未来編展開が読めなさ過ぎィ!まさかマジでモナカが来るとは思わなんだ…まあ生きてるフラグ立てといてほったらかしとは思ってなかったけど。しかし…これはマズイ、何がマズイってジョースター!予定していた交錯編のシナリオが大幅変更になりそうなんだぜぇーッ!!
…やっぱりこれ以上の続きはアニメ終わってからだね。1.5部完結するまでこの先は待っててね!
「…相変わらずだったなー、苗木君」
「…奴は昔からああだったのか?」
「うん!友達を大切にして、女の子には優しい。けれど間違っていると思ったことには、相手が教師でも躊躇いなく本音でぶつかっていく。…本当に、何も変わらないよ」
皆が出て行った会議室にて、宗方と雪染は外を眺めながら話していた。
「なんか、京助にちょっと似てるかな?って思うんだけど…」
「…雪染君、失礼なことを言うな。私をあんな『アウトロー』と同じにされては心外だぞ」
「そうかなあ?…ところで京助、二人の時は『ちさ』でもいいのに…。苗木君だって奥さんたちの事下の名前で呼んでるし…」
「…『雪染君』、今はまだ職務中だ。私語は慎め」
「はーい♪」
「ハァ…」
「…京助、最近疲れてない?」
「お前がそれを言うか…?お前こそ働き過ぎだぞ」
「私は大丈夫!京介こそ未来機関の副会長なんだから、もっと体を大事にしなよ」
「…気には留めておく。…なあ、雪染。俺は…」
「何?」
「いや…そろそろ苗木の様子を見てきてくれ。奴が戻り次第会議を再開する」
「ん、分かった」
タッタッタ…
「……」
走り去っていく雪染の後ろ姿を、宗方は複雑そうな目で見送っていた。
一方その頃、苗木達は屋上で空を見上げてぼんやりとしていた。
「…空はまだ真っ赤だけど、潮風だけは昔とそんなに変わらないな。ここでタバコでも吸っていればカッコつくんだけど、どう思う?」
「私、煙たいのはちょっと…」
「私タバコきらーい!」
「タバコは脳の活動を妨げるわよ」
「タバコの臭いで見つかって死んだ先輩がいたから…」
「はは…フルボッコだね」
「そもそも誠にタバコなんて似合わないって!それに髭も、ちゃんと剃ってるの?」
「…髭ぐらい別にいいんじゃあないかなあ?ジョセフさんみたいにちゃんと揃えていればさ…」
「誠君の髭…ププッ!ご、ごめんなさい…やっぱり似合わないですよ…」
「そうかなあ…?」
「そもそもなんでそんなことに拘るのよ?」
「いやさ…。ほら、僕って結構『童顔』だろ?もう少し『威厳』ってやつがあった方がいいかなって…。そうすればさっきだって穏便に済んだかも知れないし…」
「威厳なら十分あるんじゃ…。さっきだって凄かったし…」
「あれは『威圧』だよ。もう少しさ、『ギャングらしさ』ってもんがあった方が…」
「誠君の癖に生意気なこと言わないの。…そのままのあなたが一番素敵なんだから、妙に気取るのはやめなさい」
「そうですよ!今の誠君が一番好きです!」
「そうそう!」
「同感…」
「…そ、そうかな。…そろそろ皆は戻った方が良い。むくろ、僕が戻るまで代役として先に戻っていてくれ」
「うん、分かった」
「…それじゃ皆、行きましょう。誠君、あんまり遅くなったら駄目よ」
「ああ、分かってるよ」
苗木を屋上に残し、霧切たちは先に中へと入っていった。
「ふう……もう出てきていいですよ、雪染さん」
「…あら?やっぱりバレてたんだ」
そして彼女たちと入れ替わるように、屋上の出入り口の物陰から雪染がひょっこり現れる。
「気を遣わせちゃったかな?お邪魔かと思ったんだけど…」
「いいえ、別に構いませんよ。雪染さん…それとも、『雪染先生』の方がいいですか?」
「…!憶えててくれたんだ…」
「勿論ですよ。…貴女は日向君の事を受け入れてくれた数少ない教師の一人でしたからね」
雪染はかつて、希望ヶ峰学園77期生の担当教諭を務めていた。個性的な生徒たちを優しく、かつブッ飛んだ性格でうまく纏め上げ、ちょくちょく遊びに来ていた日向の事を黙認してくれた、苗木にとっては尊敬できる教師の一人であった。
「日向君か…。懐かしいな、あの頃はすっごく楽しかったね」
「七海さんと付き合うまでに何度か日向君に口説かれてたって聞きましたからね。宗方さんが知ったら、今回の交渉断られるんじゃあないかって思ってましたよ」
「もう…!きょう…宗方君はそんなことしないよ!…けど、本当に懐かしいな。もう…みんなすっかり変っちゃったから…」
「…それは違いますよ」
「え?」
「確かに皆、見た目や雰囲気は全然違いますけど…それでも、『変わらない物』も沢山ある。だからこそ僕は彼らを助けたい。変わらない物があるのなら、『変えたくないもの』が残っているのなら…僕はそれを信じたい。彼らの『希望』を、僕は信じます」
「…優しいね。流石は『超高校級の希望』だね」
「…それなんとかなりませんか?もう高校生ってトシでもないのに僕だけまだ『超高校級』って肩書きが残ったままなんですけど…」
「まあまあ、『元超高校級の希望』だなんてなんか嫌でしょ?落ちぶれちゃったみたいでさ」
「そりゃそうですけど…」
「うふふ。…けど、宗方君の意見もちゃんと聞いてあげて欲しいな。宗方君も、私たち未来機関にとっては『希望』なんだから」
「勿論ですよ。だからこそ、あの時逆蔵さんに殴られたんですから。皆さんの怒りも、苛立ちも、反論も、全て甘んじて受け入れます。…その全てを受け入れたうえで、僕は自分の『信念』を貫きます。僕はしぶといですよ?」
「宗方君もね。…じゃあ、私も先に行くね。苗木君が戻ったら会議再開だから」
「はい、では後ほど…」
屋上を後にする雪染を見送った後、苗木はふと呟いた。
「…そういえば葉隠君なにしてるんだろ?さやかに入室許可あげちゃったから下で待ちぼうけ食らってる筈なんだけど…」
その頃、会議室では戻って来た面々だけで意見交換が行われていた。
「…やはり苗木誠の要望は却下すべきだ!絶望の残党を引き渡すのは危険すぎる!」
「でも、苗木君は今まで何人も絶望の残党を更正してきた実績があるよ!きっと彼等だってなんとかしてくれるよ!」
「…他の連中はいいけど、カムクライズルだけは駄目だね。村雨やアタシのクラスメイトを殺ったような奴を生かしてはおけないよ…!」
「…それ、よりにもよってアンタが言うんだ?」
「なんですって…?」
「ていうか~、引き渡す前にさっさと始末しちゃえばいいじゃん!そうすればアイツももう言ってこないでしょ?」
「…ナイスな意見だ、流流歌」
「そんなことして、苗木がキレたらどうすんだ?さっきの見たろ…。あんなの人間にどうこうできるレベルじゃあねえよ…」
「んなことやってみなくちゃ分からねえだろ。『レクイエム』だかなんだか知らねえが、さっきはぶん殴れたんだ、総出でかかりゃあ…」
ガチャ
「…あれはわざと殴られたのが分からないんですか?」
「霧切響子…」
「どう言う意味だ?」
「言葉通りです。苗木誠は今回皆さんからの意見の全てを受け入れる姿勢で臨んでいます。言葉だけでなく、皆さんの怒りや苛立ちからくる暴力の全ても含めて、です。…先ほどの彼の主張の通り、彼以外に対する制裁に関しては別ですが」
「なんと…!?」
「…やれやれ、器までデカいと来たもんだ。こりゃお手上げかね…」
「…ム?霧切君、朝日奈君はどうした?」
「…お手洗いです」
「おっと、それは失敬…」
「…あ、あのー…」
「え?…あ、御手洗さん!?」
舞園の後ろからこそこそと顔を覗かせたのは、第十支部支部長で『元超高校級のアニメーター』の御手洗亮太であった。
「おや御手洗君、遅い到着だな」
「す、すみません!準備に手間取ってしまって…あの、苗木君は?会議終わっちゃいました?」
「まだ小休止中だ、苗木誠もその内戻ってくる」
「そ、そうですか…」
「…そういえば御手洗さん、葉隠君を下で見ませんでした?」
「葉隠君?…そういえば海を見て黄昏てたけど…」
「やっぱり悪いことしちゃったかな…?」
「構うこと無いわ。居てもしょうがないし」
「そうだね」
「…そうですよね!」
「…ハァックションッ!ズズ…誰かが俺の噂をしているべ…。ひょっとして…俺のファンけ?」
『ヤスヒロ…トウトウ統合失調症にカカッテ…』
「うるせー!夢ぐらいみたっていいだろうがーッ!」
その頃当の葉隠はと言うと、本部前の海を見ながら『ドラゴンズ・D』を話し相手に寂しく皆の帰りを待っていた。
『ソンナニ暇ナラ舞園のヤツ二許可証渡サナキャヨカッタジャアネーカ?』
「いや、よぉ…。やっぱり苗木っちには皆が着いてた方が良いだろうしさ?それに支部長軍団と会議なんてガラじゃねーっつーか…」
『マアお前、未来機関デ会議トカニ呼バレタコトネーシナ』
「…やっぱり苗木っちのパッショーネに移籍すっかな?けどあっちの方が修羅場とか多そうだしなー…。うし!ここはこの間買ったこの『3億』の水晶玉で俺の未来を占うべ!」
『ゼッテー偽物ダッテ言ッテンノニヨソレ…』
「これは本物だってーの!…よーし見てろよー!水晶さん、水晶さん…俺の未来はどっちだべ~?…おおッ!見えてきた見えてきた…!」
『…ヘリコプターが映ッテンナ』
「ヘリコプター?…操縦士の免許取れってか?」
バババババ…!
「…ってアレ?なんか妙にリアルな音とか風まで…」
『ヤスヒロ、ソレ本物ダゼ。上ニ飛ンデルノガ映ッテルダケダ』
「へ?…うおマジだッ!…あ」
パリンッ!
すぐ真上を飛んでいたヘリに驚いた葉隠が思わず水晶玉を落としてしまうと、水晶玉はとても水晶とは思えないほど軽い音を立てて砕け散った。
「…またガラス球ッ!?」
『言ワンコッチャネー…ッテ、ナンカヤベエゾ!』
「は?」
ドゥン!ドゥン!
「うおおッ!?み、ミサイルッ!?」
ドゴォォン!!
轟音と共にヘリから放たれたミサイルが、本部の『入り口付近』と『屋上』に命中した。
「…なんだ?あのヘリ…」
一方屋上に居た苗木も、そのヘリの存在に気づいていた。
「他の支部長のヘリか…?その割には発着場に降りる気配が…」
怪訝そうにその様子を見ていると、突如ヘリのミサイル管の片方がこちらへと向けられる。
「何!?」
驚いたその瞬間そこからミサイルが放たれ、反応する間もなく屋上へと着弾すると炎と爆風が苗木を飲み込んだ。
ドゴォォンッ!
「ぐああああッ!?」
ドォォン…ッ!
「な、何ッ!?」
女子トイレに居た朝日奈は突然の振動に驚く。
「地震…?違う、今のって…まさか、爆発…!?」
ガタタン…
と、揺れの衝撃で近くにあった掃除要具入れの扉が開き、中から何かが転がり出る。
「わ…!な、何…ッ!?」
ふと飛び出したものに視線を向けると、朝日奈の眼が驚愕に見開かれる。何故なら…
掃除用具入れから出てきたのはモップや箒ではなく、『首をねじり折られた警備員の死体』だったのだから。
ドォォン…!
「な、なんだ!?」
「揺れと衝撃…なにかの爆発…!?」
その頃会議室でも、その爆発により混乱が生じていた。
バタン!
「なにかあったんですか!?」
「雪染か…。どうやら『襲撃』のようだ」
「襲撃って…ここの場所は誰も知らないんじゃなかったの!?」
「『誰か』が手引きして敵に知らせた…?」
「…あの野郎かッ!」
「誠君はそんなことしない…ッ!」
「そうですよ!第一、誠君ならもっと徹底的にやります!こんな中途半端な攻撃なんかしません!」
「そのフォローはどうなのかな…?」
「…万代、状況を報告しろ」
「うん。今モニターに出すね…」
万代が手持ちのタブレットを操作すると、モニターに被害のあった場所が映し出される。
「これは…!玄関が瓦礫で埋まっている…!ヘリポートまで…」
「そこだけじゃないよ…!裏口に防火扉、各階のエレベーター…全ての出入り口が軒並みやられてる…!あとは…『屋上』?なんで屋上まで…」
「…ちょっと、待ってください…!屋上には、まだ誠君が…ッ!?」
「何!?」
「映像出るよ!」
屋上の監視カメラが映し出されると、そこにはミサイルの直撃を受け火の海と化した屋上が映し出された。
「こいつは…ッ!?」
「…この様子では生きているとは考えられんな」
「なぁんだ、あっさり死んじゃってんじゃん…」
「安藤君!滅多なことは言うな!」
「…その心配は無用です、天願会長」
「何?」
「誠君が…『ミサイル程度』で死ぬはずが無い…!」
ドォンッ!
『ッ!?』
霧切の言葉を肯定するかのように、火の海の中から『銃声』が響く。
「だ、誰だッ!?」
「決まってるじゃあないですか…!ほら、あそこ!」
「う、嘘でしょ…!?」
舞園が指差した先には、火の海の中で『無傷』の苗木がヘリに向かって銃を乱射していた。
ドォン!ドォン!ドォン!
「クッソ…やってくれたなッ!」
無傷ではあるものの不意打ちを食らった苗木は苛立ちをぶつけるようにヘリに向かって銃を撃ち放つが、いくら苗木仕様の特別銃とはいえヘリの機動力の前ではなかなか当たらずにいた。そうこうしているうちに、ヘリは反転して飛び去ろうとする。
「流石に銃でアレを落とすのは無理か…。なら…!」
苗木は銃をしまうと、足元に転がっていた瓦礫の中から『野球ボール』ほどの大きさの瓦礫を拾い上げる。
「桑田君…、君の力を貸してくれ…!」
かつての友とのキャッチボールを思い出し、苗木は瓦礫を持った右腕にメキメキと力を籠め、思い切り振りかぶる。そして
「…無駄ァッ!!」
ギュオンッ!
桑田のピッチングフォームをトレースした苗木の投球は、素人ながらも人外の力によって凄まじいスピードに加速し…
ガキョン!
避け切れなかったヘリの『ミサイル管』を狙い違わず撃ち抜いた。
「ボラーレ・ウィーア!(吹っ飛びな!)」
ドガァァンッ!!
砲塔に残っていたミサイルの誘爆に巻き込まれ、ヘリは爆炎を上げ砕け散った。
「ま、マジかよ…!?石ころぶん投げてヘリを墜としちまったぜ…」
「今のは桑田君の動きですよ!桑田君が力を貸してくれました!」
「…誠君だからこそできた芸当ね」
「ミサイルは効かない、石ころでヘリを撃墜…ハハ、噂通りの怪物っぷりだね」
「…これで追撃は防げたが、同時に敵の手がかりも失った。…ひとまず状況を確認する必要がある。雪染君、本土で待機中の『杜王支部』の広瀬支部長と警備室に連絡を」
「は、はい!」
「…苗木誠との連絡は取れないのか?」
「さっきから試しているんですけど…」
「…駄目、応答しない。多分爆発の時に通信機だけやられたのかも…」
「…宗方副会長、この場所を特定し爆撃まで仕掛けてくるような犯人がこの程度で済ますとは思えません。おそらく既に本部内に侵入している可能性があります。外で待機している葉隠康比呂、並びに屋上の苗木誠と合流し情報の統合を…」
バァン!
「…朝日奈君、どうした?」
「け、警備員さんが…トイレで、死体に…ッ!」
「何…!?」
「…外部、警備室共に連絡がつきません!」
「既に侵入されている…ッ!」
「…迎撃します!むくろちゃん、『エアロスミス』で索敵を。葵ちゃんはここで皆を守って、私は『S・フィンガーズ』で屋上に…」
「まあまて、落ち着け舞園君。ここには未来機関の支部長、そしてパッショーネの最高戦力が揃っているのだ。いかなる敵であろうと落ち着いてかかれば…」
カラン…ッ!カラン…
「…む?」
突如入り口から金属製の『ボール』のようなものが転がり込んでくる。
「なんだ…?」
「…ッ!さやかさんッ!すぐにそれをジッパーで下に…」
カシュゥゥゥッ!
戦刃が中身に気づいたのとほぼ同時に、ボールから大量の煙が噴出する。
「ゲホッ!ゲホッ!な、なにコレ…!?」
「『催眠ガス』…!?しかも、『即効性』…!」
「そんな…ッ!?レーダーには、何も反応が…」
「ま、まことく…」
「グウッ!ゆ、雪染…」
「きょ、う…す…」
「く、そ…ッ!」
戦刃ですらも昏倒させるほどの強力な睡眠ガスにより、会議室にいた面々はあっという間に眠らされてしまった。
その頃、屋上ではヘリを撃墜した苗木が辺りの状況を見渡していた。
「…だいぶやられてるな。出入り口はほぼ全滅か。屋上の出入り口もやられてる…。まあ中に入るのは『問題ない』として…問題は火災の方か。糞、こんなことならウェザーも連れてくれば良かったか…?いや、今更だし不調のウェザーを連れてきても仕方がない。とりあえず…」
苗木はすぐに判断を下すと『G・E・R』を呼び出しスタンドだけを下へと向かわせた。
「…ふぃ~、びっくりしたべ。早いとこヘリから離れてて正解だったべ。あのままあそこにいたらヘリと一緒にお陀仏だったべ」
『多分ヘリヲ落トシタノハ苗木ダナ。石コロ一ツデヨクヤルモンダゼ』
「けど、入り口があのざまじゃ助けにもいけねえべ…。ああ、どうすりゃいいんだべ…」
『…葉隠君、葉隠君!』
「へ?…おおッ!?」
ふと聞こえてきた声に振り向くと、すぐ隣に『G・E・R』がいた。
「ご、『G・E・R』!?ってことは…苗木っちか!?」
『ああ。今射程距離を目いっぱい伸ばして会話だけできるようにしている。…葉隠君、そっちの状況を教えてくれ』
「…入り口は駄目だべ。俺の力じゃどうしようもねえ。ヘリは落っこちたけどあちこち燃えてるし…大変だべよ!」
『…分かった。ところで葉隠君、ヘリの爆撃の前に誰か本部に入っていったかい?』
「へ?あー…第十支部の御手洗っちが入ってたけど…それがどうかしたんけ?」
『御手洗さんだけ?…分かった。なら葉隠君、君の通信機を使って杜王支部にいるウェザーに伝えてくれ。体調が戻り次第、太平洋一帯に大雨を降らせてくれ、と』
「おお!ウェザーっちに消火してもらうんだべな!…で、苗木っちはどうするんだべ?」
『僕は一旦本部に入る。…なんだか嫌な予感がするんだ。一刻も早く皆と合流して中から脱出してみる』
「分かったべ!こっちのことは俺に任せて、苗木っちは皆を頼んだべ!」
『泥船二乗ッタツモリデ期待シテナー』
「それを言うなら『大船』だべ!」
「…葉隠君、頼れるようになった…!」
葉隠との連絡を終えスタンドを戻すと、苗木は屋上の柵を乗り越え…そのまま外壁を『垂直に走り出した』。
「確か会議室は27階…屋上は33階相当だから…この辺りかッ!」
ガシャン!
窓ガラスを蹴破って中に入ると、爆撃の影響で停電している廊下を苗木は会議室目指して疾走する。
「響子…、さやか…、葵…、むくろ…!皆、無事でいてくれ…!」
バァン!
「皆!」
会議室に飛び込むと、そこには未だ眠っている皆の姿があった。
「なんだこの臭い…?ガスか何かか?それにガスに混じって何かの臭いも…っと、それより…!」
苗木はすぐさま霧切たちを見つけると優しく抱き起こす。
「響子、しっかりしろ!さやか!葵!むくろ!」
「……ん?まこと…くん…?」
「…気が付いたか…!」
「あれ…、私たち…」
「誠、何時の間に…?」
「ついさっきさ。皆眠っていた…いや、『眠らされていた』んだよ」
「眠らされ…ッ!そうだ、誠君、さっき催眠ガスが…」
「ああ、臭いで大体分かっている。…とにかく、皆怪我は無いようで良かった……?」
と、ふと苗木の視線が霧切の手首に填められていた『見覚えのない腕輪』に向けられる。ふと見渡せば、舞園達や他の皆の腕にも填められている。
「響子、なんだその腕輪は?他の皆にもついているが…」
「え?…これは、一体…」
「痛つつ…なんだったんだ一体…?」
「あれ、苗木君何時の間に…?」
やがて他の支部長たちも目を覚ましだした。
「…苗木誠、襲撃犯はどうなった?」
「ヘリは落としました。…しかし、おそらく他の仲間が既に本部内に…あれ?」
「どうした?」
「部屋の人数…というか、『生命エネルギー』の数が…」
『うぷぷ!うぷぷぷ!』
『ッ!?』
唐突に聞こえてきた謎の声。支部長たちは何事かと辺りを見渡すが、その声に余りにも聞き覚えのある苗木達は驚愕と疑念で互いの顔を見合わせる。
「なんだ?今の笑い声は…」
「い、今のって…!?」
「そんな…ありえない…ッ!」
「…塔和シティという前例があった以上、無いという保証は無かった…。けど、まさか…ッ!?」
『うぷぷ…!お久しぶりですな。人の心に絶望が蔓延る限り…』
突如モニターが映り、教壇のようなものが映ったかと思うと
『じゃじゃーん!…モノクマは、何度でも蘇るのだッ!』
教壇の下から、あの『モノクマ』が飛び出してきた。
「な、なんだ…こいつは…ッ!?」
「嘘…!?ホントに、モノクマ…?」
「じゃあ、アレを操作しているのは…」
「…違う」
「え?」
「アレが…アレが江ノ島さんの筈が無いッ!」
「江ノ島だと…ッ!?」
苗木の口から出たその名に驚く面々を余所に、モニターのモノクマは相変わらずの口調で話し出す。
『初めまして、未来機関の皆さん。そして…久しぶりだね苗木君。また会えるのをずーっと待ってたよ!』
「…黙れ。お前は何者だ?何故モノクマを使える?何故『モノクマの名』を騙る?」
『うぷぷ、それを言っちゃあお終いって奴だよ。さて、未来機関の皆さん…』
「…チッ、まともに答える気はないってことか…」
「けど、これでハッキリしたわね。アイツは江ノ島盾子ではない。彼女なら苗木君相手に正体を隠すことなんてしないわ」
「確かに…盾子ちゃんとは少し違う。よく似ているけど、どこかが『決定的に』違う…」
「…君たちはなんの話をしているんだ?」
「それは後ほど説明します。それより…」
冷静にモノクマの正体を考察する苗木達と未だ困惑する支部長たちに一切構うことなく、モノクマは話を素続ける。
「皆さんのおかげで、僕たち絶望も肩身が狭くなったもんだよ~。おまけに何?苗木君の率いるパッショーネまで復活?ダブルショーック!…って奴だね。僕たちも前から後ろから追い立てられてもう連戦連敗…。ゴチになりまーす!あ、この場合はゴチしたんだっけ?うぷぷぷ!…そんな訳で、今回はそんな皆さんに対するお礼として、未来機関の皆さんで『コロシアイ』をやってもらいまーす!」
「殺し合い…!?」
『うぷぷぷ♡『ゆとり世代』のお前らにぴったりのサクッとした感覚でコロシアイをね。マンネリだとか言わないでよ、こういうのは『鉄板』って言ってくれないと』
「…悪いがお前の茶番に付き合っている暇はない。貴様がどこに居ようが、この地上で僕から逃げられると……ッ!?」
そこまで言いかけ、苗木の言葉が止まり、目を見開く。
「…どうした?」
「この、『臭い』は…ッ!?」
「臭い?」
「人間には分かりません…けど、僕には分かる…!さっきまではガスの残り香のせいでよく分からなかったけど、今はハッキリ分かる…ッ!これは…『血の臭い』!しかも、ついさっき流れたばかりの血の臭いだッ!」
「血の臭い!?でも、僕たちは誰も怪我なんか…」
「…雪染は」
「え?」
「雪染はどこへ…ッ」
ポタ…ポタ…
「…ッ!」
振り返った宗方と皆の眼前のテーブルの上から、『水滴』のようなものが落ちてくる。
「まさ…か…!?」
あり得ないという気持ちで、ゆっくりと落ちてきた方向へと視線を向けると…
『…ああ、そうそう。言い忘れてたけど…』
水滴の発生源、天井のシャンデリアの上には…
『ゲームは既に…始まってるんだよねー!』
血みどろでシャンデリアに括り付けられた雪染の無残な死体が吊るされていた。
「あ…あ…ッ!?」
その光景に皆が声も出ない中
バキンッ!
「…雪染さんッ!」
シャンデリアの鎖が重さに耐えきれず千切れるのと、苗木が咄嗟に飛び出したのは同時であった。
「クッ…ぐ、おおおおおッ!!」
ズザァァァアッ!
…ガシャァァァンッ!
寸でのところでシャンデリアの真下に滑り込んだ苗木を押しつぶすように、シャンデリアはテーブルに落下した。
「ま、誠君ッ!」
「…心配するな。僕は大丈夫だ…」
シャンデリアは粉々に砕け散ったが、雪染の体は寸でのところで苗木があちこちにシャンデリアの破片を突き刺さりながらも受け止めていた。
「苗木君!早く治療を…シャンデリアの破片で雪染さんの傷を…!」
「…分かっている。そして、それは既に終了している…」
皆がそのことに気づくよりも早く、苗木は『G・E・R』で雪染の体の傷を全て治していた。
「な、なら間に合ったんだね!良かった~…」
「……」
「…おい、どうした苗木さんよ?間に…合ったんだろ?」
「……」
「…おい、ハッキリ言いやがれ!雪染は助かったんだろう!?そうだと言えッ!」
逆蔵に胸ぐらを掴みあげられながらも、苗木は抑揚のない声で真実を告げる。
「…僕がこの部屋に入った時、この部屋の生命エネルギーの数は僕を除いて『15人』しかありませんでした」
「15人…?でも、この部屋には16人……まさ、か…!?」
「僕がここに来た時、雪染さんは既に『殺されていた』。僕の『G・E・R』は、死んでさえいなければどんな怪我でも治せる。だが…失われた命までは、『終わってしまった生命』までは、どうすることもできない…ッ!」
「…ッ!!」
「…ふざけんなよ…!テメエ最強のスタンド使いなんだろ!?神様みてーな力を持ってるんだろ!?不死身の吸血鬼なんだろうがッ!…なら、雪染一人ぐらい助けてみせろよ!生き返らせてみろよ…『できる』って言ってみろよッ!!」
「死んだ人間はッ!」
「ッ!?」
「死んだ人間は…生き返らない、蘇っては…いけないんだッ!!どんなに強い力を持っていても、それだけは…決して覆せないんだ…ッ!」
「…クソがァッ!」
苗木の答えに、逆蔵は悪態を吐きながら苗木を解放する。その様子を宗方は歯を食いしばりながら見ていた。
「…クッ…!」
(雪染…オレは、『間違って』…ないよな?)
あの時聞けなかった問いを物言わぬ彼女に心の中で呟く。そんな彼らの様子を楽しそうに見ながら、モノクマは苗木へと話しかける。
『うぷぷ!どう苗木君?オープニングセレモニーには最高の演出だったでしょ?』
「…貴様…ッ!どこの誰かは知らないが、二度と笑えるとは思うなよ…ッ!!」
苗木の内なる怒りが漏れ出したかのように、再び苗木の瞳と髪が紅く染まる。
『おっとっと!それ以上動かない方がいいよ。『後悔』することになるからね?』
「…どういう意味だ?」
『えー、今回のコロシアイでは、皆さんにはそれぞれ『NG行動』が設定されています!』
「NG行動…?」
『簡単に言えば、やっちゃいけない行為だね。それをやってしまった場合、その人にはその『腕輪』を通して即『おしおき』が実行されます!…あ、ちなみにスタンド使いの人はスタンドの使用はプラスαでNG行動にさせてもらいます!』
「スタンドを使えないってこと…!?」
「それじゃ、脱出の手立てが…」
「…だがミスをしたな。僕にはその『腕輪』は無いぞ。お前のNG行動とやらは僕には…」
『慌てなさんなって。苗木君には『特別ルール』を用意したんだから!』
「特別ルール…?」
『苗木君へのスペシャルルール!…苗木君は、今から『一切の行動を禁止します』!一歩も歩くことも、一言も口を利くことも、指一本動かすことも許しませーん!もし破った場合…苗木君以外の全員に即死んでもらいまーす!』
「なッ…!?」
その余りに厳しすぎるルールに、苗木達は思わず面喰らってしまう。
「そ、そんな!?誠に何もするなって言うの!?」
「滅茶苦茶です!そんなのルールでもなんでもないじゃあないですかッ!?」
『だーってー、苗木君は普通の方法じゃ殺せないんだもーん。だったらー…せめて目の前で仲間たちや愛する人が死んでいくのを見ていてもらおうかと思ってね…!』
「…なんて残酷な…!」
「…ッ!」
『お、偉い偉い!そうそう、もうルールは始まってるんだよ。もう君には何もできない…。鋼の鎖を以てしても、『絶望の要塞』と化した希望ヶ峰学園でも、君を縛り付けることは出来なかった。だけど、そんな君を唯一縛ることができる鎖…それが『人間』。鋼よりも脆く、学園に比べたらなんとも儚いものだけど、それでも君はそれを砕くことができない。君が『超高校級の希望』と呼ばれる所以のその優しさが、君を縛る鎖となるんだよ…』
「……」
『うぷぷ!さあ苗木君、僕からの『最後のプレゼント』。とくと楽しんでいってちょうだい!うぷぷ、うぷぷぷ…うぷぷぷぷぷぷぷ!』
「うぷぷ、うぷぷぷぷ!ほら言わんこっちゃなーい、やっぱり面白そうなことになってんじゃん!まあしばらくは高みの見物とさせてもらいましょうか!『アイツ』のお手前拝見ってね。苗木ィ…こんなもんで折れんじゃあないよ?うーっぷっぷっぷ!」
最後にちょろっと出ていたお人。誰だか…分かりますよねハイ。
彼女の扱いも未来編の続き次第では大きく変わるからなあ…じっくり続きを練って皆さんのご期待に沿えるよう頑張るゾイ!