ギアッチョ戦決着を見て、ふと思いついたネタ
※もしギアッチョ戦後のオチをとある方法で苗木達が視聴していたら…
『ああ、そこはダメッ!服を脱がさないで、感じる、感じる!もうダメェ~ッ!』
「……」
モニターに映る『横になって痛みで悶えるミスタ』と、『治療のために服を脱がせようとする苗木』。字面だけならなんの変哲も無いが、実際に画として見るとその行為はどう見ても『……』にしか見えない。そんな二人をある者はゲンナリと、またある者は顔を赤らめながら視聴していた。
…そんな彼らのすぐ横で、画面の端で愕然としているナランチャを確認してしまった苗木がこの世の終わりでも迎えたかのような顔で頭を抱えていた。
(あ…あの時ナランチャが妙に余所余所しかった原因はこれかぁぁぁぁッ…!!)
当時は明け方で人も居らず、治療に必死だった為自分たちが『どんな風に見えているか』など考えもしなかった。こうして第三者目線で見たことで自分が『どう見てもヤバい』ようにしか見えていないことを痛感し、その上当時にはナランチャに、そして今は恋人を含めた友人達にそれを見られてしまったという現実に、苗木は膝からガックリと崩れ落ちた。
「…苗木君」
「花村さん…?」
そんな絶望と後悔に打ちひしがれている苗木に、仏のような慈愛の笑みを浮かべた花村が肩に手を載せ、優しく告げる。
「ようこそ、男の世界へ…」
「…ちっがぁぁぁぁぁぁぁぁうッッ!!!」
苗木の心底からの絶叫が、希望ヶ峰学園に虚しく響き渡った。
…何を書いてるんだろう僕は。ではどうぞ
未来機関杜王支部。各分野毎に数字で分けられた未来機関の支部において、唯一『拠点となる街の名前』を冠した支部。その理由は未来機関が発足する以前、あの『人類史上最大最悪の絶望的事件』により世界が崩壊した際に『絶望への抵抗勢力』である人々が集結した街であり、その後未来機関が正式に創設された地でもあるからだ。
それ故に、杜王支部は絶望の残党の処理や難民達の救済を目的とする他の支部とはその活動目的が異なり、『未来機関に於いて絶対の中立』を貫くことを基本としている。これは杜王支部に所属する多くの『スタンド使い』が特定の支部に肩入れすることで力関係が変化することを防ぎ、また『未来機関内部での抗争』が起きた場合に独自の判断でこれを鎮圧することが許された、謂わば未来機関における『安全装置』としての機能を求められたからである。
…その杜王支部、正確には支部内にある『会議室』には現在、未来機関創設以来かつてない規模の戦力が勢揃いしている状況となっていた。
「…皆、揃ったようですね。では、僭越ながら僕がこの場を仕切らせて貰います」
会議室に揃った面々を確認し、先んじて口を開いたのはイタリア最強ギャング組織『パッショーネ』のトップ…『ジョジョ』と呼ばれる存在であり、『超高校級の希望』と呼ばれる青年、苗木誠だ。
「水くさいこと言うなっつの。この場に居る奴で、お前がまとめ役なことに反対な奴なんざいないんだからよ」
「そうだよ!もっと堂々としてなよ」
苗木の堅苦しい台詞にそう言うのは、杜王支部の支部長である広瀬康一と東方仗助ら杜王支部のメンバーである。
「そう言って貰えるのは嬉しいんですが、形式上の都合もあるのでこれで通しますよ。…では、始めさせて貰います。まずはこちらを見て下さい」
その言葉に苦笑しつつも苗木は進行を始め、手元のパソコンを操作して会議室にあるモニターにある画像を映し出す。
「先日、我々がジャバウォック島から帰還した際、各地の未来機関の支部から寄せられた神父…『エンリコ・プッチ』の目撃情報の数々です。…これらの写真は全て『国内』から集められました。空港や各港の監視網に穴が無い限り、時間的に考えても奴はまだこの国の中に居ると考えられるでしょう」
「…確かにな。本部での事件からまだ『一週間』と経っていない。『プッチ打倒』で一丸となった現在の未来機関の情勢下では、例え絶望の残党共の協力があったとしても国外に逃亡するなど不可能だろう」
「宗方さんたちも機関内の混乱もあるのにこっちに情報を送ったり捜索を手伝ったりしてくれてるもんね。そう簡単に逃げられっこないよ」
情報を基にした苗木の意見に、十神や朝日奈たち十四支部所属の希望ヶ峰学園の生存組が賛同する。…しかし、賛同を得たはずの苗木の顔色が曇り出す。
「…ええ、僕もそう思っていました。ですが…事態は僕らの想定を超えつつあることが分かったんです。『悪い方向』に…」
「どういうことだ?」
「…先日僕らが『彼ら』を『例の場所』に送っていったことはご存じでしょう。その際『彼ら』の監督とケアのためにアルターエゴをあそこに置いてきたのですが…つい最近から、アルターエゴからの応答が一切『途絶』したままなのです。システム自体は機能しているらしいのですが、こちらからの呼びかけに全く応答が無いのです」
「なんと…!?」
苗木から告げられた内容に承太郎やジョセフ達の顔も強ばる。
「…誰かが『あの島』に潜んでいて、アンタ達が帰った後にアルターエゴをいじくり回したとかじゃあないの?」
「それは無い。あの島に到着してから島を離れるまで、僕は常に島中の生命エネルギーの動きを探っていた。少なくとも僕たちが帰るまでの間、あの島には彼ら以外の人間はいない。…そしてあの島は現状『十神君の私有地』だ。立ち入るためには僕らの許可が要るし、無断で忍び込もうにもその手段を持っている人物は限られている」
「ん~…ってことは、パパ達が連れて行った『そいつらの中』に居るんじゃ無いの?そのアルターエゴってのを乗っ取ったのはさ」
今回の為に一時的に搭和シティから戻ってきた腐川、そして聖原同様恩赦の対価として協力者となった搭和モナカの意見に、苗木は苦々しく首を縦に振る。
「…出来ればそうあっては欲しくなかったけど、そう考えるのが妥当だろうね。そしてその場合…今僕の中にはある『最悪の可能性』が存在しています」
「…それは一体?」
「搭和シティ、そしてついこの間の未来機関本部での事件にて散々に手を焼かされた『江ノ島盾子のアルターエゴ』…。あれは江ノ島さんからモナカちゃんに預けられたものだった…そうだね?」
「うん、そーだよ。ジュンコお姉ちゃんが『もしアタシが死んだらこれで遊んで』…ってモナカにくれたのを、シロクマとクロクマに分けてインストールしといたの」
「…それはカムクライズルによって回収され、プッチを介して雪染さんの手に渡った。そして雪染さんによって本部のメインシステムにインストールされたアルターエゴは、本部と共に消滅しました。…だがもし、雪染さんの手に渡る前にそれの『コピー』が複製されていたとすれば?」
「アルターエゴの…コピー!?」
「不可能なことじゃあありません。アルターエゴも結局はプログラム、現に未来機関のシステムも不二咲君のアルターエゴの機能の一部をコピーしたものが使われています。多少の機材が揃う環境であれば複製自体はそう難しいことじゃあない…」
「…そして、それが可能だったのはあの連中の中では『一人』しかいない。あの神父の手に渡る前にそのアルターエゴを所持していた人物…『カムクライズル』」
麻野と共に話を聞いていた聖原の推測を苗木は肯定する。
「ああ。つまりカムクライズルは僕らが去った後に江ノ島さんのアルターエゴを『あのシステム』にインストールしたんだ。…アルターエゴには元になった人物の性格が反映されています。性能がほぼ同じなら、不二咲君と江ノ島さんでは…正直相手が悪すぎる」
「それで、あのシステムの『管理者権限』を乗っ取られた…ということか。ふん…状況は最悪だな」
「…でも、まだ『絶望的』じゃあない…だよね?」
「勿論だ。ネットを介しての干渉が不可能なら、『直接』行ってシステムを止めれば良い。彼らへの『処置』が不十分になる可能性もあるが、再び『絶望』の影響を受けるよりは遙かにマシだ…!」
「いよぅし!そういうことなら急いで…」
「…待て。少しばかり話が脱線してるように思えるが、それとプッチが一体なんの関係がある?」
勇んで飛び出そうとした億泰や葉隠を制した承太郎の疑問に、苗木は神妙な面持ちで答える。
「…プッチが求める『天国』に必要な『場所』。僕はSPW財団や天願会長の伝を頼って、ついこの間そうであろう場所を『突き止める』ことが出来ました」
「ッ!ほ、本当か!?一体どこに…」
「……『ジャバウォック島』なんです」
「なッ…!?」
「ジャバウォック島は、地形や位置の関係上地球で尤も『重力が低い場所』なんです。なので観光地としての顔の裏で、秘密裏に世界各国の宇宙開発の実験場として機能していたようなのです」
「…馬鹿な、こんな『偶然』がある得るというのか?」
「やれやれ…プッチの野郎じゃあねえが、ここまで来ると『運命』って奴も笑えねえ冗談になって来やがったな」
『自分たちの目的地』と『プッチの目的地』の『一致』。その不気味すぎるほどの『偶然』にその場の空気が重々しくなるが、それを仗助の拳を打ち鳴らす音が吹き飛ばす。
バチィンッ!
「…へっ!どーってことねえじゃあねえかよ!向こうの目的地が分かってるってんなら、先回りしてブチのめしゃあいいだけってことだぜ!」
「お…おお!その通りだぜ仗助ェ~!」
「ふん。いっそ清々しいぐらいに頭の悪い提案だが、どうやらそれが最適解のようだな」
「…というか、もうとっくに君はそうするつもりだったんじゃあないかい苗木君?」
「…はい、勿論です!例えこの偶然が『運命』だとしても、奴の思い通りになってやるつもりなんかない…ッ!目的地が同じだというのなら、尚更『好都合』です!彼らを元に戻し、皆でプッチを倒す!その両方を、僕は成し遂げますッ!」
「おおッ!それでこそ苗木っちだべ!」
「当然だな。この俺がいて、『取りこぼし』などあり得るはずがない!」
「うん!…今度こそ、終わらせよう!」
意気軒昂。ついに見えてきた『全ての終わり』に覚悟を決めた皆に、苗木はそれを頼もしいと笑みを浮かべる。
「…皆、ありがとう」
「…礼はまだ早いわよ誠君。全部が終わってから、その言葉は言うべきよ。そうでしょう?」
「そう…だね。分かっているよ、響子」
「ええ…」
「…響子?」
この会議の間何故か口数の少ない霧切に苗木は怪訝そうに眉を顰めるが、承太郎から声をかけられてそちらに意識を向ける。
「…それで、これからどうするつもりだ?」
「あ、はい。明日になれば、シュトロハイム少佐がミスタとフーゴ、トリッシュを連れて合流する手筈になっています。プッチはおそらく、『次の新月』に合わせてジャバウォック島に向かってくるでしょう。僕らは奴が島に来る前に先回りして、江ノ島さんのアルターエゴをシステムから排除します!…プッチに僕らの動きが悟られる恐れもありますが、江ノ島さんが関わっている以上あまり時間をかけてはいられません」
「ふむ…となると、いくつかに分かれて行動した方が良さそうじゃな。纏まって向かえばその分危険は減るが、足止めを食ったときに全員が動けなくなってしまう。下手に長期間足止めされれば、奴の思う壺じゃしのう」
「確かに…そうですね。では、今のうちに編成を…」
「……」
結局その日はジャバウォック島に向かう手段と編成を話し合い、作戦開始である2日後に備えて解散となった。
「……」
自室へと戻る霧切の足取りは何時になく重い。彼女自身、その理由がなんなのかは分からない。未来機関本部での事件以降、ただ漠然とした『不安』が心の中を渦巻いていた。最初はプッチの動向に対するものかと思っていたが、日が経つにつれ『それではない』という確信が大きくなっていた。
「…『確かめるべき』、なんでしょうね。どんなことであったとしても…」
本来ならこの程度の不安は切り捨てていたが、霧切の『探偵の直感』がそうすべきではないという警鐘を鳴らしていた。…そして同時に、その不安の原因に対する『推理』も行われ、霧切はその全てを確認して原因を突き止めることを決めた。
…だが、このときから霧切には分かっていたのかも知れない。この得体の知れない『不安の正体』を。自身が考えるいくつかの候補の中で、無意識に『尤もあって欲しくない可能性』として挙げたものだということを。
数分後、全ての証明を終えた霧切は自室へと戻ってきた。
「……」
…部屋へと入った霧切の顔は青ざめていた。そのままヨロヨロとした足取りで歩き、半ば崩れ落ちるようにベッドへと腰掛ける。
「…ッ!」
『予感』は『的中』していた。あらゆる証明の末、明確な『結果』を示した手の中の『ソレ』に改めて目を落とすと、霧切は衝動的に枕を殴りつけた。
「…どうして、どうして…『今』なのッ…!?こんな時に、こんなものを抱え込むなんて…何をやっているの霧切響子ッ…!」
『それ』は本来なら、『祝福』されて然るべきものであった。…しかし、現在直面している事態を前にしては、『厄ネタ』以外の何物でも無い。それを自覚している霧切は不用意にこの事態を招いてしまった自分自身への怒りに震える。…『それ』自体に怒りを向けることなど、出来はしないのだから。
「…分かっている、分かっているわ。今ならまだ、誠君には気づかれはしない。誠君が気づけないのなら、他の皆にも…プッチにも気づかれる恐れはない。なら、もうやるしかない…!今あの人の『重荷』を増やすわけにはいかない…これは、私が『守る』。例え何に代えてでも…必ずッ!」
動揺する自分の『本能』を『理性』で抑えこめ、覚悟を決めた霧切は立ち上がって『手の中のもの』をゴミ箱へと捨てると部屋を出る。先ほど半ば聞き流してしまった作戦の編成を確認し、それに関して自分に出来ることを最大限に務める為に。
(誠君、貴方は貴方の戦いに集中して…。私は…貴方と、『私の戦い』の為に全力を尽くすわ。…例え『真実』を知った貴方が、それを望まないとしても…ッ!)
殺気と見まごうほどの気迫に満ちた霧切。そんな彼女にすれ違った人々は戸惑いを憶えるが、その理由を知る者は誰一人としていない。
…霧切がゴミ箱に打ち棄てた『妊娠検査薬』、そこに記された『2本の赤いライン』の存在を知る者は、彼女自身を除いて誰もいない。
『正義』を宿す者達が動き出す一方で、この男もまた動き出そうとしていた。誰にも望まれない、『自分だけの正義』を貫こうとする男…その名は、エンリコ・プッチ。
「…感じる、この『痣』が教えてくれる。どうやら奴らも、私の目的地が『ジャバウォック島』であることに気づいたようだな。となれば…おそらく奴らは先回りして私を待ち伏せようとするだろう。例え『新月の日』になろうと、私があの島にいなければ『天国』は成立しない。奴らからすれば、私をあの島に『近づけさせなければ』良いだけだからな…」
「…故にッ!『次の新月』以外にもはや、私が『天国』に到達するチャンスはないッ!!奴らが本格的に私を弾き出す準備が整う前に、奴らを出し抜かなければならないッ!…だが、苗木誠は強い。奴の仲間も、油断ならない顔ぶれが揃っている…」
「だからこそッ!私は『君たち』の力を借りたい!苗木誠が私を蹴落とそうと言うのなら、その私を『押し上げられる』のは君たち…奴と同じ『DIOの息子』である君たち以外には存在しないのだッ!」
「……」
「……」
「……」
プッチの視線の先には、いずれもふてぶてしい顔つきをした『3人の青年』がいる。その容姿、態度などはちぐはぐだが、皆一様にどこか『恨めしい表情』をしていた。…そして彼らの首筋には、苗木やプッチと同じ『星形の痣』が存在している。
彼らの正体、それは苗木と同じ『DIOの血を引いた息子』たちである。…苗木と違うのは、3人の内2人の母親は彼らを産んだ後にDIOの『食事』となり、残る1人の母親は喰われる前にかろうじて助かったが遊び人気質であったために子供を放置し、皆親からの『愛情』を知らぬまま歪んだ人生を送ってきた。…それ故か『人類史上最大最悪の絶望的事件』の際にも『絶望』しきることが出来ず、殺されることもないまま怠惰な日々を過ごしていた。
だが、プッチが『緑色の赤ん坊』と一体化した影響で吸い寄せられるように難民に混じって日本へと来訪。当てもなく彷徨っていたところをプッチに保護されたのである。
「忘れるな、お前達もまた栄えある『DIOの血統』を継ぐ者。お前達も苗木誠も、なんの違いもありはしないッ!奴の道を阻め!それが成されたとき、これまでの君たちの『絶望の人生』は全て精算されるであろうッ!!」
「…ッ!」
神父の言葉に、DIOの息子達は瞳をギラつかせる。あるものは『妬み』を、あるものは『怒り』を、…そしてあるものは『野望』を宿して。
「さあ苗木誠、お前は一体どうする?お前が『辿ったかも知れない未来』を相手に、何を以て答えとする?…尤も、その頃には既に『手遅れ』だろうがな」
新月まで、あと『22日』…!
苗木チーム…仗助、億泰、康一、噴上、承太郎、ジョセフとSPW財団、ミスタ、フーゴ、トリッシュ、徐倫、エルメェス、アナスイ、霧切、十神、朝日奈、葉隠、腐川、戦刃、舞園、月光ヶ原、モナカ、聖原、麻野、シュトロハイムと旧ドイツ軍
プッチチーム…ウンガロ、リキエル、ヴェルサス
圧倒的ではないか我が軍は…勝ったな、風呂入ってくる(
ではまた次回