ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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お待たせして申し訳ない…

V3本編はクリアしたけどラブホイベが気になって現在カジノでコイン稼ぎながら紅鮭でパンツハンターやってます

ラブホイベ、全キャラ後半からまさかのフルボイスで終始ニヤニヤしてました。男は「大体」健全だったけど女子組はほぼ盛ってんじゃあねえか…!いいぞもっとやれ(愉悦)

あとあのカジノシステムはいいね。一番得意なのモノリスだからそればっかやってます。…ただし難易度イジワル、テメーは駄目だ!(最高スコア3500点)


紅鮭といい育成計画といい、最原と赤松がラブってるとほっこりしますね…。なぜ殺したし本編…


交錯編:猛る牛頭

突然現れた乱入者、しかもその正体は先程襲撃者によって『殺された筈』のグレート・ゴズだったという事実に、実際にゴズの死体を目撃した朝日奈は勿論他の皆も驚きを隠せずにいた。

 

「ゴズ…さん?嘘…どうして…」

「…霧切さん、朝日奈さん。ご無事で何より。あなた達に何かあったら、私は苗木君に申し開きできないところでしたよ」

「…どうして、貴方がここに?貴方はタイムリミットの時に…」

「その話は、後にしましょう。…今は、彼等をなんとかしなくてはなりませんからね」

 ゴズはそう言うと再び宗方へと向き直る。

 

「…グレート・ゴズ。貴様、生きていたのか…」

「…どうやら私もまた、悪運が強いようでしてね。…いや、『彼』から『運』を分けてもらった…とでも言うべきでしょうか?」

「『運』だと…?まさか、苗木誠がなにかやりやがったのか?」

「さあて…私には到底想像もつきませんので、お答えしかねますね」

 『運』と言う言葉に、『元超高校級の幸運』である苗木の存在に思い至った逆蔵は問い詰めるが、ゴズは飄々とそれを受け流す。

 

「…これが、あの男の『才能』なのか…!?」

 一方宗方はゴズの言葉に、かつて雪染が話していたことを思い出した。

 

 

『…私ね、苗木君と狛枝君を見ていると、同じ『幸運』の才能でも『在り方』が違うんだな…って思うんだ。狛枝君のは、とにかく浮き沈みが激しいって言うか…運が悪い時もあるんだけど、最終的には狛枝君が得をするような…『どん底でこそ輝く幸運』って感じなんだよね。…でも苗木君は、狛枝君に比べると運がいいことも悪いことも、そんなに大したことじゃないんだけど…ただ、彼の周りに居る人たちは、彼がそこに居るだけで『幸せ』になってるような、そんな気がするの。だから彼の本当の才能は、『幸運を分け与える』ことができる…ってことだと思うんだ』

 

 

「『与える幸運』…か。どこまでも、どこまでも気に入らない男だ、苗木誠…!」

「…それが貴方の『本音』ですか、宗方副会長」

「…ッ!」

「会長は仰られた。貴方にとって、苗木君は一種の『劇薬』だと。使いどころによっては希望を守る強い力となるが、同時になにかのきっかけで暴発しかねないとも。だからこそ会長は、苗木君と貴方を引き離した。日本とイタリア、未来機関とパッショーネ。それが貴方たちにとっての『ベストの関係』だと。…だが、会長は今回の様な事態が起きることを懸念していた。強すぎる『希望』がぶつかり合えば、それがもたらすものは『絶望と変わらない』と。故に私に命じられた。万が一の時に、あなた達を是が非でも押しとどめよとッ!」

「…だから、俺の邪魔をするか」

「苗木君は動きたくとも動けない…ならば、あなたを止めるのは必然でしょう」

「…チッ、テメエまであのガキの手下に成り下がりやがったか」

「…そう思いたくば、それで構いません。私はただ、後を託すのならば貴方がたよりも苗木君の『希望』に懸けたいと思っただけです」

 口先の小競り合いをしながら、宗方、逆蔵、ゴズはそれぞれ互いの出方を窺い睨みあう。

 

「……」(チラッ)

 そんな中、逆蔵に拘束されたままの黄桜は辺りを見渡し、やがて近くに『消火栓』を見つけると次いで忌村に視線を向ける。

 

「…ッ!」(コクッ)

 その視線から意図を察した忌村は小さく頷くと、睨みあう3人の間を縫って消火栓へと走った。

 

「ッ!?待てテメエ…」

「させねえよッ!」

「この…ッ!」

 すぐさま忌村を止めようとした逆蔵の足を黄桜が抱え込んで動きを制する。その隙に、忌村は消火栓から『消火器』を取り出しその中身を周囲に撒き散らした。

 

シュオオオオオオ…ッ!

「チィッ、目くらましか…!」

「今のうちッ!」

「ええ…立てる?葵さん」

「あ、うん……あ痛たた…。ごめん、手を貸して…」

「分かったわ。…ゴズさん、黄桜さんと御手洗さんを…」

「了解しました!」

 朝日奈を担いだ霧切の頼みを受け、ゴズは黄桜と御手洗の救出に向かう。

 

「させん…!誰一人として逃がすものかッ!」

 巨躯が災いして煙幕の中でも居場所の分かるゴズに、宗方は果敢に斬りかかった。

 

「…ッ!」

「消えろッ!」

 

ズアッ…!

 

 

 

 

ガキィンッ!

「何…ッ!?」

 しかし、その一振りはゴズの『手に握られたもの』に受け止められる。

 

「貴様…その『銃』は…!?」

「…『格闘家』として、できればこんなものを使うのは遠慮したかったのですが…苗木君から預かった以上、ここで使わねば意味がありませんからな…!」

「なんだと…ぐおッ!?」

 そのまま宗方を腕力で振り払うと、ゴズは手にしたそれ…『苗木の銃』を黄桜と揉み合う逆蔵に向ける。

 

「逆蔵君!避けなければ死にますよ!」

「何ッ!?…チィッ…!」

 ゴズの警告に銃を向けられていることを察知すると、逆蔵は即座に黄桜から飛び退いた…次の瞬間

 

ドキュオンッ!!

「きゃッ!?」

「うわあッ!」

 轟音と共に銃口が火を噴き、つい先ほど逆蔵が立っていた場所の『天井』に銃痕が穿たれる。

 

「ぬむッ…!?」

 想像以上の反動に呻きつつも、ゴズは大急ぎで黄桜に駆け寄る。

 

「黄桜さん!大丈夫ですか?」

「お、おうよ…なんとかな。それより、ゴズ君こそよく生きてたな…」

「…それは後ほど、今は逃げましょう。さあ…私が運びます」

「済まねえ…おおッ!?」

 黄桜を担ぎ上げると、ゴズは踵を返し走りだし…道中で蹲る御手洗を拾い上げ小脇に抱える。

 

「わああ!?ちょ、ちょっとゴズさん!」

「少し我慢してください!何分この方が速いので!」

 御手洗の文句も碌に聞かず、ゴズは霧切たちの方へと駆け出した。

 

「皆さん!私についてきてください!」

「わ、分かった…」

「逃がさんと言って…ッ!?」

 追撃を仕掛けようとした宗方に、ゴズは再び手にした銃を向ける。

 

「耳を塞いでッ!」

「うえッ!?わわッ…」

 ゴズの指示に周りの皆が慌てて耳を塞いだ瞬間

 

ドギュォンッ!!

「~ッ!!」

 

ココォン…!

 

「くッ…!」

 宗方は咄嗟に倒れ込んで回避し、銃弾はその宗方の『足元』に突き刺さった。

 

「…ッ!さあ、早く!」

「は、はい…!」

 宗方たちが体勢を立て直す前に、ゴズは霧切たちを引き連れその場から逃げ去っていった。

 

 

 

「チィ……?これは…」

「クソ…待ちやがれ!」

「待て!…追うな、逆蔵」

「宗方…けどよ!」

 

ガシャァンッ!

 脇で挟んだ刀に手錠のチェーンを叩きつけて切断すると、宗方は先程ゴズが放った銃弾の痕をちらりと見る。人間の頭程度軽く吹き飛ばせるほどの威力のその銃痕に、宗方は知らず喉を鳴らす。

 

「…奴が『苗木誠の銃』を所持しているのは想定外だった。奴は当てるつもりはなかったようだが、分かっていてもあの威力の前では回避せざるを得ん…今の装備では対抗できん」

「…じゃあどうするんだ?」

「『開発室』に行くぞ。あそこには十六夜惣之助が開発した武器がある。なにか使える物があるかもしれん」

「…分かった。だが、奴らはどうするつもりだ?」

「気にすることは無い。…不本意だが、モノクマが奴らの位置をモニタリングしている以上、どこにいようと探すのは容易…」

 足元に落ちていた『それ』を拾い、ふとモニターを見上げた宗方は、そのモニターに映る各人の現在地に『違和感』を憶えた。

 

「…?」

「どうした、宗方?」

「…いや、なんでもない。行くぞ、逆蔵」

「おうよ」

 しかし、不可解ではあるものの些細なことと判断した宗方は思考を切り替え、逆蔵を伴って開発室へと向かう。…その瞳の奥に、再び狂気じみた『激情』を燃やしながら。

 

(…そうだ。例えなんであろうと、俺はもう立ち止まりはしない…!絶望は全て根絶やしにする…、記憶の一かけらとて、この世界に残しはしない…ッ!全て切り捨てる…苗木誠も、その仲間も、天願も…そして…)

 宗方は懐にしまった先ほどの写真、そして後ろを歩く逆蔵をちらりと見る。

 

(…ああ、そうだ。もはや俺とて『例外ではない』…。全てが終わった時には、俺も…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、霧切たちを伴いゴズはある場所を目指して走っていた。

 

「ゴズさん…、どこへ向かってるの?」

「もうすぐそこです。…ああ、そうだ。朝日奈さん、お借りした苗木君の『銃』、勝手に使わせてもらったので後で伝えておいてもらえますか?」

「…やはりその銃、誠君のだったのね?」

「うん。…あのタイムリミットの前に、誠がゴズさんにって渡したんだ。多分ゴズさんぐらいしか使えないと思ったからだろうけど…」

「しかし、おかげで助かりました。…さあ、ここです」

 やがてとある部屋の前にやって来ると、ゴズはその扉を開く。

 

ガラッ…

「…おお、ゴズ君。無事じゃったか」

「はい、ただいま戻りました。皆さんも無事です」

「え…ッ!?か、会長!?」

「やあ黄桜君、しばらくぶりじゃな」

 部屋の中で皆を出迎えたのは、苗木の下に向かったっきりはぐれていた天願であった。

 

「会長さん…!良かった、無事……って、その『手』…!?」

「む?…ああ、少々不覚を取ってな。まあ手当も済んでおるし波紋で止血もしておるから心配はいらんよ」

「心配ないって…手が取れてるじゃないですか!大変ですよ!」

「そう慌てるな御手洗君。今はちと不便じゃが、後で『治る』のだから問題は無いわい」

「だからって…」

「そうじゃ、忌村君いい所に来たの。なにか『痛み止め』の薬はないかの?血は止めたんじゃが痛い物は痛いのでな…」

「あ…は、はい…!」

 左手を失ってる天願に皆は驚くが、当の天願が余りにも呑気な態度なせいで早々に毒気を抜かれてしまった。やがて忌村から処方された痛み止めを飲み、先ほど怪我をした黄桜の手当が終わると天願はゴズに切り出した。

 

「まあワシの事は今はどうでもいい。…それよりゴズ君、そろそろ聞かせてくれんか?二度目のタイムリミットの時に死んだ筈の君が、『何故生きているのか』をな」

「あ…!そうだよ!ゴズさん、一体どうして?…だって、私が見た時には…その…」

「…それが、私にもよく分からないのです」

「え?」

 ゴズは首を傾げながら自分の憶えている限りのことを語りだす。

 

「二度目のタイムリミットを迎えた時、睡眠薬で眠らされるところまでは憶えているのですが…その後、よく憶えていないのですが何か『恐ろしい物』に遭ったような…そんな恐怖の感情だけが残っていまして。気が付いたら、あの倉庫で寝かされていたのです」

「…それだけ、なのか?」

「ええ。…目が覚めたら服が血塗れでびっくりしましたよ。それで、朝日奈さんや苗木君もいなくなっていたのでとりあえず医務室でシャツを着替えて、予備のシャツが無かったので仕方なくコレを着てから皆さんを探している間に3度目のタイムリミットを迎えまして…それが終わった後に、すぐそこで会長と合流できたのです」

「…あれ?でもゴズさん、あの時凄い大怪我を…」

「…それが、服は血塗れだったんですが怪我自体は『無かった』のです」

「え!?」

「でも、その包帯は…」

「ああ、別にきれいさっぱり無かったわけではなくて、傷口の塞がった『傷痕』だけが残っていましてな。一応傷が開かないようにこうして巻いているだけなのです。…しかし、私も不思議に思っていまして…あれだけの血だったのでそう簡単に治る筈がないのですが…」

「…もしかして、誠君の仕業かしら」

「む?苗木君の?」

「ええ。…塔和モナカから聞いたのだけど、ゴズさんが襲撃者のスタンド攻撃を受けた時、誠君の血液を大量に浴びたらしいわ。もしかしたら、誠君が血の中の『生命エネルギー』でゴズさんを治したのかもしれないわ」

「…確かに、それならありゆるかも…」

「…あの、それはどういうことですか?私が襲撃者の…?」

「あ、えっとね…」

 

 朝日奈からタイムリミットの間に自分に起きたことを聞くと、ゴズは憤慨して立ち上がった。

 

「なんとぉ…ッ!?寝こみを襲ってあまつさえ『夢の中』で私を殺そうとするとは…ッ!こんの卑怯者がぁッ!!」

「ご、ゴズさん落ち着いて…」

「ふぅ…済みません。しかし、道理で目が覚めた時酷い気分だったわけです…文字通り『悪夢』を見させられていたという訳ですか」

「しかし、『夢のスタンド』か…。これは厄介な敵じゃのう…」

「天願さんも、心当たりはないんですか?」

「うむ。ワシが知っておるスタンドは学園と財団に所属していたスタンド使いと、ジョセフさんが酒の席で語っておった自分の武勇伝で出てきた奴だけじゃからな。それ意外となるとワシも詳しいわけではないんじゃよ…すまんの」

「…ともかく、やはり襲撃者を止める為には誠君の力が必要みたいね」

「しかし…状況は増々マズイぜこりゃ。宗方君達はどういう訳か完全に敵にまわっちまったし、おまけに俺達の居場所はモニターで筒抜け…しかも俺達の狙いも知られちまったから、下手すりゃ動力室前で待ち伏せされててもおかしくねえぜ?」

「…悪かったわね。宗方さんにこちらの情報を伝えてしまって…」

「…え、あ…!いやいや、そういうつもりじゃないんだって響子ちゃん!俺はただ、その…」

「…フフ、冗談よ。貴方がそういう人じゃないことは知っているわ」

「はれ…?…ハァ、参ったねこりゃ。どこでそんな悪い子になっちまったんだよ?昔の君はもっと素直で可愛かったのになぁ~…」

「私は『ギャング組織のボスの妻』よ?綺麗なだけじゃ務まらないわ」

「…やれやれ、こりゃ向こうで仁に土下座するのに苗木君も付き合ってもらわらなきゃなあ…。苗木君待ってたら何百年先になるのか分からねえけど…」

 普段へらへらとした態度の黄桜をクールな霧切がからかうというシュールな光景に、その場の皆も思わず笑ってしまう。

 

「ハハハ…すっかり『父親気分』ですな、黄桜さん」

「まあな…。小さいころから見守ってた女の子が、こんな美人になって好きな男と一緒になったとなりゃ、誰だってそうなるさ…」

「そういうものですか…。ところで黄桜さん、肝心の貴方はどうなのですか?その年で未だに『独身』と聞きましたが…」

「ぬぐ…ッ!?い、いいんだよ俺は!今更結婚とか考えられねえし…それより、ゴズ君はどうなんだよ!君こそまだ独り身だって聞いたぜ?」

「むッ…!?わ、私は…その、こういう人間ですので、正直結婚など考えたこともないですし…ああ!もちろん苗木君たちのように相性のいい女性と出会えたら、そういうのもいいとは思っているのですが…」

「奥手だねぇ~。『大晦日の顔』、『紅白デストロイヤー』とまで呼ばれたグレート・ゴズともあろう男が初心なこった」

「…ッ!わ、私はまだいいんです!これでもまだ30ですから!黄桜さんこそ、その年ならそれこそ霧切さんくらいのお子さんが居てもおかしくないのにお独りでしょうに!」

「い、いいじゃねえかオジサンでも!これでも昔は仁と二人で結構モテてたんだぜ!」

 

 

「…なんか向こうで中年のおじさんの恋バナが始まったんだけど?」

「なんていうか…むさ苦しいね」

「未来機関って若い人が多いから気にならなかったけど、あの二人独身なこと気にしてたんですね…」

「まったく…しょうがないのう」

 中年のオヤジ2人が繰り広げる男子高校生レベルの会話を、朝日奈達は遠巻きにそれを苦笑いで見ていた。間に挟まれた霧切に至っては、もはや呆れを通り越して無関心モードであった。

 

「…なら『勝負』しようじゃあねーか!どっちが先に結婚できるか、『競争』って奴だ!」

「……いいでしょう!望むところです、もし私が負けたら今後はこの『マスクを脱いで』仕事すると約束しましょう!」

「おう!だったらオレは『秘蔵のボトル』一本賭けてやるよ!」

「…そんなもんを賭けるぐらいなら、勤務中の飲酒をやめてくれる方がいいんじゃがの?」

「同感ね」

「うぐ…い、いいぜ!だったらそれも追加でやってやるよ!」

「承知しました。…負けませんからね!」

「おうよ!…この下らねえコロシアイをとっとと終わらせて、『皆で』生き残って…なあ!」

「…はい!」

 上司と友人の娘に釘を刺されつつも、黄桜とゴズはお互いに『全員で』生き残ることを誓い合った。

 

「…もういいかしら?そろそろ私たちも行動を始めたいのだけれど」

「おっと、確かにそうだな。宗方君たちのことは気になるが、ともかく早いとこモノクマを止めねえとな」

「えっと…動力室はここからだと…」

 と、朝日奈が動力室までの道のりを確認しようとモニターを見上げ、そこで固まる。

 

「…どうしたの朝日奈さん?」

「ちょ…!?響子ちゃん、アレ…!」

「え?」

 焦った様子の朝日奈が指し示したのは、モニターの一角…万代が待機している筈の会議室に万代と共に『安藤と十六夜のアイコン』が存在していることであった。

 

「な…ッ!?あの二人がなんであそこに…?」

「マズイぜ…、万代君が危ねえ…!それに、あそこには舞園ちゃんも…」

「さやかちゃんが…ッ!」

「…私が行く」

「忌村さん…!?」

「あの二人は、私が止める…!それが、私にできる…いや、私が『やらなければならない』ことだから…ッ!」

 決意の籠った眼でそう宣言する忌村に、霧切はその意志の強さを見て取ると小さく頷く。

 

「…分かったわ。けど、貴女一人では危険よ。私も同行するわ。…葵さん、御手洗さん。先に動力室に行って。私たちも事を片付けたらすぐに追うわ」

「うん、分かった!」

「ぼ、僕も!?で、でも僕じゃ…」

「そう弱気になるでない御手洗君。…ワシも君たちについて行こう。手負いじゃが、宗方君たちと鉢合わせた時に時間稼ぎぐらいはできるじゃろう」

「天願さん…うん、お願いします!」

「ならば我々は霧切さん達の護衛に回りましょう。…どちらかと言えば、こちらの方が確実に荒事になりそうですからな」

「ああ。今度は真面目にやらねえとな…」

「…無理をしないで、黄桜さん」

「…ああ、分かってるよ。…『仁との約束』もあるしな」

「じゃあ…先に行くね!待っててね誠…すぐに助けてあげるから!」

「わわ…!ちょ、ちょっと待って!」

 それぞれの役割を確認した後、朝日奈は御手洗と天願を伴って動力室へと走っていった。

 

「…私たちも行くわよ」

「ええ…!」

「さて、あのお二人に説教してやんなきゃな…」

 それを見送った後、霧切たちも会議室へと向かうため部屋を出て行った。

 

 

 

…ピタッ

「……」

 …しかし、最後に部屋を出たゴズは霧切たちと少し距離が離れるとふと立ち止まる。

 

「……」

 無言のままゴズが自分の右手に視線を落とすと、…ゴズの右手の小指が不自然な方向に『折れ曲がっていた』。

 原因は、先ほど右手で撃った『苗木の銃の反動』であった。吸血鬼の体でようやく扱えるあの銃の反動は、鍛え上げられたゴズの肉体を以てしても耐えきれるものではなく、ゴズの右手は小指だけでなく骨のあちこちに罅が入っている状態であった。

 

「…ムンッ!」

 

ゴキッ…!

 ゴズはそんな小指を左手で握ると、なんとその手に力を籠め思い切り握りしめて、小指を無理やり元の形に戻したのであった。そんなことをすればただでさえ痛むはずの手にさらに激痛が走る筈であったが…

 

「……」

 ゴズは呻き声一つ上げることなく、『直った』のを確かめると小さくため息を吐く。

 

「…もう、『痛み』も感じないのか。あれだけ走っておいて息切れ一つしない時点で覚悟はしていたが…やはり、私は『既に』…。だが、まだだ…!あと少し…後少しだけ動かなくてはならない…!それが、苗木君がくれた『時間』に私が報いる方法なのだから…ッ!!」

 そう言って、ゴズは霧切たちの後を追って再び走り出した。

 

 

 

 

 

 果たして、今本部にいる面々の何人が気づいているのだろうか。

 

 

 

 

 モニターに映る本部のマップの中に、ゴズのアイコンが『存在しない』と

 




黄桜とゴズのくだりは地味に交錯編でやりたかったことの一つだったりする。
平和だったら酒の席でこんなトークしてそうだな~…って思ったので。
ちなみに黄桜が言ったゴズの「紅白デストロイヤー」という異名は視聴率的な意味です

描きやすいからと言って交錯編ばかり描いている気がする…そろそろ舞園編も終わらせて追憶編も描かないと…

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