ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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まだあんまり書けてないんですけど、色々語りたいことがあるので書き置きしておいた2部の続きを投稿します

ジョジョ展…非常に素晴らしいものでした!原画展ではあの荒木絵が本当に人の手で描かれたものであったということを目に見えて知らしめられましたし、参考資料展示では荒木先生がどれだけ手広く美術的技術や芸術品を漫画に投影していたのかを知ることが出来ました。あの「輪切りのソルベ」に実在するモチーフがあったとは知らなかった…。
巨大キャンパスに描かれた描き下ろし原画は執筆工程をビデオで放送しており、あのタッチをあのデカい筆でよく描けるものだと感心しました。
そしてなにより良かったのは観覧しながら聴く荒木先生のインタビュー!一番驚いたのは週刊連載の時からアシスタントにベタやトーン程度しか仕事をさせずほぼ全部一人で描いていたということですね。サラリーマンと同じタイムスケジュールで漫画描いてるのに一人でやるなんて…やっぱあの人波紋使えるんじゃないだろうか?
…スタンド使い全員のパネル展示ゾーンで、プロシュート兄貴だけ立ち絵だったからか他のキャラより倍ぐらいパネルがデカかったんだけど、他のシーンはなかったのか?…もしくはスタッフの中に兄貴が好きな奴がいたのだろうか?

長々と感想失礼しました。気になるという方は是非行ってみてくださいな!年明けちょいまでやってるのでおすすめですぞ!

ではどうぞ



戦闘潮流

 ワムウの『神砂嵐』の後に残った惨状、それはまるで『超大型台風』でも通り過ぎたかのようなものであった。

 

「な、なんだよ…コレ…?」

 周囲の木々はやたらめったらにへし折れ、コンクリートの地面はショベルカーで削ったかのように左右それぞれに抉れており、その中心はまるで『クレーター』でもできたかのような状態であった。

 

「う、うわ…うわあああああッ!?」

「ば、バケモン…バケモンだアイツゥゥッ!!」

「あぶあぶあぶ…序盤だって言うのに、さっそくモノミが死んじゃった…!」

「ま、まさに風の魔人…嵐の権化か奴はッ!?」

「この『風』のワムウにとって、この程度のことなど児戯にも等しい…」

「運が良かったなぁ貴様ら…その小僧の判断があと一瞬遅れていたら、貴様らもあのウサギと同じ運命を辿っていただろうな…」

「ひッ…!」

「さて、これでオマエラもいい加減理解してくれたよね?オマエラに『自由』なんて存在しないんだよ。跡形もなく消し飛びたくなかったら、僕には決して逆らわないことだね。もっともその気があるなら…まずはこの3人ぐらいは倒してごらんよ!」

「弱者をいたぶるのは好きではないが、望むのであればしかたあるまい」

「刃向うというのであれば、相手になってやるぞ…?」

「我らに楯突く者は、全て我らの血肉に還ると知れいッ!!」

 

「……」

 誰も、何も言えなかった。真に恐怖した人間は、震えることすらも忘れてしまうということを実感していた。この場の全員が、…『一人』を除いて恐怖に打ちひしがれていた。

 

「…フン。恐怖の余り震えすら忘れたか、なんとも情けない…」

「これは、我々の出番はなさそうだなあ…」

「…なれば、もはやここに用は無い」

 落胆したかのようにそう言い残すと、柱の男たちは踵を返してモノクマの下へと向かっていった。

 

「ど、どうなって…いるのですか?」

「あんな生物が、存在するというのか…!?」

「そしてそれを従えるモノクマ…一体何者なんだ…?」

「も、もう駄目だ…俺達は終わりなんだ。だよな、日向……日向?」

 隣の日向に同意を求めようした左右田であったが、日向の姿は忽然と消えていた。

 

「お、おい…お前どこに…」

「…日向君ッ!」

「え?」

 七海の叫び声に全員がハッとしたその時では、

 

 

 

 

 

 

 日向は既にワムウへと躍り掛かっていた。

 

 

「てめぇらーッ!!こっちを振り向けいッッ!!」

「むうッ!?」

 自らの『影』に入り込んだ日向に対し、ワムウは本能的に反撃の蹴りを向ける。

 

「オラァッ!」

 日向はそれを寸でのところで宙返りして躱すと、そのままサマーソルトへと移行し爪先がワムウの顎先を掠める。

 

ザシュッ…!

「……」

「……」

 

パクッ…

「…なんだとッ!?」

 ほんのわずか、例えるなら髭を剃る時に良く切れる剃刀で切ってしまった程度であったが、ワムウの顎が僅かに切れる。

 

「貴様、このワムウに傷を…!」

「ほう…面白い奴が残っていたな」

「…!ワムウ、その傷口は…」

「ム?」

 カーズの指摘にワムウが自分の傷に触れようとすると…

 

バジッ!

「ぬうッ!?」

 傷口から『電流』のようなものが迸り、それがワムウの指を焦がす。

 

「こ、この反応は…よもや、『波紋』!?」

「生き残っておったか…『波紋の一族』!それがこいつらの中に紛れこんでいたとは…!」

「は、もん…?」

 驚く柱の男たちと呆然とする生徒たちの間で、日向は足元のモノミのリボンを拾い上げる。

 

「…ウサミは、イイ奴だった…!確かに得体の知れない所はあったし、なにかを『隠している』ようでもあった。けど…ッ!それでも、俺達の為に一生懸命だった…!俺達の為に命を賭けてくれた…立派な、『先生』だったッ!!」

 

ギュッ!

 腰のポーチから『指ぬきグローブ』をはめ、腕のバンダナを頭に巻き、そこにモノミのリボンを挟む。

 

「ウサミ先生…一緒に闘おうッ!許さねえ…絶対に許せねえッ!先生を殺したお前らを、俺は絶対に許さねえッ!ウサミ先生の仇だ…テメエらはこの日向・Z・創が、直々にブチのめすッ!!」

 『戦闘装束』に身を包み、日向は敢然と柱の男たちに向き合った。

 

「ま、まさかアイツ…奴らと闘うつもりか!?」

「む、無茶だ!お前も殺されちまうぞッ!」

「悪いがこれだけは退けねえ…!ウサミは俺たちを守って死んだ!俺がそのケリをつける…ケリをつけねえと、気が済まないッ!!」

「…いいだろう。若き波紋の戦士よ、このワムウが相手になってやるッ!」

「コォォォォッ…!」

 笑みを浮かべやって来るワムウに対し、日向は『波紋の呼吸』で迎え撃つ。

 

「ムンッ!」

 小手調べとばかりに、ワムウの長いリーチによる両腕のパンチが飛んでくる。

 

「日向ァ!」

「…フッ!」

 日向は低い体勢になると、その2つのパンチの間に滑り込むように体をねじ込み、そのまま滑るようにワムウに迫る。

 

「何ッ!?」

「アタァッ!」

 懐に入り込んだ日向の掌底がワムウの胸板を撃つ。

 

「い、今何が起こった…!?」

「今のは『中国拳法』の動きじゃあ!アイツは『中国拳法』の使い手だったのか!」

「…チッ、寸でのところで後ろに跳んで直撃を避けたか」

「おのれッ!」

 ワムウは懐に入られたのを逆手に取り、腕を薙ぐようにして日向に攻撃する。

 

「…でぇいッ!」

 それに対し日向は迫る腕の力に逆らわず自身ごと回転させてワムウの攻撃をいなす。

 

「こ、これは『合気道』!?中国拳法だけではなかったのか!」

「今度は…こっちの番だッ!」

 体勢を崩したワムウに、日向は距離を詰めると連続で殴り掛かる。

 

「オラオラオラオラァッ!」

「…!」

「こ、今度は『ボクシング』…いや、『ムエタイ』、『空手』!?様々な格闘技の特徴が入り混じっておるッ!」

「め、滅茶苦茶強ぇ…!」

「な、なんなんだよアイツは…!?」

「でもイケそうだよ!」

「よ…よしッ!行け日向ァ!」

「オラァ!」

 

バゴォン!

 日向の気合の籠った一撃が、ワムウの顔面をかちあげる。

 

 

「…見事だ、波紋の戦士よ。これほどまでに多彩な格闘術を放つ人間を俺は今まで見たことが無い。貴様を見ていると、我々が眠っている間に人間の『闘いの技術』がどれほどまでに多様化したのかがよく分かる…」

「……」

「…だが」

 波紋であちこちが削られた顔をゆっくりと向けるワムウの眼には、確かな『同情』が見て取れた。

 

「惜しい、実に惜しいな…。肝心の貴様の波紋は、このワムウの命を奪うには程遠い…!どれほど修行を重ねたのかは知らんが、どうやら貴様の『才能』は貴様の『努力』に応えなかったようだ…」

「…!」

「なっ…!?が、顔面が…削れてやがるッ!」

「で、でもアイツピンピンしてるっすよ!」

「日向でも倒せないというのか…?」

 殴られた頬から『波紋傷』の煙を立ち上げながらも、ワムウは不敵に日向に向かう。

 

「ワムウめ…悪い癖だ。初めて闘う戦士にはああして手の内を存分に曝け出させ力を見切る」

「だが、どうやら奴は波紋をかじっただけの格闘家に過ぎなかったようだな。ワムウよ、モノクマ様を待たせるなッ!」

「ハッ…!日向とか言ったな、悪いがそろそろ終わらせてもらうぞ」

「……」

 エシディシとカーズの激にワムウがいよいよ本気になろうとした時

 

 

「…フゥー。やっぱり、『俺自身』の力じゃこんなもんか」

 日向は心底残念そうにそう呟く。

 

「…なんだと?」

「言い訳をするつもりはねえが、ワムウ。今までの俺の闘い方は、『日向・Z・創』個人として俺が考え抜いた闘い方に過ぎない。それで倒せれば俺も自信がつくと思ったんだが…やはり限界があったみたいだな」

「ハッタリを抜かすなよ…!貴様にこれ以上何ができるというのだ…」

「言ったろ?今までは『俺流』の闘い方だったと。そしてここからは…」

 

パァン!

 日向が両の手を力強く合わせる。

 

「…『ツェペリ家』100年の歴史が紡いできた闘い方を、見せてやるぜーッ!!」

 そしてそれを『擦り合わせるように』スライドすると、手袋から大量の『泡』が噴き出した。

 

「何!?」

「あ、泡!?」

「喰らえッ!爺さんツェペリ考案の必殺技、『シャボンランチャー』!!」

 日向が両腕を振るうと同時に放たれた大量の『シャボン玉』がワムウに殺到する。

 

バジッ!

「むうッ!?」

「このシャボン玉一つ一つには、俺の波紋が練り込まれている!ちょっとでも触れば貴様の身体を灼く、まさに泡の『機雷群』よ!残りの連弾を喰らえ!」

 周囲をシャボンで囲まれ身動きが取れないかに思えたワムウ。だが…

 

「…フン。この程度の技、『2千年前』に既に見切っておるわ!」

 ワムウが頭を軽く降ると、頭部についた『ワイヤー』のアクセサリーが回り始め、やがて甲高い音が鳴ったかと思うと。

 

パパパパパパァンッ!

 ワムウの周りのシャボン玉が全て割れてしまった。

 

「ひ、日向の技が敗れた!」

「奴は何をしたんじゃ…?」

「…多分、あのアタマのワイヤーを回転させて小型の『真空竜巻』を創ったんだと思う。それがシャボン玉を全部割っちゃったんだ…」

「そ、そんな馬鹿な…」

 七海の推測を裏付けるように、シャボンがあった場所の地面には不自然に抉れたような痕跡が残っていた。

 

「…ほう、良く見えているな娘。決めたぞ、日向を始末したら次は貴様がこのワムウの相手だ…」

「…おい、俺を無視して決めてんじゃあねーよ」

「…随分と余裕だな。自慢の技が破られたのだぞ?」

「ハッ!生憎テメエの言うとおり俺には『才能』が無かったんでな、一度や二度の失敗でへこんでなんかいらんねーんだよ!シャボンランチャーが効かないなら…これならどうだッ!」

 日向は腰のポーチから水筒を取り出すとその中の水を口に含む。

 

「曾曾爺さんツェペリの必殺、『波紋カッター』!」

 

パパウパウパウッ!

 日向の歯の隙間から放たれた、波紋を帯びた高圧の『水のカッター』がワムウへと向かう。

 

「下らん…こんなもの簡単にッ!」

 ワムウが跳び上がって波紋カッターを躱そうとした、その時

 

 

ザシュッ!

「!?何ぃ!?」

 ひざ裏に痛みを感じ、体勢を崩したワムウがその場所を見ると、そこには『円盤状に潰れたシャボン玉』が突き刺さっていた。

 

「引っかかったな!俺はシャボンランチャーと同時に、幾つかのシャボンを高圧で潰して『シャボンカッター』にして放っていたのさ!円盤状になったシャボンは多少の風程度では割れはしない!そして高速回転をかけることで、一旦通り過ぎても弧を描いて戻ってくる、『シャボンカッター・グライディン(滑空)』!体勢を崩したお前に、波紋カッターは避けられまいッ!」

「むうう…!」

 

 

 

 次の瞬間、日向は仰天した!

 

 普通、膝裏を突かれる…俗にいう『膝カックン』の状態になれば、後方によろけ、尻餅をつくしかない。人間の人体構造上、それが『普通』だからだ。

 

 しかし、ワムウは!

 

「ぬんッ!」

 なんと、『つま先』の力だけで後方へ『バク転』した!

 

「なっ!?」

 寸でのところで飛び上がったワムウの真下を波紋カッターが通り過ぎる。

 

「ふう…なかなか驚いたぞ日向よ」

「こ、こいつ…!やはり人間離れした動きを…、いや、それだけじゃあない。今のとっさの判断…こいつは怪物級の肉体だけじゃなく、抜群の戦闘センスを持っている。いわば、『戦闘の天才』!」

「それは貴様も同じだな。貴様の『波紋の応用力』は大したものだ。未熟な己の力を知恵と工夫で最大限に利用して闘いのペースを握ろうとする…小賢しくも美しい」

「そいつはどうも…」

「さて、これで終わりではないだろう?もっと俺を楽しませてくれ!」

「チィ…面倒なんだよなこういうの…!」

 

 

 

 

「…あーッ!もう、なにをちんたらやってんのさ!」

「も、モノクマ様…!」

「ワムウ君、キミさ…何一人で楽しんじゃってんのさ?僕には君の『趣味』に付き合ってる暇はないんだけど?」

「も、申し訳ありませんッ!」

「…まあいいや。とにかくさっさと終わらせちゃってよ。エシディシ君、カーズ君も手伝って!」

「ハッ!」

「ワムウ、残念だったな。…まあ、永遠を生きる我らにとって好敵手の存在は何よりの楽しみ。気持ちは分からんでもないが、今の我らには『主』がいることを忘れるなよ?」

「…ハッ」

 痺れを切らしたモノクマにより、一気に『3対1』になってしまった。

 

「おいおい…冗談だろ…」

「くっ…」

「…済まぬが日向よ。ここで終わりにする…!」

「我らはワムウのように甘くは無いぞ…?」

「一瞬で終わらせてやるッ!」

 3人は一気に日向へと襲い掛かる。

 

「ムンッ!」

 

ガギッ!

「ぐうっ…」

「隙だらけだぞッ!」

 

ドゴッ!

「がはッ!?」

 ワムウの一撃を受け止めたところに、エシディシの蹴りを受け日向は空中に蹴りあげられる。そしてそこで待っていたのは…

 

「…終わりだッ!」

 

ガスッ!

「ぐああッ!」

 空中で待ち構えていたカーズの踵落としを受け、日向は地面に叩きつけられる。

 

ドゴォン!

「ひ、日向君ッ!」

「ぐ、はあッ…」

「…『肺』を強打した。しばらく『呼吸』はまともにできん。これで貴様はただの人間だ」

「ワムウを手こずらせたのは賞賛に値するが、我ら3人にかかればこの程度よ…」

「……」

 倒れ堕ちた日向に3人は止めを刺すべく近づく。

 

「…なめん、じゃあ…ねえッ…!」

 その眼前で、日向は何とかして立ち上がろうとする。

 

「…無駄だ。立ち上がったところで、今の貴様に何ができる?波紋すら碌に練れない体で、我らを倒せるとでも思ってるのか?」

「倒せないとか…そんなもん、関係ねえッ…!俺は、ウサミの仇を討つって…決めたんだッ!それを何もできないままくたばったんじゃあ…カッコ悪くて、あの世でウサミに合わせる顔が無いぜ…ッ!」

「ひ、日向…」

「……」

「…フン、人間のちっぽけな『プライド』か。下らん…『絶望』の中に落ちろ!」

 エシディシが日向に止めを刺そうとした、その時

 

ドドドドドッ!

「何ッ!?」

「!?」

 突如として殺到した『緑の奔流』が、エシディシと日向の間に割って入る。

 

「い、今のは…どこから?」

「…負けない」

「な、なみ…?」

 困惑するエシディシに、今迄様子を見ていた七海が毅然として立ち上がって叫ぶ。

 

「日向君は、負けない…!日向君も、私たちも…もっと強くなる…。強くなって、きっとあなた達を倒す…『希望』は、『絶望』なんかに負けない。だから、日向君はやらせない!」

「七海…?お前…」

「…今のは貴様の仕業か。面白い、ならば貴様も一緒にあの世に送ってやろう…」

「さ、せるかッ…」

 

 

 

 

「…お待ちください、エシディシ様!」

 再びエシディシと日向の間に割って入ったのは、なんとワムウであった。

 

「!?」

「ワムウッ!貴様、なんのつもりだ!」

「…エシディシ様、カーズ様。私はこの若き波紋使い、そしてその女の心意気をいたく気に入りました。この女の言葉がどれほどまで『真実』なのか、この日向にどれほどの『可能性』があるのか、私はそれが見てみたくなりました」

「…だがワムウよ。いくら貴様が気に入ったとて、決定権はモノクマ様にあるのだぞ?」

「分かっております。…モノクマ様!このワムウ、無礼を承知でお願いします!どうかこの者どもの命、このワムウに預けて頂きたい!時が来れば、この私自らがこの者達を殺します。それまで、どうかお待ちいただきたい…」

「うーん…」

 ワムウの懇願にモノクマはしばし考え、やがて答えを出す。

 

「…ま、いっか!どうせアイツラはコロシアイ修学旅行で殺し合うことになるんだし、どの道変わんないよね。それに、僕は『できる上司』だからね!どっかの『ブラック企業』とは違うところを見せとかないとね。いいよ、ワムウ君のお願いを許してあげる!」

「感謝の極み…!」

「た、助かったのか…俺達?」

「とりあえずは…みたいだがな」

「…けどね、変に時間をあげてそいつらにチンタラやられるのも嫌だから、『タイムリミット』はつけるんだよ」

「心得ております…」

「ほほう、例の『儀式』をやるつもりですかな?」

 モノクマからの赦しを得たワムウは膝立ちで事の推移を窺っていた日向に向き直る。

 

「…女!七海とか言ったな、俺は敢えてお前の口車に乗ってやることにするぞ!日向よ、お前がどれほどまで強くなるかは分からんが、その命しばし預けてやろうではないか!」

「…随分、気前がいいじゃあねえか?後悔しても知らないぜ?」

「だが、ただでくれてやるつもりはない!貴様にはより強くなってもらうために『タイムリミット』を設けさせてもらう!」

「タイムリミット…?」

 ワムウは体についたアクセサリーから『リング』を一つ外す。

 

「これは名づけて『死の結婚指輪』!今からこのリングを貴様の『心臓の動脈』に引っ掛ける…」

「な、何をするッ…!?」

「う、うわッ!や、奴の手が…日向の『体の中』にッ!?」

 

ズッ…

 ワムウの手は日向の体の中に『溶け込むように』入り込むと、そのまま心臓の動脈付近にリングを引っ掛け、手が抜き取られた跡には傷一つなかった。

 

「このリングの外殻は埋め込まれてからおよそ『三週間後』に溶けだし、中に入った『毒薬』が貴様を殺すッ!手術で取り除くことは不可能!」

「な、何ィィィッ!?」

「助かる方法はただ一つ!『三週間』以内に俺と闘って勝ち、この『口』のピアスについた『解毒剤』を飲むことだ。まさに『死が二人を分かつまで』の結婚指輪よ。…日向よ、そして七海とそこで怯える者どもよ。貴様らがこのワムウの前に立ち塞がることを期待しているぞ…!」

「ひ、日向!」

「ぐうッ…」

 と、ワムウが下がると入れ替わるようにエシディシとカーズが歩み寄る。

 

「フン、運が良かったなあ。その女に感謝するんだな…そうだ、俺との闘いはないだろうが、このエシディシからもプレゼントをしてやる!」

 エシディシは同じような『リング』を取り出すと今度はそれを日向の『首』に突っ込む。

 

「貴様の『喉』に引っ掛けてやる!」

「うわあぁぁッ!し、『心臓』と『喉』ッ!?」

「ワムウとは違う『毒』だ。俺の『解毒剤』は、この『鼻』のピアスにある。…カーズ、お前はどうする?」

「…下らんな。この程度の小僧に何をそんな期待をすることがあるのか。…しかし、モノクマ様の命とあっては仕方あるまい。この俺も付き合ってやろう!」

 カーズも『リング』を取り出すとそれを『後頭部』に突き立てた。

 

「俺は『脳幹』に引っ掛けておくとしよう!」

「うおぉぉッ!?の、『脳』までかッ!」

「俺の『解毒剤』は『耳』のピアスだ。…まあ、それを知ったところで意味は無いだろうがな」

「うぷぷ…これで少なくとも日向君はもうこの島から逃げられないね。あ、もし日向君が誰かを殺して島から出られる権利を手に入れたら、そのリングは全部外してあげるよ」

「ふざ…けんなッ!誰がそんなことをするものかッ!」

「その強がり…どこまで続くかなあ…?さて、ではそろそろお開きとしましょう。殺し合い修学旅行の細かいルールについては、後ほどお手持ちの『電子生徒手帳』をアップデートしておくのでそれをご覧ください!ではでは…楽しいコロシアイライフを、エンジョイしちゃってくださーい!とうッ!」

「貴様らの『絶望』に打ちひしがれるさまを、じっくり見物させてもらうぞ!」

「日向よ、精々強くなり!この俺の『神砂嵐』を打ち破って見せろ!」

「楽しみにしているぞ!ワハハハハハ!」

 高笑いを残して、モノクマと柱の男たちは跳び去って行ってしまった。

 

「じょ、冗談じゃあねえぜ…!なにが『死の結婚指輪』だ!とんだブラックユーモアじゃあえねーか…。しかも『3個』もまとめてつけやがって、俺は『一途』なんだよ!3個もつけたら『重婚罪』もいい所じゃあねえか!野郎のハーレムなんか嬉しくねえんだよ!クソ…ったれ…」

 行ってしまったモノクマ達に悪態をつきながら、疲労が限界に来ていた日向はゆっくりとその場に崩れ落ちる。

 

(けど…折角七海が繋いでくれた命だ。『女の期待』に応えなきゃ…男が廃るよなあ…お婆ちゃん…)

 

ドサッ!

「ひ、日向君!」

「…ハッ、だ、大丈夫か!」

 倒れた日向にハッとした皆が駆け寄る。

 

「…よ、良かったです。あちこち骨折はしてますけどまだ生きてますよぉ!」

「あれほどまでに強い日向が、これほどやられるとは…」

「…むしろ、こいつだからこそ『この程度』で済んだのだろう。それよりこいつを運べ!こいつには訊きたいことが山ほどある、絶対に死なせるな!」

「わ、分かってるわよ!…だったら、とりあえずホテルに向かいましょう。あそこなら休めるところがある筈よ」

「…日向君、無事でいてね」

「…七海、お前にも訊きたい事が有る。日向が目覚めたら一緒に聞かせてもらうぞ」

「うん…」

 気を失った日向を丁重に運びながら、一同はとりあえずホテルへと向かっていった。

 




今回ここまで。これで2部のストックが切れたので続きはまたある程度書きためてから
アイディアは山ほどあるのに文章にならないジレンマ…私は悲しい。頭の中では既に3部のエンディングまで構想が出来ているのに…


ジョジョ5部を観ながら執筆パワーを蓄えるとしましょう。早く一番好きなホワイトアルバム戦が観たい…!

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