ついでにこれも返しておくわ」

 

 そう言いながら霊夢は黒い棒状の物を卓袱台に置く。

 それは二本の木刀――ではなく二つに折れた木刀だった。

 

「何と。見事に折れてるな」

 

 特に驚いている様子もなく、赤銅は折れた木刀を手に取る。

 

「それは大事な物じゃないの?」

真逆(まさか)。木刀は消耗品だ」

 

 赤銅は木刀を脇に置き言う。

 

「あれ? というか何で木刀が折れてるんだ?」

「あんたって記憶力無いの? あんだけ大暴れしたのに」

「昔っからオツムは悪くてね」

 

 霊夢は「はぁ……」とため息を吐き、赤銅が忘れているであろう出来事を説明する。

 

「あんたはどこまで覚えてるの?」

「えーと、妖怪に追いかけられて、囲まれたところまで」

「その時何か叫んでたよな、何だっけ? 『赤を銅で挟んで、銅赤銅はこれより、諦めを忘れてお前等と戦ってやる!!』だっけ?」

「いっ、言うんじゃない! あれは若気の至りみたいなもんだから……」

「ほほう」

 

 魔理沙はニヤリと笑う。赤銅は弱みを握られてしまったようだ。

 

「はいはい、話を戻すわよ。あんたは妖怪に囲まれた後、周りにいた妖怪を全部倒したのよ」

「倒した? 僕が?」

「そうよ。その最中に木刀が折れたの」

「…………」

「で、妖怪を全部倒した後、糸が切れたように気絶したのよ」

「それで、気絶した赤銅を私たちで運んだんだぜ」

 

 赤銅は記憶の海を探る。

 しかし――思い出せない。

 

「その時の赤銅は凄かったぜ。何というか、無双! みたいな感じだったぜ」

「無双ねぇ……」

 

 全く実感がわかない。妖怪に囲まれた時はヤケクソというか自滅覚悟というか、勝算があって戦おうとした訳じゃないのだ。

 しかし、赤銅は妖怪を駆逐した。いや言い方を変えよう。霊夢の『倒した』という台詞もオブラートに包んだ言い方なのだろう。

 赤銅は妖怪を皆殺しにした。

 それは揺るぎない事実だ。

 

「相も変わらず――世界ってのは意味不明だ」

「? 何それ?」

「口癖だ。聞き流してくれ」

 

 世界よりあんたの口癖の方が意味不明だ。霊夢はそんな事を思った。

 

「なあ、赤銅。私からも聞いていいか?」

 

 魔理沙は霊夢説明が終わるのを見計らって赤銅に訊く。

 

「いいけど……。何を?」

「大したことじゃないんだけど――」

 

 魔理沙は一拍置いて、

 

「外の世界の人間って、みんなお前みたいな格好してるのか?」

 

 と言った。

 

「道着と袴のこと言ってるのか? 僕はちょっと剣術やってるからこういう格好してるだけで、普通は、洋服を着る奴の方多いぞ」

「ん~。そうじゃなくて、お面とか一本下駄のことを訊いたんだ」

「面? 一本下駄?」

「そう。何か天狗のコスプレしてるみたいだなあ、と」

「ああ」

 

 そういうことか。

 赤銅は思い出す。懐かしい記憶だ。

 五歳の頃に履かされた一本下駄。

 今は亡き祖父に託された、天狗の面。

 とても懐かしい。

 

「面と一本下駄についての説明はちょっと長くなるんだけど、聞くか?」

「おう、聞きたいぜ」

 

 魔理沙の返事を訊いた後、視線を霊夢の方へ移す。

 霊夢はそれに気が付き、

 

「手短に話してよ」

 

 と言った。

 さて、どこから話したものか。

 赤銅が話の構成を考えていると、

 

「私も聞きたいわ~」

 

 と、どこからか声が聞こえた。

 赤銅は咄嗟に、霊夢と魔理沙の方に視線を向けるが、途中で気付く。

 ――今の声は二人の物じゃない。

 じゃあ、誰の声だ?

 赤銅の頭は少し混乱する。

 

「紫……。いるなら早く出てきなさい」

 

 その混乱を打ち消すような凛とした声で霊夢は言った。

 

「はいはい、今出るわよ」

 

 その声と同時に、虚空に切れ目が入る。切れ目が開きそこから一人の女性が上半身を覗かせる。

 霊夢や魔理沙より少し年上、いわば大人っぽい女性だ。

 鮮やかな金色の長髪。紫色のフリルのついたドレス。白い扇子。

 美しいという単語はこの人のためにあるのではないかと思えてしまうほど、美しい女性だ。

 

「こんにちは、赤銅くん。私は八雲紫。ゆかりんって呼んでね」

「……………………………………は?」

 

 自分より年上であろう女性に、可愛らしいあだ名で呼ぶことを要求された。

 虚空から急に現れるよりそちらの方に驚いてしまった。

 若作り?

 

「えっと、僕は銅赤銅っス。どうぞよろしくお願いします、紫さん」

「ああん、ゆかりんって呼んでってば」

 

 虚空に浮かぶ切れ目から素早く出て、赤銅の横に座る。

 

「ち、近くないっスか?」

「ゆかりんって呼んでくれたら離れてあげるわ」

 

 そう言いながら、紫は体を密着させてくる。

 

「う゛う゛ん。紫、神聖な神社でそういう事はやめてくれる?」

 

 睨んでいる。物凄い眼差しで紫を睨む霊夢だった。

 

「あら、ごめんなさい」

 

 悪びれる様子もなく、紫は赤銅から離れる。

 

「え~と、霊夢。この人は……」

「八雲紫。この幻想郷を作った妖怪よ」

「何と……!」

 

 赤銅は改めて紫を見る。

 霊夢曰く、妖怪らしいのだが。

 ――人間にしか見えない。

 

「赤銅くん。この幻想郷ではね、力の強い妖怪は人型になることが多いのよ」

「そうなんスか……」

 

 ということは赤銅を襲った妖怪は紫より力の弱い妖怪なのだろう。見た目では紫の方が弱く見えるが。

 

「で、何で紫がここにいるのよ」

 

 紫と赤銅の会話を遮るように霊夢は言う。

「なんだか、外来人がいる様な予感がしたのよ」

「…………」

 

 疑いの眼差しを紫に向ける。というか睨んでいる。

 

「なあ、いい加減、面と一本下駄の説明をしてくれないか」

「え? ああ、ごめんごめん」

 

 紫の登場で、有耶無耶になっていたが、赤銅がなぜ天狗の面を付け、一本下駄を履いているかの説明をする途中だった。

 

「僕はコスプレとかそういう理由で面と一本下駄を見つにけてるわけじゃなく、ちょっとした理由があるからこういう格好をしているんだ」

 

 

 

「端的にいうと――僕は天狗の子孫なんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鞍馬天狗って知ってるか?」

 

「京都にある鞍馬山に住んでいたとされる天狗の事を言うんだけど」

 

 

「その中でも鞍馬山僧正坊っていう大天狗が有名だな。かの有名な源義経公に剣術を授けたって伝説もあるぐらいだからな」

 

「うちの一族はその天狗の子孫を主張してるんだ」

 

「本当かどうかは分かってないんだけどな」

 

「一説によると鞍馬山に住んでいた僧がそれだって言われている」

 

「それの説も確かな証拠があるわけでもないけどな。歴史ってのは曖昧なものだし」

 

「ん? いやいや、天狗の子孫だからこういう格好してるわけじゃない。僕も普段は洋服を着てる」

 

「えっと、幻想入りだっけ? 幻想入りした時の状況がちょっと特殊だったんだよ」

 

「うちの家は剣術道場を開いてるんだ」

 

「大人から子供まで、どんな奴でも来る者拒まずの精神で剣術を教えている。あと護身術も少々」

 

「じいちゃんが師範を務めてるから、小さいころから剣術を習わされたんだ。厳しい人でね、防具も何も付けてない状態なのに木刀で打ちこんでくるんだ」

 

「あのときは死ぬかと思った」

 

「けど去年、病気で死んじゃってね」

 

「今は、じいちゃんの一番弟子だった人が師範を務めてる」

 

「僕が師範を務めた方がいいんじゃないかって意見もあったんだけど、それは丁重に辞退したよ。僕は師範を務められるほどの技量は持ってないからな」

 

「……すまん。話が逸れた」

 

「とにかく、うちが剣術道場というのが関係してくるんだ」

 

「うちの道場では、毎年ちょっと特別な稽古をやってるんだ」

 

「天狗稽古、っていうんだけど」

 

「十歳くらいの子供を対象にやる稽古で――稽古って言っても実際は行事みたいなものなんだけどね」

 

「内容は、山の中で子供たちが、天狗の格好をした人と試合をする」

 

「そんな感じだ」

 

「言っちゃえば、源義経公の伝説に肖ろうって訳だ。源義経公のような武芸者に成れるよう願いを込めて、天狗と稽古をする」

 

「で、その天狗役に僕が選ばれたんだ」

 

「一昨年まではじいちゃんがやってたんだけね……」

 

「ま、死んじゃったから仕方ない」

 

「だから僕は天狗の格好をして、子供たちが来る前に山の中で待機してたんだけど……」

 

「びっくりなことにそこからの記憶が全くない」

 

「多分その時に幻想入りしたんだと思う」

 

「………………まぁ、要するに」

 

「天狗稽古をする途中に幻想入りしたから天狗の格好をしてたわけだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天狗の子孫……?」

 

「そ、鞍馬天狗が頭領――鞍馬山僧正坊の子孫」

 

 魔理沙は何とも言えぬ顔をしていた。

 

「ま、その話は聞き流してくれて構わない。本当かどうかも分からない曖昧な話だからな」

 

 赤銅は特に何の感情もなく言う。赤銅自身もあまり信じてはいないのだろう。

 霊夢は無表情。

 紫はにこにこと笑っている。

 

「けど、幻想郷があるくらいだもんな、天狗の子孫って話も強ち嘘じゃないのかもしれないな」

 

 なはは、とおどけるように笑う赤銅。

 この笑い方を見る限り、やはり天狗の子孫なんて言う法螺話は信じていないのだろう。

 

「話は終わった?」

「応、僕の話は終わりだ」

「そ。じゃあそろそろ帰る?」

「帰る――って何処へ」

「外の世界よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 霊夢曰く、外の世界から幻想郷に迷い込んだ人間。すなわち外来人を外の世界に帰してやるのも仕事の一つらしい。

 

「このまま帰るのも勿体ない気がするな」

「そんなこと言ってるとまた妖怪に襲われるぜ」

「それは困る」

 

 魔理沙と赤銅はどうでもいい話をする。

 一方、霊夢は赤い鳥居の前で何やらぶつぶつと唱えている。何でも幻想郷を囲む結界に穴をあけているらしい。

 

「ねぇ、赤銅くん。幻想郷に残る気は無いかしら」

「楽しそうなところではあるんスけどね。残るのはちょっと無理っスね」

「え~、どうして?」

「何と言いますか、場違いな気がするんスよ」

「そんなことないわよ。赤銅くんは天狗の子孫なんでしょう」

「違うと否定できないっス」

 

 そんな事を話していると、鳥居から強い光が発せられる。

 そしてしばらくすると光は収まる。光が収まった鳥居を見るとそこだけ空間が歪んでいた。まるで水面の様な、鏡面の様な。

 

「はい。これで外の世界と繋がったわ」

 

 霊夢は何かを呟くのをやめ、こちらに振り向く。その顔には若干の疲れが見える。

 

「ありがと、霊夢」

「礼なんかいいわ、早く行きなさい」

 

 霊夢は赤銅を急かす。結界に穴を開けておくのは疲れるのだろう。

 

「そんじゃ」

 

 赤銅は三人の顔を見る。

 もうちょっと時間があればいい友達になれた気がする。

 しかし、それは叶わない。

 赤銅と霊夢たちは、文字通り住む世界が違うのだ。

 だから――

 

「さようなら、御三方」

 

 未練を振り切り、元いた場所に帰る。

 大手を振って歪んだ空間へ歩みだす。

 その瞬間――

 右手に激痛が走る。

 

「いっ!?」

 

 痛みに驚き、手を引っ込める。

 恐る恐る、右手を見てみると、指先の皮が溶け火傷のようになっている。

 

「おいおい、真逆」

 

 左手人差し指で、歪んだ空間をつついてみる。

 その瞬間、歪んだ空間は強い光を放ち爆発する。それと同時に人差し指に激痛が走る。

 今度は見る必要はない。右手と同じ惨状になっているだろう。

 とりあえず――

 

「帰れない?」

 

 銅赤銅は幻想郷から帰れなくなった。

 

 




こんにちは、藤村藤村です。
今回は七千字を超えてしまいました。
二話に分けてもいいような気がします。

ぼくの中ではこの第弐話までがプロローグみたいなものだと思っています。
プロローグ、第壱話、第弐話はなんというか原作キャラの魅力を全く出せていません。はっきりいってつまらないです。
なので、読み飛ばしても構わないです。(第弐話の後書きで言うことじゃありませんが)
第参話からは原作キャラの魅力を生かせるように頑張ります。

それではこの辺で。

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