ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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お ま た せ

…いや、本当にお待たせしました。新しい仕事に少しずつ慣れてきたところに修羅場が続いたもんですから毎日クタクタでして…。ちまちまと続きを書き溜め、ようやく投稿できました

そんなことをしている間に5部アニメ、いよいよ明日で最終回ですね!アニメのレクイエム、最高に格好良かったッ!アニメ化したことでただでさえ訳に分からないレクイエムが更に訳わかんなくなった気もしますが、レクイエムはそういうものでいいのかもですね。何しろジョルノ自身にも把握しきれない能力ですから。…下手すれば荒木御大もどうだか…

…ところで、そろそろ小高さんらの新しい会社からも進展が欲しいですよねぇ。ちまちま新作の内容は明かされているようですが、まだ実機映像も出てませんし。ダンガンロンパの新作に関してはもう気長に待つしかないですが、そろそろ小高テイストのゲームがやりたいな~…って。

長々と失礼しました、ではどうぞ


特別番外編 アイズオブヘブン~拳無き激闘~

 杜王町の一角にて始まった苗木とダービーの『ポーカー勝負』。初戦からダービーが苗木の思惑を上回るという波乱から幕を開けた戦いは、カフェのオープンスペースというのどかな場所にそぐわぬほど白熱していた。

 

 

「コール!キングのスリーカード!」

「無駄無駄ァ!6スタートのストレートだ!」

 

「コール!ハートのフラッシュだッ!」

「…残念。こちらは2のフォーカードですよ…!」

 

 

「…こ、こいつら。なんだってこんな上手く役を揃えられるんだよ?どっちも1,2回しかカード変えてねえし、俺もイカサマなんざしちゃいねえぞ!」

「さあな…。徐倫の言うところの『凄み』って奴なんじゃあねえのか?俺の『スタープラチナ』の目でも、お互いにイカサマもスタンド能力を使っているようにも見えねえしな」

「クゥゥ~ッ…!こいつらのどっちかが居ればラスベガスで大勝ちできそうよねぇ~…」

 ディーラーであるスピードワゴンと、苗木の後ろから観戦している承太郎と徐倫も、この二人の凄まじい気迫に圧倒されていた。特に承太郎は、以前積極的にイカサマを使ってきたダービーを『ハッタリ』と『プレッシャー』で強引に勝利したが故に、目の前の『自信』に満ちあふれた、とても前回のやり方が通じそうには無いダービーのことが信じられずに居た。

 そうこうしていると、各々用事を済ませた仲間達が承太郎たちを見つけて集まって来た。

 

「…あっ、居たよ!承太郎さん、こんなところで何をして…」

「…ッ!!?こ、こいつは…兄の方の、ダービー!?」

「知り合いか?」

「あ、ああ…。以前俺達が戦った、DIOの部下だったイカサマ野郎だ。…それがなんで苗木とトランプしてやがんだ?」

「…やれやれだ。いきなり騒がしくなりやがったぜ」

 状況が分からない一同に承太郎と徐倫が経緯を説明している間にも、ダービーと苗木はギャラリーが増えたことに気づいていないのか尚も勝負を続ける。

 

「「コール!」」

 

ドンッ!

「…『6,8のツーペア』と『J、Kのツーペア』。どうやら、私の勝ちのようですな」

「チィッ…」

 勝利したダービーが苗木の手元からチップを『1枚』奪う。これでお互いの持つチップ数は…なんの偶然か、再び最初と同じ『5枚づつ』へと戻ったのだった。

 

「…振り出しに戻ってしまいましたな。やれやれ、ここまでしても勝ちきれないとは…やはり貴方というお人は底知れませんな」

「そりゃどうも。…けれど、丁度良い。皆さんも戻ってきた、幸か不幸か僕らの手持ちも同じ。…そろそろ『決着』をつける頃とは思わないか?」

「…Good。いいでしょう、お望み通り…次の勝負で最後、互いのチップ『全賭け』のラストゲームと致しましょうッ!」

「うおおッ!?来た早々にクライマックスかよ!」

「よ、よっしゃあ!そんじゃあ行くぜ!」

 互いに全てのチップを繰り出した二人に、気合いを入れ直したスピードワゴンがカードを配る。

 

「さて…む?」

 神妙な手つきで配られたカードを確認しようとしダービーであったが、ふと正面の苗木へと視線を向けた所で手が止まる。

 

「……」

 その苗木はと言うと、配られたカードに『手をつけることなく』ただダービーを見据えていた。

 

「おい…どうした苗木?お前の親だぞ、早くカードの交換を…」

「『必要ありません』」

「…は?」

「『必要ない』…と言ったのです。僕はこの『配られたカードのみ』で勝負します。『コール』ですッ!」

「んなッ…!?」

 苗木の堂々たる『奇行』に、皆は目を見開いて驚く。

 

「お、お前ッ…!何考えてんだ、一度コールしちまったらもうやり直しは効かねえんだぞッ!?『配られたカードだけで』って…そんなもん勝てるわけねえだろう!俺は適当に配っただけなんだぜ!」

「ええ、『承知の上』です。もう後戻り出来ないことも、僕の決断がどれだけイカれたことかってことも。…だが、『今のダービー』にはそうでもしなければ勝てない!『負けない』ことは出来ても、『勝ちきる』にはあのまま続けていては駄目でした。ダービーに勝つためには、彼の『僕に勝ちたい』という『執念』を超えるためには、『理外の覚悟』が必要なんです。理屈だけでは無い、僕自身の覚悟を『計る』決断が…!」

「だからってオメー…!」

 

「…く、ククク…」

「ダービー?」

「フフ…ハハハハハハッ!!Good!いや、Marvelous!!そうだ、それでこそ『苗木誠』、小手先のイカサマや虚仮威しのハッタリなど貴方にとっては『前座』でしかない。己の『覚悟』と『幸運』の全てを天秤にかけた『計算外の勝負強さ』、それこそが貴方の真骨頂だッ!私はそれに勝ちたい、『その貴方』に勝ちたかったんですよ!故に私もそれに乗りましょう、スピードワゴン!私も『コール』だッ!!」

「んなぁッ…!?」

 苗木に続き、ダービーまでもが手にしたカードを伏せ直してコールを宣言する。

 

「こ、こいつら…正気かよ!?」

「…いえ、むしろこの戦いは『正気』のままでは勝てない。もうこれは確率や運の問題じゃあない、相手の『覚悟』を…『勝つ』という執念を上回った方が勝つ。ならば、『まともさ』を捨てるのも手ではあります…!」

「…ええいッ、どうにでもなりやがれッ!二人とも、オープンだッ!!」

 

ババッ!

 スピードワゴンの合図と共に、苗木とダービーはカードをめくる。

 

 

「こ、こいつはッ…!?」

 

 

 

1枚目 苗木♥10  ダービー♠10

 

2枚目 苗木♥J  ダービー♠J

 

3枚目 苗木♥Q  ダービー♠Q

 

4枚目 苗木♥K  ダービー♠K

 

 

 

 

5枚目 苗木♥A  ダービーJOKER

 

 

「ふ、2人揃って…『ロイヤルストレートフラッシュ』ゥ!!?」

 公開された2人の手札の内容に、全員が思わず目を疑う。ロイヤルストレートフラッシュを『初手』で引き当てる可能性は、『0.00015%』…『65万回に一回』の確率である。それをジョーカー込みとはいえ、『2人同時』に成功させる確率など、もはや天文学的なレベルだ。例え苗木と狛枝の2人の『超高校級の幸運』であっても不可能に近い奇跡が、今現実にそこにあった。

 

「こ、康一よぉ~。俺トランプとかババ抜きと七並べと大富豪しかルール知らねえから分からんねえんだけどよ、これって…どっちの勝ちなんだ?」

「ええッ?え、え~っとぉ…僕も詳しいルールは分からないんだけど、確かこれってポーカーの『1番強い役』なんだっけ?それが2人とも同じって事は…『引き分け』?」

「いいや康一君、コールされた後のポーカーの勝負に『引き分けなんて無い』さ。どんな役同士のミラーマッチだろうと、必ず『強弱』があるのさ」

「ポーカーの勝ち負けは、『役』の強さが同じな時は次に『数字の大小』で競う。そしてそれでも同じな時は、今度は『絵柄』がカギになる。絵柄の強さは強い順に『♠、♥、♦、♣』となっているはずだ」

 露伴と花京院の捕捉に、康一たちの顔がみるみる青くなる。ダービーの絵柄は『♠』、そして…苗木の絵柄は『♥』。どちらが強いかは、直ぐに分かることであった。

 

「ということは、この勝負は苗木の…」

「…ええ」

 

 

 

「僕の『勝ち』だな、ダービー」

「…ええ、私の『敗北』です」

『ッ!!?』

 鉄面皮のまま放たれた苗木の『勝利宣言』とダービーの『敗北宣言』に、『ポーカーのルールを知っている面々』は緊張から解き放たれて大きくため息を吐き、『ルールに疎い面々』は更なる驚愕に目を見開く。

 

「な、なんで…!?ダービーの方が強いんじゃあ…?」

「…確かに、『正式な役』であればダービーの方が強い。如何にロイヤルストレートフラッシュ同士でもな、…だが『ワイルドカード込み』のポーカーの場合、一つだけ『例外』がある」

「『同じ役同士』での勝負になったとき、どちらか一方が『ワイルドカード込みの役』だった時は…問答無用で『正しい役』の方が強いんだよ。絵柄で勝っていたとしてもな」

「あ…!」

 

「…ふ、クククッ…!あの時貴方を救ったジョーカーに、今度は私が足を掬われることになるとは…つくづく、貴方には『ジョーカー』に縁があるようですな」

「……」

「…そして、『今回の戦い』に於いてもそれは『同じ』なようですな」

「…?どういう意味だ?」

 意味深な発言をしたダービーに苗木が聞きただすと、ダービーは真剣な顔つきで言い放つ。

 

「ジョジョ…いや、苗木誠。あの方の…『DIO様』の力は『絶対』だ。何者であろうとあのお方を止めることなど出来はしない。…それでも尚諦めないというのであれば、もはや方法は『一つ』。お前達が、あのお方と『同じ領域』に立つほかに無い」

「同じ領域に立つ…だと?…それが、『真実』の『上書き』って奴か?」

「ほう?あのお方の能力の『秘密』に気づいたのか?…いや、その様子では言葉だけで意味までは理解できていないと見える」

「…だったら、とっとと喋りやがれ!苗木が勝ったら、そのDIOとか言う奴の『能力について話す』って言ってたんだろう?まさかとは思うがよ、このままトンズラぶっこけるとでも思ってんのか?」

 ミスタや他の皆からの殺気をぶつけられながらも、ダービーは平然と大きく身振りしながら話を続ける。

 

「…失礼なことを言わないで貰いたい。確かに私は勝つためならばイカサマだろうとやる卑怯者ではあるが…ギャンブラーとして、一度提示した『賭け』を破るほど腐ってはいない。…だが、あのお方の『能力』は私であっても未だに底が見えない。故に私が教えられるのは、ほんの限られたことでしかない。後は貴方がたが自力で『答え』に辿り着くことだ」

「…聞かせてくれ、ダービー。DIOの能力は、一体なんなんだ?」

 苗木の問いに、ダービーは大きく一つ息を整え、告げる。

 

「…DIO様の能力は、あらゆる『真実を書き換える』ことにあるッ!その力は『失われた命』すら呼び戻し、その力に触れたものは魂すらも『無かったことに』…」

 

 

 

 

 

『…喋りすぎだな、ダービー…!』

「ハッ!?」

 

ズズズズッ…!

 ダービーの脳裏に『声』が響くと同時に、ダービーの足下からあの『黒い光』が噴き出す。

 

「なッ…!?テメー、やっぱり逃げる気か!」

「ち、違うッ!くぅっ、流石にそう甘くはないかッ、ならばせめて…お聞きなさい、苗木誠ッ!」

「!」

「あのお方と戦おうと言うのであれば、『全ての遺体』を手にするしか無いッ!『遺体』のもたらすパワーで、あのお方と『同じ次元』に立つ以外に勝つ方法などないのだッ!…貴方ならきっと出来る!貴方ならばきっと、あのお方を『超える』ことがきっと…ッ!」

 

フッ…

 その言葉を最後に、ダービーは光と共に消えていった。

 

「チッ、また逃げられたか…!」

「…いや、どうだろうか?僕には奴が『自分の意思』で逃げたというより、無理矢理『逃がされた』ように見えたけどね」

「おそらく、『口封じ』されたんじゃろう。…どうやらDIOの奴も、腹心だったダービーがよもや裏切るとは思っておらんかったようじゃな」

「…どうだかな」

 重要な情報源を失ったことに皆が落胆する中、苗木はダービーの置き土産となったトランプを拾い、それを懐にしまう。

 

「…ダービー、君の『忠告』、確かに受け取った…!まだ君が言いたかったことの『真意』までは分からないけれど…僕に親父を『超えろ』と言うのであれば、やってやるさ…!君の言うとおり、僕が奴への『ジョーカー』になってみせる。そして必ず…DIOを倒すッ!」

 ダービーから託された『期待』という『希望』を胸に、苗木は決意を新たにするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …一方、その頃。

 

ヴヴンッ…

 

「むぐっ、ここは…」

 『黒い光』により強制的に連れ去られたダービーは、辿り着いた先で強制転移の影響でふらつきながらも辺りを見渡す。…と

 

「待っていたぞ、ダービー…」

「ッ!その、声はッ…」

 暗がりから聞こえた声に振り向くと、そこには薄暗がりの中で豪奢なソファーに座る『銀髪の男』と、その傍で血走った目でこちらを睨む老婆…『エンヤ』がいた。

 

「ダニエル・J・ダービーッ!!貴様、承太郎どもに無様に敗北を喫した身の上で、DIO様からの温情を受けておきながらッ!よもやDIO様の『能力』を奴らに話そうとするなどッ!!拾って頂いた恩を忘れたか、この恥知らずがッ!!」

 手にした杖で床を激しく叩き、口角唾を飛ばしてダービーを罵るエンヤに、ダービーは冷や汗を滲ませながらも笑みを浮かべて応える。

 

「…お言葉ですが、私は温情を『求めた』憶えはありませんよ。私は私でそれなりに楽しくやっていたのです。そこに貴方がたの『お誘い』があったから、それに便乗させてもらったまで。確かにそれなりに恩はありますが、貴女にそこを貶される謂われはありませんな」

「口答えをする気か、こいつめッ!もういい、だったらもう二度と逆らわぬようワシの『スタンド』で…」

「…やめろ、その必要は無い」

 怒り心頭でダービーに折檻をしようとしたエンヤを止めたのは、その後ろにいた『男』であった。これにはエンヤだけで無く、ダービーですらも驚きに目を剥く。

 

「んなッ…!?な、何故そのような…」

「何故だと?…忘れたのか?こいつはあくまで『苗木誠と戦う為』に俺の配下になったに過ぎん。コイツの忠誠は、未だに苗木誠にある。…詰まるところ、コイツは俺にとって『客』だ。ならばコイツが我がスタンドについて話したところで、それは『裏切り』ではない」

「そ、それは…しかし、だからといって…!」

「ああ、その通りだ。だからといってあのまま喋らせておくのも癪だった、故に連れ戻したのだ。…尤も、我が能力を知ったところで奴らに勝ち目など万に一つも無いが、『可能性』は無いに越したことは無い」

「……」

「さて…そこで、だ。ダービー、お前に一つ『チャンス』をやろう」

「チャンス…ですかな?」

「そうだ。もしお前が苗木誠では無く、この俺に『再び』絶対の忠誠を誓うというのであれば、一歩こちらに『踏み出す』がいい。…もし拒むというのであれば、そのまま背を向けて『逃げ出す』のだな」

「……」

 突きつけられた『2択』にダービーはしばし沈黙し…やがて足より先に、口を開いた。

 

「…分かりました。ですが、その前にちょっとした『賭け』をしませんかな?」

「ダービー!貴様、立場を理解してッ…」

「ほう…なんだ、言ってみろ」

「なに、簡単なことですよ。…これから私が貴方の提示した選択に対し、『どう応えるのか』、それを当てるだけです。貴方が勝てば、どちらを選択しようと私の魂は貴方に委ねられます。ですが…私が勝った時には、貴方の魂を貰い受けましょうッ…!」

「き…貴様ッ!この後に及んで寝ぼけたことをッ!!」

 エンヤの激昂も無理は無い。この条件では、例えどちらを選ぼうともダービーがその『逆』を突いてしまえば勝ち目など無い。普通に考えれば、ダービーが圧倒的に有利な勝負でしか無いのだから。

 

 しかし、それに反して『男』は悠然と高笑いを上げる。

 

「…ふふ、ハハハハハッ!そう言うな、エンヤ婆。これは奴にとって最大最後の大博打、言うなれば『乾坤一擲』という奴なのだろう。ならば、それに乗ってやるのも一興だ…」

「ぐ、ぐぬっ…そう仰るのであれば…」

 渋々矛を収めたエンヤを余所に、『男』は仰々しく悩むような素振りをし、やがて答えを出す。

 

「…よし、決めたぞ。俺の答えは…『逃げる』、だ。ダービー、お前は小狡い男ではあるが、筋は通す男だ。かつて承太郎に敗れたときも、お前は奴らに殺されるより俺の『怒りを買う』ことを恐れた。そんなお前が、苗木誠を裏切って俺につくとは思えんからな」

(…成る程、そういうことですかな。仮にダービーが逆を突いて服従を誓おうとも、それは『このお方がいる』という前提の元。服従すれば魂を奪う必要など無く、逃げを選べば奴は自身の選択で身を滅ぼす。どちらを選んだところで、奴に待っているのは『絶望』のみ!カカカッ…ダービー、所詮貴様などその程度の男よ…!)

「…成る程、それが貴方の答えですか。ならば私も答えましょう…」

 『男』の出した答えに対し、ダービーは男を睨み付けながら…『足を踏み出し』

 

 

 

「私の答えは…『逃げずに立ち向かう』、だッ!!」

 

ドンッ!

 そのまま力強く踏み込み、『オシリス神』と共に飛びかかった。

 

「なッ!?だ、ダービー…貴様、謀りおったなッ!?」

「おやおや、失礼なことを言わないで貰いたい…!私は『どう応えるのか』と言ったのであって、『どちらを選ぶのか』と言った憶えなどありませんよッ!今の私は苗木誠の忠実なる部下、どちらを選ぼうが『絶望』しか無いというのであれば、私はどちらでもない…『新たな選択肢』を自ら作り出す!それが我ら、『パッショーネ』の生き様だ!!」

「…成る程、これは予想外だ。お前にこれほどの度胸があるとは思いもしなかった…この勝負、『俺の負け』だな」

 

(…勝ったッ!!)

 『男』の口からその言葉がでた瞬間、ダービーは勝利を『確信』し、『オシリス神』の手で『男』の頭を掴んだ。

 

(貴方のスタンドの『能力』は、今を以てしても計り知れない…だが、私の『オシリス神』の能力は『相手が敗北を認めた時点』で『絶対』だッ!例え時を止めようとも、私が勝利した時点で『オシリス神』は必ず相手の魂をコインにする!これは私のスタンドに定められた『ルール』なのだッ!ならば如何に強力なスタンドであろうと、止められるはずが無いッ!!)

 

「『オシリス神』よッ!この敗者の魂をコインにしろーッ!!」

 

 

 

シ…―ン…

 

「…な、に…?」

「いや全く…素晴らしき蛮勇だとも。かつて俺の元にいた時では考えられぬ行動だ、賞賛にすら値するとも……何の意味も無い行為であったということを除けばな」

 しかし、ダービーの思惑とは裏腹に『オシリス神』のスタンドは彼の意に沿って『男』の魂をコインにすることは無かった。

 

「こ、これはッ…!?」

「ダービー…お前の名誉のために教えてやるが、お前は何も間違ったことはしていない。確かにお前のスタンドは『相手が敗北した』と認めさえすれば、どれほどのスタンド使いであろうと問答無用でその魂を引き摺り出す。力は無いが、その一点に関してだけはお前のスタンドは無敵と言っても良い。弟とは違い勝負の『過程』ではなく、あくまで勝敗の『結果』に拘るお前にとってこの上ないスタンドだろう…」

 

 

 

「…だがッ!それはあくまで、相手が『ただのスタンド使い』であった場合の話しだ!…かつて俺は我が友にこう言った…『王には王の、料理人には料理人のスタンドがある。スタンドに強弱という概念は無い』…とな。だがッ!この俺の、我が『ザ・ワールド・オーバーヘブン』だけは、その『例外』なのだよッ!この俺のスタンドは、あらゆるスタンドをぶっちぎりで超越した、まさに『別次元』のスタンドなのだッ!格闘技の世界チャンプであろうとスタンドには指一本触れることすら出来ないように、お前達はこの俺と『戦う資格』すら持ち合わせて等いないのだッ!!」

 顔面を鷲掴みにされていることなど些事とばかりに気にもとめず、『男』はダービーの行動を称賛し…同時に、その無意味さを憐れむように嘲笑う。

 

(…『予感』はしていた。奴らにああ言った手前、私の能力が通じないかもしれない…そうは思っていた。だが…しかし、まさかここまでとはッ…!?この方のスタンドパワーは、最早我々の手の届く領域を超えているッ…!)

「…さて、ダービーよ。貴様は仮にとはいえこの俺との『勝負に勝った』…その『褒美』をくれてやろう。…他の奴ら同様この俺の『操り人形』となって『生き恥』を晒さぬよう、貴様の存在そのものを俺自らの手で『消滅』させてやろうッ!!」

 

 

「『ザ・ワールド・オーバーヘブン』ッ!!」

 

ドギュゥンッ!!

 『男』がその名を叫ぶと同時に、その背後に『男』のスタンド…『ザ・ワールド・オーバーヘブン』が、眼前のダービー目がけて拳を振り上げた状態で現れる。最早ダービーに逃げる暇など…否、仮にあったとしても、無意味だったであろう。ダービーはたった今、己の行動を以てそのことを悟ってしまったのだから。

 

「さらばだ、ダニエル・J・ダービー…戦う相手を見誤った、愚かなる賭博師よッ!」

「…『希望』は、無いのか…?」

 

 

 

ドゴォッ!!

 




だいぶ間が空いて続きを書き上げたので若干内容が不明瞭かもですが、ご了承下さい
ゲームでのダービーの立ち位置が曖昧だったので、今作ではあくまで「苗木の部下」としてのスタンスを貫かせました。…結局ダービーとかディアボロとかどういう立場だったんだろうか?

ではまた次回…何時になるかな?

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