ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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一時はインフルの疑いもあったけどどうにか風邪治りました
間に舞園編か追憶編描けると思ったけど無理でした…。次回こそ、次回こそは…!


そしてPV第3弾来ましたね!神宮寺君からセレス的な風を感じる…!豹変しそう…しそうじゃない?でも公式の紹介分を見る限り狛枝っぽそうな感じも…死ぬな、こいつ(確信)
そして転子ちゃんがまさかの顔芸枠www!明らかに男子嫌いなのは分かりますけどこう表現してくるとは…。大神、辺古山に続く3人目の武術系…ロクな結末が期待できない…。
斬美ちゃん…いいわ~、僕好きだわ~こういう子。客観的に周りを見ている冷静沈着タイプ…こういう子に限って親密になるとギャップがありそうなんですよね。コミュやろう(義務感)
そんでハルマキちゃん…改め魔姫ちゃん。巷では早くも百合疑惑が浮上していますが、子供に好かれるということは根はすっごく良い子なんでしょうね。霧切さん的な感じで、感情を表現するのが下手みたいな…どう料理してやろうか?
…モノファニー、その声どっから出ているの?山ちゃん凄いわ…

これで残るは大塚ボイスの星君、見た目から葉隠スメルの漂う百田君、腹黒そうな秘密子ちゃん、まだ紹介されてないのにヤバそうなアンジーちゃん…濃いッ!!

ジョジョ4部もついに最終章、今から待ちきれませんね!


交錯編:絡み合った運命

「…それで、これからどうしましょうか?」

 現場の捜査が一通り終わると、舞園は次なる指示を霧切へと求める。

 

「…ゴズさんの遺体のことは、放っては置けないわ。理由はどうあれ、彼の遺体は事件解決の重要な『証拠』には間違いないのだから。けれど、だからといってそれだけに時間を割く訳にはいかないわ。次の『タイムリミット』も迫っているし、誠君と一緒の筈のむくろさん達にもこのことを伝えないと…」

「…なら、二手に分かれるかい?『ゴズ君の遺体を探す組』と、『会長たちに事態を知らせる組』にな」

「…それなら、私が会長さんたちにこのことを伝えに行ってきます。むくろちゃんのことも心配ですし…。葵ちゃん、響子さんたちのサポートをお願いできますか?」

「うん!任せて!」

「…で、御手洗君はどうする?」

「え…?ぼ、僕は…行っても足手纏いになりますし、霧切さんの手伝いをします…」

「…分かったわ。さやかさん、誠君たちのことをお願いね」

「はい!じゃあ、行ってきます!」

 舞園は一人、天願たちの向かったモニタールームのある棟へと走っていった。

 

「…さて、んじゃ俺達もやることやって…」

 

 

 

 

 

ドドドドドド…!

 

「…待って」

「あ、朝日奈さん?どうしたの?」

「…なんか、聴こえない?」

「なんかって…」

 

ギャルルルルッ!!

キキィーッ!!

「どおッ!?」

 突如聞こえた異音に耳を澄ますと、轟音を上げて月光ヶ原の乗ったマシンがドリフトしながら部屋へと飛び込んで来た。

 

『ふぃ~…また一秒世界を縮めたぜ……な~んちゃって♡』

「げ、月光ヶ原ちゃん!?…だよ、ね?」

『おーっす!ママたちまだ生きてる~?』

「ま、ママ!?」

「ど、どうしたよ月光ヶ原ちゃん?」

 先ほどまでとは様子の異なる月光ヶ原に、朝日奈達は困惑する。

 

『うぷぷぷ!おめでたい人たちだね~。まだ私の事月光ヶ原美彩だと思ってるの?』

「え…?ど、どういう…?」

「…アナタは、何者?月光ヶ原さんじゃあないわね?」

『よくぞ訊いてくれました!…表の顔は、未来機関のデジタルブレーン。未来機関第七支部支部長にして『元超高校級のセラピスト』月光ヶ原美彩…しかして、その実態は…!塔和シティが産んだ絶望系超天才ヒキニート、『元超小学生級の学活の時間』こと塔和モナカでーす!』

 マシンに乗ったまま画面の中のウサギと共に華麗にポーズを決め、月光ヶ原ことモナカは名乗りを上げた。

 

「塔和…モナカッ!?」

「塔和って…この間苗木君が妹さんと解決したっていうあの塔和シティのアレだよな?」

「ええ…。そして、塔和モナカは、その事件の『首謀者』よ…!」

「ええッ!?」

『へぇ~…。意外と耳が早いじゃん。まだあれから2、3日しか経ってないのに』

「で、でも…じゃあ、この月光ヶ原ちゃんは…?」

『コレ?モナカが創ったアンドロイド』

「あ、アンドロイド!?ロボットなの!?」

「…やっぱそうだったか」

「黄桜さん…気づいてたの?」

「あたぼうよ。俺ァ希望ヶ峰学園の『元スカウト』だぜ?『人を見る目』にはある程度自信があるんだよ。…厄介ごとっぽかったから苗木君が言うまで黙ってるつもりだったんだけどな」

「…答えなさい。何故月光ヶ原さんに成りすましていたの?アナタの目的は何?」

『ん~とね~。モナカ絶望とか希望とかもうメンドクサイからさ~。パパ…誠お兄ちゃんの味方してニートさせて貰おうと思って…』

「…ッ!そ、そうだ…誠は!?一緒に居たんじゃあないの!?」

『あー…パパなら医務室に置いてきたよ』

「置いてきた!?」

「おいおい…そりゃ駄目だろ普通よぉ~…」

「アナタ…ッ!」

『ちょ…ちょっとー!そんな怒んないでよ~。ていうか、パパを置いてきたのは『貴女のせい』なんだからね?霧切響子さん』

「…ッ!」

「え…?」

 苗木を一人にしたことを糾弾する霧切であったが、モナカの言葉に思わず息を吞む。

 

「…何故、貴女がそれを知っているの?」

『うぷぷ…私ね、ここのシステムにハッキング仕掛けた時に、たまたま皆の『NG行動』をいくつか見ちゃったんだよね。もちろん、その中にはあなたのNG行動もあったよ。だからわざわざパパと距離を置くよう気を利かせてあげたのに、それを怒られたんじゃあテンション駄々下がり~…』

「NG行動…!?響子ちゃん、君のNG行動って…」

「……」

『うぷぷぷ…!言いたくない?…でもモナカには関係ないから勝手に言っちゃいま~す!』

「ッ!?待っ…!」

 止めようとする霧切などお構いなしに、モナカは嬉々として口にする。

 

 

「霧切響子さんのNG行動は…『苗木誠に直接触れる、並びに苗木誠の半径10m以内でタイムリミットを迎える』で~す!」

「「「ッ?!」」」

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 …その頃

 

「ズームパンチッ!」

 

グオオッ!

「ッ!?関節を外した…しかし、この程度でッ!」

 天願の放ったズームパンチを半身になって躱した宗方は、伸びきって無防備になった肘へと刀を振り下ろす。

 

「貰ったぞッ!」

 

 

「…『波紋肘支疾走(リーバッフオーバードライブ)』ッ!」

 

ガキィンッ!

「何…ッ!?」

 しかし、ギロチンの如く振り下ろされた刀は、天願の肘に当たった瞬間鈍い金属音を立てて跳ね返ってしまった。

 

「天願…何をした!?」

「…ワシが服の下に来ている『インナー』はな、苗木君がプレゼントしてくれたもので、『サティポロジア・ビートル』という虫の腸の繊維で編まれておる。こいつは波紋エネルギーを100%伝導する特性を持っておってな、見た目こそ安物のインナーじゃが波紋使いが着れば鉄に匹敵する硬度を持ち、尚且つ柔軟に形を変えて衝撃を逃がすことができる。…狙いは良かったが、ワシの方が上手じゃったの」

「くッ…!」

「最も、チベットの総本山から『破門』された身であるワシにこんなものを使う資格などないのじゃが…今は四の五の言ってる場合ではないのでな」

 

 吹き抜けの立体交差で繰り広げられる天願と宗方の戦いは、終始天願がリードした状況のまま今も続いていた。宗方の実力は未来機関でも指折りのものであったが、やはり老いたとはいえ波紋使いである天願との差は大きく、互いに決定打はないものの劣勢を強いられていた。

 

「ふざけるなよ…!天願、何故『本気』で戦わないッ!?」

「……」

 …それが『手心』を加えられているが故だということは、宗方も理解していた。

 

「…貴様らはいつもそうだ…!現状を打破できる『力』がありながら、下らん『情』に絆されて非常に徹そうとしない…。貴様も、スタンド使いの連中も、苗木誠も…!」

 

『殺すのは簡単です。でも、殺して解決するぐらいなら、僕は最後まで彼らを救うことを模索したい。そうじゃないと、殺してからじゃ後悔しかできませんから…』

『…確かによぉ~、こいつらに慈悲なんか必要ねえかもな。けどよぉ~…アンタ、こいつらの何を知ってるっつーんだ?こいつらがなんで絶望しちまったのかとか、そんなことも知ろうともせずに勝手に『絶望だから殺す』なんて決めつけて殺して…それをいつまで続けるつもりなんだよ?殺すことよりも、『守ること』のほうが大事なんじゃあねーかな…』

『貴方が目指す先は、僕も理解しているつもりです。『絶望に苦しむ者がいない未来』…それは僕も望むところです。けれど、そこに至るまでの『過程』を認める訳にはいかない…!人は絶望から逃れることはできない。だからこそ、『根絶』するのではなく『分かりあう』ことが必要なんです!希望は過去を消し去るものじゃあない、前に進む為の力なんですッ!』

 絶望の根絶によって世界を救おうとした自分に頑として刃向った彼らの言葉が、宗方の心をざわつかせる。思い通りにいかないことへの苛立ちではなく…彼らの言葉によって信念が揺り動かされた自分への『自己嫌悪』からである。

 

「貴様らのその傲慢が、江ノ島盾子を増長させたのだ!奴の絶望を育てたのは、お前たちの驕りだ!苗木誠は奴の危険性に気づいていながら、それを放置しあまつさえ今でも『友』と呼んでいる…。この世界を滅ぼしたのは、奴の『甘さ』だ!俺は奴の様な過ちなど犯さん…絶望は全て殲滅する!この命に代えても…この世界から絶望は消し去らねばならんのだッ!!」

「…宗方君、君は…」

「おおおおおッ!!」

 絶叫のような雄叫びと共に斬りかかった宗方に、天願は一瞬気圧され受け身が遅れてしまう。

 

「むう…ッ!?」

「つおぁッ!!」

「ぬおッ!」

 

ガシャァン!

 寸でのところで受け流したものの、宗方は振り下ろした勢いのまま腕を横薙ぎに振るい、天願を通路の柵に叩きつけた。

 

「ぐ…!この、力は…」

「ズアァッ!」

「むうッ!?」

 体勢を立て直せない天願に宗方は容赦なく刀を振り落した。

 

「く…やむを得ん…ッ!」

 

 

ズバッ…!

 

ドチャ…

 

 

 

「……」

「……」

「…貴様にしては随分早まった選択をしたな。その代償は大きいぞ…」

 

ポタ…ポタ…

 天願は振り下ろされた刀に対し、右手の掌底を撃ち込んでその反動で斬撃から逃れた。…引き換えに、『右手首』を失う事となったが。

 

「むぅ…く、コォォォォォ…!」

 天願はすぐさま波紋の呼吸を整え止血するが、片手と右腕についていた『仕込み針』…飛び道具を失ってしまったことに口元を歪める。

 

「…妙だな。貴様ならば今の一撃、片手を犠牲にせずとも受け止めるか通路から飛び降りれば躱すことは出来た筈だ。それがそのザマとは……いや、『そういうこと』か」

「……」

「天願、貴様のNG行動は『落下すること』だな?」

「……」

 

ピッ

 無言で天願が自分のバングルを右腕で擦ると、そこには宗方の推理通り『落下する』の文字が現れる。

 

「やはりな…。どの程度までがNG行動の範囲かは分からんが、貴様が俺との闘いで一度も『ジャンプ』をしなかったところを見るに、どうやらほんの少しの落下ですらも危ういらしいな…」

「…宗方君、もうやめろ。それ以上戦ってはならん…!」

「…今更命乞いか?そこまで落ちぶれたか天願…ッ!」

「違う…ッ!今の君のその力、『肉体の限界』を越えておる!感情の昂りで『リミッター』が外れたか…自分の力に肉体がついて行っておらん!体が悲鳴を上げておるぞ!それ以上戦えば、今は良くとも興奮が治まれば『反動』が来るぞッ!悪いことは言わん、ここはもう止めるんじゃッ!」

「……」

 

 

 

 

 

「…『それがどうした?』」

「何…!」

「今の俺が限界を超えていることなど『承知の上』だ…!だがそれでも…例え貴様を倒したのちにこの体が砕け散ろうとも、それでも俺は戦う!この世界から『絶望』を消し去るためならば…俺は死んでも構わん!かつて俺はそう言った筈だぞ、天願ッ!」

「宗方君…ッ!」

 

 

 

 

 

ガコォンッ!!

「「ッ!?」」

 再び一触即発となりかけた時、天願の後ろの扉が音を立てて吹っ飛んだ。

 

 

ズザザ…ッ!

「チィ…やり辛い…!」

「戦刃君!?」

「戦刃むくろ…!」

「ッ!会長さん…それに、宗方…ッ!」

「…どうやら、そっちも最中だったみてーだな」

 吹き飛んだ扉の向こうから戦刃と逆蔵が現れる。

 

「逆蔵…。無事だったか」

「まあな。…すまねえ、お前に頼まれた霧切響子には逃げられちまったが、代わりにこいつは俺が仕留めてやるよ…!」

「…お前なんかにやられたりはしない…!」

「ハッ!防戦一方の奴が何言ってやがる?そういうことは一度でも俺に『反撃』してから言うんだな!」

「……」

「…逆蔵、戦刃むくろは反撃をしていないのか?」

「え?お、おう…」

「…成程。逆蔵!そいつのNG行動はおそらく『血を流すこと』だ!反撃による致命打はまずない!徹底して攻め続けろ!」

「ッ!」

「なッ!?ま、マジか宗方!」

「ああ。…思えばこいつは俺と戦った時も簡単に防げるような大ぶりな攻撃や致命傷にはならない打撃ばかりを仕掛けてきた。おそらく自分だけでなく『対峙した相手』に血を流させても駄目なのだろう。…それに、こいつは傭兵時代に一度たりとも『負傷したことが無い』と聞いている。ならばそう思わせ無い様に戦うことも難しくは無い筈だ」

「……」

「…だんまりか。なら、当たってるってことだよな。ハッ…ザマアねえな軍人さんよ…!」

 通路の両端からにじり寄る宗方と逆蔵に、間の天願と戦刃は背中合わせでそれぞれ眼前の相手と対峙する。

 

「…やれやれ。君もまた難儀なNG行動を架されたのう…」

「会長さん…ッ!?その手は…」

「…ふっ、まあこんなザマのワシが言っても詮無きことじゃがの。ともかく今は、この状況をなんとかせんとな」

「はい…」

 戦刃は正面の逆蔵と後ろの宗方、そして背後の負傷した天願をそれぞれ一瞥し、決断する。

 

「…会長さん、まだ動けますか?」

「む?…ご覧の通り、右手さえ使わなければの。…何か『策』があるのか?」

「一応…この場を離脱するだけなら。少し荒っぽくはなるけど…」

「ふむ…しかし、ワシのNG行動が『これ』なんじゃが、それでも可能か?」

 天願が再び示したバングルのNG行動に、戦刃は一瞬目を張るが、すぐに平静を取り戻す。

 

「…問題ない。『下に落ちてはいけない状況』は『経験済み』です」

「そうか…。なら、頼むぞ…!」

「…作戦会議は終わったかよ?なら…行くぞォッ!!」

「おおッ!!」

 二人の会話の隙を突き、逆蔵と宗方が襲い掛かる。それに対し戦刃は懐に手を入れ、『何か』を取り出すと足元に叩きつけた。

 

 

ガオッ!

―ッキィィィィィィィィンッッ!!

「何ッ!?」

「ぐあッ!」

 それが砕けた瞬間、凄まじい光と甲高い音が溢れだし、それが逆蔵と宗方の視界と聴覚を奪う。

 

「ぐっ…!『スタングレネード』かッ…!?こんなものまで隠し持っていたのか…ッ!」

「ぐ…畜生、耳が…だが、あんな近くに居たんじゃあいつ等だって…」

 不意を突かれまともに喰らってしまった二人であったが、程なくしてなんとか回復した、が…

 

「…何ッ!?」

 復活した視界の先には、爆心地に居た筈の戦刃と天願の姿は存在しなかった。

 

「逃げただと…!?馬鹿な、奴ら完全に無防備だったはずだぞ!…まさか、『下』に飛び降りたのか!」

「…いや、それはない。天願のNG行動は『落下すること』だ。仮に戦刃むくろが『苗木誠の血液』を持っていたとしても、目も耳も碌に利かん状態…しかもあの負傷の天願にそんな『賭け』をする余地があるとは思えん。…おそらく奴らはあのスタングレネードに対して既に『準備』ができていたのだ。だから俺達が動けないうちに逃げることができた」

「なッ!?あのタイミングでか…、一体どうやって…?」

「分からん……」

 宗方はどこかに逃げおおせた天願に向け、逆蔵に聞こえない大きさで呟いた。

 

 

「…何故だ、天願。貴方はどうして…苗木誠を選んだんだ。どうして俺を…『希望』と認めなかったのだ…?…雪染、俺は…『間違っている』のか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タッタッタッタ…!

「…ここまでくれば、撒けたと思う…」

「うむ…。どうやら『賭け』には勝ったようじゃな」

 その頃、天願と戦刃は宗方達からかなり離れた廊下まで逃げ切っていた。

 

「会長さん、手伝ってもらってありがとう…」

「なあに、この程度遊びみたいなもんじゃよ。…む、まだ片耳に残っておるな」

 天願が頭を傾け左手で側頭部を叩くと、右耳から『血の塊』が転がって出る。天願は戦刃がスタングレネードを炸裂させる直前、自分の血液を波紋で固め『血の耳栓』を作って互いの耳に詰め込んだのだ。聴覚さえ無事であれば、軍人として視界無しの状況下での訓練経験のある戦刃や波紋で宗方と逆蔵の居場所を感知できる天願にとって目を潰されても問題は無いため、行動不能になった二人を掻い潜ってここまで逃げてこれたのである。

 

「会長さん、はやく手当を…」

「おお、そうであったな。…しかしワシも衰えたのう。どうせならこの忌々しいバングルのある『左手』を斬らせれば良かったわい」

「…無理しちゃ駄目。貴方が死んだら、誠君が悲しむ。生きていれば、誠君からその程度の傷を治してくれる。だから、頑張って…」

「…そうじゃな。どんな大層な『希望』も、まずは生きてこそじゃからのう。…その筈なんじゃが、な…」

「……」

 天願の傷口に包帯を巻く戦刃に、天願はポツリポツリと言葉を漏らす。

 

「…ワシは、彼らに悪いことをしたのかもしれん。ワシは、ジョセフさんを通じて『黄金の精神』を…ジョースター家の男たちが持つ『希望』の在り方を知った。そしてあの希望ヶ峰学園で、ワシは同じものを苗木君と日向君に見出した。この『絶望』に満ち溢れた世界を変えるためには、ただ絶望を消し去るだけでは足りない。彼らのような、後に続く者達に影響を与える強い『心』を持った者達が必要なのだ。ワシはそう信じ、この未来機関を設立し、苗木君達の帰還を待ち続けた。…じゃがそれは、宗方君たちのような者達にそのための『犠牲』を強いることになっていたんじゃよ…」

「……」

「彼らにしては面白くは無かったじゃろうな。今絶望と戦っているのは自分たちなのに、ワシらの本命は学園にいる苗木君達の方なんじゃからな。…そうしているうちに、苗木君は戻って来た。仲間の半数という犠牲と引き換えに、『江ノ島盾子の首』という手土産をもってな……スマン、気を悪くしたかの?」

「…いいえ。仕方がないことですから…」

「そうか…。そして、それは宗方君達を増々刺激した。あの地獄のような『コロシアイ学園生活』を生き残り、元凶である江ノ島盾子を倒した苗木君達は、文字通り『英雄』と持て囃された。ワシらが拍車をかけたのもあったが…それにより未来機関は大きく割れることとなった。宗方君達のような絶望を憎み、その全てを廃絶しようとする者達と、苗木君達を英雄視し、彼等と共に歩もうとする者達にな。…宗方君達も、当初は苗木君達の力を認め、感情をおもてに出すようなことはしなかった。…だが、自分たちのやり方と大きく異なる苗木君のやり方に次第に不満が募り…雪染君の死をきっかけに、それが『爆発』してしまった。絶望の象徴である『モノクマ』によって雪染君が殺された以上、絶望を受け入れようとする苗木君の存在を、許すことができなかったんじゃろう…」

「そんな…誠君だって、絶望に大切な人を奪われているのに…」

「…こんなことは言いたくはないがな戦刃君。誰もが、彼らの様に強く在れるわけではないんじゃよ。ああ見えて、宗方君も苗木君の君たちを想う気持ちに負けないほどに雪染君を愛しておった。…その彼女を喪った心の傷が、今の状況によって彼により深い『絶望』を与えることになってしまった。…今の宗方君は、その苦しみから逃れようと必死になっておるんじゃよ。自分の体すらも省みないほどにな…」

「……」

「結局、ワシがしたことは…『希望』を繋いだつもりで、宗方君の抱える『絶望』をより強めてしまっただけなのかもしれんな…」

「会長さん…」

 

 

 

 

 

ドガシャァァーン…ッ!

「「ッ!」」

 物思いにふけっていると、そう遠くないところから大きな音が聞こえてきた。

 

「今の音…誰かが争っている?」

「この近くは…確か、『トレーニングルーム』があった筈じゃぞ」

「トレーニングルーム…そうだ、あそこには忌村さんが安藤たちを追いかけて行った筈…!」

「あの3人か…。ワシらが口を挟んだところでどうにもならなさそうじゃが、放っておく訳にもいかんのう。そろそろ『タイムリミット』も迫っておるしの…」

「…行きます!」

「うむ、行こう…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ガキィンッ!

 

ドゴッ!

「うあ…ッ!」

「…手こずらせたな、忌村…!」

「ほんっとー!…いい加減しつこいんだよ、静子ちゃん…!」

「ッゥ…!」

 トレーニングルームでは、十六夜によって忌村が壁際に追い詰められており、ガラス張りの向こうの観覧席から安藤がそれを見下ろしていた。

 

「クソッ…!こんなときに、薬が切れるなんて…!」

「『裏切り者』の末路など所詮そんなものだ。流流歌の敵になった時点で、お前に味方する『運命』など存在しない。…ここで終わりだ。愛とおいちいお菓子の為に…お前は、ここで死ね…!」

 ドーピングが切れかかって動きが鈍くなった忌村に、自ら作った剣を片手に十六夜が迫る。

 

「…ヨイちゃん、ちょい待った♡」

「ム…?」

 と、そこに安藤が待ったをかける。

 

「そんな簡単に殺しちゃつまんないよ。…流流歌の言いたいこと、分かるよね?」

「…了解した」

 安藤の言葉に頷くと、十六夜は先よりもゆっくりと歩み寄り、忌村の『影』の手前で止まるとわざとらしく大きく足を上げ…

 

「…ッ!」

 それが振り下ろされる直前、忌村は軋む体を押して体を移動させ、自分の『影』を十六夜から遠ざける。

 

「お前ら…ッ!」

「…無様だな」

「ホントにね~。…アンタのNG行動が『影を踏まれる』なんてねぇ~。薄暗い所が好きな『蝙蝠女』のアンタにはピッタリだよね」

「くッ…!」

 トレーニングルームで安藤と十六夜と遭遇した忌村は、交戦当初は身体能力の差で圧倒していたのだが、今迄照明の落ちた薄暗がりに居たためばれなかった『影を踏まれる』というNG行動を知られ、さらに『身体機能増強剤』の効果が切れたことで動きもだんだん鈍ってしまい、とうとうここまで追い詰められてしまったのである。

 

「…にしても、アンタさっきはどういう心変わりだった訳?急に『話をさせて』なんて…虫が良いにも程があんじゃあないの?」

「…ッ!お前には、言われたくない…ッ!何も『知らない』、お前なんかに…ッ!」

「はぁ?別にアンタの事なんか知りたくもないし…ま、いいや。だったらさ、流流歌の『お願い』を聞いてくれたら付き合ってあげてもいいよ」

 そう言って安藤はポーチから一つの『飴玉』を取り出す。

 

「…これ、『食べてよ』。流流歌の作った特製キャンディー、これ食べてくれたら、アンタの話ぐらい聞いてあげるよ?」

「ッ!」

 飴玉をちらつかせながら安藤は忌村に問いかける。端から見ればなんてことはない、実に簡単な条件。…しかし、飴玉と流流歌を見上げる忌村の表情は苦々しく、やがて振り絞るように返答を告げる。

 

「…でき、ない…ッ!それだけは…ッ」

「…ふ~ん。『また』なんだ。あの頃からずっと、ず~っと…やっぱりアンタは、流流歌のことを信じてくれないんだ。…ならもういいや。流流歌を裏切る様な奴は、もう要らないし。ヨイちゃん、もうやっちゃっていいよ」

「…分かった」

 吐き捨てるような安藤の命令に、十六夜は再び忌村に刃を向ける。

 

「…忌村。最後にひとつ聞かせろ。…どうしてそこまで流流歌のお菓子を拒む?初めて出会ったあの時から、お前は一度たりとも流流歌のお菓子を口にしようとしない。口に合わないというのならそれはそれでいい。ただの『可哀想な奴』なだけだからな。…だが、お前はそもそも『食べようとしない』。なぜそこまで流流歌を拒むのだ?」

「…アンタが知ったって、どうにもならないことよ。私は…『そんなこと』でしか得られない『信用』なんかが、嫌だった…それだけのことよ」

「……そうか。ならば…」

 十六夜が手にした剣を振り上げる…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ッ!」

 

ガキィンッ!

 瞬間、どこからともなく飛来した『鉄の棒』を、十六夜は寸でのところで弾き返した。

 

「!?」

「なッ…何!?」

 突然の事に皆がその鉄棒が飛んできた方向を見ると

 

「…ッハァ…ハァ…!間に、合った…!」

 その先、トレーニングルームの入り口の一つに、腕を振り切った状態で息を切らす舞園さやかが立っていた。

 




という訳で霧切と天願のNG行動は変更しました。天願は立場上あのNG行動である必要性がありませんし、霧切はもとのNG行動だとムリゲーにもほどがあるので…。だって苗木君不死身なのに生きてたらアウトっていうのはちょっと…ねえ?
それと、天願のNG行動変更にあたり他の話をちょこっとオーバーヘブンしました。ご了承を…


…PV見ていたら第3部の構想が浮かんできたんだけど…どういう訳か楓ちゃんの逆ハーレムが爆誕しました。…女も含めて。どうしてこうなった?

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