ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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十神が性格変かもしれませんがご了承ください
理由はいつか分かります


捜査開始

『スタンド使い?』

一同から返ってきた返答に、ある意味納得しながら苗木はスタンドという存在と自分のスタンド能力について説明する。もちろん能力の全てを話す訳にもいかないのであくまで「物質を肉体に変化できる」という能力として説明する。実際苗木の能力を傷を治したりするところしか皆は見ていないのでその説明で納得してもらえた。

 

「ふえ~、そんな能力があったなんてねえ~」

「超能力も奥が深いですなあ~」

「…ですが、そのスタンドというのはスタンド使いにしか見えないのでしょう?私たちは程度の差があれど皆共通して視えているというのに、何故私たちにはスタンドが無いのでしょう?」

「それは多分、『きっかけ』がないからだと思うんだ」

「きっかけ?」

「スタンドはスタンド使いの精神力のビジョン、つまりもう一人の自分に等しい存在だ。だからスタンドを発現させるには、もう一つの意識を呼び起こすためのきっかけ、つまり何かしらの感情の爆発が必要だと思うんだ」

「…よく分かんねえな」

「僕の場合は、チンピラに絡まれて殴られてとっさに身を守ろうとした時にスタンドが発現したから、危機的状況や誰かをブッ飛ばす!…って思ったときなんかがそうなるかな。あと、スタンドは本人のイメージの産物だから本人の人格なんかも関わってくるかもしれないね」

「フム、まさに己の分身というわけか」

 

 

 

 

「…さて、スタンドについての説明が終わったことだし、そろそろ捜査に移りましょう」

スタンド談義で完全に本筋を脱線している皆を霧切が呼び止める。

 

「お、おお!そうだ、舞園君を手にかけた犯人を見つけ出さなくては!!」

「確かモノクマが事件の状況を電子生徒手帳に送っといたっつってたよな。とりあえず確認しとこーぜ」

桑田の言葉に全員が電子生徒手帳を起動させ、新たに現れた事件記録のページに眼を通す。

 

「えー被害者は舞園さやか、死因は腹部に刺さった刃物によるものが致命傷、他にも当時には皮膚が焼けただれたかのような跡が多数見れらた…ん?写真が…」

「うわグロッ!」

写真に写った苗木が治療する前の舞園の姿に、こういうのは苦手なのか山田が思わず悲鳴を上げる。

 

「山田!そんなこと言っちゃ可哀想だよ!」

「左様。舞園さやかもこんな姿はできれば見られたくないであろう。察してやれ山田」

「う、確かに失礼しましたぞ…」

「…あらこれは…!」

山田が朝日奈と大神に窘められていると、突然セレスが声を上げる。

 

「ど、どうしたべセレスっち?」

「…この文を見て頂けます?中々興味深いことが書かれていますわよ」

セレスに促され葉隠はセレスが指し示した文を読み上げる。

 

「なになに…被害者の舞園さやかが発見されたのは、苗木誠の自室のシャワールーム…って、え、え、ええええ!!??」

その内容に、生徒たちの視線が一斉に苗木に抜けられる。当の苗木も既にその文を既読しており、こう来ることは予想済みだったのかその視線を若干気まずそうに受け止める。

 

「あ、あ、あんたが犯人だったの!?ここ、この人殺し!!」

「苗木君、まさか、そんな、君だったのか!?」

この一文で完全に苗木を疑ったのか、向けられる視線の多くは疑惑や敵意を含んだもので、中にはもう決めかかっているかのような言葉まで飛んでくる。

しかし当然そうでない者も居る。

 

「ま、待ってよ皆!苗木は舞園ちゃんの怪我を気絶してまで治したんだよ!苗木が犯人なら、そんなことするわけないじゃん!!」

「朝日奈の言うとおりだ。むしろ苗木は舞園を救おうと死力を尽くしたのだぞ。それを否定しあまつさえ犯人と決め付けるのは些か早計だぞ!」

「つーか、自分で殺しといて自分で治すとか意味不明じゃん。苗木がそんなことする意味がないんだけど」

「…フン。そんなもの自作自演に決まっているだろう。自分で殺しかけた舞園さやかが絶対に助からないタイミングで治療し、あくまで間に合わなかったということで自分から疑いを外す。…下らんやり口だ」

「そ、そんな…」

朝日奈と大神、江ノ島も何とか庇おうとするが、口では十神には敵わないらしく口ごもってしまう。そんな朝日奈の肩に手を掛け、苗木は優しく微笑む。

 

「苗木…」

「ありがとう朝日奈さん、大神さん、江ノ島さん。でも仕方ないよ。舞園さんがいたのは僕の部屋で、僕にしっかりしたアリバイもそれを証明する人ももういない。…みんなのこの反応は当然なんだから」

「でもッ…!」

「だが苗木よ、お主はそれでいいのか?」

「…もちろん良くは無いよ。だから…」

苗木は自分に疑いを向ける面々に向かい、こう言い放つ。

 

「僕が、僕自身が証明する。僕の無実を、そして、舞園さんを殺した犯人を。僕が必ず突き止めて見せる」

今は亡き舞園に誓うように、苗木は強い決意を瞳に滾らせそう宣言した。

 

「…フン。精々頑張ることだな。もし貴様を嵌めた真犯人がいるとしたら、とばっちりを喰らうのは俺たちだ。自分の不始末ぐらいは自分で片付けることだな」

「…ふっ。ああ、そうさせてもらうよ」

どこか嫌味なエールを苗木に送ると、十神はさっさと体育館を去ろうとする。それにつられ、皆も捜査を行うべく体育館を辞そうと苗木に背を向ける。

 

そして全員が背を向けた瞬間、苗木は行動を起こした。

 

(今だ!)

今自分を見ている者はいない。それを確認すると苗木は手のひらを前に差し出し頭の中で指示を出す。

 

(戻ってこい!)

そう念じると、体育館を去ろうとする皆の中から小さななにかが飛び出し苗木の元へやってくる。やがてそれが苗木の差し出した手のひらに乗っかると、その正体が明らかになる。

 

(…戻ってきた『蜘蛛』は全部で4匹。僕自身についていたものを除くと3匹。つまり『3人』が舞園さんがいた部屋、つまり僕の部屋にあれ以降に入ったということになる)

そう、それは昨晩苗木が放ったハエトリグモへと姿を変えたモノクマメダルであった。苗木の『ゴールド・E』が生み出した生命は基本的にはその生物の習性や知能に基づいた行動をとるが、簡単な内容の指示であればある程度苗木の思うとおりに操ることができるのである。これから捜査を行うとなると多くの人があの部屋に出入りすることになり、そうなるとややこしいことになるので苗木はこのタイミングで招集をかけたのである。

 

(一人は石丸君。一人は霧切さん…この二人は僕を探しに来たときに付いたものだろうからアリバイはある。ということはあと一人が……ってあれ?そういえばなんで蜘蛛が2匹も僕の後ろから?僕の蜘蛛はともかくとしてもう一匹は…)

 

 

「…苗木君の予想は多分正しいわよ」

「…へ?」

後ろから聞こえた声に振り返ると、何時からいたのか霧切が後ろに立って自分を見ていた。

 

「うおわ!?」

「…そこまで驚くことないんじゃあない?てっきり気づいてるかと思ったんだけど」

「はああ…びっくりした。スタンド使ってるときは集中してるから周りをあんまり意識してないんだよ。…それより、正しいってことは…」

「ええ、私の知る限りあの夜以降苗木君の部屋に立ち入ったのは苗木君を除けば私と石丸君だけ。仮に私たちが2度立ち入っていたのなら2匹ずつついている筈だけど、私たちからは一匹ずつしか出てくなかった。…つまり、この時点で最も怪しいのは蜘蛛が出てきたにも関わらず部屋に入ったアリバイのない人物…」

「あの人…ってことだよね。いきなり犯人と決め付けるわけにはいかないけど、少なくとも事件に何らかの関係があるのは確かだろうね。……それはそうと霧切さん」

「…何?」

「なんで僕の蜘蛛の発信機のこと知ってたの?」

「………苗木君の癖に生意気よ」

 

 

 

 

 

 

苗木の部屋では既に生徒たちが独自に捜査を始めていた。といっても、皆素人同然であるためやり方はちぐはぐで決定的な証拠になるようなものは見つかってはいなかった。そんな彼等とは別に、苗木と霧切はトラッシュルームへと足を運んでいた。理由は、現場は今人が大勢いるため捜査の邪魔になったり自分たちの視線から犯人に悟られる恐れがあったからと、もう一つ別に確かめておきたいことがあったからである。

 

「…どう思う?苗木君」

「多分、間違いないだろうね。犯人はあの人でほぼ間違いないだろう。こんなことができるとしたら、あの人しか考えられない」

事前に霧切が掃除当番である山田から預かった鍵でトラッシュルームへと足を踏み入れていた二人は、焼却炉の前に散乱しているモノを見渡しそう確信する。

 

「そういうスタンドを使ったとは考えられないかしら?」

「…鍵を山田君が持ったままだとすると、犯人が来れるのはシャッターの向こうまで。焼却炉からは10メートル近く離れている。焼却炉のスイッチを押せるような『精密動作性』を持った近接タイプのスタンドでこれだけの射程を持つスタンドはそうはいない。『遠隔操作型』のスタンドなら可能だろうけど、遠隔操作型は総じて非力なスタンドが多い。その線は薄いだろう。仮にパワーを兼ね備えた『自動追跡型』のスタンドだったとしても……ここにこんなものが落ちている以上そう仮定する必要はないんじゃないかな」

そう言って苗木が視線の向けた先は焼却炉の燃焼スイッチ。自分たちが来た時まで燃焼し続けていたその下には何かにぶつかったように割れているガラス球の破片が散乱していた。

 

「じゃあやっぱり…」

「ここに居たのか、霧切、苗木」

突然の声にその方向を向くと、トラッシュルームの入り口に十神が立っていた。

 

「どうしたの十神君?」

「フン、いつまで経ってもお前らが来ないから先に証拠の隠滅先を当たっていると思って来てみれば、案の定ここに居たというだけだ。他の連中はもう捜査を終えて解散している。大神と大和田が見張りで残っているが、他には誰もいない。…捜査をするなら今の内だと言いに来ただけだ」

来訪の理由に、霧切と苗木が目を丸くする。

 

「……なんだその顔は」

「…意外ね」

「うん…。言っちゃ悪いけど十神君がこんなことしてくれるなんて思わなかったから…」

「黙れ。勘違いするなよ、俺は貴様のとばっちりを喰らうことが御免なだけだ。それに学級裁判で足手まといが増えるようでは面倒極まりないからな。精々俺の邪魔をしない程度に捜査をしておくことだ」

冷たく突き放してはいるもののどこか二人を気にかけている十神に苦笑しながら部屋を出ようとすると、十神が思い出したかのように思いがけないことを言い出す。

 

「…そうだ、一つ良いことを教えてやる」

「良いこと?」

「舞園さやかの皮膚に見られたという焼けただれたような傷跡。…あれは恐らく強酸性の液体による溶解痕だ」

「!?…何故そんなことが分かるの?」

「以前十神財閥のコネクションで警視庁の過去の事件記録を閲覧していた時に、濃塩酸を被って自殺した馬鹿の死体の検死記録をみたことがあってな。その時の死体の傷痕と舞園の傷痕がほぼ同じものだということがはっきりした。…最も、患部の溶解具合は舞園のほうが重症だったから、おそらく塩酸以上に強力な酸によるものだろうがな」

「塩酸以上の酸性の液体…この学園の行けるところでそんなものがある場所は存在しない。これである程度分かったわね」

「うん。恐らく犯人のスタンドは『酸を浴びせる』能力を持っている…問題はどうやって酸を浴びせたのか、ということだけどね」

 

敵スタンドについての情報が手に入ったところで、二人は事件現場へと赴き皆に少し遅れて捜査を開始する。改めて事件現場を見渡し、荒らされた部屋の様子や現場に残された凶器の類を確認していると、ふと苗木のが気がかりなことを思いだす。

 

(そういえば犯人はどうやってシャワールームの扉をこじ開けたんだ?僕の部屋のシャワールームの開け方は僕と舞園さんしか知らない筈だから、普通に開けることはできない以上何らかの方法でドアノブを外して無理やり押し開けたんだろうけど……あ、そういえば引き出しの中に工具セットがあったな。あれを使ったのか…)

そう思いながら引き出しをあける苗木。しかしそこにあったのは使った形跡のない新品同然の工具セットであった。

 

(あれ?封が切られていない。じゃあどうやって……!そうか、犯人は僕と舞園さんの部屋の交換の事を知らなかった。工具セットがあるのは男子の部屋だけだから、この部屋を舞園さんの部屋と思い込んでいる犯人はここにあることを知らなかったんだ。……そうなるとわざわざドアノブを壊したのにも説明がつく。女子のシャワールームは施錠できるから、てっきり鍵がかけられたと思い込んで、工具セットを持ち込んで扉を開けたんだ)

と、そこで苗木はもう一つの異変に気が付く。

 

「あれ?このメモ帳、使った跡がある。僕はまだ使ってないのに…」

「…!苗木君、こっちに来てくれる!」

その時先に舞園の死体付近を調べていた霧切が苗木を呼ぶ。

 

「どうしたの霧切さん?」

「…ここを見て」

呼ばれた苗木が指示されるまま霧切の示した先を見る。とそこには、舞園がもたれ掛った鏡に舞園が自身の血で描いたのであろう数字のような文字、ダイイングメッセージが残されていた。

 

「11037…暗号?いやこの状況でわざわざそんなことは……いや待て、この数字の並び、そして舞園さんの体勢…ということはこれの読み方は…!」

「…多分そういうことよ」

一つの仮定に至り、それを確かめる苗木。

 

(やっぱり…!)

そして自分の仮説に確信を抱く。と、そこで舞園を見てふと思い出す。

 

(…そういえば舞園さん『アレ』はどうしたんだろう。部屋にもゴミ箱にも無かったから身に着けててくれてると思ってたけどどこにも見当たらないな)

「霧切さん、悪いんだけど舞園さんが…を持ってないか調べてもらえないかな」

「…?私はさっきあらかた彼女を触診したけど、そんなもの彼女は持ってなかったわよ?」

「そ、そう…」

(持ってない?どこかに落としたのかな。…一応調べてみるか)

苗木は地面に手を当て意識を集中させ、自分が手を加えた『あるモノ』を場所を探る。やがてそれの反応を見つけたが、それは予想外のところから感じ取れた。

 

(ここは…!)

「そうか、そういうことだったのか…」

「…苗木君?」

一人で納得している苗木に霧切が訝しげな視線を向ける。

 

「霧切さん。どうやらこの事件は、僕らが思ってる以上にあっけなく終わりそうだよ。…舞園さんが、たくさんの手がかりを残してくれていた」

そう言って苗木は舞園の亡骸に手をやり優しげに微笑んだ。

 

「ありがとう、舞園さん。僕を信じてくれて。…でも本当なら、生きている君にお礼を言いたかったな」

「……苗木君」

「…霧切さん、僕はもう行くよ。まだ確かめたいことがあるから」

「…そう。私はもう少し部屋を見ていたからここに居るわ。大神さん、大和田君、私がここで見張ってるから、少し休んできていいわよ」

「む…、いいのか?」

「んじゃそうさせてもらうぜ。ちっと便所に行ってきてえからよ」

そう言って苗木、大神、大和田が部屋を出て部屋には霧切だけが残される。

 

 

 

 

「…さて」

一人になり、誰も居なくなったのを確認すると霧切は虚空に向かってこう言った。

 

「もういいわよ。でてきて頂戴」

その言葉と共に、霧切の背後に突然人影のようなものが浮かび上がる。それは、まるでマネキンのような風体をしており、目や膝、手の甲などにスピーカーのような穴が開いており額には何やらデジタルタイマーのようなものがついていた。

 

『…わざわざ人払いをする必要があったのか?奴らは犯人ではないのだろう?』

突然、その人型のビジョンより声が発せられる。

 

「確かにあの中に犯人はいないわ。けれど、もしあの中にこの先殺人を犯す者がいた場合、私の、…いえあなたの能力は可能な限り隠しておく必要があるわ」

『フン。あいつが聞いたらきっと反対するぜ。むしろ公開して犯行を防止するようにすべきだ、ってな』

「…確かにそう言うでしょうね。私としてもそうしたいのは山々よ。けれど、この学園についてもっと多くの事を知るためには、何かしらの変化が必要なのよ。未だ閉ざされた二階以上の階層、鍵が掛かった部屋の中、そしてモノクマが知りゆるすべての情報。それらを知るためには、この学級裁判を乗り越えるしかない。…だから、あなたの力を貸しなさい」

『…やれやれ、思ってた以上に胆が据わった女だ。…だが気に入ったぜ、その『覚悟』。いいだろう力を貸してやる。……さあ霧切響子…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『再生(リプレイ)』するか?』

 




今回ここまで
次回ちょっとスタンドバトル入ります

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