気を取り直して…ついにバイツァ・ダストが始まった!ホント、あれどうやって攻略すればいいんだろうね?たまたま爆弾にしたのが覚醒した隼人だったから良かっただけで、しのぶとか他の人だったら100%終わってたよね。…やっぱり荒木先生凄いわ。僕も励みにしなくては…
ところで、4部って4クールなのかな?だとするとあと15話ぐらい残ってるけど…。3クールで40話ぐらいで終わるならともかく、吉良戦で15話は流石に長すぎるような…まあ面白いから見ますけど。どうせなら5部の導入だけとかやってくれないかな~?
塔和シティの中心部にほど近い、とある廃ホテル。それがこまるたち『塔和シティ残留組』の仮の住まいであった。
「ええッ!?お兄ちゃんたちが…」
「未来機関の本部に閉じ込められた…本当なんですか白夜様ッ!?」
『…ああ。葉隠から通信が入った。苗木も中に居るらしいが…ここまで音沙汰がない以上、状況はかなりマズイと見るべきだろうな』
その一室にて、こまると腐川は十神から未来機関本部で起きていることの連絡を受けていた。
「それで…私たちはモナカを捕まえればいいんですね?」
『そうだ。おそらく塔和モナカが今回の黒幕…あるいはそれに噛んでいる可能性が高い。お前たちが身柄を取り押さえれば、俺達と苗木…『外と中』から現状を打破するのは容易だろう』
「お、お任せください白夜様ッ!」
『…頼むぞ』
短くそう言って、十神との通信は終了した。
「…あのガキ、まだ諦めてなかったのね。本当にしつっこいんだから…」
「そうだね。…でも、だからって放ってはおけないよ。もうあの子に、これ以上罪を重ねさせる訳にはいかないんだから…」
「…そうね。けど、アイツ…どうやって未来機関の情報を集めてたのかしら?今思えば、白夜様の言うとおりアイツだけ他のガキ共に比べてやたらこっちの事情に詳しかったし…」
「それは…分かんないけど。でも、今はそんなことは後だよ!早くモナカを捕まえて、お兄ちゃんたちを助けてあげないと…」
ドバァンッ!
「「ッ!?」」
突如部屋の扉が荒々しく開かれたかと思うと、外から大量のモノクマが部屋に雪崩れ込んで来た。
「も、モノクマッ!?」
「せ、先手を打たれた!?ふ、不意打ちなんて卑怯よぉッ!」
「言ってる場合じゃないよ!早く反撃しないと…」
慌てて迎撃の準備をするが、もうすぐそこまで来ているモノクマ相手に間に合う筈が無い。
『それーッ!』
「だ、駄目だ…間に合わないッ!」
「ひいいッ!?」
一斉に飛び掛かって来たモノクマに、二人は思わず目を瞑る。
…ひょい
しかし、予想していた『痛み』の代わりに感じたのは何かに『持ち上げられた』かのような『浮遊感』であった。
「…あれ?」
「な、何…?」
恐る恐る目を開けると、二人はモノクマ達に担ぎ上げられていた。
『行くぞー!』
『ワーッショイ!ワーッショイ!ワーッショイ!』
「え!?ちょ…ど、胴上げ!?」
「どど、どうなってんのよぉーッ!?」
全く理解の追いついていないこまるたちの事など知ったことかとばかりに、モノクマ達は二人をお神輿のように胴上げしながらホテルの外へと連れ出していく。
その頃、ちょうどパトロールを終えたホル・ホースと悠太がホテルに戻って来た。
「…ふぅ~、俺もトシだねぇ。ちょっとばかし歩いただけで疲れちまったよ」
「何言ってんだよおっちゃん!それより腹減ったよ、早くメシにしようぜ!」
「元気だねえお前さんは…」
『…ワーッショイ!ワーッショイ!』
「…ん?なんだ?」
「この声…まさか…!?」
「ちょ…降ろしてよぉ~!」
そこに、ホテルからこまると腐川を担いだモノクマ軍団がすれ違う。
「じょ、嬢ちゃん!?腐川!お前ら何してんだ!?」
「知らないわよッ!こいつらが急に押しかけて来たと思ったらいつの間にかこうなったのよ…!」
「で、でも…別に攻撃する気は無いみたい…なんだけどぉ~!」
「ね、姉ちゃーん!どこ行くんだぁーッ!?」
「私が聞きたいよぉ~ッ!」
余りの事態にポカンとするホル・ホースたちに見向きもせず、モノクマ軍団は二人を担いで走り去っていった。
ガガガガッ…!ドババババ…ッ!
「……」
「……」
「この…このッ!いい加減死ねっての!」
モノクマ軍団に連れ去られた二人は、街外れにあるビルの一つに連れ込まれた。モノクマ達はそのまま最上階にある部屋へとやって来ると、そこに二人を放り込んだ。そこに居たのは…
「…よ、よぉ…お姉ちゃんたち…」
「お久しぶり…でもありませんね」
物が散乱した『汚部屋』に無理やり拵えたスペースに置かれた卓に座った『元希望の戦士』の4人と、彼らとこまるたちを無視して部屋の大モニターでゲームに熱中する塔和モナカであった。
「えっと…どういう状況なの?」
「…それが、僕たちにもさっぱりなんだ。急にモノクマにここまで連れてこられたかと思ったら、『お姉ちゃんたちが来るまで待ってろ』…ってモナカちゃんに言われて…」
「せ、正確には『ゲーム終わるまで待ってろ』だけどね…」
「…アンタッ!一体なんのつもりなのよッ!?」
「あー?もうちょっと待ってよ~、あとちょっとでコイツ倒せ…」
ティウンティウンティウン…
「あ…あーチクショー!やっぱリー○シールドないとコイツ無理だよ~。…でもそれ持ってる奴倒すのもっと無理だし…」
「ね、ねえ…」
「…あー、もう来たんだ。じゃ、もういっかー…」
気怠そうにそう言いながらゲームの電源を切ると、モナカはこまる達に向き直る。
「ヤッホーお姉ちゃん達。ようこそモナカの『プライベートルーム』に…」
「アンタが連れてきたんでしょ…ここアンタの自室?きったないわねぇ…」
「冬子ちゃんに言われるなんて相当だね…」
「余計な事言うんじゃあないわよッ!」
「…なあ、モナカちゃん。なんで僕たちをここに呼んだんだ?」
「ん~?…特に理由はないんだけど、ほら…『実況』は人数多い方が楽しいじゃん?」
「実況?」
「お姉ちゃんたちはもう聞いてるんでしょ?…今未来機関でやってる『コロシアイ』の事」
「「ッ!?」」
その言葉に、こまると腐川の顔つきが強張る。
「や、やっぱりアンタが『黒幕』だったのね!早くアイツらを解放しなさい!」
「はぁー?…ああ、お姉ちゃんたちそう思ってたんだ。なら言っとくけど、今回のことに私は『無関係』だよー」
「え…!?」
「…なあ、コロシアイってなんのことなんだ?」
「えっと…(事情説明)…ってことが今起きてて…」
「…!?じゃあ、今父さんたちが危ない目にあってるってことかよ!?」
「たた、大変だぁ~ッ!」
「…ちょっと!モナカちゃんなら何か知ってるんじゃあないんですか!?」
「だから知らないって~…今回の事は私にとっても『予定外』だったんだから」
「…じゃあ、なんで未来機関で起きている事を知ってるの?」
「えっとねー…未来機関の第七支部の支部長に『月光ヶ原美彩』ってのがいるでしょ?」
「は?…あー、確かにそんな奴が居たわね。それが何だってのよ?」
「あれ、モナカだから」
「…は?」
「だから~…今未来機関の本部に入る月光ヶ原美彩は、モナカが創った『アンドロイド』なの。で、今迄モナカがそいつを操縦してたってワケ」
「…はぁッ!?」
衝撃の事実に、腐川は元よりこまるも驚きを隠せない。
「じ、じゃあ本物の月光ヶ原って人はどうしたのよ!?まさか…ッ!」
「さぁ?…あ、言っとくけどモナカは別に殺したりとかしてないよ」
「はぁ?」
「入れ替わったのは『3か月ぐらい前』だったかなー?最初はそのつもりだったんだけどねー、支部長室に忍び込んだらなんでか知らないけど『もぬけの殻』だったんだよね。多分逃げたんじゃない?どうやって逃げたのかは知らないけど…で、折角だからそのまま成り代わって今まで月光ヶ原美彩のフリをしてたってワケ。この間の時も、皆の目を盗んでこっそり操縦してたから大変だったんだよ~」
「な、なんでそんなことを…!?」
「そりゃ未来機関の情報を探る為に決まってんじゃん。ちょっと調べたんだけど、月光ヶ原って人基本的にパソコン越しでしか話さないし極力動こうとしない人なんでしょ?だから成り代わっても気づかれにくいかな~、って。…まあ、未来機関の偉い人と話すときはちょっと緊張したけどね」
「…で、アンタは何が目的なのよ?なんでアタシらをここに呼ぶような真似をしたのよ!?」
「もう、しつこいナァ~。…だから言ったでしょ?一緒に『実況』する為だって。お姉ちゃんたちだって向こうの様子が気になるんじゃないの?」
「それ…どういう意味?」
「はぁ~、めんどくさいナァ…苗木誠に『味方』してあげるって言ってんの」
『ッ!!?』
予想外の発言に全員が目を見開いて驚く。
「味方って…どういうつもりよ!?」
「お兄ちゃんを…助けてくれるの?」
「んー?…まあ適当にね」
「…どうして、急にそんなことを?モナカちゃんは、父さんの事を憎んでるんじゃあないのか?」
「いやいや…もうそんなの『どうでもいい』って」
「どうでもいいって…ねえ?」
「…もうぶっちゃけ疲れたんだよね。希望だ~、絶望だ~…とか言って張り切ったところで、結局最後は『希望が勝つ』んだからさ。…『誰の希望』かは知らないけどね。それに、まかり間違って狛枝お兄ちゃんみたいなのになっちゃったらそれこそ黒歴史確定だし…」
「ああ…まあね」
「けど、それならなんでお兄ちゃんを?お兄ちゃんなんてそれこそ『希望そのもの』って言ってもいいのに…」
「…相変わらずのブラコンっぷりだね。夜中のオカズはまだお兄さんなの?」
「ちょ…ッ!?なな、何言ってんの!?」
「ま、それはどうでもいいけどね。お姉ちゃんの性癖とか興味ないし…それより、なんでマコトお兄ちゃんの味方をしてあげるかだっけ?…ま、強いて言えば『頼まれた』からかな」
「頼まれた…?誰によ?」
「ジュンコお姉ちゃん」
「…は、ええッ!?」
思いがけないその名に、全員が驚愕する。
「ジュンコお姉ちゃんに頼まれたって…本当なのかよ!?」
「マジだよ。…元々ここってさ、この間の時に万が一の事があった時に備えての私の秘密基地だったんだよ。で、お姉ちゃんとマコトお兄ちゃんに私の計画全部水の泡にされちゃった後にここに逃げてきたんだけど、そしたらいつの間にかジュンコお姉ちゃんからの『書置き』がしてあったんだ」
「書置き…!?」
「うん、…これ」
モナカは手近なタブレットを引っ張って来ると、そこに映されている画面をモニターに映す。そこにはこんな文章が書かれていた。
『オッス、モナカちゃ~ん!アンタがこれを見ているってことは、今のアンタは多分苗木とアタシにズタボロに論破されてお先真っ暗って気分なんだろうね~。…なんで知ってるかって?そんなの今からそうするつもりだからに決まってんじゃーん!
…とまあ、前置きは置いておいて。どうせ今のアンタはなんにもやることなくて暇なんだろ?なら、どうせそのまま野垂れ死ぬってんなら、ついでに苗木の『死に様』見届けといてから死んできてよ。あの死にたがりのことだからさ、不死身になって増々無茶ばっかしてるだろうから、多分アンタより早く死ぬだろうし。
…もし君がまだ私の事をほんの少しでも想っているというのなら、苗木の…『超高校級の希望の最期』を見届けてから死んで貰えないかな?私はもう表舞台に関わることはないだろうけど、それだけは知らないと死んでも死にきれないからね。…では、お願いねー♡』
「…あのケバ女、なに縁起でもないお願いしてんのよッ!」
文面を読み切るや否や、腐川は今頃どこかで死んでいるであろう江ノ島にそう罵った。
「ま、そういう訳でー…ジュンコお姉ちゃんの頼みとかもう正直どうでもいいんだけど、どうせやることもないし折角だからしばらくマコトお兄ちゃんについて行ってみよっかなー?…って思っただけ」
「…本当に、そんなことの為に…?」
「あー…あといい加減真面目にニートしたいからさ、皆みたいにマコトお兄ちゃんの『子供』になって養ってもらおうかなー?ってのもあるね。…あ、でもそうなると私もマコトお兄ちゃんのこと『パパ』って呼ばなきゃダメか」
「も、モナカちゃんまで父さんの子供になるの!?」
「子供というよりもはや『ヒモ』だけどな…」
「ていうか真面目にニートってどういうことですか…?」
「アンタね…こいつらだって大概だけど、よりにもよって自分の親を殺したような奴を好き好んで『養子』にすると思ってんの!?」
「まーなんとかしてくれるんじゃない?私を『殺さない』って言った以上死なれると困るだろうし。それに、だからこうやって味方してあげてポイント稼いでおこうとしてるんじゃんか」
「…結局、自分の為なんだね…」
「そりゃそうだよ。皆が皆、マコトおに…パパみたいなお人よしじゃないんだから。あむっ…わらし(私)みたいなのがむしろ『普通』だっふーの…」
カタカタカタ…
スナック菓子を齧りながら、モナカは今度は傍にあったコントローラーとデスクトップを操作し始める。
「な、何してんのよ?」
「ん~?見りゃ分かるでしょ。月光ヶ原ロボとここを中継してんの」
「中継って…向こうの様子が見れるの!?」
「うん。…ついでに言えば、今私の月光ヶ原ロボと一緒にマコトパパもいるよ」
「父さんが近くに居るのか!?」
「腐川さん…!」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!まずは白夜様にこのことを報告しないと…」
「ああ、あの『通信機』なら一緒に持ってこさせたよ」
パンパン、とモナカが手を叩くと、向こうのホテルに置き去りにしていた通信機を持ったモノクマが部屋に入ってきて、それを腐川へと差し出す。
「い、何時の間に…礼は言わないわよ」
「別に要らないよ。お姉さんに言われても嬉しくないし~…」
「ふん…」
そっけなく会話を終えると腐川は大急ぎで十神へと通信を始める。
ガガ…ブッ…!
『…なんだ腐川。こっちは今忙しい、それとももう終わったのか…』
「びゃ、白夜様!それが…おかしなことになってまして…」
『おかしなことだと?…ッ!おい、そこに居るのは塔和モナカじゃあないか!お前たち何をしている!?』
「そ、それが…」
ブォン…!
「…あ、繋がったよー!」
「ッ!お兄ちゃん!」
やがて操作を終えると同時に、正面のモニターに医務室のベッドに横たわる苗木の姿が映し出された。
ガガ…ガ…ブッ!
「…!」
一方、未来機関本部の苗木にもモニターに映し出されたこまるたちの姿が見えていた。
『お兄ちゃん!聞こえてる?見えてる?…私だよ、こまるだよ!』
「……」
しかし、妹の呼びかけにも苗木は返事すらしない。
『…お兄ちゃん?』
『な、なんで父さん返事をしないんだ?それに全然動かないぞ?』
『…ちょっと!これちゃんと中継されてるんでしょうね!?』
『されてるって~。…パパは今『NG行動』のせいで動けないだけなんだって』
『NG行動だと?』
『えーと…簡単に言うとね、今本部に閉じ込められてる連中には全員に『毒入りのバングル』が填められていて、各自『決まった行動』をとるとバングルの毒で死んじゃうの。…で、パパのNG行動は『動いたり喋ったりする』ってやつで、もしそれを破ったら『パパ以外の全員』が死んじゃうワケ』
『な…なんだってぇ~ッ!?』
『ちょ…お父さんだけ厳し過ぎませんか!?』
『そんだけ黒幕もパパの事を警戒してるってことでしょ?…ね、パパ』
「……」
モニターの向こうの皆を安心させようとするが、今の苗木には微笑むことすら許されない。
『チッ…、やはりその手の罠が仕掛けられていたか…!面倒な…』
『な、なあ…モナカちゃん。父さんの服、なんかボロボロみたいに見えるんだけど、大丈夫なのか?』
『んー、まあ生きてはいるよ。…ついさっきナイフで『滅多刺し』にされたり、未来機関の副会長さんに首を『9割』ぐらい斬られたりしてたけど』
『ええッ!?』
『と、父さんッ!本当に大丈夫なの!?』
『宗方め…!俺が居ない時に好き勝手やりやがって…ッ!』
『別にダメガネお兄さんが居ても変わらないと思うけど~?』
『ダメガネ…ッ!?』
『あ、アンタねえ…!』
『はいはい、ごめんっぷ~♪…んじゃ、そろそろ真面目な話しよっか』
『あ…そ、そうだね…』
散々からかって満足したのかモナカはようやく話を戻す。
『とりあえずさー、まずはパパの奥さん…まあ『ママ』でいいか。ママたちと合流したほうがいいよね。早いとこパパをなんとかしないと『モノクマはともかく』襲撃者を止められないしね』
「……」
『モノクマだと…!?モノクマまでそこに居るのか?』
『うん。…まあ『実際にはいない』んだけどね』
『…は?どういう意味よ?』
『私さー、これでももう結構未来機関の本部のシステムにハッキング仕掛けてるんだよね。…でも、監視カメラの映像をいくら探しても、肝心のモノクマは施設のどこにもいなかったんだよね』
『…『別の場所』にいる、とかじゃないの?』
『無理無理。なんだかんだ言ってここの場所は未来機関の『秘匿情報』だからね。外からのハッキングでシステムを乗っ取ることなんてできないよ。…黒幕は間違いなく『内部の人間』だよ』
『じゃあ、モノクマが居ないのはなんでなんだ?』
『…多分だけど、あのモノクマは『AI』なんだと思うんだ』
『AIって…シロクマとかクロクマと同じ!?』
『うん。あいつ等みたいに『身体』は持ってないけど、性能的には似たようなものだろうね。そいつを『誰か』が本部のメインシステムに送り込んだから、こんなことになっちゃったんだろうね』
モナカの推測に、腐川が通信機の向こうの十神を顔を合わせる。
『白夜様…もしかして…』
『ああ…。苗木が訊きだした、カムクライズルがプッチに渡したという『シロクマとクロクマの電子回路』…。もしや、この時の為に…』
『でも、それならどうやってモノクマを止めるの?相手が触れないんじゃやっつけられないよ…』
『…お姉ちゃんってホントに勘が良い時と役立たずの時の差が激しいよね。近くに頼りになる人がいるとすぐ甘えて、如何にもな現代っ子って奴だよね』
『そ、そんな言い方しなくても…』
『だ、だったら!アンタ何かいい策でもあるんでしょうね!?』
『あるよ』
『ほら見なさい、好き勝手言っといて……って、あるの!?』
予想外の返答に腐川は思わず面喰ってしまった。
『おい、適当な事を言ってるんじゃあないだろうな…?』
『簡単なことだってー。…相手が『機械』に依存してるんなら、『電源』切っちゃえばいいんだよ』
『で、電源…?』
『だから、本部の電源を落としてメインシステムを『システムダウン』させちゃえばいいじゃんか。そしたら、所詮データのモノクマにはどうすることもできないでしょ?うまくすれば、バングルの電源も落ちて外せるかもしれないし』
『そ、それよッ!』
『…だが、モノクマもその程度の対策程度している筈だ。そもそも、この会話も監視されているのではないのか?』
『うるさいなあ…。そんなのダメガネのお兄さんに言われなくたって分かってるよ。とっくにここの監視カメラはハッキング済みですぅ~!これで満足ですかぁ~?』
『こ、このガキ…ッ!』
『…あの、ホントにコレモナカちゃんなんですか?』
『なんか…全然違くないか?』
自分たちの知るモナカとは余りにもかけ離れた目の前の存在に、希望の戦士たちもどう反応していいのか分からない状態にあった。
『…ええいッ!だったらさっさと霧切たちと合流しろ!今の俺達には一分一秒が惜しいのが分からんのかッ!』
『ハイハーイ…分かってますよー。…あ、でもパパどうしよっかなー…?』
『どうしようって…一緒に連れて行けばいいじゃあないの』
『それがさー、ちょこっとだけ面倒なんだよねー。ママたちと合流するころには『次のタイムリミット』が来ちゃいそうだし…』
『タイムリミット…?』
『あ、言ってなかったけ?このバングルにはさ、毒以外にも睡眠薬が内蔵されていて、一定時間ごとに全員が眠らされちゃうんだよね。…で、眠らされてる間に黒幕の手先の『襲撃者』ってのに誰か一人が殺されちゃうんだよね』
『なんだとッ!?』
『ちょ、ちょっと待ちなさいよ!アンタ…っていうか、そこにいる月光ヶ原はロボットなんでしょ!だったら薬なんて効かないじゃあないの!襲撃者だかなんだか知らないけど、追い返しちゃえばいいじゃあないのッ!』
『そういう訳にもいかないんだよねー。確かにまともに殺しに来てるんならそれでいいけどさー、相手が『スタンド使い』じゃあちょっと分が悪いかもねー…』
『…え?い、今なんて…』
『だからー…襲撃者は『スタンド使い』なんだって』
『な…ッ!?』
「…!」
その頃、霧切たちは消えたゴズの遺体のことに戸惑いつつも、なんとか手がかりが無いかを調べていた。
「……」
「…どうだ、響子ちゃん?」
「…妙ね」
「妙って…なにが?」
「血痕や凶器の存在から、ゴズさんの遺体がここにあったのは間違いないわ。…けれど、現実に遺体はここに存在しない。となると、考えられる理由は二つ。『遺体を誰かが持ち去った』か、…あるいは『遺体が自分で動いた』か」
「自分で動いた…!?そんな馬鹿な!」
「私も荒唐無稽な仮説とは思うわ。…けれど、持ち去られたにしては現場の状況が『綺麗すぎる』のよ。ゴズさん程の体格の死体を移動させるのは、仮に逆蔵さん並の力があってもそう簡単な事じゃあないわ。引き摺ったり、あるいは道を確保するために物をどかしたりする必要がある筈よ。それに、ゴズさんを抱えてそう遠くまで移動できるとも思えない…」
「…あの、ゴズさんが『まだ生きていた』とは考えられませんか?」
「で、でも…!降ろした時に確認したけど、息もしてなかったし脈も…」
「…分からないわ。仮にスタンド能力を使ったとしても、黒幕に能力を制限されている以上、ゴズさんの遺体に触れずに動かすことも難しい筈よ」
「…参ったな、まさしく『迷宮入り』って奴かい?」
「……」
ゴズの遺体の行方が分からないことに、皆の顔にも不安の色が浮かぶ。それを見かねてか、霧切は自分の手袋の内側から『一本の赤い髪の毛』を抜出し…
ガシッ
…それを口に含もうとして、その手を舞園に掴まれる。
「さ…さやかちゃん?」
「…なにをしようとしてるんですか響子ちゃん?」
「……」
「ど、どうしたの?」
霧切の手を握ったまま鋭い目つきで睨む舞園の雰囲気に、事態が分かっていない朝日奈、黄桜、御手洗は戸惑うばかりであった。
「…それ、『誠君の髪の毛』ですよね?それも万代さんに使ったのと同じ、誠君の血が入っているやつですよね?」
「え!?」
「…隠していたことは、謝るわ…。けど…」
「なんでそれを持っているのかとかはこの際どうでもいいんです。…響子ちゃん、私が気に入らないのは、今それを使って『何をしようとしていたのか』ってことなんですよ」
「……」
「…言う気が無いなら当ててあげましょうか?…『ムーディ・ブルース』でゴズさんの遺体がどうなったのかを確かめようとしたんでしょう?誠君の血で毒が回らないようにしてね…」
「な…ッ!?そうなのか響子ちゃん!?」
「……」
霧切は答えない。だが、それが肯定を示していることは明らかであった。
「…悪いですけどそれは『却下』です。それは万が一の時までとっておいてください」
「…!けれど、今使わなかったら事件の謎が…」
「響子ちゃんッ!」
「ッ!?」
反論しようとした霧切を舞園が語気を強めて捻じ伏せる。
「響子ちゃんが解かないといけない謎は、ゴズさんの遺体を探すことなんですか?それがたった一度の『保険』を使ってでも解かないといけないことなんですか!?」
「それは…」
「…違うでしょう?響子ちゃんがやらないといけないのは、この『コロシアイを止める』ことの筈です。誠君が動けない以上、それができるのは『超高校級の探偵』の響子ちゃんだけなんですよ!私はそれを信じていたから、誠君の傍を離れて響子ちゃんの手助けをしようと思ったんです!」
「さやかさん…」
「…そうだよ響子ちゃん!確かにゴズさんの遺体を探すことは大切だよ。…でも、この先黒幕や襲撃者の手がかりが見つかった時に、本当に『ムーディ・ブルース』の力が必要になった時に、響子ちゃんがそれができなかったら駄目だよ!」
「葵さん…」
「誠君を助けるためにも、響子ちゃんは生きないと駄目です。どんなことになっても、響子ちゃんだけは生き残らないと駄目なんです。だから…本当にそれが必要になる時まで、待ってください。…誠君の為にも」
「……そう、ね。ごめんなさい、少し焦っていたみたいね。私としたことが、一時の感情で誠君がくれた機会を早まるところだったわ…探偵失格ね。これじゃ…」
「…分かればいいんです!…気持ちは分かりますけど、響子ちゃんはいつもみたいに誰よりも『冷静』でいなくちゃ駄目ですよ」
「そうそう!響子ちゃんは、私たちの『切り札』なんだからね!」
「…響子ちゃん。俺にはスタンド能力だとか苗木君の血がどんだけ安全なのかとかまでは分からねえ。けど…頼むから、無茶な真似はできるだけ控えてくれ。万が一の事が有ったら…俺ァ、向こうに逝った時に仁さんに合わせる顔がねえや…」
「…ええ、そうね。私たちは…まだ、死ねないのだから…!」
思うようにいかない現状に焦りを憶えていた霧切を、周りの皆が説き伏せる。そんな光景を御手洗は遠巻きにどこか『異常なものを見る目』で見ていた。
「…なんで、どうして…そんなに強くいられるんだ…?こんな状況で、君たちは何を信じているって言うんだ…?」
自分ので左手のバングルへと視線を落としながら、ポケットの中の『スマートフォン』を握りしめる御手洗のそんな呟きは、誰の耳にも入ることなく消えていった…
一方その頃、外に居る葉隠は…
「ハァ…応援を呼んだのはいいけっど、俺は今から何してりゃいいんだべ…?」
『ヤル事ネーナラセメテ瓦礫ドケルグライシタラドーダヨ?』
「無茶言うなよ!…つーか、こういう時こそ風水占えべよ!」
『ウルセー!最近忘レテルミテーダガ俺ハ『中立』ダ!オレノ気が向イタ時二教エテヤルヨ!』
「こいつは…しょうがないべな」
十神達が到着するまでどうすることもできず、仕方なく乗って来たヘリの傍のコンテナ…苗木が交換材料に持ってきた資材類の入ったそれにもたれかかって待ちぼうけを続けていた。
『ツーカソンナニキニナルンナラヨォ~、お前コソ『占エバ』イイジャアネエカ。お前一応占い師ダロ?』
「おお!その手があったべ!自分で占う分にはタダだしな!どれどれ…むにゃむにゃホンダラカンダラ…」
相も変わらず自己流…悪く言えば適当に葉隠は念じる。やがていつもどおり、葉隠の脳裏に浮かんできたビジョンでは…
「………」
…自分が良く知る女性の一人が、あの本部の中に閉じ込められている仲間の一人が…『首から血を流して』ガラスに打ち付けられていた。
「…ッ!!?」
戦慄を憶えた葉隠は思わずハッとして目を開ける。
「う、嘘だろ…!?そんな、まさか…ッ!と…十神っちぃーッ!早く…早く来てくれーッ!!じゃねえと…『アイツ』が死んじまうべ!」
自分の見てしまった光景に思わず本土の十神へと叫んだ葉隠は気づかない。
ガコ…ッ!
その叫びと共に、コンテナの蓋が僅かに…『内側から開いた』のを。
今回はモナカは完全にこちら側です。とはいえロボットなので「ジェイル・ロック・ハウス」の出番はありませんが…
ちなみに今作では各キャラのNG行動が原作と異なるキャラがいます。明らかになるたびに設定で公表しますのでどうぞ。