だが…ッ、まだ続きは書かない…。ここは間を置く…生殺し…ッ!簡単に希望は与えない…ッ!!
という訳で今回はアイズオブヘブン編です。今年最後の更新になります。3が日は仕事が忙しいので新年のあいさつはしばし遅れるかもしれません。
…年が明けたらいよいよニューダンの発売…!また筆が遅くなる…第2部書きながら第3部書き始めたりしないようこらえなければ…
「ぐぬぅ…ッ!」
「うぷぷ…まず一人~♪次はアンタだよ、ちょび髭オジサマ♡」
こと切れたマライアを放り捨て、江ノ島はツェペリへと狙いを定める。
「ば、化け物かこのレディーは…!?」
「化け物…?違うね、アタシは『絶望』だよ!気に入ったものも、気に入らないものにも、遍く絶望を与え、それを『愛する』…それがアタシなんだよ」
「ぬう…」
「さーて…」
「お、おいッ!お嬢ちゃん!分かってるとは思うがツェペリのおっさんは…」
「わーかってるって!殺しゃしないよ、…ま、波紋使いの弱点は『肺』らしいし、適当にぶん殴って呼吸を封じれば……ッ!?」
ゴゴゴゴゴゴ…ッ!
「あれは…!?」
「あの光は…ブチャラティの時と同じ…!」
動き出そうとした江ノ島を制するように、ツェペリの周囲に『黒い光』が噴き出した。
「くっ…ここまでか。ジョジョよ、この場は退こう。だが、お前が『あのお方』の邪魔をするというのであれば、私は何度でもお前の前に立ち塞がろう!憶えておけ!」
「つ、ツェペリさんッ!」
ジョナサンにそう言い残し、ツェペリは光の中に消えていった。
「クッソォ…!ツェペリのおっさんまで消えちまった…!」
「…まさか、ツェペリさんと戦うことになってしまうなんて…」
「…フン。弱気になっている場合じゃあねえぜ。あのオッサンが仲間なら、ブチのめして取り戻すしかねえ…アンタだって、分かっているはずだろう?」
「…ああ、その通りだ!ありがとう、僕を勇気づけてくれて」
「…フン」
「………」
江ノ島は、ツェペリが消えた後もただ茫然とその場所を見つめていた。
「…どうしたの、江ノ島さん?」
「どこか怪我を…?でしたら見せてください。僕が治します」
「…『視えなかった』」
「え?」
「アタシが『エピタフ』で視た予知には、アタシがあのオッサンを再起不能にしているところがハッキリ視えていた。…アタシの予知には、あの『光』の存在は映ってなかった」
「…ッ!『キング・クリムゾン』でも、あの光を予知できなかったのかい?」
「…アンタの『レクイエム』はこう言ってたよね。『エピタフ』が見せる映像は、紛れもない『真実』だって。例え『レクイエム』で真実へと至る『過程』を封じたとしても、そこにあるべき『真実』まで変えることは出来なかった。…なのに、今アタシの目の前で、その『真実』と異なる『現実』が起きた…」
「…『あのお方』、この『異変』の黒幕…つまり、『DIO』の力は、『真実』すらも捻じ曲げるほどの能力だということですか…?」
「…アタシの『分析』が通用しないのは苗木、アンタとカムクラに続いて『3人目』だけどさ。…初めてだよ、会ってもいない相手に『寒気』を憶えるのはさ…」
「江ノ島さん…」
苗木とも、カムクライズルとも異なる自分の『超分析能力』が全く及ぶ気がしない存在に、江ノ島の表情には微かに、しかし確かな『恐怖』の色があった。
…ポン
「え?…な、苗木?」
そんな江ノ島の頭に苗木は軽く手を乗せ微笑む。
「…大丈夫。例え親父がどれだけとんでもない力を持っていても、僕等は決して負けないさ。『真実』から産まれた行動は、決して滅びはしない。今僕らがやろうとしていることは、紛れもなく『正しいこと』なんだ。だから、僕等は負けない。僕等がそう信じ続ける限り、その『真実』が揺らぐことはないんだから」
「苗木…」
「…らしくないよ、江ノ島さん。君にそんな顔は似合わないよ。いつだって『絶望』を、『未知』を求めて不遜に突き進む…それが僕の知ってる『江ノ島盾子』なんだからさ。そんな君だから、僕は君を『信じよう』って決めたんだから」
「……」
「…?江ノ島さ…」
ガブッ!
「あ痛ッ!?」
唐突に首筋に噛みついた江ノ島に、苗木は思わず悲鳴を上げて跳び退く。
「…まったく!私を嘗めないでもらえますか苗木君?私が…この江ノ島盾子ともあろうものが、こんな程度で心を折ると思っているのですか?…むしろ『逆』だよ!私様の力がまるで及ばない存在と敵対するというこの『絶望感』…私は今、とてつもなく『高揚』しているんだよ!…つまりー、苗木君の今のナンパ行為はー、全くの『無駄』だったってワケー!浮気失敗…ですね…アッヒャッヒャッヒャッヒャ!」
「あ痛てて…アハハハ…。まあ、そういう『無駄』なら別にイイよ。江ノ島さんが元気になってくれたなら、僕はそれでいいからさ」
「…ふん。苗木のバーカ…」
「…二人とも、仲がよろしいのは結構ですが、そろそろ本題の話を始めませんか?承太郎さん達も待たせているようですし…」
二人の甘酸っぱい空気に臆することなく、呆れたような表情のジョルノが話を進めに急かし出す。
「あ…ああ、ごめん!今行くよ!」
「やれやれ、空気の読めないコロネ頭だこと…」
「それはすみません。…ですが、ここは敢えて『読まない』方が正しいと判断したので」
「…チェッ、苗木と違ってからかいがいのねー奴…」
ハッとなって自分の行動に焦る苗木と水を差されて不機嫌な江ノ島を連れ立って、ジョルノ達は再び承太郎たちの元に戻る。
「…さて、色々あったがジョースターさんともこうして合流できたことだし、次の遺体の場所に向かいたいんだが…その前に、ジョースターさん、こいつを…」
スピードワゴンがジョナサンに差し出したのは、スピードワゴンが所持している『遺体』であった。
「こいつは、元々アンタの元にあるべきものだ。アンタが持ってるのが一番安全だし、それが遺体の示した『運命』なのかもしれねえ…」
「スピードワゴン…!」
ジョナサンは頷くと、その遺体を受け取った。
「…そういえば、さっきから気になっていたんだが…彼らの持っている『見えないパワー』のようなものは一体なんなんだ?それに、苗木…何故君はあれほどまでに『吸血鬼』のことに詳しい?それに、今回の『異変の黒幕』についてもまるで知っているようだったが…」
「ああ~…えっと、その辺は話すとすっごく長くなりそうなので、『亀』の中でお話しますよ。ジョナサンさんも体の負傷は治しましたが、疲労までは抜けきってない筈ですから、休息が必要でしょうしね」
「…お、おお!その通りだぜ!ジョースターさん、無理はしないで今は少し休んでくだせえ!積もる話は落ち着いてからしましょうや!…承太郎、亀を出してくれ!」
「…ああ」
承太郎が懐から『亀』を取り出すと、困惑するジョナサンの手を引いてスピードワゴン、苗木、ジョルノ、江ノ島は亀の中へと戻っていった。…そして入れ替わるように、今度はジョセフと日向が亀から飛び出してきた。
「…ジジイ、日向。どうした?」
「ソファで休んでたらの、スピードワゴンに『ジョースターさんを休ませる』と言われてどかされたんじゃ。…ワシだってジョースターなのに…」
「俺はちょっとばかし体がなまってきちゃいましてね。…ったく、偉大なる我が先祖のウィル・A・ツェペリを元に戻そうとしたら、江ノ島に踏み台にされて先を越されるし…そういう訳なんで、ちょっとばかし俺も外で動きたいと思いまして」
「…フン。好きにしろ。…それより、もうこの時代での用事は済んだ。次の場所へ向かうぜ」
「あ、そうっすか。んじゃ、俺の遺体で…」
日向が自分の所持する遺体を取り出すと、遺体は再び輝きだし、目の前に『光のヒビ』が出現する。
「行くぜ…!」
「うむ!」
「よっしゃあッ!」
気合を入れ、承太郎たちは光のヒビに入り、次なる遺体の待つ場所へと移動した。
ビュオオオオオオ…!
光のヒビを越えた先には、周囲を海に囲まれた『孤島』のような場所に繋がっていた。
「ここは…?どこかの島か?波の音が聞こえるが…」
「ここは…!」
「…ッ!?ここは『エア・サプレーナ島』だ!間違いないですよジョセフさん!」
そこの景色に見覚えのあったジョセフと日向はすぐにその場所を特定する。
「知っているのか?」
「うむ、ワシが50年前に波紋の修行をした場所じゃよ。…日向君も知っておるところからすると、君も…?」
「はい!俺もここで『6歳』の頃から『10年間』過ごしました!俺にとっては、『第2の故郷』と言ってもいい場所です!」
「そうか、なら君の方がここでは『先輩』じゃのう。ワシは1ヵ月もせん内にここでの修業を切り上げてしまったからな。…しかし、それにしても懐かしい…!久しぶりに『波紋の呼吸』をしてみたりして…コォォォォォォォ…!」
「じゃあ俺も便乗して…コォォォォォォォッ…!」
テンションが上がった影響かポーズまで決めて波紋を練る二人に呆れながら、承太郎は二人を促す。
「…じゃあ案内はできるんだろうな?」
「勿論じゃ!…と言いたいが、ワシにとっては50年も昔のことじゃからのう。記憶がイマイチ…じゃから日向君の方が向いておるじゃろう」
「うっす!任せてくださいっす!」
と、張り切って案内を始めようとした時
…バチュゥゥン…ッ!
「…ム?」
「あれは…?」
微かに聞こえた音の発信源へと向かうと、そこには鋭利な『針山』の上で向かい合う『2人の男』が居た。
「コォォォォォ…!」
「コォォォォォ…!」
互いに戦意をぶつけ合いながら波紋の呼吸をするこの二人こそ、若かりし頃の『ジョセフ・ジョースター』とその親友であり日向にとって『大伯父』である『シーザー・A・ツェペリ』であった。
「おお…ッ!おおおお…間違いないッ!あそこに居るのは我が友シーザー、シーザー・ツェペリ!」
「ッ!アレが大伯父上…!この目で見る日が来るなんて…感激だ…ッ!」
『…相変わらず身内絡みだと涙腺の弱い男ですね…』
「…あん?」
「どうしたジョジョ?もうバテたのか?」
「いや…そこに誰か居るぜ…!」
「何…?」
「…やれやれ、デカい声出すから早速バレたじゃあねえか…」
感激のあまり大声の出てしまったジョセフ(老)と日向に気づいたジョセフとシーザーに、承太郎たちは仕方なく姿を見せる。
「……」(なんじゃ~?この汗臭そうなガキは…?………あ、ワシかぁ?コレ…)
「……」(なんだぁ~?このうすぎたねえジジイは…?)
「お、押忍ッ!修行の最中、お邪魔をして申し訳ないっす!」
「お、おう…」
過去と未来のそれぞれの自分を訝しげに観察し合うジョセフと完全にシーザーに対し下手に出まくっている日向に、埒が明かないと判断した承太郎がジョセフ(老)に問いかける。
「おいジジイ、このとっぽいのが若い頃のオメーなのか?」
「とっぽいとはなんじゃッ!?」
「…なにコソコソと話してやがる?」
「お前たち、どこから入った?この島は『私有地』だぞ」
「えーとですね…それが、どう説明したモンだか…」
日向がどこからどう説明すべきか考えあぐねいていると…
「…シーザー、ジョジョ…!」
『ッ!?』
後方より聞こえてきた艶のある声に振り向くと、そこにはこの島の『主』でありジョセフとシーザーの『師』である『リサリサ』が立っていた。
「あ…り、リサリサ…!」
「リサリサさん…!?スゲエ、50年以上前なのに『一目』でリサリサさんだって分かった!」
『確か…僕らの時代から逆算すると現在『50歳』でしたね。…『114歳』の彼女と比べても面影があるとは…聞いていた以上の達人ですね、彼女は…』
「リサリサ先生…、どうやら不審者のようです。もしかしたら、『柱の男』の手先かも…」
シーザーが不審人物である承太郎たちをリサリサに引き渡そうとする、が…
『…ッ!創!』
「…フッ!!」
「なッ…!?」
「危ないッ!!」
バシィンッ!!
突如シーザー目掛けて放たれたリサリサの『踵落とし』を、咄嗟の事に反応が遅れたシーザーを庇って日向が両腕をクロスさせて受け止める。
「…勘のいい小僧ね。極限まで殺気を殺して接近したというのに…」
「ぐうッ…!す、凄まじいパワー…!これが全盛期のリサリサさんか…ッ!」
「せ、先生ッ!?何の真似ですかこれは!」
「リサリサッ!テメエ、修行にしちゃあ荒っぽすぎるんじゃあねえか!?」
困惑するシーザーとジョセフに対し、リサリサは瞬時に飛び退くと二人に殺気の籠った目を向け言い放つ。
「ジョジョ、シーザー!あなた達二人は死ななくてはならないッ!今すぐにッ!」
「にゃ、にゃにいッ!?」
「なんという殺気の籠った波紋だ…!まさか、本気なのか…!?」
「…やれやれ、どうやら『異変』って奴がもう起きちまってるみたいだぜ」
「言っとる場合かッ!お前の『曾婆ちゃん』なんじゃぞ!…しかし、まさかリサリサまでもが敵の手に堕ちるとは…。ともかく、彼女を止めるぞッ…ぬおッ!?」
ジョセフ(老)が加勢に入ろうとするが、それをジョセフが石を投げて止める。
「お、お前…!」
「部外者は引っ込んでな!これはこっちの問題だぜ。…シーザー、構えろ!なんだかよく分からねえが、戦うしかねえみたいだぜ!」
「…わ、分かっている!リサリサ先生は強敵だが、二人がかりならうまく行けば…」
「…おっと、そううまくいくかな?」
「「ッ!?」」
上空から聞こえた声に二人が見上げると、塀の上から『軍服姿の大男』が飛び降りてきた。
「あの軍服は…『ドイツ軍』!?何故ドイツの軍人がココに…?」
「あ、アイツはッ!?まさか、テメーはッ!」
「フフフ…元気そうじゃあないか、ジョジョ。見違えたぞ…!お前を殺す為に、地獄から舞い戻ったぞ!」
「しゅ、シュトロハイムッ!!」
顔の半分を『機械』で覆われたその男は、ジョセフにとってメキシコで自爆して死んだ筈のドイツ軍人、『ルドル・フォン・シュトロハイム』であった。
「シュトロハイム!?馬鹿な、アイツとはこの場所で会うはずが無いのにッ!」
「『異変』とやらのせいで、『歴史』まで狂っちまったって訳か…。まあ、あのブチャラティとかいう男も死んだ筈らしいから、今更って気もするがな…」
「シュトロハイムって…あの『ヨゼフ少佐』の曾爺さんかよ!うっわー…クリソツって奴だなこりゃ…」
『クダラナイこと言ってる場合じゃあないでしょう。…しかし、サイボーグ人間ですか。興味深いですね。『超高校級のメカニック』と『超高校級の外科医』、それに『超高校級の神経学者』の才能を使えば可能でしょうか…?』
「お前も恐ろしいこと考えてんじゃあねーよ…!」
自分の知る歴史と異なる邂逅に混乱するジョセフ(老)や、初めて見る『サイボーグ』という存在に久しぶりに好奇心を震わせるカムクライズルを尻目に、ジョセフたちの緊張感はさらに高まる。
「メキシコで木っ端微塵に爆死した筈のオメーがなんでここに…!?ドイツ軍は戦争に備えてとんでもねー技術を隠しもってるって話だが、それで生き返ったのか?」
「違うなぁあああッ!ジョジョォォォッ!!」
「え?違うの?」
「俺は、『あのお方』のおかげで蘇っただけでなく、更なるパワーアップを遂げたッ!つまりぃッ!今の俺は人間だけでなく、あらゆる存在を越えたのだぁぁぁッ!『完全生命体(パーフェクト・シイング)』シュトロハイムの誕生だぁぁぁぁッ!!!」
「………」
「…な、何を言ってるのかさっぱり分からねえ…が、リサリサとシュトロハイムがつるんでる時点で、『異常な事態』ってことはハッキリ分かるぜ…!」
シュトロハイムのハイテンションにビビりつつも、二人から感じる異常なまでの『殺気』にジョセフとシーザーは闘いを覚悟する。
「……!」
ザッ…
「…?お前は…」
そんな二人に並び立つように、日向が一歩前に出る。
「テメー…引っ込んでろってのが聴こえなかったのか?」
「聞こえましたよ。…ですが、失礼ですけどこの状況で俺達の事を気遣う余裕があるんですか?あなた達には、まだ『やるべきこと』がある筈でしょう?あの二人を同時に相手して、無事に済むとは思えませんが…」
「…!貴様、何を知っている…?」
「…後ほどお話ししますよ。…承太郎さん、じょ…『ご隠居』!まだ『敵』が潜んでるかもしれねえ、辺りの警戒をお願いします!」
「ご、ご隠居て…!?まあ仕方がないと言えばそうじゃが、もう少しなんかのう…」
「…ああ、分かったぜ。そっちは大丈夫なんだな?」
「ええ、任せてくださいよ…!」
「…チッ、しょうがねえ!出張って来たってことはオメーも戦えるんだろ?精々死なねーように気張れよ!」
「ぬうう…やむを得んか!おい、足を引っ張ることだけはするなよ!」
「分かってますよ…!」
「…フン、邪魔者が増えたか。まあいいッ!まとめて叩きのめしてやるぅぅぅぅッ!!」
「さあ、覚悟しなさい…!」
日向の援軍を加え、ジョセフとシーザーはリサリサとシュトロハイムへと立ち向かっていった。
「…さて、俺達は待機な訳だが…ジジイ、アイツ等は大丈夫なのか?」
「…分からんのう。リサリサの実力は折り紙つきじゃし、シュトロハイムも性能だけなら柱の男に匹敵する。修行中のワシとシーザーがどこまで喰いつけるか…それに、日向君の波紋の力も未知数じゃしのう。亀の中でちらっと聞いた限りでは、彼の波紋自体はさほど高い物ではないらしいが…あの『自信』がどういう理由なのか…」
「…まあアイツがやるってんなら何か策があるのだろう。…で、俺達もこのまま待ちぼうけって訳には…」
「…だったらよ、『俺達』と遊んじゃあくれねーか?承太郎よぉ…!」
「「ッ!?」」
後ろからかけられた声に振り返ると、背後の建物の屋根に見覚えのある男が立っていた。
「テメーは…『ホル・ホース』ッ!」
「おうよ、久しぶりだなあ。承太郎、ジョセフのジジイ…!」
不敵な笑みで承太郎たちを見下ろしているのは、エジプトへの旅路で幾度となく立ちはだかったホル・ホースであった。
「貴様…!貴様もDIOの手先か!」
「あたぼうよ。俺は元々その為にテメーらと戦った筈だぜ?…最も、俺としちゃあそっちの激マブなレディーとコンビを組みたかったところだが、向こうは向こうで盛り上がっちまってるみたいだしよ、ここはテメーらをぶっ殺すことで勘弁してやるぜ!」
「…フン。いい度胸だ、今度こそ再起不能にしてやるぜ…!」
構える承太郎とジョセフに対し、ホル・ホースは両手を前に突き出す。
「おいおいおいおいおい、そう焦るんじゃあねえぜ。…今言ったろ、『あのレディーとコンビを組みたかった』ってよ。俺は誰かと組んでこそ真価を発揮するタイプの男だからよ、一人でテメエらとやり合おうだなんて思っちゃあいないぜ…!」
「…なんだと?」
「…おう『先生』!出番だぜ、手を貸してくれや!」
ホル・ホースの声に応えるように、その後ろから見覚えのない男が姿を現す。
「…何者だ?」
「…俺の名は、『リンゴォ・ロードアゲイン』。これからお前たちと『殺しあう男』として、自己紹介をさせて頂く…」
「…お前も、DIOの手先か?」
「俺が誰の手先なのか、そんなことはどうでもいい。…俺はただお前たちと『果し合い』をする為にここにいる。俺の目的はそれだけ、ただそれだけだ。その為に俺は『彼』にこの場所へと導かれた」
「…あくまで、『自分の意志』で俺達と戦うと?」
「その通りだ。…それと、戦う前に俺のスタンドのことを教えておこう」
ブォン…!
リンゴォの肩に、まるで『クラゲ』のような奇妙な形をしたスタンドが出現する。
「ッ!アレが奴のスタンド…」
「このスタンドの名は『マンダム』。能力は時間を『6秒』、きっちり『6秒』だけ戻すことができる。そして時を戻してから『6秒以上』さえ時間が経てば、何度でも戻すことができる。それが『能力』…!」
「時を『巻き戻す』…じゃと!?」
「お…おいおい先生よぉ!なに無敵の『マンダム』の能力を喋っちまってるんだよ!?せっかく承太郎たちを出し抜けるかもしれねえのによぉ…」
「黙っていてくれ。…この果し合いは『公平』なものでなくてはならない。俺達はお前たちの『能力』を知っている。だから俺の能力を教えた。…そして不本意だがホル・ホース、俺には君と言う『協力者』がいる。だからお前たちも『2人』でかかって来てくれ…」
「な…何を言っとるんじゃあこいつは…?」
「言った筈だ。『公平な果し合い』だとな。…公平な果し合いは、俺を『成長』させてくれる。例えこの戦いが『何者か』の思惑の上だったとしても、公正に行われる『決闘』に『悪』はない。卑劣も、邪推も、下らない思考の無い純粋な『殺意』によって行われる果し合いこそが、俺を更なる『聖なる領域』へと高めてくれる…!これが『男の世界』だ…俺は『覚悟』を決めた。お前たちはどうする…?」
困惑するジョセフ(老)やホル・ホースに構うことなく、リンゴォは承太郎たちに向けて深々と一礼する。
「よろしくお願い申し上げます…!」
「……」
余りにも常識はずれなリンゴォの言い分に唖然としているジョセフ(老)であったが、承太郎が前に出たことで我に返る。
「じょ、承太郎!?」
「ボケッとしてるんじゃあねえぜ、ジジイ。…こいつが何を言ってるのかはさっぱり分からねえが、要するに俺達とマジな『決闘』をしたいみたいだからな。…こういう馬鹿正直に正々堂々とした奴は嫌いじゃあねえ。こいつの思惑通りやってやるかは別として、やるしかねえと思うぜ?」
「むうう…仕方がないか。よし、やるぞ承太郎!」
「…覚悟は決まったようだな。改めて、よろしくお願い申し上げます…」
「…ったくよぉ~、面倒くせぇ先生だぜ。まあいいか、頼むぜ先生!」
日向たちの戦いの背後で、ジョセフ(老)と承太郎、リンゴォとホル・ホースの戦いが幕を開けた。
私がリンゴォが好きだから書きたかった。だから出した、それだけのこと!
…実際原作ゲームでもここはちょっと首をひねった場所だったので。なんでホル・ホース一人で刺客が務まると思ったのだか…という訳で援軍を追加しました