ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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やっとビルダーズ世界から帰って来れました…凄く面白かったです(小並感

ジョジョ5部はいよいよプロシュート兄貴とペッシ戦!ペッシの声優が新ジャイアンなので、目を瞑ると「ヤクザ家業に入った下っ端ジャイアンとその先輩」の会話にも聞こえるので面白いですね
いきなりジジイになったらナランチャみたいになるのが普通なのに、あの状態でも頭脳明晰なジョルノはやっぱりDIOの血で老化に多少なりとも耐性があったからなんだろうか?
カラーになるとブチャラティよりミスタの方が老化の速度が速いことが分かりますし、アニメになると新しい発見があっていいですよね

ところで…小高さんの取材記事を見てたら、ダンロンの続編の可能性に「無くは無い」的なことを言ってたらしいので、続きを期待しても良いって事ッスよねぇ~!?…しかしV3のあのラストからどうやって次に持って行くのか、見当も付きませんね。
来年は流石に難しいでしょうから、再来年辺りに期待しましょう。

ではどうぞ



特別番外編 アイズオブヘブン~天国のその先に~

グオオオオオッ!!

 『ヘビーウェザー』の虹が周囲を覆い尽くすと同時に、その光がもたらす『サブリミナル』が承太郎たちへと影響を及ぼし始める。

 

「うおおッ…!?ま、また身体が…『カタツムリ』になっていきやがるッ!!」

「なんだこれは…!?これがスタンド能力だっていうのか?」

「くっ…徐倫達は…!?」

 エルメェス達は二度目、承太郎は初めてとなる『カタツムリ化』に戸惑いを隠せずにいたが

 

「…ベネ。どうやらしっかり機能しているようだね。まだ試してなかったからちょっと自信なかったんだけど、流石はSPW財団の技術チームだ」

「…ホントになんともないわ。凄いわねこれ…」

特殊コンタクトレンズをつけた徐倫と苗木は、その兆候が未だ表れていなかった。

 

「さて、感心している暇はないね。今はウェザーをなんとかしよう、…行けますか徐倫さん?」

「Off course…当たり前でしょ!要するに、エルメェス達と同じようにボコボコにして動けなくすればいいんでしょ?…ちょっと気が引けるけど、ウェザーの為ならやってやるわ!」

「…うん。僕がサポートするから、貴女は思いっきりやってください。じゃあ行きますよ…!」

 徐倫が突出し、その後方から苗木が後を追う形で二人はウェザーへと向かう。

 

「徐倫…無謀な突撃は君の悪癖だぞ。俺のスタンドを相手に、そう簡単に接近戦に持ち込めると思うなよ!」

 『ウェザー・リポート』が黒雲を呼び出すと、そこから稲妻が生じ徐倫へと襲いかかる。

 

バチィィッ!!

「ッ!……あれ、なんとも…えッ!?」

「何…!?」

『ッ、痛つつ…』

 しかし、雷速を超えるスピードで間に割って入った『G・E・R』が徐倫に代わってその雷撃を受け止めた。

 

「苗木…!大丈夫なの?」

「これくらい…なんてことないです!今度はこっちの番だッ!」

『無駄無駄無駄無駄ァ!』

 苗木が足下に転がっていた『瓦礫』をいくつか拾って放り投げると、『G・E・R』が瓦礫を破壊しない程度に殴ってウェザーへと飛ばす。

 

「そんな程度で…」

 それに対しウェザーはなんでもないように『ウェザー・リポート』で弾き落とそうとしたが…

 

「…甘いぞウェザー!何のために僕が瓦礫をわざわざ『拳で殴った』と思っているッ!」

 

…シュンッ!

 突然、瓦礫が『鳥』へと姿を変えた!瓦礫に与えておいた『生命エネルギー』が瓦礫を変化させたのだ。そしてその鳥は、どういう訳か瓦礫の時よりもスピードを上げてウェザーの防御を掻い潜ったッ!

 

「何ィ!?」

 

ドスドスドスドスッ!

 予想外の変化とスピードアップに反応できず、『ウェザー・リポート』の風圧を突き抜けてウェザーの身体に鳥の嘴が次々と突き立てられた。

 

「ぐうッ…!?」

「は…!?な、何?アンタ今何をしたの!?」

「瓦礫に生命を与えて鳥に変えました。…ただの鳥じゃない、あの鳥は『カツオドリ』。海鳥の一種で空から『海中』めがけて『急降下』して餌を取るのですが、その際の落下速度は『時速100㎞』にもなります。『ウェザー・リポート』は強力なスタンドではありますが、近接タイプのスタンドとしては反応速度や動きは『スタープラチナ』程では無い。この距離からなら躱せないと踏んでいた…!」

「あ、アンタ…もしかして物知り博士?」

「能力の都合上勉強しただけですよ。…それよりも、急所は外しましたが、そう簡単にギブアップしてくれるウェザーじゃ無いですよ」

 苗木の言葉を肯定するように、自分に突き刺さったカツオドリを無造作に引き抜きながらウェザーは立ち上がった。

 …そして次に言い放ったウェザーの一言に、苗木は思わず動きを止めてしまう。

 

「…流石だな、苗木。『たった一度戦っただけ』で俺の『ウェザー・リポート』の能力をそこまで看破していたとはな…」

「…なんだって?」

「ど、どうしたのよ?」

「…おかしい。徐倫さん、あのウェザーは間違いなく『貴女の知っているウェザー・リポート』なんですよね?」

「そ…そうだけど、それがどうしたのよ?」

「『それ』がおかしいんですよ。今彼は確かに、僕がウェザーと『一度戦った』と言いました。確かにその通りです…が、それを知っているのは『僕の世界のウェザー』でなければおかしいんです!この世界のウェザー・リポートにそれを知る術など存在しないんです、何故ならこの世界には『僕が存在しない筈』なんですから!」

「あッ…そ、そういえばそうだわッ!なんでウェザーがアンタのことを知ってんのよ!?」

「分かりません…。そもそも仮に彼が僕の世界のウェザーだとしても、僕の知っているウェザーはまだ『20代』だ。彼はどう見ても『30代』…年齢的に見れば紛れもなく徐倫さんの世界のウェザーだ。なのにどうして…」

「…戦いの最中に考え事とは、隙を狙えと言っているようなものだぞ徐倫、苗木ッ!!」

 ウェザーの『違和感』に気を取られた隙に、『ウェザー・リポート』から噴き出した『冷気』が薄もやのように徐倫たちを包み込む。

 

「わぷっ!?な、なによコレ…『霧』?にしてはなんか粘っこいっていうか…」

「おそらく、空気中の水や塵を凝結させて濃度の濃い霧を作ったんです。この手の霧はそう簡単には消えません、視界を惑わすのが狙いでしょう…だが!」

 隣にいるはずの徐倫ですらまともに視認できないほどの濃霧に包まれながらも、苗木は一切慌てること無く集中し…

 

「…ッ、そこだッ!」

次の瞬間、振り返りながらに懐から『ライフル弾』を取り出し『G・E・R』で弾き出した。

 

「ちょ、あんたどこ狙って…」

「…ぐあッ…!?」

「え!?」

 頓珍漢な方向に攻撃を放った苗木に徐倫が怪訝そうに眉を顰めるが、霧の向こうから聞こえた悲鳴に思わずぽかんとしてしまう。

 

「ぐっ…!」

 やがて霧の向こうから、肩にライフル弾を被弾したウェザーが姿を現わす。

 

「う、ウェザー!?いつの間に…」

「多分、先に承太郎さんたちを始末するつもりだったんだろう。僕のスタンドの能力を知っているのなら、僕を攻略する方法を考えるくらいなら最も脅威である承太郎さんをこの機会に始末した方が都合が良いだろうからね。…けれど、『視覚』に頼らずとも相手の位置が分かる僕にはその手は通じないよ」

「父さんたちを…!?あのウェザーがそんなことを…」

「違いますよ徐倫さん。さっきも言いましたが、今のウェザーは何者かに『操られて』いる状態です。だからこそ今のウェザーは、『ウェザー・リポートなら絶対にしてこないこと』を平然としてきてもおかしくはない。むしろそうすることで僕らの意表を突くのが狙いでしょう、今はあらゆる可能性を考慮してください。…でなければ、僕らが死ぬだけです」

「…オッケー、ようやっとアタマが理解してきたわ。要するにあのウェザーはどっかのクソッタレに良いように利用されてるってことよね?だったら、ブチのめして目を覚まさせてあげるわッ!!」

 迷いの吹っ切れた徐倫は怯んだウェザーに一気に詰め寄り、至近距離からのラッシュを叩き込む。

 

『オラオラオラオラァッ!!』

「ぐううッ…!」

 苗木の攻撃で少なからずダメージを受けていたウェザーは風圧で徐倫を押し返そうとするが、徐倫はまったく応えた様子もなくなおも攻め立てる。そのことを疑問に思っていたウェザーだが、やがてその理由を見つける。

 

「くっ…徐倫、君は自分の身体を『糸状』に…!俺の風が当たる部位を糸で『網状』にして風通しを良くしたのかッ!風の抵抗を最小限に抑えるために…!」

「気づくのがちょっと遅いのよウェザー!これで…フィニッシュよ!目を覚ましなさいッ!」

 徐倫がウェザーの意識を断とうと全力の一撃を撃ち込もうとした…その瞬間。

 

ゴオオオッ…フッ!

「ッ!?」

 徐倫とウェザーを遮るように『黒い光』がウェザーを包み込み、それに驚いた徐倫が蹈鞴を踏んだ隙にウェザーは光の中に消えてしまった。

 

「き…消えたわッ、ウェザーが…変な光の中にッ!?」

「クソッ、良いところで逃げられたか…」

「徐倫!」

 突然のことに驚く徐倫とチャンスを逃して悔しがる苗木の元に、『カタツムリ化』の解けた承太郎たちが合流する。

 

「徐倫怪我は無いか!?」

「…アタシは大丈夫。でもウェザーが…」

「Shit!一体何がどうなってんだ?アタシとアナスイだけじゃなくウェザーまで操られて、オマケに変な光で消えちまうしよ…」

「ウェザー…無事でいてくれるといいんだけど」

「…ねえ、その…ああもうッ!面倒だから『父さん』って呼ばして貰うわ!父さんと苗木、アンタたち何か知ってるんじゃ無いの?さっき言ってた『異変』って、何が起こってるっていうのよ?」

 徐倫に問われた承太郎は、ため息を吐きながら懐から『亀』を取り出す。

 

「悪いが悠長に説明している暇はねえ。さっき消えた知り合いを元に戻したいってんなら、この『亀』の中に入りな。そこにいるジジイが説明してくれるぜ」

「か、亀の中ぁ?マジで言ってんすかアンタ~?」

「本当かよ…」

 半信半疑ながら恐る恐る亀に手を伸ばすアナスイ、エルメェス、エンポリオ。すると

 

ヒュン!

 驚く間もなく3人は亀の中へと入り込んでいった。

 

「!?さ、3人が亀に吸い込まれたわッ!」

「よし…おい徐倫、…だったか。オメーも中に入りな」

「わ、分かったわよ…」

「あ、徐倫さんはちょっと待って貰えますか?少し用があるので…」

 3人に続こうとした徐倫を苗木が呼び止める。

 

「な、何よ?」

「どうかしたのか?」

「いえ…『遺体』に導かれてこの時代に来た以上、この辺りにも『遺体』があるはずです。今までの法則上、おそらく今回の遺体は徐倫さんが居なければ見つからないかもしれないのでしばらく同行して貰おうかと」

「…成る程、確かにな」

「それに、一つ聞きたいことがあります。…徐倫さん、さっきの言動からしてどうやら貴女はプッチと敵対しているということでいいんですね?」

「…ええ、そうよ。アイツはこの時代の父さんから『記憶』を奪い、そこに記されていた『天国』とかいうのを実現しようとしている。アタシはそれを止めるためにここまで来たッ!」

「ッ!『天国』だと…」

「『天国』、ですか。…やはりそうだったんですね」

「アンタ、なんか知ってんの?」

「いえ…僕が戦ったプッチもそんなことを言っていたので。幸い奴の思惑通りに事が進む前に倒すことが出来たので大事にはならずに済みましたが」

「プッチを倒したの!?一体どうやって…」

「え…普通に殴り倒しただけですけど。奴の『ホワイトスネイク』は確かに厄介でしたが、あの戦いでは『場所』と『仲間』が僕の味方をしてくれましたので…」

 

 

「…へぇ、アンタあの神父を『ホワイトスネイクの時』に倒せたんだ。意外とやるじゃない」

「…なんですって?」

 徐倫が何気なく言ったその一言に苗木が反応する。

 

「…徐倫さん、それはどういう意味ですか?その言葉からすると…貴女の知っているプッチのスタンドが『ホワイトスネイクではない』ように聞こえるのですが」

「あら、知らなかったの?…確かに、ついこの間まで奴のスタンドは『ホワイトスネイクだった』わ。でも、このケープ・カナベラルで神父と再会した時奴のスタンドは『ホワイトスネイクでは無くなっていた』のよ。今起きているこの『重力が裏返っている』現象は、変化した神父の新しいスタンド能力によるものなのよ」

「…スタンドが変わっただと?そんなことがあり得るのか?」

「……可能性としては十分にあり得ます。現に康一さんや日向君は一つのスタンドでありながら『複数の形態』を持つスタンドですし、僕の『G・E・R』も『矢のパワー』により容姿や能力が『進化』したスタンドです。ですが…どちらにせよ、見た目が変化してもその『能力』には何かしらの『共通点』があるものです。『エコーズ』の『音』、『タスク』の『回転』のようにスタンドの基盤自体は同じなはずです。なのに、『スタンドのDISC化』から『重力の反転』なんて変化したことで『全く違う能力』になるなんて…そんなのまるで…」

「そんなこと言われてもアタシにだって分からないし…ただ、『原因』があるとすれば神父はここで『天国』を実現しようとしていた。アタシが見た『父さんの記憶』によればだけどね、それが何なのかさえ解れば奴のスタンドの正体を見破れる筈…!」

 

 

 

 

 

「その推測は既に無意味な仮定と化しているぞ空条徐倫。何故なら既に、私が求めた『天国』は『完成していた』からだ」

「「「ッ!?」」」

 頭上より聞こえてきた『声』に顔を上げる3人。その視線の先…真横になったビルの入り口の陰から何者かが近づいてくる。

 

「あ、アンタはッ!?」

「…また会ったな、空条徐倫。そして…初めましてと言うべきかな、空条承太郎…!」

 暗闇より姿を現わしたのは、白髪の坊主頭ながら肩に掛かるほどに後ろ髪を伸ばした神父服の男…『エンリコ・プッチ』その人であった。

 

「「プッチッ!!」」

「…こいつが、プッチ神父とやらか」

「そうとも。…尤も、初めましてとは言ったが私が『1988年のお前』と出会うのはこれで『2回目』だがね」

「何…?」

「そして…ふふ、『また逢えて』嬉しいぞ苗木誠。お前とこうして再会する日を、私は待ち侘びていたぞ…!」

「…なんだと?」

 意味深なプッチの言動に怪訝な顔をする承太郎と苗木。その表情に口元を歪めながら、プッチは苗木達の元へと降りてくる。

 

「プッチ!お前を『天国』に行かせる訳にはいかないッ!!このケープ・カナベラルでお前が何を求めているのか知らないけど、それを与えるわけにはいかないッ!」

「…フッ。徐倫、お前の言う『天国』とは『この世界の住人だった私』が求めていたものだろう?だが…それはもう『要らない』。私には既に不要になったのだよ」

「なに…?」

「私が本当に求めていた『天国』は他にあったのだから…私はそれを見つけた、いや『見つけて貰った』のだよ。『真の天国』へと既に至った『我が友』にな…」

 徐倫の剣幕にもプッチは柳に風とばかりに意に介した様子もなく応える。徐倫と承太郎がその言葉の意味を把握しかねていると、2人の知らない『事実』を唯一知っている苗木だけが『目の前のプッチ』についてある『推測』に至った。

 

「…プッチ、一つ質問に答えろ」

「何かな、苗木誠?」

 

「…お前は、『どのプッチ』だ?徐倫さんと戦っていたプッチか?希望ヶ峰学園で僕たちに倒されたプッチか?それとも…親父がジョースターを滅ぼした世界のプッチか?」

「なに…!?」

「ハ!?アンタ何言ってんの…」

 

「…く、ははははははッ!!流石だ、流石だな苗木誠ッ!一足先に『彼』と邂逅していたとはいえ、こうもあっさりと『私の正体』に感づくかッ!」

 困惑する承太郎と徐倫とは裏腹に、プッチはその問いを聞くや否や大声で笑い出した。

 

「質問に答えろと言ったッ!…お前は一体『誰』だ?」

「フフフ…その問いには、『全て正解』と答えるのが正しいだろう。お前の知る私も、徐倫の知る私も、未だお前達の知らない私も…全てが『私』だ」

「ど、どういうことよ?」

「…何がどうしてそうなったのかは解りませんが、あのプッチにはおそらく『3つの世界の記憶』があるということです。奴は徐倫さんの知っているプッチであると同時に、僕の知るプッチでもある。どのプッチが『基本』なのかは分かりませんが、奴は一人でありながら『3人のプッチ』でもあるッ!」

「3つの世界の記憶…だと!?」

「思えばウェザーも同じだった…容姿こそ徐倫さんの知るウェザーだったけれど、彼は『僕と戦った時の記憶』を憶えていた。それはつまり、あのウェザーにもこの世界と僕の世界の記憶が同時に存在していたということッ!本来交わるはずの無い平行世界同士の2人のウェザーが、完全な『同一の存在』としてここに居たということだったんだ!」

 

 端から見れば、苗木の言っていることは奇天烈極まりないことである。だが、先のウェザーと今のプッチから感じる『違和感』、…そして苗木の推測を聞きながら満足そうな笑みを浮かべているプッチが、その推測が『正しい』ということを物語っていた。

 

「…素晴らしい、ほぼ正解だとも苗木誠。私とウェザーは『彼』の力により異なる世界の自らと同化し、新たな『自分』へと至った。そして思い知ったのだ!私が求めていた『天国』なぞ、『彼』が至った『真実』に比べれば『通過点』でしかなかったということをな!…かつて私はこう信じていた。人間にとって真の幸福とは『覚悟を抱くこと』だとッ!もし『これから起こること』を『かつて起きた事』として認識できていれば、その者は未来を受け入れる『覚悟』をすることができる!その未来がどれだけ『絶望的』であろうと、覚悟は絶望を吹き飛ばすことが出来るッ!それこそが幸福なのだと、それが『天国』なのだとッ!!」

 

「…しかし、だ。彼の『真実』は、過去や未来のみならず『別の世界の私の運命』ですらも易々と私にもたらした。私の信じた『天国』を以てしても決して知り得ない『真実』に、彼は辿り着くことが出来たのだ!故に私は確信した、彼の『真実』こそが真の幸福なのだとッ!彼を信じ、畏れ、敬い、そして全てを捧げることが幸福なのだッ!…どれほど『覚悟』を抱こうと、人は所詮運命に従うしか無い『奴隷』なのだ。だが彼だけが、人を『運命の奴隷』から解き放つことができるッ!彼の『真実』こそが、万人にとって揺るぎの無い『希望』なのだッ!!」

 

 説法の如きプッチの独壇場。その言葉の全ての意味を、苗木達は理解できずにいた。だがそれでも、『たった一つだけ』分かったことがあった。…この男の『狂気』は、以前とは比べものにならなくなっていると言うことを。

 

「…お前が何を言いたいのか、アタシにはさっぱり分からない。けれど、ハッキリしていることが一つ分かった!もうテメーを生かしておく必要は、これっぽっちも無いってことをなッ!!」

「テメーが何を見て、何を信じているのか…んなことはどうでもいい。俺はただ、テメーをこの場でぶちのめすだけだ…!」

「…プッチ、もうお前に対して言うべきことは無い。何を言ったところで無意味だろうからな、…だから代わりに僕からもお前に『真実』をくれてやる。お前の全ては否定されるべきだという真実をなッ!」

 意を決して苗木達は一斉にプッチへと殴りかかる。

 

 

 だが…

 

フッ…!

 

『ッ!?』

 3人のスタンドの拳が直撃する寸前、仁王立ちでそれを待ち構えていたプッチの姿が『消えた』。

 

「何ィ!?」

「消えた!?何処に…」

 

 

 

 

ガキィィィンッ!!

「…ッ!?な…」

 突如背後から聞こえた『鈍い音』に振り返ると、いつの間にかそこにいたプッチの従える『全く見たことの無いスタンド』の手刀を、『G・E・Rの左腕』が防いでいた。

 

「バカなッ!いつの間に背後に…」

「…ほう、よく防いだな苗木誠…!」

「くっ…無駄ァッ!」

 即座に混乱から立ち直り拳の連打を叩き込むが、再びプッチの姿が掻き消えると今度は姿を現わしたビルの所へと戻っていた。

 

「…なんだ、プッチ…そのスタンドはッ!?『ホワイトスネイク』でも『緑色の赤ん坊のスタンド』でも、あの『C・MOON』とかいうスタンドでも無いッ!なんなんだそいつはぁぁぁぁッ!!」

「…これこそが、かつて私が求めた『天国』へと至る為の力。我がスタンド『メイド・イン・ヘブン』だ。…彼の見いだした新たな『天国』の住人たる私にはもはや無用の長物だが、お前達を葬るのには十分だということはこれで分かっただろう」

「プッチ…!」

「…しかし、今は止めておくとしよう。たった今お前達を殺すことなど造作も無いが、『我が友』はそれを望んではいない。彼は待っている、お前達が全ての『遺体』を揃える時を。お前達はどうあっても『遺体』の導きに従い旅路を歩まなければならない。それこそがお前達が唯一『彼』に迫る道程であり、彼がお前達に定めた『運命』だからだ」

 やがてプッチの周囲に先ほどウェザーを消したものと同じ『黒い光』が現れる。

 

「ジョースターよ、運命のままに進むがいい。お前達の足掻きこそが『真実』へと至る『巡礼』であり、全ての人類が幸福へと至る為の道…即ち、『アイズオブヘブン』ッ!!その道のりに神のご加護があらんことを…Amen」

 その言葉を最後に、プッチは光の中へと消えていった。

 

「逃げられた…いや、見逃された…って感じでしょうか」

「そうらしい…な。どうやら奴は『異変に巻き込まれた』訳じゃ無く、『異変を起こしている側』のようだな。テメーに起きていることを自覚してる辺りな…」

「クッソォッ!プッチ、奴の思い通りになんかさせてたまるかッ!!」

「…プッチを倒すのは当然ですが、それより気になることがあります。奴とウェザーは『奴の友』とやらによって別の世界の自分との同一化を果たしたと言っていた。そいつはおそらく、十中八九…」

「『DIO』…か。お前が言っていた奴の『オーバーヘブン』とやらが関係しているのかもな。やれやれ…『真実』だの『上書き』だの、まどろっこしい言い方ばかりしやがって…」

「…『上書き』?なんですかそれは」

「ああ…お前はあの時まだいなかったんだったか。仗助たちが加わったときに、以前DIOの部下だった『エンヤ』という婆がそんなことを言ってやがったんだ」

「…『真実』、『上書き』…。『仲間が敵になり』、『死んだ筈の人間が蘇る』…そして、『異なる世界の人間の同一化』…」

「『あり得ない』ことを『現実』にする能力…」

 

「「…『真実』の、『上書き』?」」

 

「…ねえ、どうしたの二人とも?」

「いや…なんでもねえ」

「ええ、気にはなりますが今はおいておきましょう。それより、この世界の『遺体』を探しましょう。奴の口車に乗るようで釈然とはしませんが、現実問題これ以外に親父に近づく手段はありませんから」

「だな…行くぞ、徐倫」

「わ、分かったわよ父さん!」

「…その父さんとかいうの、止めろ」

 

 

 呼び方で多少揉めつつも、辺りを散策した結果新たな遺体の部位『右腕』を手に入れた苗木達は、徐倫と共に次なる遺体の場所へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 …その頃、拠点へと戻ってきたプッチは椅子に腰掛けながら考えていた。

 

「…あの時、私の『メイド・イン・ヘブン』は苗木誠の首を刎ねるはずだった。彼の『レクイエム』の力は承知の上だが、仮に間に合ったとしてもあのタイミングでは完全に防ぐことは不可能だった…その筈であった、のに…だ」

 あの時、プッチにだけは見えていた。『メイド・イン・ヘブン』の能力…自身を含めた『時間を加速させた』世界の中で、徐倫はおろか承太郎ですら反応も出来ずにいたというのに…あの瞬間、『G・E・R』の…正確には『苗木の左腕だけ』が、『プッチと同じ速度』で動いて攻撃を防いだのだ。

 

「苗木誠はそのことに気づいてすらいない…『脳』が認識していない以上、腕を動かすことなど出来はしない。なのに奴の『左腕だけ』がまるで独りでに私の攻撃を防いだ。…何かがあるはずだ、奴の『左腕』には今、私ですら想定していない何かが起こっている…!」

 究極たる『彼のスタンド』を除けば、並び立つものの無い最強のスタンドであると自負している『メイド・イン・ヘブン』。…その想像を、苗木の『左腕』は超えてきた。ならば苗木誠には、ソレすら超える『何か』があるということだろうか。それこそ、『彼のスタンド』と同じ…

 

「…まさかな。いくら彼の息子とは言え、苗木誠は彼の実子では無い。そんな奴に、彼の『真実』の一端でも受け継がれているなど…あり得ない。我ながら馬鹿げた妄想だ…」

 自嘲するように失笑して、プッチは立ち上がった。いずれ来るであろう『その時』に備え、『彼』の指示を受けるために。

 …その道すがら、戯れのようにこう呟きながら。

 

「…だがもし、もし彼の『真実』すら超える力があるとするなら。『アイズオブヘブン』…『天国の更にその先』へと至る力があると言うのなら…この荒唐無稽な希望的観測を、こう呼ぶのが相応しいだろう」

 

 

 

 

「『世界(ザ・ワールド)』すら超えた…『宇宙(ザ・ユニバース)』とな」

 




宇宙はトート版タロットカードにおける大アルカナのラストナンバー、世界の相互互換の扱いになるカードです。アルカナの意味自体はほぼ同じなので差があるわけではありませんが、今作ではちょっと違う解釈でやってみようと思います

…まあぶっちゃけ、ジョジョラーなら誰もが妄想する「ぼくがかんがえたさいきょうスタンド」みたいなもんです。どういうものかは…僕もまだ曖昧にしか考えてないので後ほどに

ではまた次回。

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