ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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ご要望があったので第0部を始めます
ただし、本編がメインですのでこちらはかなり亀投稿です
あとネタバレ注意ですので後でまとめ読みしたい人は一旦お帰り下さい


第0部 ゼロ、そして始まりへと続く物語
黄金体験な日々


 

 

 

 

 

 

 四月。数々の学校や企業では入学式や入社式の季節であり、多くの人にとっての出会いが待っている時期でもある。それは、この希望ヶ峰学園においても例外ではない。希望ヶ峰学園は、他の高校のように入試や推薦で入るようなところではなく、スポーツから芸能、素行や出生に至るまでの各分野のスカウトがその道のエキスパートである生徒たちをヘッドハンティングし、半ば強引ではあるが転入という形で入学するのが一般的である。それ以外の方法は、何万分の一の確率で行われる抽選による『超高校級の幸運』枠によって決められる枠しか存在しなかった。

 とはいえ、この希望ヶ峰学園は世界的に見ても凄まじいネームバリューを誇り卒業するだけでどんな名門校にも負けない肩書きを手にすることができ、さらに政府や各スポンサーからの手厚い支援を受けられるとあって生徒たちとっても決して悪くない環境ではあった。

 

 そして今日、希望ヶ峰学園第78期生の入学式を迎えたこの日。教室に集まった今年の新入生たちは…

 

大和田「んだとテメエ!もう一回言ってみろ!」

石丸「何度でも言ってやるともさ!その髪型と制服は明らかに校則違反だ!先生が来るまでに今すぐ戻してきたまえ!!」

 

 殺伐としていた。

 

桑田「ま、舞園さやかちゃんだよな!?俺、桑田怜恩ってんだ!よろしくな!」

舞園「…はい!よろしくお願いします!……フゥ」

山田「だぁーかぁーらぁ!何度も言うように同人誌とは単なるパクリやエロばかりではござらん!毎度毎度同じような書き方でごまかしている小説家に文句を言われる筋合いはないッ!!」

腐川「い、言ったわね、この眼鏡豚!!」

セレス「…まったく騒がしいオタクどもですわね」

朝日奈「あ、あの!…よ、よろしくね!」

大神「…うむ」

葉隠「ピンときたべ!お前多分男だろ!俺の占いは三割当たる!」

不二咲「ち、違うよ!」

十神「…フン、下らん」

霧切「……」

江ノ島「キャハハハ!こいつらくっだらねーッ!ホントに『超高校級の才能』なんてあんのかぁ!?」

戦刃「じゅ、盾子ちゃん…」

 当然といえば当然である。みなすぐれた才能を持つが故に個性的、悪く言えば我が強い生徒ばかりだ。そんな生徒たちを一つの教室に閉じ込めようものなら、当然摩擦が生じる。今期生のみに関わらず、それは希望ヶ峰学園に入学したすべての生徒たちに言えることであり、この騒動も決して珍しいことではなかった。

 

 

 

 この後に入ってくる、十六人目の生徒を除いては。

 

 

 

 そしてその十六人目の高校生はというと、未だ教室には向かっておらず学園の中の一室にてある人物と対面していた。

 

???「わざわざ来てもらって済まないね。まあ立ち話もなんだから、そこにかけて貰ってもいいかな?」

苗木「では遠慮なく。…僕もあなたと話してみたかったと思っていました。希望ヶ峰学園学園長、『霧切仁』さん」

 部屋の奥で椅子に座り机越しにその生徒を見ているのは、希望ヶ峰学園の『表向き』の最高責任者、学園長『霧切仁』。その向かいのソファに座り、見定めるような視線で学園長と向かい合うのは、希望ヶ峰学園第78期生にして『超高校級の幸運』と『超高校級のギャング』という二つの肩書きを持つ少年、ギャング・スター『苗木誠』である。

 

仁「…話には聞いていたが、こうして相対して見ると君という人間がどれだけ完成された物なのかということがよく分かるよ」

 そういう学園長は、正面でこちらを見る少年をじっくりと観察する。小柄なものの決して華奢ではない肉体、金髪金眼の中性的ながらも整った容姿、そして何より学園長である自分と相対しているにも関わらず視線一つ揺らがない胆の据わり様。そのどれもがこれまで自分が受け持った生徒達とは一線を画すものがあった。

 

苗木「お言葉ですけど、僕が完成されているというのはすこし言い過ぎですよ」

 そんな学園長に、苗木は一切躊躇うことなく言葉を発する。

 

仁「いや、君はいつか…むしろ今の時点でもこの希望ヶ峰学園において最も優れた生徒だろう。才能とか頭のできだとかそう言う次元の話じゃあない。人間として、君はすでに理想の形を成しているといっても過言ではない」

苗木「言い過ぎですって…。それに、僕は完成された人間になんてなりたくはありませんよ」

仁「…どうしてだね?」

苗木「『完成』というのは非の打ちどころない状態、すなわち一つの『終わり』を意味しています。完成された人間の成長はその時点で終わってしまう。僕はまだまだ成長したい、より多くのことを学び、それを糧により成長してそれを僕の「パッショーネ」に還元していきたい。僕はその為にこの学園に来たんです。『終わりがないのが終わり』、人間とはそういうものなのです。だからこそ、完成された人間以上に詰まらない存在なんてないんですよ」

 苗木の言葉に、学園長は思わず言葉に詰まる。苗木のそれは、この希望ヶ峰学園の『真の目的』を否定しかねない持論である。それを受け入れてしまったとき、自分は果たしてこの椅子に座っていることに耐えられるだろうか。学園長、霧切仁の頭にはそんな考えがよぎっていた。

 

キーンコーンカーンコーン

 ちょうどその時、学園のチャイムが鳴り響く。それが示すのはホームルームと、そのあとにある入学式の合図である。

 

苗木「おっと、そろそろ行かないと遅刻してしまう。…では学園長、手短で済みませんけどとりあえずこれで。なにか力になれることがあったらなんでもお手伝いしますよ。また後ほどお会いしましょう」

仁「あ、ああ…ではまた後で…」

 苗木は立ち上がって学園長に一礼すると踵を返して学園長室を去る。それを見送った後、学園長は普段大事にしまっている秘蔵の葉巻を一本取り出し、それに火を点け一服した後呟く。

 

仁「…吸血鬼『DIO』の息子にして『ジョースター家』の血を引く少年、苗木誠。彼がこの学園にもたらすのは混乱か、希望か。彼を選んだ私にはそれを見届ける義務がある。霧切仁、一世一代の大博打だ。苗木君、君の中にある『黄金の精神』とやらに期待させてもらうよ」

 霧切仁。学園の『真の目的』を行動理念としながらも、誰よりも『希望』を愛し生徒たちの事を考えている人物。彼の期待が正しいものであったということが証明されるのは、そう遠くない未来の事である。

 

 

 

仁「……でもそれ以前に響子と仲直りできるのかなぁ~?響子絶対私の事恨んでるだろうしなぁ、この学園に来たのもその為だろうし……最悪絶縁かも!?ああ~!わが妻よ、娘に縁を切られてしまったら私はどの面を下げて君に逢うことができるんだ!?…苗木君に仲を取り持ってもらおうか?何でもするって言ってくれてるしなあ…。でも響子が苗木君のことを気に入ってくれるだろうか?…むしろ好きになってしまったらどうしよう?ああ~っ!それはそれで耐えられないッ!!」

 …そして『超』が付くほどの親馬鹿でもあった。

 

 

 

 

 

 その頃、第78期生が集う教室では最初のホームルームが開かれようとしていた。

 

教師「…えー、ではこれより栄えある希望ヶ峰学園第78期生のホームルームを…」

石丸「待ってください先生!まだ来ていない生徒が一人います!」

 石丸清多夏がそう言って指差した先には、16個ある席の中で唯一誰も座っていない席があった。

 

教師「ああ、彼は少し遅れると学園長から連絡をもらっているから別に…」

霧切(…あの人がわざわざ一生徒の用事を?)

石丸「いいえ!このホームルームは我々の記念すべき最初のホームルーム!きちんと全員が揃ってから始めるべきだと思います!」

大和田「…ケッ、遅刻ヤローなんぞ放っておけばいいんだよ」

 石丸に食って掛かったのは先ほども喧嘩になっていた大和田紋土である。

 

石丸「いやっ!揃ってからでないと駄目だ!君のような考えの生徒がいるからから風紀が乱れるのだ!」

大和田「ああ?それは俺に出てけっつってんのか?」

教師「お、落ち着いて二人とも…」

大和田、石丸「「先生(先公)は黙っててください(黙ってろ)ッ!!!」

教師「…はい」

 希望ヶ峰学園では何分生徒の方が教師より優秀な場合が多くある。それ故に学園内における教師の立場は、一部を除いて弱い傾向にあるためこうして押し切られてしまうことが多くあった。

 

とその時、

 

ツカツカツカツカ…

葉隠「…お?来たみたいだべ!」

 葉隠康比呂の言葉に耳を澄ますと、確かにこちらに向かってくる足音が聞こえる。ホームルーム中にに廊下を出歩く人などそうはいないので、おそらく欠けている最後の生徒で間違いないだろう。

 

十神「フン、やっとおでましか。随分な重役出勤なことだ」

大神「学園長が直接伝えるほどだ。なにか大事な用事があったのだろう、気にしてやるな…」

石丸「そうはいかん!どんな理由があれ遅刻は厳禁!ここでしっかり注意をしなければ!」

大和田「さっさと入ってきやがれ。俺たちを待たせた罰だ、マヌケ面晒したところ一発ぶん殴ってやる!」

 教室に不穏な空気が流れていることも知らず、足音は教室の間で止まり、

 

苗木「…失礼します」

 そしてその扉が開かれた。

 

大和田「よっしゃ!テメエ!この俺を待たせるとはいい度胸…」

石丸「君!遅刻は厳禁だぞ!初日から一体どういう…」

 

 彼らが話せたのは其処までであった。何故なら、次の瞬間には彼らは目を点にして入ってきた生徒を凝視していたのだから。

 

苗木「…あれ?まだホームルーム始まってないんですか?学園長には僕の事ほっといて始めるよう伝えてもらったはずなんですけど…」

 彼がその教室に入ってきたとき、生徒たちは彼の事を錯覚してしまった。

 

不二咲「…太陽?」

 不二咲千尋が呟いたとおり、彼らはその瞬間まるで太陽が顔を覗かせたかのように錯覚してしまった。黄金色に輝く頭髪、髪と同じ色の金の瞳、そして優しげな声と顔立ちの中に感じる強い意志。彼から放たれる無意識の圧倒的な存在感に、全員が吞まれてしまっていた。

 

舞園「…苗木君?」

 唯一それに耐性のあった舞園さやかを除いて。

 

苗木「えっ?…あっ!舞園さん!」

舞園「どうして…苗木君がここに?」

苗木「良かった!知り合いがいてくれて、少し気が楽になったよ」

 ほっとしたように安心する苗木の顔を見て、先ほどまで作り笑いをして、たった今驚愕の表情を見せていた舞園の顔に弾けるような笑みが浮かび始める。

 

教師「…あー、君。一応自己紹介をしてもらっていいかな?舞園さんはさておき皆は多分君の事を知らないだろうから…」

 遠慮がちに言う先生の言葉に、苗木はハッとしたような顔をし、皆に向き直る。

 

苗木「あっ!そうですね。それじゃあ…」

 そして彼は口にする。このクラスメート達どころか、希望ヶ峰学園の全員が生涯忘れることができない人物の名を。

 

 

苗木「初めまして!第78期の抽選枠で入学しました『超高校級の幸運』で『超高校級のギャング』の苗木誠です。皆さん、これからよろしく!」

 

 

 希望の日々が、今始まる。

 


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