ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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現在200話記念にちょっとした小話…というよりシリーズものを執筆中

テーマは「希望ヶ峰学園だよ!全員集合!」。内容に関しては行き当たりばったりですが、育成計画をモチーフに無印からV3までのキャラ総出演で行く予定です。詳しいことは200話の更新の時に…


…姑息な手段と言いたくば言え!私とてこの作品を完結させねばならん…!(白き盾感)


交錯編:戻らない愛と悲しい決意

 突如として起きた『カタツムリ化』という異常現象。それは一触即発だったその場をパニックに陥れるのに十分すぎる衝撃であった。

 

「な、何よコレ…どうなってんのよ!?なんでアタシの身体が『ナメクジ』になってんのよぉーッ!!?」

「いや待て安藤っち、…これはナメクジじゃなくてカタツムリだべ!ホレ、俺の背中に殻が…って、うおおおーッ!?お、俺までカタツムリになってるべーッ!?」

「アンタだけじゃなくて『全員』なってるっての!…クッ、力が…入らない…!」

「流流歌ッ…む、体が動く…?カタツムリだと麻痺が無くなるのか…なら俺にとっては捨てたものではないか」

「呑気している場合かッ!!…おい苗木!さっき貴様ウェザーがどうとか言っていたが、これはウェザーの仕業なのか!?」

 自分の身に起きている理解不能な現象に困惑する皆の問いは、必然ただ一人『なんの変化も無い』苗木に向けられる。

 

「…うん。これはウェザーの『ウェザー・リポート』に隠された能力…。『ヘビーウェザー』と呼ばれる『無差別攻撃』だ…!」

「無差別攻撃…!?でも、それがなんで体がカタツムリなんかにッ…?」

「『ウェザー・リポート』の能力は『天候を操る能力』。ウェザーはその能力を使い、空気の流れを操作して『太陽光の屈折率』を操作し、特殊な『光』をこの場一帯に振りまいているんだ」

「光…ッ!まさか、これは『サブリミナル現象』なのか!?」

「それって…アンタの『洗脳ビデオ』と同じ?」

「理屈の上ではね。…だがどういう訳か、今『ウェザー・リポート』が発生させた光を見た生物は、天候レベルのサブリミナルにより何故か『身体がカタツムリになる』と思い込んでしまう。理由は分からない、どういうメカニズムで変化しているのかも…けれど、無意識の領域にまで及んだサブリミナルは現実の肉体にも反映される。『視力』を持つ全ての生物は等しくカタツムリになる…それが今皆に起きている現象だ」

「じゃあ…さっきから降ってるこのカタツムリって…」

「おそらく、そこらの海を泳いでいた魚がカタツムリになったのを、ウェザーが竜巻で巻き上げて上空から降らせているのだろうね。実際にカタツムリになったものに触れることで、サブリミナルはさらに加速する…もはや一種のテロだね」

「だ、だったら…なんでアンタは無事なのよ!?」

「天候レベルとは言ったけど、これもれっきとした『スタンド攻撃』だ。ならば、僕に被害が及んだ時点で『レクイエム』により僕への影響は遮断される。…皆には悪いけどね」

「…ちなみに、苗木っち?俺らこのままだと…どうなるんだべ?」

「…今すぐにはどうこうなることはない。今言ったけれどこれは太陽光を使ったサブリミナル…けど、人類史上最大最悪の絶望的事件の影響で現在地球に降り注ぐ太陽光は弱まっている。それに比例してサブリミナルの影響も本来よりは軽い。皆が完全にカタツムリになるまでには丸一日はかかるだろう。カタツムリの天敵の『マイマイカブリ』もこの島には生息していないしね」

「そ、そうなんだ、良かった…良かったのかな?」

「ただ…」

「ただ?」

 ホッとしかけた一同に苗木は言い辛そうに続ける。

 

「…ほら、ここは『海のど真ん中』でしょ?そんなところにカタツムリがいたら…ね?」

「ね…って、何のことだよ?」

「…ッ!?お、億泰君!大変だよッ!」

「あ?大変?なにがだよ?」

「テメーの身体よく見てみろっつーのッ!」

「何ィ?」

 康一と仗助に言われるがまま億泰が自分の身体をよく見る…

 

ジュゥゥ…

 カタツムリになりかけている自分の指先が、徐々に『溶けて』いっていた。

 

「…ッ!!?うおおおおッ!?と、溶けてるゥーッ!!」

「溶けッ…あ、そうだよ!周りが海ってことは、ここって『潮風』吹き晒しじゃん!」

「潮風の『塩分』か…!カタツムリは塩で溶ける…体の水分を維持できなくなるんじゃッ!」

「サブリミナルの効き具合を考えると体に影響が出るまではまだ大丈夫だろうけど…半日ぐらいほっといたらヤバいかもね」

「や、やべーじゃねーかッ!!おい苗木ッ、今すぐそのウェザーとかいうのを止めろッ!!」

「……」

「…誠君?」

 急に押し黙った苗木に霧切が眉を顰めていると、やがて重々しく口を開いた。

 

「この『ヘビーウェザー』の最も厄介なところは…『自分で止められない』ということなんだ」

「へ…?どういう…」

「この能力は『チャリオッツ・レクイエム』の時と同じ、ウェザーの感情が引き起こしたスタンド能力の『暴走』…。ウェザー自身にも、この能力を止める事は出来ない…止める方法はただ一つ、本体であるウェザーが『死ぬ』しかない…!」

「なんだと…!」

「だから僕とウェザーは『約束』をしたんだ。ウェザーがこの能力を使った時、それはウェザーにとって『最後の戦い』…つまり、兄である『プッチとの決着』をつけるとき…!それが終わった時、僕が必ずウェザーを殺すと…!」

「…ということは、彼は今…!」

「『ヘビーウェザー』の射程距離は精々街一つ分…つまり、ウェザーはこの島のどこかでプッチと戦っている筈だ…!」

「…あ!ってことはさっきウェザーっちが『管制塔』に向かったのって…」

「管制塔だと?」

 皆がその方向…先ほどの崩落での被害を免れた管制塔に視線を向けると、その頂上付近に不自然なまでに上空の物と同じ虹が覆い被さっていた。更にそれを裏付けるように、苗木の首の痣もそこにウェザーとプッチが居ることを示していた。

 

「…奴はあそこか。どうやら、プッチが必要としていた物って言うのがあそこにあるみたいだね。それが何かは分からないが…今はウェザーに任せよう。…皆さんすみませんが、もう少しだけ我慢してもらえませんか?そういう約束だし…それに、今のうちに貴女に訊きたいことがありますしね」

 そう言って苗木は再び雪染へと向き直り、彼女に向けて歩き出す。

 

 

 

「…ッ!」

 ゆっくりと近づいてくる苗木に、雪染は厳しい表情で睨むしかない。既に足先は完全に、肩にはカタツムリの『殻』ができるほどにカタツムリ化が進行しているとはいえカーズ細胞によって得た身体能力こそまだ健在ではあるが、全く影響を受けていない苗木を相手にするには分が悪い。自身の『皮膚や骨』を刃に変える輝彩滑刀も、『軟体動物』であるカタツムリと化した四肢ではまともに機能しない。なにより…彼女の『とっておき』の準備もまだであったため、下手に先手を仕掛ける訳にはいかなかった。

 

「…ようやく、貴女と話ができますね、雪染さん。…完全に想定外の事態ですけど」

「…今更、私に話すことがあるの?私を説得しようとしても無駄だよ。君が絶望の残党を改心させることができるのは、君が『絶望の理解者』であるからこそ。つまり、相手の絶望を受け入れることができたからこそ、その人に本当の『希望』を示すことができる。だから…」

「だから…『絶望していない』貴女を変えることはできない、ですか?」

「「ッ!!?」」

 その言葉に宗方と逆蔵が目を剥く。

 

「苗木…それは、どういうことだッ!?」

「言葉通りです。…さっき雪染さんが言ったことは揶揄でもなんでもない。本当に彼女は既に『絶望の残党ではなくなっている』んです」

「なんだと…ッ!?じゃあ、こいつは…雪染は正気でこんなバカげたことをやらかしたっつーのかよッ!!」

「…その筈なのですが…」

「…何かあるのか?」

「いえ…僕は相手が絶望しているのかが分かるのですが、今の雪染さんは間違いなく正気なのですが…同時にまだ『絶望の残り香』というか、何か、まるで…」

「…まるで、『自分の絶望を受け入れたように見える』…かな?君みたいに…」

「ッ!」

 先ほどの意趣返しなのか、同じような言い回しで苗木の先を読んだ雪染はしてやったりと言わんばかりの笑みを浮かべる。

 

「うふふ…正解だよ。私は確かにもう絶望の残党ではない。…けれど、絶望を『捨て去った』わけじゃないの。むしろ、それがあるからこそこんな思い切ったことができたんだけどね」

「…自分の絶望を、理性の『タガ』を取り払うためのきっかけとして残していた訳ですか。成程、そういう絶望の在り方もあるということか…」

「…何があった。一体お前に…何があったというんだ、雪染ッ!?」

「……」

 懇願の様な宗方の問いに、雪染は静かに語りだす。

 

 

 

「…そもそも、私が絶望の残党…というより、江ノ島さんの手駒にされたのは、あの希望ヶ峰学園の『パレード』の最中…。御手洗君、君と最後にすれ違ったあの後なのよね」

「ッ!あの後に…?」

「うん。…あの時の私が何をしていたのかは、京助も知ってるよね?」

「…ああ。お前はあの時、俺の指示で『カムクラプロジェクト』に関する情報を探っていた…。学園がパレードの対応に追われていたあの時なら、監視の目も甘くなるはずだったからな…」

「そう。そしてその最中に、私は『あの男』に呼び出された。…江ノ島さんの協力者だった、『エンリコ・プッチ』にね」

「ッ!?プッチが…」

「呼びされた先で、私は彼のスタンド『ホワイトスネイク』によってDISC化された『洗脳ビデオ』を頭に捻じ込まれた。…アレは凄かったよ。目や耳で感じるのとは比べものにならない、記憶を書き換えられるようなあの感覚…私はそれに耐えられず、自意識を手放してしまった。そして半ばトランス状態の私に、プッチはあることを命令した。…七海さんをおびき出して、カムクライズルの前に連れてこい…とね」

「何ッ!?」

 思いがけない事実に、七海を知る面々は愕然としてしまう。

 

「じ、じゃあ…七海ちゃんがカムクライズルに殺されたのって、まさか…」

「そう…私がそれをセッティングしたの。そしてそれが、私を後戻りできなくしてしまった。…教え子同士を殺し合わせ、あまつさえそれを他の皆にも見せて絶望させてしまった…残った僅かな意識でそれを自覚した時、私は本当の意味で『絶望』したのよ」

「そんな…そんなの、あんまりですッ!!」

「……」

「…それからの私は、完全に絶望の残党として活動していた。未来機関の第五支部長としての活動しながら、未来機関の内部情報を江ノ島さんや各地に散らばった『超高校級の絶望』にリークして、彼らの行動を裏から支援していた。…希望ヶ峰学園の数少ない生き残りだったこともあって、私を疑う人も殆どいなかったから楽な仕事だったよ」

「むぅ…」

「…そんな私の転機になったのは、あの『コロシアイ学園生活』の中継が始まったことだった」

「…ッ!」

「江ノ島さんとしては、疑心暗鬼で苦しむ君たちの姿を見せて未来機関の活動を邪魔しようとしていたのだろうけど…苗木君や霧切さんのように、絶望の中でも真実を求めて戦う姿を見て、逆に絶望に抗おうとする人たちもいた。…その一人に、私も居たんだよ」

「何だと…?」

「最初は内心嘲笑っていた。記憶を失くし、切り札の『レクイエム』も無くなった苗木君に何ができる…って。けれど、それでも立ち上がり、自分の希望を信じて前を向こうとする君の姿に…私は、日向君に見た『同じそれ』を思い出して…最後の学級裁判の頃には、洗脳は『半分ぐらい』解けかかっていたの。絶望している自分を、そうでない自分が『自覚』できるぐらいにね…」

「自力で洗脳を解いたという事…!?」

「…それは、驚きましたね」

 実際に洗脳ビデオを体感した苗木はその事実に驚きを隠せない。先ほど苗木が洗脳されずに済んだのは、苗木の強靭な精神力は元より、洗脳が解けるほどの致死レベルのダメージを受けても生き残れる吸血鬼の肉体があったからこそだ。それを苗木と言う『きっかけ』があったとはいえ、より強力な洗脳状態から自力で回復した雪染の精神力は相当なものであった。

 

「最初は物凄い自己嫌悪に苛まれたよ…。自分でやったことが信じられないぐらいにね。…それで、いっそ死んで楽になろうとも思ったんだけど…そこで思ったんだ。どうせ死ぬ気があるのなら、最期に一つだけ…私の『我儘』を叶えてから死のう、ってね」

「それが…」

「そう、それが京助…貴方なの。私に希望をくれた、世界で一番頼もしい人。どんなに世界が滅茶苦茶になっても、心から信じられる私の愛する希望。そんな貴方が、世界の希望になる…あの時果たせなかった『目標』を成し遂げさせること、それが私の唯一の希望。その為だったら、私はなんだって利用できた。希望も、絶望も…未来機関も、…『私自身の身体』もね」

「ッ!?…まさか、雪染君。君は…『自分の意志』で『カーズ細胞』を取り込んだのかッ!?」

「ええ、そうですよ天願会長。京助を一番にする以上、どうしても邪魔だったのが苗木君だった。けれど、前にもまして強くなった苗木君をなんとかするのは容易な事じゃあなかた。…でも、前に日向君から話にだけは聞いていたの。かつて日向君のご先祖様が戦ったという、全ての生物を越えた究極の生物『柱の男』…吸血鬼となり、人間を越えた苗木君に対抗するためには、それを生み出した柱の男の力が必要だと思ったの」

「いや、だからって…そんなおかしなものを自分の身体に移植するとか無いでしょ…?」

「…その『ブレーキ』を取り払うために、わざわざ自分の『絶望』を消さなかったのだろう。絶望による『破滅願望』…自分の身体をぶっ壊すことすら厭わないそれがあれば、得体の知れないものをテメーの身体に移植することぐらいどうってことなかっただろうよ」

 絶望の残党たちの中には、他人の生き血を啜ったり自分の身体を『蟲の苗床』にするようなケースが多々あった。それは絶望により人間としての『タブー』を犯す歯止めが効かなくなったからこそできたことであり、雪染は自分の中に残る絶望を利用し『自己の人体改造』というとんでもないことを実行できたのだと承太郎は推測した。

 

「それで私はまだ絶望している『フリ』をして絶望の残党たちに連絡を取り、元ナチス将校だったっていう残党が持っていた『カーズ細胞』を手に入れ、自分の身体に移植した。…まあ、そう簡単には制御できなくて1週間ぐらい『拒絶反応』で酷い目に遭ったけどね。でもしばらくしたら身体に馴染んできて、輝彩滑刀や再生能力も使えるようになったの。…ばれない様に『性能テスト』をするのは苦労したけどね」

「…まさか、お前が施設の子供達を殺したのは…」

「うん。いきなり実践は不安だったから、あの子たちで切れ味を試させて貰ったの。正直ちょっとだけ心苦しかったけど…京助の為ならいいか、ってね」

「…そんな、そんな理由で…ッ!罪のない子供たちを殺したって言うんですかッ!!?」

「…許されないことだっていうのは、分かっているよ。私だって一応、先生だったしね。…けど、もう私に手段を選ぶことも、罪悪感を感じている暇も無いのよ。それが…この体の『代償』なんだから…」

「代償…ッ!?」

 その時、苗木はその瞬間を見てしまった。雪染のカタツムリになりかけている指先が、一瞬まるで石のように固くなったかと思うと、潮風で溶けるのとは明らかに違う、まるで崩れるように『消え去った』のを。

 

「雪染さん、その身体は…ッ」

「…どうやら柱の男っていうのは、人間の身体では制御しきれるものじゃなかったみたいなの。今の私は例えるなら、『乾きかけの砂の城』…今にも崩れそうな身体を、私の命を削ってかろうじて人の形に押し留めている。けど、それももう限界…あと一年、ううん…半年もしないうちに私は死ぬわ」

「なんだとッ!?」

 さも当然のように自分の死期を悟る雪染に宗方が声を荒げる。

 

「雪染…。お前は、何故そこまで…」

「決まってるじゃない。…貴方を愛しているからよ。この世界の何よりも、私は貴方を愛している。だから、例え私の勝手なエゴだったとしても、私は貴方が『希望』になるところを見たいの。その為なら、私は『今まで積み上げてきた全て』を犠牲にする覚悟がある…それだけのことよ」

「…雪染」

「逆蔵君。前にも言ったよね?貴方に京助はあげない。貴方がどれだけ京助を愛していても、私はそれ以上に京助を愛してる。そこだけは誰にも譲らない。例え京助が私を愛さなくても、私はそれでも貴方を愛し続ける。貴方が望まなくても、私がかつて貴方が望んだ希望を叶えてあげる…それが私に残された、たった一つの『生きる希望』なのよ!」

「雪染さん…」

 

 

 

 

 と、その時

 

 

フッ…

「ッ!!」

 突然、カタツムリ化していた皆の身体が『元に戻った』。

 

「え…!?体が、治った…!」

「よ、良かったべ~。これで一安心…」

「馬鹿野郎ッ!そうじゃあねえだろうがッ!!」

「カタツムリ化…サブリミナルが消えたということは、その原因の『ウェザー・リポート』が消えたという事…。けど、それはつまり…ッ!」

「…ウェザーッ!!」

 苗木が思わず管制塔を見ると、そこに架かっていた虹はいつの間にか消えていた。その動揺を、雪染は見逃さない。

 

キュオオオンッ!!

「…ハァッ!!」

「ッ!」

 腕から生やした輝彩滑刀を煌めかせ、苗木へと斬りかかる。…が

 

キュォォォン…

「…ッ!?これは…」

「『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』…その攻撃は『ゼロ』へと戻る。…僕に不意打ちは通用しませんよ」

 その攻撃は既に発動済みの『レクイエム』によって無効化され、奇襲は失敗に終わる。雪染が気が付いた時には、斬りかかろうとした腕を既に『G・E・R』に掴まれていた。

 

「だったら…ッ!」

 

ピカァッ!!

「うッ!?」

 雪染は輝彩滑刀の刃を苗木に向けると、そこから強烈な光を放つ。苗木の眼が一瞬眩んだ隙に、雪染はその膂力で強引に拘束を解き放つ。

 

「雪染さん…!」

「…だから、だからね…だからッ!!私は、もう止まれないのッ!!私がここで止まってしまえば、今迄私が積み上げたもの、切り捨てたもの…私が私の『希望』の為に犠牲にしたもの全てが、無駄になってしまう…!それだけは、絶対にダメ…!私は何があっても、京助を『希望』にしてみせる。この命が燃え尽きる前に…!その為に…貴方を倒し、『レクイエム』を貰う!だから…私と戦いなさい、苗木誠!『超高校級の希望』ッ!!」

 刃先と共に殺気を突きつけ、雪染は苗木に宣戦布告する。そんな雪染に、苗木は複雑な心境で向き合う。

 

(…『逆』だ。雪染さんは今、『希望』の為に『絶望』を成そうとしている。まるで江ノ島さんの…『絶望』の為に『希望』を演じた江ノ島さんと『真逆』で…けれど、それでいて『同じ』でもある。彼女たちは2人とも、自分の『譲れないモノ』の為に敢えて自身と真逆の過程を経て、より大きな結果を成そうとしている。…そして僕は知っている。そうした人たちは、強い『覚悟』を持っている。もう後戻りできないということを理解したうえで突き進む…そんな彼女たちは強く、揺るがない…ッ!!)

 苗木は覚悟を決める。もはや雪染を言葉で止める事は出来ない。それができる過程はとっくに通り過ぎてしまっている。だからこそ江ノ島も『倒す』ことでしか止められなかった。…今の雪染も、もう『そこ』まで来てしまっていることを分かってしまったから。

 

ビリビリッ…バリィッ!!

 先ほど身体ごと切断されもはや襤褸切れになりかけたシャツを強引に破き捨て、上半身を露わにした苗木はそのまま歩み出…ふと立ち止まって振り返ることなく宗方に告げる。

 

「…宗方さん。恨んでくれて構いません、憎んでもらって結構です。それでも気が済まないというのなら、後で煮るなり焼くなり好きにしてもらって構いません。…けれど、それでも…貴方にあんなことを言っておいて今更と思うかもしれませんが、それでも…敢えて言わせて貰います」

「……」

 

 

 

 

 

「…僕は彼女を、雪染さんを…『殺す』ッ!!」

 




…前述したおまけ書いてる時の方が本編より筆の進みが早い…。
やはり僕にはシリアスは向いていないのだろうか…?

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