ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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この話書いてる間に本編が3話と番外編が2話書けたぞ!
教授、これは一体!?

A.煩悩の力だよ!

まるで意味が分からんぞ!


…実際のところは全く筆が進まなかっただけです。オリジナルのスタンドがここまで風呂敷を広げづらかったとは…これからは考えてキャスティングします


番外の番外編 日向・Z・創の奇妙な日常~出会い編3~

 目の前で滞空する火の玉…スタンド『ザ・フォックス』に対し日向は腕に巻いていたバンダナを額に巻き、腰のポーチから指ぬき状の『手袋』を取り出すとそれを装着する。それが日向の『戦闘態勢』であった。

 

(さあて…『対スタンド』戦は初めてだが、闘いようが無い訳じゃあない。奴の言うとおり、『この場所そのもの』がスタンドだというなら…)

「お…おい、日向!」

 久しぶりの闘いに神経を研ぎ澄ます日向に、焦った様子の左右田が声をかける。

 

「…なんだ?」

「なんだ、じゃあねーよ!お前どうするつもりだよ!?相手妖怪なんだぞ?勝てんのかよ?」

「…確かに、『妖怪』が相手ならちっとばかし無理かもな。流石に専門外だからな。…だが、『スタンド使い』なら話は別だ」

「すた…?」

「簡単に言えば、『超能力者』みてーなもんだ。スタンドには『ルール』があって、『スタンド使いにしか見えず、スタンドでしか傷つけられない』っつー特徴を持っている。さっき奴もそう言ってたろ?」

「じゃあ、お前も…?」

「いや、生憎俺はスタンド使いじゃあない」

「じゃ、じゃあどうするのさ!?」

「落ち着きな、『まともな』スタンドならそりゃ厳しいが、幸いなことにこいつは『まともなスタンドじゃあない』」

「…どういう意味だ?」

「よく考えてみろ、『スタンドはスタンド使いにしか見えない』んだぞ?だったら、なんで俺達に見えてるんだよ?」

「あ…!そういえば…」

「おそらくこいつは、『対象と融合する』タイプのスタンドなんだろう。この手のスタンドは実在する物質と同化しているから、誰にでも見えるし触れることができる。…が、その代わりに『自分のテリトリー』に相手を引きずり込めれば滅法強い。特にコイツの場合は『土地そのもの』と同化しているから、この神社の敷地内にいる限りコイツはここら一帯の空間を自由に操ることぐらい訳ねーだろうな」

「そ、そんなの勝ち目ないじゃん!」

「ところがそーでもない」

「…へぇ」

 そう宣言すると日向は皆から離れ、火の玉の前へと歩みでる。

 

「…答えなんざ期待しねーけど一つ聞くぜ」

『なんじゃ?』

「アンタ…『どこから俺たちを見てる』?」

『…ッ!』

「『見てる』って…どういうことですか?」

「スタンドには、『射程距離』というものが存在する。差異はあるが、基本的に本体から離れるほどにスタンドパワーは弱くなり、近接タイプともなれば本体から1~2mの範囲でしか動けないものも存在する。『物質融合タイプ』のスタンドであろうと例外ではない。この一帯と同化している以上、このスタンドの本体である奴は必ずこの近くにいる。これほどの拘束力を考えれば、『敷地の中』に潜んでいる可能性も十分にあるだろう」

「敷地の中って…近くにいるのか!?」

「多分な…」

 日向の推理に対し、火の玉は笑ってそれに答える。

 

『…ホッホッホ。大した慧眼じゃの小僧。確かに、儂はお主等の周りのどこかにおる。最も儂自身の存在を『ザ・フォックス』で隠匿しとるから見えはせんが、確かに存在はしておるぞ』

「チィッ…!」

「…だとは思ってたさ。だが、『居る』んだったら『殺せる』筈だ。違うか?」

『ほう…、大した自信じゃの?やれるものなら…やってみいッ!』

 

ボボウッ!

 覇気の籠った一喝と共に、火の玉から小型の火球が日向めがけて放たれる。それを前にした日向はしかし避ける気すら起こさず両手を顔の前で合わせる。

 

パァンッ!

『…なんじゃ?降参か?』

「よく見とけジジイ…、これが『波紋戦士』の闘い方だッ!」

 合わせた両手を擦り合わせる。すると、両の手の間から大量の『泡』が噴き出す。

 

「うおッ!?」

『なんじゃ!?』

「喰らえッ!爺さんツェペリ考案の必殺技、『シャボンランチャー』!!」

 

ボババババッ!!

 放たれた『淡い青色に光る』大量の泡…『シャボン玉』の奔流は迫りくる火球を飲み込み、やがて通り過ぎた場所にはすでに火球は影の形も残っていなかった。

 

『なんと!?』

 驚きの声を上げながら、火の玉は『シャボンランチャー』をかろうじて躱す。その様子を見た日向の顔に笑みが浮かぶ。

 

「…どーだ、人間嘗めんなこん畜生」

『小僧…今のは…』

「なな、なんだよ今のシャボン玉!?」

「火を掻き消しおったわい…」

「…君、日向君…だっけ?なんなの今の?」

「…波紋とは本来、治癒や人間の身体能力向上の為に編み出されたものではない。その神髄は『太陽の光』を苦手とする超生物『柱の男』やその眷属である『吸血鬼』を倒すことにある。何故なら波紋が生み出す『エネルギーの波』は、『太陽の光』が放つそれと同じものだからだ」

「は、柱の男に…吸血鬼?」

「分からないならそれでもいいさ。…そして今の技こそ、俺の婆ちゃんの兄…先代のツェペリの波紋使い『シーザー・A・ツェペリ』が編み出した技『シャボンランチャー』だ。特殊石鹸水を染み込ませた俺のグローブは、擦るだけで大量のシャボン玉を作ることができる。その一つ一つに水を伝わる波紋『青緑の波紋疾走(ターコイズブルー・オーバードライブ)』を伝わせることで、触れるだけで波紋を浴びせる凶弾へと変化する!その程度の火力じゃあ俺には届かないぜ?」

『波紋…成程のう。人間の中にも面白い奴が居たもんじゃ。じゃが…』

 感心するように呟く『ザ・フォックス』であったが、その声色から余裕の色は消えない。

 

『いくら儂の狐火を掻き消そうとも、根本的な解決にはなっとらんのう。お前さんは儂の攻撃を防ぎつつ、なおかつ姿の見えない儂を見つけて倒さねばならん。それに引き換え儂はお前さんが息切れするまで攻め立てればいい。…そのような足手まといを抱えたままで、果たして互角に戦えるかのう…?』

「あ、足手まといだと…!?」

「…やってみなくちゃ分からねえよ。それに…こいつらは足手まといじゃあねえ。俺の大事な『ダチ』だ。間違えんじゃあねえ…!」

「ホッホッホ…その威勢、どこまで持つか試してみようぞッ!!」

 再び放たれる火球。日向はそれに対し再びシャボン玉を生成する。

 

「『シャボンランチャー』!!」

 『青緑の波紋疾走』を帯びたシャボン玉の奔流により、再び火球はかき消される。

 

「…からの、シャボンランチャーの応用技、『シャボンカッター』!!」

 『シャボンランチャー』を放った動きの反動をそのままに、日向は野球のアンダースローの様に上半身を捻り腕を振るってシャボン玉を飛ばす。放たれたシャボン玉は腕から伝わる圧力によって潰れ、しかしその状態を維持したまま『高速回転しながら』で火の玉へと迫る。

 

『むうっ!?』

「高圧でシャボンを潰して抵抗を抑え速度をアップ!波紋を帯びているから割れることは無し!そして高速回転により切断力も加わった一撃だ!喰らえばただじゃあ済まねえぜ!」

 『シャボンカッター』は風切り音を響かせながら火の玉へと迫り、

 

 

 

 

 

ズバンッ!

 そのまま火の玉を真っ二つに切り裂いた。

 

「や、やった!」

 思わず左右田が声を上げる、が…

 

 

「…まだだ!」

『その通り…』

 切り裂かれた火の玉は火の粉をまき散らしながら収束し、再び元の状態へと戻る。

 

『残念ハズレじゃ』

「チッ…そー簡単にはやられちゃくれねーか」

『ぬふふ…こんな『楽しい』こと久方振りじゃからのう。そう易々とは終わらせんよ…』

(…楽しい?)

「んだと…どーいう…」

『よそ見しとる場合かの?ほれい!』

「くっ!」

 次々と襲いくる狐火を時に掻き消し時に躱していなす日向。だが、敵の正確な『位置』が分からない以上、ジリ貧になるのは目に見えていた。

 

(この野郎…元が生き物じゃあないせいか『波紋の生命探知機』に引っかかりゃあしねえッ…!手当り次第に攻撃したところで、途中で呼吸が乱れたらジ・エンドだ。第一こうも揺らされちゃあ碌に反撃用の波紋が練れやしねえ…。畜生、せめてあの『回転』をモノにできてりゃあ…!)

 打開策を考えながら闘う日向を、77期生の皆は心配そうに見つめていた。

 

「ど、どうすんだよ…!?あれじゃあなぶり殺しじゃあねーか!」

「ぬうう…!助太刀に生きたいが、相手が炎ではどうしようもないッ…!ならばせめて、この身を盾にして…」

「や、やめてくださいぃッ!あんなの受けたら火傷じゃ済みませんよぅ!」

「クソッタレが…ッ!おいペコ、お前『心眼』って奴であの狐野郎の位置わかんねーのか!?」

「…済まない九頭竜、いくら私でも幽霊までは見切れん…(坊ちゃん、呼び方が戻ってます)」

「だったら…私の歌を聴けぇーッ!!」

「聴かせてどうすんのよこのバカッ!!」

「けどホントどうすんのよ…。このままじゃアイツ死んじゃうわよ…!」

「…これは、僕の『不幸』もここまで来ちゃったかな…?」

「…さり気に諦めないでくれる?」

「……」

「…おい終里、貴様さっきから何をしている?」

「いや…、なんだかよ…。どっかから『獣臭ぇ』雰囲気がするんだ」

「雰囲気…ですか?」

「臭いっつーかなんつーか…、そこに『居た』ような気配だけはするんだけど、どんだけ目を凝らしても何も居ねえんだ」

「もしかして…僕の迸る『雄』のエナジーを…」

「……」

「じょ、冗談はおいといて…もしかして終里さんの『野生の勘』がアイツの位置を感じ取ったのかも…!」

「え…!?終里、お前あの野郎の場所分かんのか!?」

「ん~…、大雑把にしか分かんねぇけど、…どっかあの辺りからする」

 終里が指差したのは、神社の境内であった。

 

「奴は境内の中か…!で、どの辺に居るんだ?」

「そこまでは分かんねえよ…」

「チィ…だったら虱潰しで…」

「待ていッ!!」

 そう言って皆を呼び止めるのは、今まで黙っていた田中。

 

「んだよ…今忙しいんだからいつもの『ビョーキ』ぐらい引っ込めとけ!」

「フフフ…そんなことを言っていられるのも今のうちだぞ。何故ならこの俺は、あの妖狐の化身を見つけ出す『策』を知っているのだから!」

「さ、策!?んなもんあんのか!」

「当然だ!この田中眼蛇夢の言葉に偽りはないッ!」

「で、でしたら急いでお願いします田中さん!」

「無論だ。いずれ世界の命運を賭けて闘う宿命にあるとはいえ、あの太陽の申し子を失うのは俺とて惜しい…」

「なんでもいいからやれっての!」

「フハハ…では見るがいいッ!この田中眼蛇無にのみ許された、全てを見通す禁断の策をッ!」

 たっぷり前置きを置いて、皆が注視する前で田中は高らかに笑いながら…

 

 

 

 

 

 

「行けッ!我が『破壊神暗黒四天王』よッ!」

「……はい?」

 マフラーの中に潜んでいた4匹の『ハムスター』を解き放った。

 

「…おい、貴様…!」

「まさか、策って…」

「そうだ、あれこそ我が最強の僕、『破壊神暗黒四天王』…」

「…ッブァッカヤローッ!あんなネズミに何ができるってんだよーッ!!?」

「フフフ…奴らを甘く見るなよ。普段は無知な獣の皮を被っているが、ひとたび本性を表せば貴様など歯牙にもかけぬわ…」

「た、田中さん…」

「…こいつを信じた俺が馬鹿だった…」

「…そうでもないかもよ」

「えっ?」

「…まあ、可能性が無いわけじゃないからね」

「…アレが有効だとでもいうのか?」

「ん~…、要するに、あの『境内の中』に本体が隠れてるかもしれないんでしょ?でも、終里さんの感覚じゃそれ以上の事は分からない。…だったら、終里さんよりもっと強い『野生の勘』って奴を持ってるなら、もしかしたらもっと詳しいことが分かるかもしれない…」

「それで、マジモンの畜生をブチ込むってか?半ばヤケクソじゃあねーか…」

「けれど、田中君は『超高校級の飼育委員』…。そんな彼に育てられたあのハムスターたちも、ただのハムスターじゃあない。もしかしたら…」

「フハハハッ!さあジャンP!サンD!マガG!チャンPよ!姿なき妖狐を白日の下にさらけ出すのだ!」

 

 

 

 

「…あいつ等何やってんだ?」

 そんな彼らのやり取りを、『ザ・フォックス』の攻撃を躱しながら日向は困惑した表情で見ていた。

 

『他人を気にしとる場合かの?そろそろ限界のようじゃがのう…』

「抜かせ…!まだまだ余裕だよ…!」

 強がってはいるものの、攻撃、回避、防御に常に波紋の呼吸をしっぱなしの日向の体力もそろそろ底が見え始めていた。

 

 そんな時

 

「…むっ!チャンPがなにかを見つけたぞッ!」

 田中のそんな声に、思わず境内の方へと目を向ける日向。そこには、境内の一角目掛け小さな体で飛び掛かるハムスターの姿がある。

 しかし、日向の目に留まったのは『飛び掛かった先』ではなく、『ハムスター』そのものの方であった。

 

「…これ、は…?」

 日向の目には、両手両足を目いっぱい伸ばし、あたかも『長方形』のような形になったハムスターの姿が映っている。徐々に動いてはいるものの、その形が崩れることは無い。不変の造形であるかのように、日向の目にはその『形』が焼き付いていた。

 

「…そうだ、曾爺さんは『家具職人』だった。そして『黄金長方形』を『画家』から学んだと書いてあった。ならば、その『画家』は…いや、その画家が学んだ『文献の作者』は一体どこからその『黄金長方形』のことを知った?文献に書いてあったのはあくまで『スケール』…『コピー』であって本物ではなかった。ならば、どこかに『本物』が、最初に『黄金長方形』を見つけたものが見た『本物』がある筈だ…!曾爺さんはそれを知っていた筈だ、だからこそ『波紋』との『融合』という可能性に辿りついた。『黄金長方形』のスケールは『自然界』にある…。ならば、今『見えている』これが…これが『そう』なのか!?『自然』が存在しないこの空間だからこそ、たった一つの『自然』であるあの『ハムスター』が浮き立って見える…。曾爺さん…見つけたぞ!」

 虚空に向けて飛び掛かったハムスターであったが、突如空中で『何か』に弾かれるように反対方向に吹っ飛んだ。

 

『むっ!?』

「チャンP!」

 地面に落ちたハムスターに田中が声をかけると、存外頑丈だったらしくハムスターは即座に起き上がって仲間共々田中の元に帰還する。

 

「無事だったか!そして妖狐の居場所も突き止めたようだな…、でかしたぞチャンP!」

「ってことは…」

「そうだ!たった今チャンPが弾かれたあの場所、そこに妖狐は潜んでいるッ!」

「よっしゃあぁぁぁぁッ!!」

 言うや否や、終里が雄叫びを上げてその場所へと駆け出す。

 

「そこに居るってんなら話は早ぇえ!今すぐオレがぶちのめしてやんぜぇーッ!!」

「ま、待たんか終里!」

 弐大の制止も聞かず、終里は『ザ・フォックス』が居るであろう場所に拳を叩きこむ。が…

 

スカッ…

「あ、あれ?おい田中!居ねえじゃあねえか!」

「バカな…そんなはずは…」

『…いいや、そのネズミはいい勘しておるぞ』

「え?ってことは…」

『そやつの言う通りじゃ、儂の『本体』は其処におる。この場所と一体化しておるから見えはせんがの…』

「じゃ、じゃあなんで殴れねえんだよ!」

『お主聞いとらんかったのか?スタンドはスタンドでしか傷つけられないのじゃぞ?こちらからならともかく、生身の人間が触れることができる訳がないじゃろう』

「そ、そんなのどうしようもねえじゃあねえか!」

『その通り、最初からお主等は『詰み』だったのじゃよ。ホッホッホ…』

 

 

「…いや、そうとも限らねーゼ?」

『…何?』

 不敵にそう言う日向の顔には、先ほどまでのやせ我慢の笑みではなく、勝機を見出した『希望』の笑みが浮かんでいた。

 

「…田中、そのハムスターを俺に見えるようにしてくれねえか?」

「む?構わぬが…」

 日向に言われるがまま、田中は破壊神暗黒四天王の4匹を自分の体によじ登らせる。

 

「お、おい日向…お前何を…?」

「…ベネ」

「え?」

「ベネ、ディモールト・ベネ(すごくイイ)…!流石は『超高校級の飼育委員』だ、殆ど産業動物のハムスターなのに、野生のネズミらしい『自然な体つき』をしている…」

「フ…当然だ!」

「おい日向!お前こんなときに何言って…」

「だからこそ『視える』!自然の中にある『黄金長方形』のスケールが、お前のハムスターを通して、こんなにも、ハッキリと!」

「黄金…長方形?」

『何を…』

 皆が訝しげな視線を向ける中で、日向は今まで使わなかった腰のガンベルトに掛けられた『鉄球』を掌に載せる。

 

「曾爺さんの遺した『黄金の回転』の原理…。『黄金長方形』の中に正方形を作ると、そこに新たな『黄金長方形』が生まれる…、それを続けていくことで、終わることのない『無限の螺旋回転』が誕生する…!」

 『鉄球』にわずかに力を込めて回すと、日向の言葉に従うように『鉄球』は回転を始め、徐々にその速度を増していく。

 

「『スケール』を得た今なら、その方法がハッキリと分かる!これが『黄金の回転』…!そして、ここに波紋を込めれば…!コォォォォ…!」

 回転する『鉄球』に日向が波紋を練って流し込むと、ほんの僅かに送っただけの波紋の輝きは回転と共に勢いを増し、眩い銀光を撒き散らす。

 

『こ、これは…!』

「スゲェ…」

「これが、波紋の極致!代々受け継がれてきた『ツェペリ魂』の形!くらえ『ザ・フォックス』!これが、『回転鉄球の波紋疾走(メタルシルバー・オーバードライブ・オブ・スピニング)』だあァァァァッ!!」

 雄叫びと共に放たれた鉄球は、螺旋回転しながら波紋の光の軌跡を残し、『ザ・フォックス』が隠れている場所に命中する。

 

『…例えどんな小細工をしようが、スタンドをスタンド以外で倒せは…』

 そう高をくくる『ザ・フォックス』。だが…

 

ギュルルルルルッ!!バジジジジィッ!!

『な、何ィッ!?ぐわああああああッ!!?』

 鉄球は虚空で何かにぶつかると、そこで急激に回転を増し、虚空をねじ巻くように巻き込んでいく。それと共に、宙に浮かぶ『ザ・フォックス』の火の玉も苦痛の声を上げる。

 

「き、効いてるぞ!?」

『ば、バカなッ…!その光は…いや、その『回転』はスタンドにすらダメージを与えるのか!?』

「俺の波紋もこの回転も、元々はスタンド能力に近づくために編み出された『技術』だ!その技術の結晶であるこの『黄金の回転』は、時に『自然の摂理』すら歪めることがあると言っていた!ならば、スタンドであろうと等しく効いて当然だ!」

『ぐおおおおおお…ッ!』

 時間が経つにつれ増々回転を増していく鉄球に、『ザ・フォックス』の声にも余裕がなくなってくる。

 

(ぐ…、こやつめ、やりおるわ…!このまま威力が増していけば、いずれは……?)

 しかし、命中してから数秒が経った辺りで、鉄球の回転が徐々に収まっていく。

 

「あ、あれ?止まっちゃうっすよ!?」

「もしかしてあの技、まだ『未完成』だったとか…?」

『…ほ、ホホホ!残念じゃったな若造!もう遊びは終わりじゃ、この回転が収まり次第、お主に止めを…』

 しかし、『ザ・フォックス』が意識を向けた先には、既に日向は居なかった。

 

『なッ…奴はどこへ…!?』

「…どこ見てやがるッ!俺はここだァッ!」

 ハッとして声の方向を見れば、日向は鉄球の回転する場所にまで走り寄っていた。

 

「な、何ィッ…!?」

「俺の回転が『未完成』…?そんなもん百も承知なんだよ!生憎俺は根っからの『凡人』なんでな、なんでも1回でできた試しがねーんだよ。だから、これも全て『計算のウチ』ィ!一発で倒せねえなら…」

 日向は跳び上がると、腰のガンベルトからもう一つの鉄球を取り出し構え

 

「…もういっぱぁぁぁつッ!!!!」

 回転を込めて、力の限り叩きつけた。

 

ギャルルルルルルッ!!

『ぬわあああああ…ッ!!』

 追撃の鉄球攻撃に、ついに『ザ・フォックス』も限界を迎え、悲鳴と共に宙に浮いていた火の玉が消滅する。

 

「…や、やったのか…?」

 左右田の呟きに、日向は振り返るとグッと親指を立て笑みを浮かべる。

 

「…ぃよっしゃぁぁぁぁッ!!」

「や、やっと終わったんだね…」

「つ、疲れたよぉ~…、着物の中汗でビショビショ~…」

「…やれやれ、どうやら僕の『幸運』も捨てたもんじゃなかったみたいだね」

「だから言ったでしょ…」

一同が安堵の声を上げていると、回転を続けていた2つの鉄球がゆるやかに回転を終え、ぽとりと地面に落ちる。すると、鉄球が回転していた場所に、狐の姿をした朧げなビジョン…『ザ・フォックス』の本体が姿を現す。

 

「…ッ!待て、まだ生きてやがる!」

「しぶとい奴だ…、ならばこの手で引導を…」

「やめろ」

「日向…?」

 いきり立つ辺子山を制し、日向は『ザ・フォックス』へと歩み寄る。

 

「……」

『…そう警戒せんでもいいぞ。お主の攻撃で儂のスタンドパワーはもう使い果たしてしまった…直に消えてなくなるじゃろう』

「…やっぱアンタ、本気で俺を殺すつもりはなかったんだろ?」

「え?」

『…何故そう思う?』

「先ず第一に、やり方が強引すぎる。『物質融合型』のスタンドの特徴は『持続力』の高さにある。この辺り一帯と同化しているのなら、ここまで人を呼び込むのにわざわざ誘い込まなくても適当な噂流しておくだけの方が楽で安全な筈だ。それに、闘い方もそうだ。アンタの攻撃は牽制や躱せるような攻撃ばかりで本気で殺しにきているとは思えなかった。マジでやるなら、スタンドパワーを全開にして『地形ごと』俺を攻撃することぐらいできそうなのにだ…。だから俺はこう考えた、もしかしたらこいつのスタンドパワーは既に尽きかけているんじゃないか、ってな」

『…その通りじゃよ。儂の存在は既に風前の灯にある…。儂は人々の『信仰』を糧にして儂という自我を保っていた。…だが、人々の記憶から儂の存在が消えゆくにつれ、儂の力はどんどん失われていった。だから儂は、なにかを遺したかった。例え悪霊扱いされても構わん。なにかこの世に、儂がいたという『証』を遺したかった…』

「…じゃあ『復讐』っていうのは」

『そんな期なんぞ端っからありゃあせんよ。ただ、『復讐』という言葉の方が記憶に残ると思っただけじゃ。…驚かせてスマンかったのう』

「よ、良かった~…、祟られるんじゃないかと思ったよ」

『そんなことしやせんよ。…じゃが、たかが『物』の分際でこんなことを考えてしまったのがそもそもの間違いだったのかもしれんのう…』

「…そんなこと無いと思うよ」

『む?』

 懺悔するように呟く『ザ・フォックス』に、七海が声をかける。

 

「誰だって、『忘れられる』のは嫌だもん。人でも、動物でも、物でも、一緒だと思うよ。私も時々ニン○ンドー64とかゲー○キューブとかやってるし…」

「…な、七海さん?それとはちょっと違うような…」

「…とにかく、あなたがそう思ったことは、間違ってないと思うよ」

『…そう、なのかの?』

「…ま、安心しろや。少なくとも、ここに居る奴はアンタの事をそう簡単には忘れやしないぜ。…な?」

「…ま、こんなこと忘れたくても忘れられないしな」

「うむ!この弐大猫丸、お主の事は忘れはせんぞ!」

「夏場のホラーネタには使えそうだしねえ…それぐらいはいいよね?」

「…フン、おめでたい奴等だ。俺は憶えておくぞ、俺達をこんな目に遭わせた迷惑な奴としてな」

『おお、おお…!ありがとう、君たち…』

 やがて、『ザ・フォックス』から煙のようなものが立ち上り、その姿がゆっくりと消えていく。

 

『最期に君たちの様な子供たちに会えて良かった…。もう悔いはないわい…達者でのう…』

「アンタも早いとこ成仏しなよ。…アリーヴェデルチ、爺さん」

 『ザ・フォックス』が完全に消えると同時に、辺りの景色が歪み始める。そして一瞬意識が飛んだかと思うと、次の瞬間には日向たちは入って来た路地裏の入り口に戻って来ていた。

 

「…あ、戻って来た」

「…何だったんでしょうね、今のは…」

「夢…じゃあねえんだよな。やっぱり…」

「泡沫の夢か…だが、俺はハッキリ憶えておるぞ」

「…ま、人生一度くらいこんな不思議なことがあってもよかったんじゃないかな?そうだよね、『日向君』?」

「あ、名前…」

「…急にどうしたお前?」

「いや、どうやら僕の目は節穴だったみたいだ。どうして君のような『希望の原石』を見落としていたんだろう…!君は間違いなく『凡人』だ、しかしだからこそ君のその『黄金のような精神』の輝きがハッキリと分かる!…そうだ、『目に見える物』だけが『希望』じゃないんだ。むしろ君のような『心を震わせる』モノをもった人こそが、真の『希望』だったんだ!フフフ…これからの君がとても楽しみだよ日向君…!フフフ…アハハハハハハ!」

「…やっぱり俺こいつ苦手だ」

「大丈夫だよ、…皆そうだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そんなことがあったんですか」

「まあな、それでその後もなんだかんだ色々有って…そんで今の関係になったって訳だ」

「…それで、その『ザ・フォックス』の居た場所はどうなったんですか?」

「ああ、あの後SPW財団の人たちに相談して調べて貰ったら、『ザ・フォックス』が居た痕跡は欠片も残ってなかったんだ。けど、ほっとくのもアレだったから、そこに小さなお堂を建てて貰ってアイツを供養してるんだよ。時々、当時の事を知ってる爺さん婆さんがお参りしてるのを見た事が有るぜ」

「それにしても『幽霊のスタンド』ですか…。苗木君といい、あなた達と一緒だと退屈はしませんわね」

「…ところで日向さん、さっきのなんだかんだの所なんですけど、お二人がお付き合いを始めたきっかけって言うのは…」

「あー…、それはまた今度にしてやってくれや。何しろ…」

 

 

 

 

「…じゃあペンデュラム召喚。イグナイト・マスケット、ドラグノフ、イーグル、キャリバー同時特殊召喚」

「ムッキーッ!これでそいつら4回目じゃあないですか!インチキ効果もいい加減にしろぉ!」

(…とはいえこちらにはペトルフィンが居る上に伏せにはミラフォと激流葬…。そう簡単には…)

「お楽しみはこれから…3体リリースしてオベリスク召喚。ついでにサイクロンで伏せも破壊」

「にゃにぃ!?ミラフォが…し、しかしまだペトルフィンが…」

「オベリスクで攻撃…」

「ペトルフィンの効果を…」

「…する前に王宮の鉄壁。なにかある?」

「…ここでガンメタですかぁーッ!?」

 

 

「…あっちがそろそろ終わりそうだからよ。時間も良い頃合いだし、今日はもうこの辺でな…」

「え~…」

「舞園さん、余り困らせては駄目よ」

「は~い…。けど、今度は教えてくださいね!」

「分かった分かった…、おい七海、そろそろ行こうぜ」

「待って…あとヲー…じゃなかったラーを出せれば三幻神揃うから…」

「チックショーッ!なんで僕にもっと気持ちよくファンサービスさせてくれないんですかぁ!」

「騒がしいですわよ豚」

「ブヒィッ!?」

 

 希望ヶ峰学園は平和であった。

 




という訳で77期生編はここまで。
また気が向いたら日向と七海のラブコメぐらいは書きたいです

…ほんと適当極まりないけどご勘弁を。これが私の限界です

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