ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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やっと続きが書けたのでアイズオブヘブン編の更新です
ダンガンロンパの話題が無くなって久しく…そろそろなんか公式からないかしら?
新作は少なくともあと1年は無いでしょうし、関連漫画はほぼ終了、ダンロン霧切の続きは何時になるか…ネタが、ネタが欲しいデース!






特別番外編 アイズオブヘブン~ニュージェネレーション・パワー!~ 

「ハッ!!」

 

ビュオンッ!!

 リサリサの回し蹴りがシーザーと日向を襲う。御年50歳とは思えないほど鍛えられた脚に加え、『ズームパンチ』の要領で膝の関節を外し鞭のようにしなりつつも鋭く風を切るその一撃を、二人はそれぞれ限界までのけ反ることで躱す。

 

「うおおッ!?…な、なんという鋭い一撃…これが先生の『本気』かッ!?」

「まともに受けてたらガードごと吹っ飛ばされてましたね…流石に強い…!」

「…その程度かしらシーザー、そして見慣れぬ波紋の戦士。ならば刃向うだけ無駄、大人しく死ぬがいいッ!!」

「くッ…先生、どうしてしまったというんですか!?」

「大伯父…じゃない、シーザーさん!今は戦いに集中しましょう!…悔しいですがリサリサさんの言うとおり、一瞬でも気を抜けばあっという間にやられますよ!」

「チィッ…!」

 シーザーと日向。若いなれどそれぞれ才覚と経験を十分に備えた二人を相手取っても尚、リサリサは余裕を崩さなかった。それだけ、彼らとリサリサの間にある波紋戦士としての『差』は明確なものであった。

 

 そしてこちらも…

 

「ドイツの科学はッ!!世界イチィィィィィィィィッ!!!」

 

ドドドドドドドドドッ!!

「うおおおおおおおおッ!!?」

 ハイテンションで叫びながら腹部に備えた『機関銃』を乱射するシュトロハイムを相手に、ジョセフはそれらから逃げるので精一杯であった。

 

「じょ…冗談じゃあないぜッ!!こんなもん前みたいに『髪の毛バリアー』で防げるレベルじゃあないぜ!それに第一、俺の髪の毛を抜くなんてやりたくねーよ!俺はハゲたくないぜーッ!!」

「いつまでそうしてふざけてられるかなぁ~ジョジョォーッ!!そらそらそらそらそらそらーッ!!」

「た、助けてくれシーザーッ!」

「クッ…情けないこと言いやがって…!こっちだって手一杯だ馬鹿野郎ッ!!」

「ならば…これならどうだッ!」

 リサリサの攻撃を躱しながら日向は腰のガンベルトから『鉄球』を2つ取り出す。

 

「お前何を…!?」

「コォォォォッ…!」

 日向は鉄球に波紋を籠めつつグローブの『石鹸水』を滴らせ、更に周囲を飛び交う蝙蝠をスケールに『黄金の回転』をかける。

 

「ジョセフさん、これをッ!」

「あ?」

 回転をかけた鉄球をジョセフへと投擲すると、鉄球はジョセフの身に着けたマフラーの両端に吸い付くようにくっつくと不思議な事に落ちることなくそのまま回転を続け、その摩擦により鉄球の表面に付着した石鹸水から『シャボン玉』が生じ、ジョセフの周囲に滞空する。

 

「な、なんだぁこりゃあ?おい、こんなもんでどーしろって…」

「隙アリィィィィッ!!」

 

ガガガガッ!

 注意が一瞬逸れたジョセフ目掛け、シュトロハイムは銃弾を乱射する。

 

「し、しまった…!」

 

ドドォーンッ!

 避ける間もなく、周囲のシャボンごとジョセフの身体は銃弾を喰らって『穴だらけ』になってしまった。

 

「じ、ジョジョォーッ!!?」

「ワーッハッハッハッハ!ついにジョジョを仕留めたゾォー!!」

「呆気ないものね…さて、次はお前たちだ!」

「クソッ…!おい貴様!貴様が余計な事をしたせいでジョジョが…」

「落ち着いてくださいシーザーさん。…それに、ジョジョさんがどうなったっていうんですか?」

「…何をふざけたことを言っている!?貴様の目は節穴か、ジョジョがあんな姿に…」

 悪びれもしない日向の態度のシーザーが憤慨して無理やりジョセフの方へと顔を向けさせようとした、その時

 

 

 

ガコォンッ!!

「かぺッ…!?」

「…ッ!?」

「な…!?」

「流石ジョセフさん…あの状況を速攻で利用しますか」

 鈍いと音と共にシュトロハイムの後頭部に衝撃が走り、シュトロハイムはそのまま昏倒してしまう。そしてそれを成したのは…

 

「へへッ…悪く思うなよ、シュトロハイム!」

「じょ…ジョジョォ!?」

 シュトロハイムの首筋に『波紋肘支疾走』を叩きこんだ、『無傷のジョセフ』であった。

 

「ジョジョ…お前、どうして…?」

「ん?何がって…俺はシュトロハイムが『とんちんかんな方向』に機関銃をぶっ放して馬鹿笑いしてやがったから、ばれない様にそーっと後ろに回り込んでぶん殴っただけだけど…なんか変か?」

「変どころじゃあないだろう!お前は、さっき奴の銃撃で蜂の巣にされたんだぞ!」

「ハァ?俺が蜂の巣?何言って…って、うおーッ!?お、俺が蜂の巣になってんじゃあねーかーッ!?」

 シーザーに言われてやっと、ジョセフは目の前に居る『穴だらけになっている自分』を確認した。

 

「ど、どうなってんだ?これは夢…いや、蜃気楼かぁ!?」

「…夜に蜃気楼はできませんよジョセフさん。それはただの『虚像』です」

「きょ…きょーぞー?」

「簡単に言えば、光を屈折させて作った幻です。さっきジョセフさんに投げた鉄球に籠めた『波紋』を使ったね…」

「鉄球って…こ、これかぁ?」

 ジョセフが未だにマフラーの先で回転し続ける鉄球を訝しげに見つめる。鉄球は回転しながらシャボン玉を生みつつも、先ほど同時に籠めた波紋により微弱に発光していた。

 

「だ、だが…確かにシャボン玉で光を屈折させる戦法は俺も考えたが、あんな程度の光でそんなことができるのか!?」

「それを可能にしたのが、あの鉄球にかけられた『黄金の回転』…波紋を究極の域に押し上げるために生み出された『技術』です…!」

「黄金の…回転?」

 

 日向が仕掛けたカラクリはこうである。黄金の回転がかけられた2つの鉄球は『相反』するように回転し合い、その結果2つの鉄球の間…この場合、『ジョセフの正面』の空気が収束し、周囲に比べ空気の『密度』が高くなる。その空間に鉄球が自ら放つ光が入ると、周囲と空気の密度が違う空間では光の『屈折率』が異なるため、見えているものと実際の位置とに『ズレ』が生じる。更にその光を周囲に滞空するシャボン玉が反射し、そのズレをより顕著にすることで、実際にジョセフが居る場所とは違う場所にあたかもジョセフが居る様な『幻』を生み出しているのである。

 ジョセフの幻がシュトロハイムの銃撃によって穴だらけになったのも、銃撃と共に割れたシャボンにより穴が空いた部分の光が途切れ、所々虚像が欠けて見えるように調整したのだ。…よく見ればジョセフの動きに呼応して虚像も動いており、血も出ていない上に銃で撃たれたにしてはお粗末な傷の演出であるため、内心ヒヤヒヤだったのは日向だけの秘密である。

 この技は、日向がカムクライズルの協力を得て、柱の男ワムウの必殺技である『神砂嵐』の原理を黄金の回転で再現し、そこにシーザーが編み出した『シャボンレンズ戦法』を掛け合わせることで完成した、かつての仇敵同士のコラボ技とも言えるものなのだ。

 

「…貴様、本当に波紋戦士か…?貴様の波紋は、我々の知る波紋とは明らかに毛色が違う…。そもそも貴様のような人間がこの島に居たか…?チベットの総本山ですらも、貴様ほど若い戦士の噂など聞いたことが無いぞ…!」

「…さあて、どうでしょうね?もしかしたら戦士の誰かの『隠し子』だったりするかもしれませんよ?…心当たりが無いとは、言いませんよね?リサリサ…いえ、『エリザベス』さん?」

「ッ!?貴様…ッ!」

「エリザベスぅ?…おいシーザー、こいつ何言ってんだ?」

「知らん…!だが先生のあの動揺…おいお前、先生の何を知って…」

「…戦いの最中によそ見などッ!!」

 物知り気な日向の言動にシーザーもジョセフも首を傾げるが、そんな彼らに激昂したリサリサが躍り掛かる。

 

「ハアァッ!!」

「うひぃ~ッ!?」

「どわッ!」

「くッ…!」

 3対1と先程より状況が悪くなったにも関わらず、リサリサは嵐のように果敢に攻め立て3人を圧倒する。

 

「どっ、どうするジョジョ!?このままではじり貧だぞ!」

「分かってるって!今策を考えてんだ…何か、何かないか…?」

 どうにかリサリサのいなしながら距離を取り、ジョセフは作戦を考える。そしてちらりと自分のマフラーの先…未だ回転を続ける『鉄球』を見て、思いつく。

 

「…ひ、閃いたッ!おいボーズ、この鉄球…まだあるか?他にどんなことができる!?」

「え?…は、はい。まだ鉄球は残ってますし、他には…」

「…!?よ、よく分からねーが…だったら、シーザーも聞いてくれ!ごにょごにょ…」

「…!な、成程…それならリサリサさんでも、…いや『リサリサさんだからこそ』うまくいくかも…!」

「だ、だが…大丈夫なんだろうな?」

「それはお前ら次第だぜ…!頼んだぜ、二人ともッ!」

 作戦を伝えると同時に、ジョセフは首のマフラーを掴みとりリサリサに突撃する。

 

ブンブンブンブンッ!

「うおおおおおッ!!これを喰らって目を覚ましやがれ、リサリサーッ!!」

 マフラーの真ん中を掴むと、ジョセフはマフラーを振り回し始める。それは先端で固定されたまま回転する鉄球が『重り』となり、まるでジョセフの得意とする『アメリカンクラッカー』を大型化させたような武器となり、ジョセフはそれをリサリサ目掛けて投げつけた。

 

「…フン、くだらないわ!」

 しかし飛んできたそれを一笑に付したリサリサは自身に巻いていたマフラーを手に取るとそれに波紋を籠め

 

「ハァッ!」

 

ビタンッ!

 回転するマフラーに手にしたマフラーを大上段から叩きつけ、地面に墜落させた。リサリサのマフラーは『サティポロジアビートル100%』でできたマフラー。ジョセフのただの毛糸のマフラーとは波紋効率が段違いであるため、いくら勢いがついていても容易に叩き伏せることができる。

 

「ゲッ!」

「フン…」

 いとも簡単に躱されたことに驚くジョセフ。だが…

 

「……なぁ~んちゃって、こっちが『本命』だぁーッ!」

 そんなことは織り込み済みだったジョセフはそのまま突貫し、今度は自前のアメリカンクラッカーを振り回してリサリサに迫る。跳びかかったジョセフに対し、リサリサはマフラーを振り下ろした体勢のまま動かない。

 

「その体勢じゃあ文字通り手も足もでねーよなぁ!?喰らえ、クラッカー・ヴォレイ…ッ!」

「……」

 

 

 

ゴシャッ!

「ゲッ…!?」

 鈍い音共にカエルの潰れたような悲鳴を上げたのはリサリサ…ではなく、

 

「…愚かな。そんなつまらない手で私を倒せると思うたかッ!!」

 跳びかかったジョセフを待っていたのは、まるで『シャチホコ』のような見事な『逆エビ反り』の体勢になると共に振り上げられたリサリサの足であった。カポエイラのような勢いで突き出された脚はジョセフの顔面に吸い込まれ、ジョセフは弾かれたパチンコ玉のように吹っ飛んでいく。

 

 しかし、ジョセフの策はここで終わらない。

 

「…頼んだぜ、シーザーッ!!」

「おおッ!」

 吹き飛ぶジョセフとすれ違うように、体勢の戻り切らないリサリサに今度はシーザーが襲い掛かる。

 

「…成程。最初からジョジョは囮、返り討ちに遭うのは承知の上だったという訳ね」

「その通りッ!そして、今度はオレが相手です先生!『シャボンランチャー』ッ!!」

 シーザーは走りながら『シャボンランチャー』をリサリサに放つ。

 

「生意気な…。その程度の波紋が私に通じると…」

 

パチパチパチパチッ!

「!」

 迎撃しようとしたリサリサであったが、放たれたシャボン玉はリサリサの手前でいきなり連鎖するように弾けると、残ったシャボンの膜がくっつきあい、『半球状のドーム』になってリサリサを包み込んだ。

 

「これは…最初から攻撃ではなく、私を『捕える』為に…!?」

「…冷静な貴方でしたら、俺のこんな甘っちょろい手なんぞ見抜いていたでしょう。だがいまの貴方は俺達を『殺すつもり』で来ている。それ故に、貴方も俺達が『殺す気』で来ると思い込んでいる!それが『いまの貴方』の弱点だッ!」

「チッ…!だが、この程度のシャボン直ぐに…」

 

「…そしてリサリサさん、貴女のもう一つの『弱点』は」

 シーザーの後方にいた日向がそう言った瞬間

 

キュルキュル…ギャルギャルギャルギャルッ!!

「…?」

 ジョセフのマフラーと共にリサリサの足元に叩きつけられていた『鉄球』が突如回転を強めだし…

 

ギャンッ!

ドゴッ!

「…な、が…ッ!?」

 瞬間、蛙の如き勢いで『跳ね上がった』鉄球がリサリサ目掛け突っ込んでくる。咄嗟に避けようとしたものの、自分を包むシャボンの膜がそれを阻害し、避け切れずに脇腹に攻撃を受けてしまう。

 

「ば、馬鹿な…ただの鉄の球が、独りでに動くなど…」

「それが貴女の『弱点』です。…波紋はあくまで『対生物』用の技。その達人である貴女は『対人戦』では無類の強さを誇る、…だが時代もあってか貴女は『無生物』の物に対する反応は並でしかない!まして『黄金の回転』が生み出す奇跡は、一見で看破できるほど安いものではないッ!」

「くッ…」

「そしてぇ…ッ!」

 

ダンッ!

 シーザーの背を借り、それを踏み台に跳び上がった日向は腰から『突起のついた鉄球』を手に取ると再び『黄金の回転』をかける。

 

「これで『詰め』だッ!『レッキング・ボール』!!」

「ッ!?」

 投げ放たれた鉄球はリサリサの手前で表面の突起…『衛星』を弾きだし、ダメージで怯むリサリサの『左半身』を掠める様に命中する。すると…

 

「…ッ!?こ、これは…ッ」

 『レッキング・ボール』…黄金の回転がかかった鉄球が生み出す特殊な『衝撃波』がリサリサの脳を刺激し、リサリサの脳から『左半身の感覚』を消失させる。百戦錬磨のリサリサと言えど、この攻撃には流石に理解が追いつかず、混乱してしまう。

 

「どうなっている…!?私の身体が…」

「『左半身失調』!体の左半分の機能が封じられるということは、身体能力も純粋に『半分』になるということ、つまり貴女の波紋もまた今なら『通常の半分』にまで抑えられている。…そんな状態で、『お二人』の波紋を耐え切れますかねェ!?」

「!」

 リサリサの『右側』からシーザーが迫る。…が、直前に日向の言った『二人』という言葉に思わず顔を『左』に向けると、そこにはいつの間にか復活したジョセフがすぐそこにまで迫っていた。ジョセフは『レッキング・ボール』で左側が死角になったのを見計らって接近していたのである。

 

「いくぜシーザーッ!」

「合わせろよジョジョッ!」

 

「「ハァァァッ!!」」

 

ドギュゥゥゥンッ!!

「あああ…ッ!!?」

 左右からリサリサを挟み込んだジョセフとシーザーが、リサリサの『頭』に両の掌を押し当て波紋を流し込む。だがこの波紋は、通常の波紋とは少し性質の異なる物であった。

 ジョセフが放ったのは、『右手からくっつく波紋、左手から弾く波紋』。対するシーザーは『右手から弾く波紋、左手からくっつく波紋』…つまり、二人は『鏡合わせ』の要領で両手からそれぞれ『逆の性質』の波紋を放っていた。これによりリサリサの脳は多方向から様々な指向性の波紋を受けたことで脳を揺さぶられ、一種の『脳震盪』を引き起こされる。しかし、ジョセフとシーザーが互いに逆の性質の波紋を放ったことでそれぞれの波紋は相殺され、リサリサへの身体的ダメージはほぼ『ゼロ』!つまりこの技は人体を傷つけることなく、相手の意識だけを奪うことができるのである。

 

ドサッ…

 リサリサとてまともな状態なら自身の波紋力だけで二人からの波紋を押し返すことなど造作もないであろうが、左半身失調によりその半分を封じられた状態では抗うことができず、そのまま気を失ってしまった。

 

「…ふ、ふぃ~…う、うまくいったぜ。ほんのちょっとでもタイミングミスってたらしくじてったかもなぁ~。ベリーラッキーって奴だぜ」

「本当にな…。ともかく、これでリサリサ先生も戻ってくれるといいが…」

「…お二人とも、お見事でした!流石はリサリサさんの…」

「…おっと!誉めてくれんのは悪い気分じゃあねえし、お前の手助けにも感謝してる。…だが、その前に訊きたいことがあるぜ!」

「答えろ、お前は『何者』だ?何故波紋を使える?どこでその『鉄球の技』を身に着けた?…お前は先生や俺達の何を知っている?」

「え…えー…っと、お…。それなんですが…」

 戦闘を終えひと段落ついたことで改めて日向を問い詰めようとするジョセフとシーザーであったが…

 

ドゴォンッ!!

「ッ!?」

 背後から聞こえた轟音に掻き消される。その音の正体は

 

 

 

「…ぐ、むぅ…」

「ぐええ…!」

「一丁上がり、じゃな!」

「やれやれだぜ…」

 壁に重なる様に叩きつけられたリンゴォとホル・ホース。それを成したのはガッツポーズを決めるジョセフ(老)と、緊張から解き放たれたように息を吐く承太郎であった。

 

「承太郎さん、じょ…ご隠居!」

「おお日向君、…どうやらそちらも無事なようじゃな。まさかリサリサとシュトロハイムを倒すとは…恐れ入ったわい」

「お二人の協力があってこそですよ。…そちらは危なげなかったようですね」

「ふん…このジジイの『賭け』がうまくいっただけだ。結構ヒヤヒヤしたぜ…」

 

 

 結果だけを言えば、承太郎、ジョセフ(老)コンビとホル・ホース。リンゴォコンビの戦いは承太郎たちがさほど苦戦することも無く圧勝した。リンゴォのスタンド『マンダム』の能力…『時間を6秒だけ巻き戻す』その力は、リンゴォの己の死すら厭わない強い『覚悟』と合わさり、絶妙なタイミングで時を巻き戻し、承太郎たちの決定打を悉く躱す。加えてその『6秒のタイムラグ』を利用したホル・ホースのスタンド『エンペラー』による『時間差射撃』は、かつての交戦経験からホル・ホースの実力にある程度『タカ』を括っていた承太郎たちの予想を超えて翻弄した。

 

 …しかし、この二人は良くも悪くも『バカ正直』であった。リンゴォはその矜持から、ホル・ホースは『相方の力を利用して戦う』というその性格からか、承太郎の『スタープラチナ』に警戒こそしていたものの策らしい策を使わず戦っていた。…それをすぐそこにいる『全盛期』よりは年老いたとはいえ、『小賢しさ』ではジョースター家で右に出る者のないあの男が見逃さない筈が無かった。

 

「フフフ…若いのうお主等。正々堂々は結構な事じゃが、ワシはそう簡単には出し抜けんぞ…!」

 『時間差攻撃』を利用したのはリンゴォ達だけではなかった。ジョセフ(老)は承太郎が囮になっている隙に近くの『針山』から鋭利な針を一本失敬し、思い切りリンゴォに投げつけた。

 

ドスッ!

「ぐふッ…!」

 承太郎に集中していたリンゴォは避け切れずそれを喰らってしまったが、即座に自分の『左腕の時計』…『マンダム』の能力を起動するための『キー』となるそれに手をかけ、時を巻き戻す。

 

ウヴンッ…

「…小賢しい手を。もうそんな小賢しい手は食うものか…!」

 時間が巻き戻り、針の存在に『気づいた状態』で6秒前に戻ったリンゴォは不意打ちをかましたジョセフ(老)に罵声を呟きながらそれを躱す。

 …しかし、ジョセフ(老)はそれを読んでいた。だからこそ事前に『打ち合わせ』をしていたのだ。

 

「…成程、確かに卑怯かもな。けどまあ、テメーらみてーなのにそこまで気を遣ってやる道理はねえよな」

「…ッ!?承太郎…!」

 避けようと身を捩ったリンゴォが見たのは、巻き戻った『針の位置』のすぐ後ろに居た承太郎の姿。承太郎はリンゴォが時を巻き戻して避けようとすることをジョセフ(老)から聞いて、時が巻き戻った瞬間に合わせ針の進行経路で待ち構えていたのである。

 

『オラァッ!』

ガツンッ!!

 『スタープラチナ』の拳が、針の根元を押し出す様に打ち据え、爆発的に加速させると同時にその『軌道』を変える。その先に居るのは…当然、リンゴォ。

 

ドズゥゥッ!!

「ぐおおおッ!?」

 能力使用後の隙を突かれたリンゴォに躱すことなどできず、針はリンゴォの『左腕』、しかも狙い澄ましたように『時計』に突き刺さり、有り余った勢いでそのまま貫通し脇腹に腕を縫い付けたように突き刺さった。

 

「だっ、旦那ぁッ!」

「よそ見しとっていいのかのぉーッ!!『ハーミット・パープル』!!」

 リンゴォがやられたことに気を取られたホル・ホースに、ジョセフ(老)の『ハーミット・パープル』が襲い掛かる。

 

「チィッ…嘗めんなよロートルの爺さん!その粋がった眉間今ブチ抜いてやるよ!!」

 しかしホル・ホースもそれなりの修羅場を潜った猛者。即座にそれに反応し、『エンペラー』の銃口をジョセフ(老)に向ける。

 

「喰らいなジョセフ!!」

 

ドォンッ!

 『ハーミット・パープル』に絡め取られるより一瞬早く放たれた銃弾は迫る来る茨を生き物のようにすり抜け、ジョセフの眉間に吸い込まれるように向かい…

 

 

 

「『スタープラチナ・ザ・ワールド』ッ!!」

 

ドォーンッ!

「…やれやれだぜ。手のかかるジジイだ…時は動き出す」

 

 

「…ッ!?んな…なにぃッ!?」

 次の瞬間、銃弾はいつの間にかそこにいた『スタープラチナ』によって摘み取られていた。

 

「じょ、承太郎…!?し、しまった!『弾丸もスタンド』だから、弾丸を掴まれると…お、俺も動けねェーッ!」

 

バシィーンッ!!

 体の自由を奪われたホル・ホースを『ハーミット・パープル』が容赦なく縛り上げ、ジョセフはそのまま思い切り振りかぶると

 

「…ッでぁーらっしゃぁぁッ!!」

 

ブゥゥゥンッ!!

ドゴォンッ!

「ぐああッ!?」

「ぎえッ!」

 縛られたホル・ホースを力一杯振り回し、ダメージで動けないリンゴォに叩きつけると諸共壁へと打ちのめしたのだった。

 

 

 

 かくしてエア・サプレーナ島における『異変』が生んだ戦い…その『第一ラウンド』はジョースター一行が勝利したのであった。

 

 




日向がやったことが分かりづらいと思うので説明すると、7部でジャイロがディ・スコ戦で使った鉄球の回転で「空気の屈折率」を変えるトリックに、太陽の光と同じ波長の波紋の光をシャボンを使って投射しジョセフの本来の位置の反対側に虚像を作った、という訳です。…私は文系なんだ、細かいことは気にするなッ!



どうでもいい話ですが最近変なネタばかり思いつく。江ノ島に「ダークリング」でも持たせたろ、とか…。宇宙で一番邪な心の持ち主の手に渡るのなら、江ノ島も十分に資格はあるんじゃね?みたいな
そうなると苗木君はオーブか…どっちかっていうとジードなんだけどね、設定的に

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