ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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ダンガンロンパ霧切読んでからだとお待たせするのでこちらを更新します

明後日発売だって?…地方は発売が一日遅れるんですよ!(北陸民感)

今回は苗木君の出番はありませんのであしからず


万能に欠けしもの

「……」

 学園の地下深く、評議委員とごく一部の研究員、そしてそこの警備員しかその存在を知らない『隔離区域』の一室にて、カムクライズルはベッドに横たわっていた。

 

「コォォォォ…!」

 『以前の自分』が体得していた『波紋の呼吸』を、カムクラは無意識の内に行っていた。例え記憶を失っても、体に染みついた『呼吸のリズム』消えることはなく、ただ呼吸をしているだけでカムクラの傷ついた身体は癒えていった。

 …皮肉にも『今』の自分の方が波紋の威力が上だと知ったら、『前』の自分はなんと思うだろうか。そんなことを一瞬考えたが、埒のあかない、クダラナイ思考だと切って捨てるとカムクラは次の思考に移る。

 

「…あれが、苗木誠。僕と同じ、『超高校級の希望』と呼ばれる男…」

 先日戦った男の名を思わず呟く。

 

 負けた、完敗だった。自分が持つ『超分析能力』が正しければ、勝算は十分すぎるほどにあった筈なのにだ。『スペック』では勝っていた、『才能』でも勝っていた、『スタンド』も決して弱い能力ではなかった、『幸運』だって、彼と同じ『超高校級の幸運』を持っている。何を比較にとっても、自分が勝っていた筈だった。

 …だが、結局『負けた』。何が何だか分からないうちに負けていた。奴の『能力』もだが、カムクラは自分が負けた『敗因』が分からずにいた。

 

「…何故、僕はあの男に負けたのだろう…?彼のあらゆる情報を分析したというのに、未だにその理由がワカラナイ…。あの男には、『計算』できない何かがあるというのか?彼にあって、僕には無い何かが……『前』の僕ならば、その答えを知っていたのだろうか…?」

 つい最近再び施された『施術』によって再び自分の奥深くに封じ込まれた『以前の自分』にそんなことを考えていると、ふと以前『あの女』に言われた言葉を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

ゲスッ!

「…ッ痛っつー…!ちょ、女の子足蹴にするとかマジなくない~…?」

「…いきなり押しかけてきてあまつさえ殺しにかかってくるような女性を歓待する意味はありません。…無論、そこのスタンドも含めてですが」

『……』

 一月ほど前、カムクライズルに『なった』ばかりの自分を訊ねてきた女…『江ノ島盾子』を踏みつけながら、カムクラは入り口でじっとこちらを観察するスタンド…『ホワイトスネイク』を睨む。

 

『誤解しないでもらおう。私は単にここまでくる露払いをしてやったに過ぎん。私個人は君になんの興味もない。その女の行動はあくまでそいつの独断だ』

「…だとすれば、増々理解できません。江ノ島盾子、貴女はなんの勝算も無しに僕を殺そうとしたという訳ですか?貴女も、僕と同じ『超分析能力』を持っているのなら、勝ち目などないことぐらい分かっていたでしょうに」

「アハハ…まーねー♪…けど、別にそれでも良かったんだよね。こっちの目的はあくまで『アンタに会う』ことなんだから」

「…僕に、なんの用ですか?」

 踏みつけられ痛みに眉を顰めながらも、江ノ島はカムクラを見て口元を歪める。

 

「…アンタ、『超高校級の希望』って呼ばれてるんでしょ?『アイツ』と一緒で…じゃあさ、アンタは何を以て自分を『超高校級の希望』だと証明できるのさ?」

「…それを僕に聞くのはナンセンスなことです。僕を『創った』のはあのクダラナイ連中で、彼らの掲げる『希望』が形となったものが僕です。彼らが僕を『超高校級の希望』と呼ぶのならば、それは『僕自身』の存在が『超高校級の希望』であるということです。故に、僕に『超高校級の希望』である理由は必要ありません」

「……」

「江ノ島盾子、貴女がそうであったように、僕にとってもこの世界は『分析しきれる』ものでしかない。僕にとっては、貴女ですらその範疇です。…おそらく僕を利用するためにここまで来たようですが、貴女は何の為にこんな無意味な真似をしたのですか?」

「…へぇ~、分からないんだ。アタシの事を分析できるって言った癖に、肝心のアタシの『目的』が分からないんじゃあねェ~…。いっそ『前のアンタ』の方がよっぽど察しは良かったんじゃあないの?」

「……」

「痛たたたたッ!!」

 貶すような物言いにカムクラは眉を顰めて踏みつける力を強める。

 

「…まあ、いいや。…アタシがここに来たのは、アンタの『退屈』を取っ払ってあげようと思ってね」

「…どういう意味です?」

「アンタもアタシと同じ『超分析能力』を持ってるなら、今のこの世界に退屈してるんでしょ?…アンタが『希望』に退屈してるってんなら、今のアンタに必要なのは『絶望』なのよ」

「…絶望。そんなものは必要ありません。論理的に考えて、そんなものは僕にとって不要なものです」

「…論理、論理ね…」

 カムクラのそっけない返事に江ノ島はしばし黙り込むと

 

 

「……」

「…?」

「…ぷっ、クックック…アッハハハハハハ!」

 突如肩を震わせ、大声で笑いだした。

 

「…何が可笑しいのですか?」

「アッハッハッハ!論理、論理って……ッハァ~ア、…やっぱ、アンタじゃ苗木には『勝てない』わ」

「…何?」

 嘲りながらの江ノ島の断言に、初めてカムクラの心が揺れる。

 

「アンタは所詮、『知識』としてしか『絶望』を、この世界を理解していない。だから自分の頭の中で全部自己解決して満足しちゃってる。…アタシもつい最近までそうだったよ。こんな世界、どうしようもなくツマラナイってね。…でもね、アイツは…苗木は違う。アイツはそこまでできた奴じゃない、けどアイツは頭じゃなく『心』で理解しようとする。広辞苑引きゃ書いてあるような意味じゃなく、テメーがどう感じたかで物事を判断する。自分だけじゃなく、他人も含めてね。だからアイツは、『1つの視点』で満足しない。本当の意味で理解するまで、アイツは絶対に納得しない。だからアイツは決して『飽きたりしない』。違う視点が存在する限り、アイツは何度でも向き合い続ける」

「……」

『……』

「そしてそれは、物事だけじゃなく『人』だって同じ。そいつがどういう人間か、何を求めているのか、そいつにとってなにが必要なのか…アイツは無意識的にそれを察する天才なんだよ。だからどいつもこいつも、苗木を心底から信じる。『自分以上』に自分の事を理解できる上に、あのお人よしな性格が相まって余計に性質が悪い。…アタシが、一瞬でも心を許しかけたぐらいにね」

「……」

「…ねえ、あの時のアタシの気持ちがわかる?何もかもが想定できる世界に、いきなり『分析できない』ものが現れた時のアタシの気持ちがわかる?アタシが心の奥底に隠していた『絶望』を、あっさり見抜いた挙句その『本質』まで読み取られた時の気持ちがわかる?たった一人だと思っていた自分の『世界』に、堂々と踏み入ってこられた時の気持ちが、アンタに分かる?『絶望』を理解してるって言うんなら、分かる筈だよねぇ!?」

「……」

 カムクライズルは、答えられなかった。江ノ島の気持ちが分からなかったというのもあるが、それ以上に、目の前の江ノ島盾子という存在を理解できなかった。…カムクライズルの眼には、『絶望』であるはずの江ノ島が、誰よりも『希望』を願っているように見えたからだ。『絶望を希望する』江ノ島盾子の在り方を、カムクラは理解しきれなかった。

 

「…分からない?そりゃそうだろうね、だってアタシにだって分からないんだから!誰よりも『絶望』から遠い筈のアイツが、なんで『絶望』であるアタシの気持ちを理解できる?いくら考えても、私は結局それが分からなかった!だから私は、アイツが『恐ろしい』。アイツが『憎らしい』…、アイツが『妬ましい』…!アイツが『悍ましい』ッ!アイツがッ…!」

 

 

 

 

「…『愛おしい』…!」

 狂気の様な叫びから一変、恍惚の笑みを浮かべ、江ノ島はとろけるようにそう言った。

 

「相反する存在の筈なのに、アタシの心に一番近いのは苗木なのよ。例えるなら、背中合わせにいるのに決して振り返ることを許されない関係…『ヤマアラシのジレンマ』って奴かな?愛したくても愛せない、傷つけあうことでしか、殺し合うことでしか分かりあえない。…アンタにそんな存在がいる?自分の分析を越えてくるような存在が、アンタにはいる?…じゃなきゃアンタは、『そこ』から変わらない。一生、死ぬまでアンタは『退屈』し続ける。アンタは『超高校級の希望』であるが故に、何も知らず、何も感じず終わるだけなのよ」

「……」

「…ねえ、試してみたくない?アタシが惚れ込んだ男が、アタシの『絶望』の『理解者』が、アンタの想像を超えて来るかをさ…?」

 カムクライズルの目に『迷い』が生まれた隙を見て、江ノ島は『本題』を切りだした。

 

「…それは、僕に苗木誠と戦え、ということですか?」

「Exactly(その通りでございます)。…アンタが『希望』に見切りをつけたってんなら、アンタを満足させられるのは『絶望』しかない。絶望が生み出す『未知』だけが、アンタの退屈を失くしてくれる。けれど、苗木が居る限りそれは叶わない。アイツは絶望を理解しているからこそ、それが行き過ぎるのを必ず止める。絶望の歯止めのない『未知』を促す為には、アイツを殺すしかないのよ…!」

「…何故貴女自身ではなく、僕なのですか?」

「…アタシはアンタよりはアイツの事を理解しているつもりよ。その上で、アタシの分析はこう結論付けた。…『江ノ島盾子は苗木誠には勝てない』とね。どんな手段を用いても、アタシは最終的に苗木には勝てない。オカルトなんざ信じないけど、そういう『運命』なのかってぐらいにね」

「……」

「だからアタシがアイツに勝つには、アタシ以外の『不確定要素』が必要だった。…一人はそこにいる『ホワイトスネイク』、そしてもう一人はアンタ…アイツと同じ『超高校級の希望』であるアンタだけが、苗木誠を倒すことができる。『絶望』が『希望』に勝てないのなら、同じ『希望』をぶつけてやればいい。『希望が希望を殺す』、それこそが真の『絶望』なのよ!」

「……」

 

『…求めよ、さすれば与えられるであろう』

「…!」

 今まで沈黙を保っていた『ホワイトスネイク』が口を開いた。

 

「…マタイの福音書の一節ですか」

『そうだ。カムクライズル、お前の才能は確かに素晴らしい。それこそ、人類において『希望』と呼ぶにふさわしいだろう。…だが、『覚悟』なきものがどれほどの才能を持っていようと、それは無意味でしかない。『希望』とは、覚悟を以て進む者にしか与えられない。お前が『己の意味』を求めるのであれば、お前は『覚悟』を決めるしかない。絶望に身を堕としてでも、『未知』を求める覚悟をな…!』

「……」

「さあ、決めなよ!このままここで腐っていくか、『未知』の為に絶望を求めるか!…けれど、アンタの答えは分かっている。アンタは必ずアタシを、『絶望』を選ぶ!アンタが苗木の希望を受け入れられないのなら、アンタはこっちに来るしかないのよ!アンタの『希望』が、アイツの『希望』を殺すッ!それこそがアンタの求める『絶望』なのだから!」

「…!」

 

ゴシャ…ッ!

 

 

 

 

 

「…あの女の言葉、今なら…多少理解できます。超分析力を以てしても計り知れない『可能性』、才能とは違う、己の在り方が生み出す『覚悟の力』…それが苗木誠の力。それこそが彼を『超高校級の希望』足らしめているモノ…全ての『才能』を持つ僕に欠けているモノ…」

 見上げた天井に苗木の顔を幻視しながら呟くと、カムクラは薄く微笑んだ。

 

「…ふ、フフ…!『オモシロイ』…!成程、僕は未だに『未完成』だったという訳ですか。…ならば、それを『手に入れる』まで。そして苗木誠を越えた時…その時こそ僕の『存在意義』が証明される…。江ノ島盾子…僕を利用するというのなら、僕も貴女を利用させてもらう。貴女の『計画』を利用し、僕は本当の意味で『完璧』になる。その為に…貴方も利用させて貰いますよ、『以前の僕』…」

 自分自身にそう言い聞かせ、カムクラは傷の治療に専念するため眠りに就いた。

 

 

 

 

(…苗木、頼む…!こいつを、『救って』やってくれ…!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、学園の東地区では

 

「どこだ…どこだ、松田夜助!?」

 斑井兄弟は苗木の証言を基に、総出で松田を探し回っていた。その形相は鬼気迫ると言っても過言ではなく、動く者ならばネズミ一匹であろうと逃さない徹底ぶりであった。

 

ガサ…ガサ…

「!」

 と、辺りを見回していた斑井一式の背後の教室から物音が聞こえてくる。

 

「…そこかぁッ!」

 一式が教室に向かうと同時に、その扉が開かれる。

 

ガラ…ッ

「松田夜助ェッ!!」

 

 

 

 

「…生憎、人違いよ」

「あ…?」

 教室から出てきたのは、松田ではなく『白衣姿の霧切』であった。

 

「霧切…?なんでお前がここにいる?」

「それはこちらの台詞よ。…謹慎中の貴方が何故ここにいるのかしら?」

「…おい、質問に質問で返したら0点だと…」

「生徒会の立場にありながらルールを破っている貴方に言われたくはないわ。場合によっては学園に報告しても構わないわよ?」

「…チッ」

 自分の立場を指摘され流石に返す言葉も無かったのか、知り合いの前という事もあって一式は体の力を抜く。すると、制服がはち切れんばかりだった一式の体がみるみるしぼみ、痩せぎすとも言えるような体型になった。

 斑井兄弟は筋繊維が特別柔軟な体質をしており、普段の見た目はさほどではないが、有事の際には自分の意志で筋肉を膨張させ、大神並の怪力を発揮することができるのである。その実力を秘匿することができる体質と、彼等兄弟ならではの『特徴』が、斑井兄弟を『超高校級のボディーガード』足らしめているのである。

 

「…俺は松田夜助のヤツを探している。理由は…野暮用ってことにしておけ。詳しく聞きたかったらお前の彼氏にでも聞くんだな」

「…そう」

「で、こんどはこっちの質問に答えろ。なんでお前がここにいる?」

「…その彼氏を探しているのよ。苗木君が休学届を出して姿を消してしまったから、学園長に問い詰めたの。そうしたら、今学園内でなにかをしていると白状したから、こうして探しているのよ」

「…アイツ、そこまでしてたのか。…で、その恰好はなんだよ?」

「…ここは基本的には生徒は立ち入り禁止区域よ。いつもの服装や制服じゃ怪しまれるわ。だからこうして変装していたってワケ」

「ふん…そんなの、お前のオヤジの名前を出せば済む話じゃあねえか」

「…私がそういうのを嫌っているのはご存じでしょう。それに、これは私の独断だから、できるだけ他の人を巻き込みたくないの。そういうことですから、私の事は内緒にしておいてもらえるかしら?無論、貴方の事も黙っておくわ。どんな理由があろうともね…」

「……」

「では、失礼するわ」

 無言を了承と受け取った霧切は一式の脇を抜けて出て行こうとし

 

 

…グッ

 その寸前で一式に肩を掴まれる。

 

「…なんの真似かしら?」

「…霧切はよ、苗木がホレただけあって初志貫徹したいい女なんだよ。そんな女がよ、学園に報告するって言った口で親父の力借りたくないとか、矛盾したこと言っちゃあいけねえよなあ…?」

「……」

「それによ、『誰だか知らねえが』勉強不足だったな。…霧切はよ、今は苗木の事『誠』って呼んでるの知らなかったのかよ?」

「…ッ!!」

 

ドスッ!

 感づかれたと判断するや否や、『霧切』は自分の肩を掴む一式の手に『メス』を突き刺した。

 

「痛ッ!?」

 予想外の攻撃手段に一式は思わず手を放してしまい、『霧切』は脱兎の如くその場から逃げ出した。

 

「なッ…待てゴラァッ!!」

 しかし一式も即座にそれに気づくと瞬時に全身の筋肉を膨れ上がらせ、檻から放たれた猛獣の如く『霧切』を猛追する。

 無論、あの『霧切』が偽物だからといって、それが自分の目的である松田に繋がるとは限らない。しかし、それでも一式は…例え他の斑井兄弟であったとしても、彼女を見過ごす訳にはいかなかった。部外者ながらも生徒会によく協力してくれた後輩の彼女を騙ったこと、そしてなにより、この希望ヶ峰学園の『ボディーガード』としての彼の使命感が、今の彼を突き動かしていた。

 

「…ッ!」

「待てェッ!!テメエ何者だぁッ!?」

 追って来ているのを肩越しに見ると、『霧切』はスピードを上げ近くの角を曲がった。

 

「逃がすかよぉッ!」

 一式もその後を追い角を曲がろうとし…

 

ドーン!

「うおッ!?」

「ぐえッ!?」

 直後、向こうから曲がって来た人物…『ツナギを着た左右田』と衝突した。

 

「痛てて…何だテメエ!危ねえじゃ…」

「……」

「…ひぃッ!?」

 いきなりぶつかって尻餅をついてしまったことに悪態を吐こうとした左右田であったが、見上げた先で無表情に自分を見下ろす一式に思わず情けない声が出てしまう。

 

「な、なんだよ…文句あんのかよぉ…?」

「……」

 

 

 

 

…スッ

「…へ?」

「悪かったな、ぶつかってよ…」

 びくびくと震える左右田に、一式はぶっきらぼうにそう言って手を差し出した。

 

「お、おう…こっちこそ悪かったよ」

「…お前確か、77期の左右田和一…とか言ったか?」

「え?何で俺の事…てか、アンタ誰ッスか?」

「俺は76期生、『超高校級のボディーガード』の斑井一式だ。生徒会に所属している」

「あ、先輩だったんスカ…どうも」

「…それよりお前、さっきこの角を曲がって誰か来なかったか?」

「誰かって…ああ、そういえば霧切がなんか走って来たッスよ。似合わねえ白衣して妙に焦ってたッスけど…」

「…ッ!そうか、礼を言うぞ!」

 左右田からそのことを聞き出すと、一式はすぐさま左右田の示した方向へと走っていった。

 

 

 

「…やれやれ、脳筋とはいえ流石に面倒だったな」

 それを見送ると、『左右田』はそう言いながらため息を吐いた。

 

「しかし、霧切のときはしくったな。呼び方まで憶えていやがったとか、あの野郎も見かけによらず几帳面な奴だ…」

 左右田が着ていたツナギのチャックを降ろすと、その下から先ほど『霧切』が着ていた白衣が見える。

 

「とはいえ、見た目がバレなかったのは幸いってトコだな。確かこいつは生徒会とは殆ど面識が無かった筈だからイケると踏んだが、思い通りってトコか…」

 左右田は着ていたツナギを脱ぎ捨てると、手近なゴミ箱に放り込む。そして徐に自分の顔を掴むと、それを思い切り『引き剥がした』。

 

グニャニャ…!

 すると、左右田の顔が歪みだし、やがて全く違う顔が現れる。

 

「あの野郎に押し付けられた『力』を使うのはムカつくが…、使える物は使わせてもらうぜ。…『アイツ』の為にもよ…!」

 身長、体重、臭いすらも変化することができる変装のスタンド『クヌム神』の力を手にした松田夜助は、決意の籠った眼でそう呟いた。

 




今作の斑井は原作ゼロより若干おとなしい感じになりました
原作だと問答無用だったけど、ここだと敵にするとヤバいのが山ほどいるのを分かっているので


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