ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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未来編8話視聴。
とっつあーんッ!!…ぶっちゃけ中の人の都合上そろそろかなと思ってはいたけど、やっぱり黄桜さんが逝っちまった…。しかも友人の娘を庇ってというシチュエーション…。なんという悲劇…!この作品ではもう少し救ってあげなきゃ(使命感)

そして安藤のジコチューっぷりと逆蔵の扱いやすさに苦笑。あの回想からしてたぶんカムクラか江ノ島、あるいは戦刃にコテンパンにやられたんでしょうけど、それがトラウマになりかけてて余計に駄目になってるような…。あの二人は、もうお終いですね…

そして宗方さん。あんたどこへ行くつもりですか?どこの誰に復讐するのか知りませんけど、ヒートブレード片手に辻切りとかよっぽど絶望臭いんですけど。…しかし、もしこれで「正気」だった場合、それはつまり天願さんの言葉を憶えているということで…まさかねえ…?


そろそろ次回が怖くなってくる頃ですね。崩壊した本部も含めて、誰が生き残っているのやら…まあこういう時に生き残るのが苗木の「幸運」なので主人公は大丈夫でしょうけど…もしかして、モナカが言ってたのってこれのことなんでしょうか?苗木が助けを呼んだからこうなった…とか?


交錯編:Who that hope?

…杜王町にある、未来機関『杜王支部』。アメリカより避難してきたSPW財団の逗留先でもあるこの支部は、未来機関の本部が建設中の間『仮本部』として機能していたこともあり、現在もこの街の住人やSPW財団の職員だったスタンド使い達の拠点として機能していた。

 そんな杜王支部の医務室には、苗木との会談の間本土の守りを任されている杜王支部支部長の『広瀬康一』を始め多くのスタンド使いが集まっていた。目的は一つ、『空条承太郎の復活』を見届ける為である。

 

 

「…う…。ここ、は…?」

「父さんッ!」

「徐倫…?そうか、私は…」

「やったぜ!承太郎さんが目を覚ましたぜーッ!!」

 苗木が塔和シティでプッチから取り返した『記憶のDISC』、そして本部へ向かう前に返した『スタープラチナのDISC』のふたつを戻したことにより、昏睡状態だった承太郎は遂に目を覚ましたのである。

 

「承太郎さん、体は大丈夫ですか?かなり長い間無理やり肉体の劣化を抑え込んでましたから…」

「…ああ、まだ少しぎこちないがちゃんと動く。スタンドは…生憎まだ本調子ではないがな」

「まったく、ヒヤヒヤさせおって…」

「…皆には世話になったようだな。ありがとう。そして…心配をかけたな、徐倫」

「ホントだよ…!苗木さんがいなかったらどうなってたことやら…」

「苗木…!?苗木君が戻って来たのか!?」

「ああ…、そういや承太郎さんはその辺の事まだ知らなかったっスね。今説明するっス」

「頼む。…ところで、見覚えのない顔が何人かいるようだが誰だ?」

「どうも承太郎さん、俺はナルシソ・アナスイ。貴方に会いたかった…この日を待ちわびました」

「…なんだコイツは?」

「オメーはもうちっと空気を読めバカ!…アタシはエルメェス、『ジョジョ』…苗木の部下で徐倫とは友達だ。…で」

「……」

「…あっちでボケッとしてんのがウェザー・リポート。アタシやそこのアナスイと一緒で苗木の部下やってる」

「…大丈夫なのか、あいつは…?」

「まあ、ちょっとばかし『衝撃の事実』ってヤツを知っちゃってさ、今心の整理がついてないんだよ。悪いけど、アイツの挨拶は待ってやってくんない?」

「…まあ、構わないが」

「んじゃ、どこから説明したモンっすかねえ…」

 

 

 

カキーン…

『打ったー!ホープス、逆転です…』

「…野球中継か。もうここまで復興していたのだな」

「ああ…苗木達が頑張ってくれてるおかげっすよ。と言っても、それ以外に『映ってるチャンネルなんて無い』んスけどね…」

 

 

 

 

 

 

 

 雪染が無残な死を遂げた後、モノクマよりこのコロシアイに関する詳しいルールが説明された。

 

・舞台はこの未来機関本部

・皆の腕輪には睡眠薬が仕込まれており、一定時間ごとに投与され強制的に眠らされる

・しかし、皆の中にはその睡眠薬が無い者…つまり『裏切り者』が存在し、皆が眠っているうちに起き出して誰か『一人』を殺す

・『裏切り者』を突き止め、その後眠らされた後に誰も死んだ人間がいなければゲームクリア

・ただし、皆にはそれぞれ異なる『NG行動』が設定されており、それを破ると腕輪から致死量の『猛毒』が投与され即死する

・腕輪を無理やり外そうとしても毒が投与される

 

特別ルール

・スタンド使いは『本部内』でスタンド能力を使ってはいけない。使った瞬間毒が投与される

・苗木誠は一切動いてはならない。また、口も利いてはならず、視線で犯人を知らせたり当然ながらスタンドを使ってもいけない。もしこれを破れば苗木以外の全員に毒が投与される

 

『…以上が、今回のコロシアイのルールになりまーす!』

「ど、毒…!?しかも睡眠薬まで…」

「また…『裏切り者』を探せって言うの…!?」

「ちょっと待ってよ!スタンドって言うのはスタンド使いにしか見えないんでしょ?だったらアンタだってこいつらがスタンド使ってんのかどうか分かんないじゃん!」

『ああ、ご心配なく。僕には『スタンド知覚プログラム』が搭載されているからね。君たちがどんなに小賢しいマネをしようが丸わかりなのさ!いやー、塔和シティでのデモンストレーションが終わってようやく実用化にこぎつけられたよ!』

「…報告にあった、『スタンドのデータ化』…!これが目的だったという訳…」

『うぷぷ♡ちなみに今回のコロシアイは、例によって『全世界生中継』とさせてもらっています!希望の象徴である未来機関として、恥ずかしくない行動をお願いしますね!…特に苗木君♡』

「…ッ!」

 

『そんなこと許しまちぇん!』

「え?」

 聴き慣れない声に皆が反応すると、電動椅子に座った月光ヶ原が操作するパソコンのモニターに映る『珍妙なウサギのキャラクター』が喋っていた。

 

カタカタカタカタ…

『お前の好き勝手にはさせまちぇん!今すぐ皆を解放しなちゃい!』

「あ、あれは…?」

「あれが月光ヶ原さんの会話手段よ。彼女、極度の人見知りらしくてパソコン越しじゃないと話もできないらしいわ。あのウサギは『例のプログラム』の『マスコット』らしいわ」

『あん?お前見慣れない奴だな。なんか僕と見た目絶妙に似てなくて気に入らないな』

『お前なんかに似てなんかないでちゅ!今すぐ皆を解放しないと酷い目に…』

『うるさーい!お前なんかこうしてやるーッ!』

 モノクマが画面から消えたかと思うと、なんといきなり月光ヶ原のパソコンのモニターに映り込んだ。

 

『ふぇッ!?』

『このこの!似てないってんなら、こうしてやるー!』

『なにコレ!?『ハッキング』…!?どこから…!?』

『うるさーい!お兄ちゃんに逆らうな!』

『誰がお兄ちゃんでちゅか!』

「…な、なにコレ?」

「さあ…?」

 モニター内で行われる一見マヌケな戦いに終止符が打たれ…

 

『じゃっじゃーん!大完成!』

『な、なんでちゅかコレ!?』

 月光ヶ原が操るウサギはモノクマと似たような『白とピンクのツートンカラーにオムツ姿』というあられもない姿にされてしまった。

 

『ああ、こんな恰好…もうお嫁にいけない…』

『ふう、すっきりした!』

 満足そうにそう言うとモノクマは再び正面のモニターへと戻っていく。

 

『ではでは皆さん、未来機関のオトナに相応しい、優雅でドロドロしたコロシアイを楽しんでね!』

 その言葉を最後にモノクマは姿を消し、モニターにはモノクマの左目のマークのみが映し続けられたのであった。

 

 

 

 

 

 モノクマが姿を消してから、皆はとりあえず現状の確認をすることにした。

 

「……」

カタカタカタカタ…

『ネットも繋がらないし、電波も死んでまちゅ~!これは、復旧には時間がかかりそうでちゅ~!』

「…ねえ、未来機関のセキュリティって、ちょっとザルなんじゃないの?」

『『外から』のハッキングには厳重でちゅ!…まさか『内部』からハッキングされるだなんて…』

「内部からって…!?じゃあ、やっぱりこの中に『裏切り者』が…」

 

ガチャ

「…エレベーターは封鎖されてたよ。窓も全部シャッターが降りてる…一か所だけ窓が壊れてたところが有ったけどね」

「それ…多分誠君が蹴破って入ったところじゃないかな?」

「一体…何故このようなことに…」

「そんなの決まってんじゃん!全部あいつが悪いに決まってるよ!」

 安藤が叫びながら指差したのは、特別ルールを科せられ微動だに出来ずにいる苗木。

 

「……」

「アイツがいるから、アタシ達までこんなことに巻き込まれたんじゃんか!あんな名指しで色々言われといて、関係ないとか言わせないからね!」

「ま、待って…ください。何も誠君がいるからこうなったとは限らないじゃないですか…」

「そうだぞ安藤君。奴がこの殺し合いを仕組んだ理由が我々の行動によるものだとするなら、彼がいなくとも今回のことは避けられなかったであろう。むしろ、そう言う意味では巻き込まれたのは彼の方とも言えるのではないか?」

「…そうとも限らねえぜ、会長さんよ」

「逆蔵君…?」

 逆蔵は苗木ににじり寄ると、苗木の前髪を引っ掴んで無理やり顔を上げさせる。

 

「ッ…!」

「ちょ、何を…!?」

「こいつが全部『仕組んだ』ってんなら、今回の事も全部辻褄が合うぜ」

「仕組んだって…誠が『裏切り者』だって言うの!?」

「そうとしか考えられねーだろうが…。こいつはあの江ノ島盾子を未だに『友達』と言い張ってるような奴なんだぞ。そんな奴が、絶望の残党と繋がっていないって確証がどこにあるってんだ!?」

「待ちたまえ!もし仮にそうだとしても、自分自身にこれほど過酷なルールを強いる必要性はないだろう!自分の咄嗟の行動一つで、彼の愛する者すらも殺してしまいかねない状況なのだぞ!?」

「…もしそれでも『構わない』としたら、どうだ?」

「…なんですって?」

「宗方が言ったとおり、コイツが自分の仲間の事なんか『どうでもいい』と考えているのなら、この状況はコイツにとってむしろ『好都合』の筈だ。文字どおり自分の『指先一つ』で、邪魔者を一掃できるんだからな」

「…ッ!」

「おいおい、そいつはちょっと横暴が過ぎるんじゃあねえか?仮に苗木さんがそういう奴だとして、あの希望ヶ峰学園で2年…正確には『1年半ちょい』か。その間この娘たちを騙し続ける必要はねえ筈だぜ?そもそも複数人囲うなんて危ない橋を渡る必要もねえしな」

「…その辺は同感かな。女は結構鋭いんだよ、ハーレムなんか作って全部ウソでしたー…なんて、すぐに見破れるさ」

「『さくらんぼもふたつずつ』だよ!苗木君がただ傷つけるためにそんなことをする筈が無いよ!」

 学生時代の苗木を知る黄桜や忌村、支部長の中では苗木と最も交流の深い万代は苗木を擁護するが、逆蔵や安藤は聞く耳を持たない。

 

「…フン。テメエら、随分こいつを庇い盾するが、こんな木偶の棒が今になっても怖いのかよ?」

「そ、その辺にしときましょうよ…。苗木君はアイツに対抗できる数少ない戦力なんですよ?それをわざわざ…」

「ウルセェッ!テメエは黙ってろ!」

 

ドゴッ!

 仲裁に入った御手洗を逆蔵は無下にもなく蹴飛ばしてしまう。

 

「あぐ…ッ!?」

「ッ!」

「だ、大丈夫…ですか…?」

『ぼ、暴力反対でちゅ~!』

「うるせぇ!邪魔するならテメエらも…」

 

 

「…う…ぐ…ッ!?」

「…万代さん?」

 突如としてもがき苦しみ始めた万代を見ると、その左目はまるでモノクマのように赤く充血し、口から血を流して苦痛の表情を浮かべていた。

 

「ま、まさか…ッ!?」

「~ッ…!」

 悲鳴すら上げることができず、万代はその場に倒れ伏しやがて動かなくなった。

 

「…ッ!!」

「どいてッ!」

 即座に忌村が万代の傍に座り込み、なにかの薬品を飲ませようとするが、反応は無い。苗木も思わずスタンドを呼び出そうとするが、自分の置かれている状況にそれを思い留まる他なかった。

 

「…死んでる。クソッ…!役立たずが…」

「…いいえ、まだよ」

「何…?」

「誠君、借りるわよ…そこをどいてちょうだい」

 霧切は苗木の『赤く染まった髪の毛』を一本抜き取ると、忌村を押しのけそこに座り…迷うことなく万代の口の奥にその髪の毛を『突っ込んだ』。

 

「お、お前何を…ッ!?」

「黙って見てて…」

 困惑する逆蔵を一蹴すると…

 

 

「…ぐ、ぐはぁッ!!」

「はぁッ!?」

 なんと『死んだ筈』の万代が苦悶の声と共に口から『黒い液体』を吐き出した。

 

「ゲホ…ゲホ…!?あ、あれ…僕は…?」

「い、『生き返った』…!?」

「…これはどういうことだ?」

「…今、誠君の髪の一部が赤いのは、誠君が自分の『血液』を髪にも循環させているからよ。誠君の血液には、常に高純度の『生命エネルギー』…そして微量の『吸血鬼エキス』が含まれているわ。それを使って、万代さんの体内の毒を『排出』したのよ」

「生命エネルギー?…いや、それより『吸血鬼エキス』だと!?」

「ってことは…コイツ『吸血鬼』になったってこと!?」

「え!?そ、そうなの!?」

「落ち着いて万代さん。…『吸血鬼エキス』は確かに人間を『屍生人』や『吸血鬼』に変えてしまうけど、加減さえすれば『強心効果』や『血中の毒物の除去』といった『波紋』と同等の効果があるわ。加えて『生命エネルギー』で毒によって死滅した細胞も元通りに復元されているから、万代さんは至って正常よ」

「そ、そうなんだ…よかった~…」

「…けど、これってスタンド能力に含まれるんじゃないの?」

「『生命エネルギー』と『吸血鬼エキス』自体は誠君の『身体的能力の範疇』よ。違反とは言わせないわ。それに、そうだとしても気づかないモノクマが悪いのよ。…ただし、『二度目』はないわよ。これは本当に『荒療治』だから、次に同じことをした場合体が耐え切れなくなって死ぬか、吸血鬼エキスに細胞が負けて『屍生人』になりかねないわ」

「う、うん…」

「…ところで万代君、先ほどの様子からして君は…」

「うん…。『NG行動』…僕の場合は『他人の暴力を目撃する』みたいで…」

 万代が差し出した腕輪には、確かに『他人の暴力を目撃する』と示されていた。

 

「逆蔵君!君の軽はずみな行動で彼が死ぬところだったのだぞッ!」

「…チッ」

「君は…ッ!」

「まあまあ落ち着けよゴズ君。…しかし、これで『NG行動』でうっかり死ぬことはなさそうだな。苗木さんは動けなくても本当に頼りになるぜ」

「でも、そうなると下手に苗木君から離れることができませんよ。皆のNG行動が分からない以上、万が一の時に苗木君が近くに居なかったら…」

『なら、皆のNG行動を公表してお互いに気をつけあえばいいでちゅ!』

「ふざけんな…!んなもん信用できるかよッ!」

『はうッ!?そ、そんな…』

「…だったらさー」

 

チャキ…

 安藤は十六夜からナイフを一本貰うと、それを苗木の首筋に突きつける。

 

「要るのはこいつの『血だけ』でしょ?いる分だけとってさっさと始末しちゃえばいいじゃん」

「ちょッ…!?アンタッ!」

「安藤君!」

「別にいいじゃん。そもそも、あのクマがこんなことをしたのはこいつが居るからなら、こいつがさっさと死ねばアイツも飽きてその内やめるんじゃないの?」

「…その可能性は高い。奴も興味が無くなれば、これを続ける必要も無くなる…」

「アンタ達さっきのモノクマの言ったこと聞いてたの!?アイツは私達に『コロシアイ』をさせることが目的なんだよ!誠が死んでも、これが終わるとは限らないじゃん!」

「そうです。誠君を殺すことに意味なんかありません…ッ」

「…『意味』ならあるぜ。少なくとも、『裏切り者候補』が一人減るのは間違いねえ」

「アンタまだそんなことを…ッ!」

「…いや、逆蔵の言うとおりだ」

「宗方副会長…!?」

 宗方が懐から『刀の柄』を取り出しそれを軽く振るうと、『鍔』の部分からチェーン状の刃が飛び出て、それが結合すると一振りの『刀』になる。

 

「現状、分かっている奴の具体的な目的は『苗木誠』だということだ。なら、早めにそれを排除しておくことに越したことはない。…それに、キミはこう言ったそうだな。『我々からの全ての意志を受け入れる』…と。なら、我々の『裁き』を甘んじて受け入れるがいい…!」

「……!」

「宗方君!」

「副会長ッ!それは余りにも横暴ですぞッ!そのような裁きなど、このグレート・ゴズは認められませんッ!」

「うわわッ!み、見ちゃ駄目なのに…」

「『頭』を潰さなければ死なないそうだな。なら…その脳髄を『細切れ』にしてやろうッ!」

 刀を構えた宗方は苗木目掛けて走り出し、無防備なその頭部目掛けて刀を振り下ろす。…が

 

ガキィンッ!

「…ッ!」

「貴様…!」

 間に割って入った戦刃の『コンバットナイフ』がそれを受け止める。

 

ギチ…ギチッ…!

「…確かに、誠君はお前達の全てを受け入れると言った。けど、それを私たちが容認するかはまた別の話…ッ!」

「邪魔を…するなッ!」

「この絶望女が…ッ!」

「アンタも邪魔すんなッ!」

「ッ!」

 加勢に入ろうとした逆蔵を朝日奈の回し蹴りが牽制する。

 

「テメエら…ッ!」

「私の『オアシス』は『身に纏うタイプ』のスタンドだからね、私自身が強くないとあんまり意味ないのよ…!」

「…あなた達が誠君を傷つけることを『正義』だというのなら、私は『悪』になってでも誠君を守ります…」

 舞園もスーツの袖から『トンファー』を装着し逆蔵や十六夜、安藤に『漆黒の殺意』を燃やした瞳を向ける。

 

「こいつら…やっちゃえヨイちゃん!」

「ああ…!」

『け、喧嘩はダメでちゅー!』

「ええい…!やめんかお前らァッ!」

「ど、どうなってるの!?僕見れないから分かんないよう!」

「そのまま目塞いどいたほうが良いぜ万代君…。こいつはとびきりヤバそうだ…」

「こりゃ避難しといたほうが良さそうだね…」

「どど、どうしましょう会長…!?」

「ふむ…」

 天願が霧切にちらりと視線を向けると、それを受けた霧切はすぐにその意図を察する。

 

「むくろさん!」

「…!」

 名を呼ばれた戦刃は霧切からのアイ・コンタクトを受け取ると、鍔迫り合いをしている宗方の懐に入り込みタックルを叩きこむ。

 

「ぐあッ…!」

「宗方!」

 宗方との距離ができると、戦刃は懐から『煙幕弾』を取り出しピンを引き抜いて叩きつける。

 

ボシュゥゥゥ…!

「なッ…!?ごほッ!」

「また睡眠ガス…じゃない、ただの煙幕…!」

「…今のうち!」

「あ、はい…」

「誠、ちょっとごめんね…っと。響子ちゃん、行こう!」

「…私は駄目よ」

「え?な、なんで…?」

「説明している時間はないけど…『これ』が関係しているとだけ言っておくわ」

 そう言って霧切は自分の腕に嵌められた腕輪を指し示す。

 

「でも、それじゃ…」

「私の事は気にしないで。…それより、誠君をお願い」

「…はい。さあ、行きましょう」

「…あとで迎えに来るから」

 仕方なく霧切をその場に残し、苗木を担いだ戦刃、朝日奈と舞園は煙幕に紛れて会議室を逃げ出した。

 

「待てテメエらッ!!」

 すかさず逆蔵が後を追おうとするが、

 

ドゴッ!

「ぐッ!?」

「させるかゴラァッ!」

 立ち塞がったグレート・ゴズに突き飛ばされ道を阻まれる。

 

「テメエも邪魔立てするか…!」

「…今ハッキリ分かった。奴の目的は『これ』なのだということがなッ!我々を疑心暗鬼に追いやり、苗木誠に必要以上の注目を集め、始末させる!『超高校級の希望』を、我々『未来機関』が殺したという事実を、世界に知らしめるためになッ!ならばこのグレート・ゴズが、そんなシナリオに従ってやる道理などないわぁッ!分かったか、タコゴラァ!」

「テメエ…!」

「…霧切響子、貴様がここに残るとはな。いい度胸と褒めてやるところだが、我々が手心を加えるとでも思ったのか?苗木誠が貴様に一番執心だと言う事は知っている。ならばヤツらをおびき出す餌に…」

「…それは構わないけど、『覚悟』の上での発言ととっていいのかしら?」

「何…?」

 脅しにかかった宗方に対し、霧切は毅然と立ち振る舞う。

 

「私を誰だと思っているのかしら?未来機関の『十四支部支部長』にして『苗木誠の妻』なのよ?…彼の足を引っ張るぐらいなら、自ら命を絶つ『覚悟』くらいは当然あるわ。それに、そう簡単に捕まってあげるほど私は弱くはないわよ…!」

「…ッ!」

 苗木の為ならば命すら賭けるその態度。その姿が自分の知る雪染と被って見え、宗方の刀を握る手を揺るがせる。

 

「…宗方ッ!」

「クッ…霧切響子は捨て置け!今は苗木誠の身柄を抑えることの方が優先だ、突破するぞ!」

「りょうか…」

 

バチバチッ!

「ぐおッ!?」

 ゴズへと攻撃しようとした逆蔵の背後から、月光ヶ原の操るマシンの『スタンガン』が動きを封じる。

 

『そんな身勝手な暴力はあちしが許ちまちぇん!』

「次から次へと…ッ!」

「行かせるかゴラァッ!」

「くッ…!」

「うわああッ!?ど、どうなっちゃうの~!?」

「どうなるもこうも…アタシが知るわけないじゃん…」

「俺はしーらねっと…」

「か、会長!?」

「…ワシらにはどうにもならん。今は様子を窺い、状況を判断するんじゃ。…霧切君、済まんが力を貸してくれんかの?」

「…はい」

(皆…誠君を頼んだわよ)

 

 

 

 様々な思惑が交錯する中、コロシアイの舞台は増々混沌の渦中へと落ちて行く。『希望同士』の戦いの先にあるものは、果たして『希望』か『絶望』か…

 

 

「……」

(皆…!やめろ、止めてくれ…ッ!僕たちがこうなることが、奴の思うつぼなんだ…ッ!!)

 それを知るのは、その事実を決して口にできぬ苗木誠と…

 

 

「うぷぷぷ!いいねいいね、これはかなり『絶望的』じゃない!あの『超高校級の希望同士のコロシアイ』とまではいかないけど、こういう展開もアリだよアリアリ!…さ~て苗木、アンタはこれをどうやって乗り越える?アタシに大口叩いたんだ、精々頑張ってみせなってな!う~っぷっぷっぷ!」

 誰も知らぬところから高みの見物を決め込む『彼女』だけである。

 




吸血鬼エキスのくだりに関してはここのオリ設定のようなものです。原作第一部でツェペリさんが波紋と石仮面は真逆と言っていたので、やろうと思えば同じことができるんじゃないかと思いこういう設定にしてみました。理屈で言うと、体の中で小さな肉の芽を作って毒を排出している感じです
もっともまたこの設定を使うことがあるかどうかは分かりませんが…

舞園の武器がトンファーなのはスティッキー・フィンガーズの能力との相性を考えてのチョイスです。どういう風に使うかはまた後程…

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