ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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ニューダンの配役発表されましたね。
ゴン太君が武内君、秘密子ちゃんが田中あいみさんだったのはまあ予想通りでした。が…

星君あの見た目とガタイで大塚ボイスとかどゆこと!?アレか?デュエマのギョウみたいに見た目返変身してお惚けボイスとイイ声を使い分けたりするんですかね?

そして個人的に一番気になったのは、やはり最原終一(CV:林原めぐみ)…。これは…アレですかね?ペルソナの直斗みたいなアレを期待してもいいんですかね?
…大好物ですよ…!ゲヘヘ…過去作の展開からして2章あたりであるであろうマロンイベントが楽しみだぜ…!(吐き気を催す邪悪)

…何?主役が女の子だからサービスシーンは今までと逆なんじゃあないかって?…「百合」でもいいじゃあないか…!


エピローグ1 この街のピリオド

バババババババ…!

 

…あの闘いから一夜明け、静けさを取り戻した塔和シティから、数機の『ヘリコプター』が飛び去って行く。騒ぎの収束を知った未来機関十四支部から派遣された迎えのヘリである。乗せる人数の都合上、本当なら苗木達が来る時に使ったドイツ軍の軍用機が良かったのだが、生憎塔和シティには『滑走路』が無いため、仕方なくこうして数機のヘリでの迎えになってしまったのである。

 彼らは塔和シティでの後始末を済ませ、塔和シティで保護したカムクライズルと狛枝を保護するために十四支部へと引き返しているのであった。

 

 そんな離れ行くヘリを見送る一団が居た。一連の騒ぎの中心であり、そしてこれから塔和シティの復興の中心ともなる灰慈と『モナカを除いた』希望の戦士たち、…そして要救助民の面々であった。

 本来なら彼らもあのヘリに乗って未来機関の保護を受ける筈であった。しかし、それを拒否したのは他ならぬ『彼ら自身』であった。彼等『全員』が、この街に『残る』ことを選択したのである。この街に残り、自分達が関わってしまったこの街の復興を手伝っていく。未来機関にただ保護されるよりは、少しでも自分たちにできることをやっていきたい。それが彼等が出した『結論』であった。

 

 

 

…そして、その中には苗木こまると腐川冬子の姿もあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …前日、プッチを取り逃がしてしまった苗木はカムクライズルと狛枝を連れて皆と合流し、一同は未来機関への報告と現状の確認の為に、一旦こまるたちと隆秋が出会ったあの『廃ホテル』へ移動していた。

 

「…白夜様、お茶をご用意させていただきました」

「ああ…」

 ホテルのロビーの椅子にどっかりと座った十神は、アロシャニスが淹れた紅茶を静かに飲む。

 

「……」

「…どうなさいました?」

「いや…こうして、またお前の茶を飲めるとは思わなかったのでな。…旨い。腕は落ちていないようでなによりだ、アロシャニス」

「…ッ!勿体ないお言葉…」

「フン…おい、それより他の連中にも用意してやれ。俺を一人だけ楽しんでいるような器量の狭い男にするつもりか?」

「ハッ!…皆さんもよろしければいかがでしょうか?」

「うむ、頂こうかの」

 再び主を得たことで、アロシャニスは前にもまして執事としての活動に精を上げていた。

 

「兄貴…!やっぱり兄貴はスゲエや!こまる姉ちゃんも凄いけど…やっぱり兄貴は俺のナンバーワンだぜ!」

「ハハハ…ありがとう悠太君。…君も良く頑張ってくれたと聞いたよ。葵もきっと君の事を誇りに思うさ」

「姉ちゃん…うん、兄貴がそう言ってくれるなら、そうかもな…!」

 苗木により左目が治った悠太は、今迄の我慢を解き放つかのように苗木に甘える。周りの大人達も、これまで勇猛果敢に戦ってきた悠太が義理の兄に年相応に懐いているその姿に、『これで良かったんだ』と思い自然と微笑んでいた。

 

 

 

「さて…皆さん、無事でなによりでした。そして…申し訳ありません。皆さんの大切な人たちを、守りきることができなくて…」

 ロビーに集まった要救助民の面々に、苗木はそれぞれの無事を喜んだ後、あのコロシアイ学園生活で死んでしまったクラスメイトの事について謝罪をした。

 

「…苗木君、あまり気に病まないでください。清多夏も…息子も、貴方にいつまでも後悔し続けられることを望みはしないでしょう」

「そうですよ。…少なくとも、君が千尋の大切な『友人』であったことは分かります。でなければ、千尋が創ったその『アルターエゴ』が君にそこまで協力するはずが無いですから」

「頭領が死んじまったことは…正直、まだ納得いかねえけどよ。アンタもアンタなりに頑張ったんだろ?…なら、アンタを責める理由はねえよ」

「…ていうか、一二三のアホの場合はむしろ君が『嵌められた』んでしょ?ならむしろ謝るのはこっちの方なんだから、あんまり気に病まないでくれると一二三もあの世で気が楽だと思うし…」

 隆秋、太一、雪丸、富士子はその謝罪を受け入れつつも、苗木にその責は無いと擁護する。

 

「…怜恩お兄ちゃんのこと、聞いたよ。アタシとしてはアンタにも舞園さやかにも、言いたいことは山ほどあるよ。…でも、アンタに関してはしょうがないってことは分かってるつもり。だから、今はもういいよ。…ただ、舞園さやかとはきっちり話をつけさせてもらうよ」

「にゃあご…!」

「…うん、分かってる。さやかも、そのつもりだと言っていた。いつか君にあったら、ちゃんと向き合って…謝りたいと」

「…あっそ」

「さやか…大丈夫、だよね」

 花音やグランボアは、まだ納得したわけではないようだが、ひとまず苗木に当たり散らす気は無いようであった。苗木から舞園と桑田のことを聞いた羽山も、親友のことを心配しつつも、きっと大丈夫だと言い聞かせる。

 

「…皆さんのお気持ちには感謝します。けれど、僕は彼らの事を決して『割り切る』つもりはありません。…僕は、『しょうがなかった』とか『間に合わなかった』みたいな理由で彼らの死を許容したくはありません。僕はこの先どんなことがあっても、彼らのことを忘れません。ずっと引き摺って、皆が僕に託してくれた『希望』だけでも背負ったまま前に進む。…それが、僕が決めた『道』なんです」

「苗木殿…」

「…相変わらず、だね。本当に、強い子だよ君は…」

「まったく…響子も難儀な性質の旦那を選んだものじゃのう…」

「やれやれ、もうちょっとぐらい楽に生きればいいのにさ…。康比呂の友達には本当にもったいないね」

「酷―べかーちゃん!」

『マ、否定デキネーケドナ!』

 望んで一番辛い選択をした苗木に、ケンイチロウや五月雨、不比等や浩子はその精神的な強さに感心しつつも、自分の弱さを割り切る気が無い真面目ぶり…悪く言えば『頑固さ』に呆れ半分といった具合でそう呟くしかない。

 

 

タッタッタッタ…

「…お待たせ、誠君」

「ああむくろ、ご苦労様」

 そこに、未来機関への報告をしていたこまるやむくろたち、そしてホテルに入るなり部屋の一室に引き篭もってしまったモナカの様子を見に行っていた新月たちが戻って来た。

 

「…それで、響子はなんて?」

「うん。天願さんに連絡したら、『会合の場』を設けてくれることになったって言ってたよ。…あと、迎えは明日になるみたい。向こうもまだ塔和シティでの一件の整理がついてないみたいだから…」

「そうか…。分かった、…で、新月君。モナカちゃんは…」

「…ううん。全然だった…」

「僕チン達がいくら呼びかけても返事もしてくれないよ…。まあ、僕チンの場合はそれが普通だったんだけど…」

「…放っておけばいいですわ。少しは懲りたでしょうし、もう少し反省させるべきですよ」

「…そうだよな!きっと腹減ったら出てくるって!」

「そんなキャラだったかな…?」

「…まあ、彼女にも思うところはあるだろう。今はそっとしておこう」

 それぞれの報告を聴いた後、苗木は十神や灰慈らへと視線を向ける。

 

「…さて、そろそろ始めましょうか」

「だな…」

「フン…」

 その言葉を合図に、和気あいあいとしていた皆の空気が引き締る。

 

 

「さあて…今から決めなきゃなんねえのは他でもねえ。これからこの街を『どうするか』ってーことだ」

「どう…って、どういう意味ですか?」

「言葉通りの意味だ。…今この街は『選択』を迫られている」

「選択?」

「『未来機関』の保護を受け入れるか、…それともこの街の人たちの力だけで復興を始めるか、…あるいはこの街を『放棄する』か…だね」

「…ちなみに、どう違うんですか?」

「まず、一つ目の未来機関の保護を受ける…現状を省みるなら、これが一番ベターな選択だ。今の塔和シティに、自力で元の状態まで復興するほどのマンパワーも物資も無い。未来機関がこの街を『管理』することになれば、食料や復興のための人員を派遣してくれるだろう。…それに、この街は現状『絶望の残党が居ない』数少ない場所だ。未来機関が新たな『拠点』としてこの街を選べば、新たな支部が置かれ治安維持も期待できるでしょう」

「おお!イイ事尽くめじゃんか!」

「…ですがそれは、灰慈さま…ひいては塔和グループやこの子たちの所業を未来機関に知らせることになります…」

「あ…!」

 苗木の説明に悠太らは顔を明るくするが、アロシャニスの指摘にその笑顔が固まる。

 

「天願…現未来機関の会長ならば説得の仕様はある。奴は『人類史上最大最悪の絶望的事件』の時こそ絶望の残党共に対して過激だったが、今はそれも鳴りを潜めている。やり方はいくらでもあるだろう」

「…それに、元々天願さんは学園長…義父さんたちと僕等の味方をしてくれていた人だからね。きっとなんとかしてくれるはずだ。…けど、副会長…宗方さん達の派閥はきっとそう簡単にはいかないだろうね」

「あのクソ副会長…親の仇みたいに『絶望』のことを憎んでるからね。腹心の逆蔵は脳筋だし、雪染は何考えてんのか分かんないし…説得するだけ時間の無駄だと思うわよ」

「そんなに怖い人なの…?その、宗方さんって人…」

「…アタシも聞いただけなんだけどね、なんでもとあるビルに人質取って立て籠もった絶望の残党共を倒す為に…迷いなく『人質ごと』ビルをぶっ壊したそうよ」

「ッ!?人質ごとって…じゃあ、中の人たちは…」

「…そういうことよ。アイツは絶望を殲滅する為なら『犠牲』を出すことも厭わない。…そんな奴が、塔和グループが絶望の残党どものクライアントだったなんて聞けば、徹底的にこの街を制圧しようとするでしょうね。…勿論、こいつらの事も許すわけが無いわ」

「……」

 灰慈や希望の戦士たちの表情は暗い。自分たちがしでかしたことは重々分かっているが、やはり自分たちを理由に街に居る人々を危険に晒すことになるというのは、どうしても避けたいところではあった。

 

「…となると、それはあくまで『最後の手段』として考え留める程度にしておくべきだろう。ならばあとは我々のみの力で復興するか、この街を捨てるかだが…後者に納得する人は決して多くはないだろうな」

「ああ。…なんだかんだあっても、この街に思い入れのある奴は沢山いる。俺だってその一人だ。例え地獄の吹き溜まりになろうが、俺はこの街を捨てることなんてできねえ。…それに、話を聞く限りじゃあ、このザマでもこの街はまだ『マシ』らしいからな。下手に絶望の残党とやらがうろついてる本土に行くぐらいなら、この街に残ったほうが安全かもしれねえからな…」

「確かに…ここを離れ新天地を目指したとしても、ゼロからスタートするよりは若干の基盤が残っているこの街を復興させる方が現実的かもしれないね」

「…けどよ、今苗木…さんが言ったじゃあねえか。この街にはもう復興できる力はねえってよ」

「ぶっちゃけ足んないもんだらけだしね…」

「…ねえ、君たちが持ってたロボットみたいなのってもう無いの?アレが沢山あればまだマシだと思うんだけど…」

 羽山が子供たちに問うが、子供達の表情は芳しくない。

 

「…悪いけど、僕たちの力はあまり当てにはならないかもしれない」

「モノクマも、ロボットも…全部モナカちゃんが私たちにくれたものですから。私たちはただそれを使っていただけなので…どこにあるのかとか、どうやって作るのかまでは知らないんです」

「…あの手の物は全部あの『地下工場』で製造された物の筈だ。アレの権限は全部最中が握ってる。…あいつを引っ張り出さねえことには、モノクマやロボットを利用することはできねーだろうな」

「…俺っち、今ほど『コドモ』だってことが悔しいことはねえよ。『超小学生級の体育の時間』なんて言われれても、俺っちだけじゃなんにもできねえんだから…」

「そ、それを言ったら僕チンだって…『超小学生級の図工の時間』なのに、モナカちゃんの方がなんでも作れるし…」

「結局、モナカが協力してくれないとこの街の復興も難しいってことだよね…」

「ったくあのガキ…とことんまで面倒な性質してるんだから…!」

 引き篭もって姿を見せないモナカに腐川が毒づくが、本人が居ない以上不毛なだけであった。

 

「…とはいえ、あのお嬢ちゃんの機嫌が直るのを待ってる訳にもいかねえぜ。未来機関だって馬鹿じゃあねえ、十四支部を霧切の姐さんが統括している時点で、塔和シティのことを薄々感づいている筈だ」

「流石に『推定無罪』で制圧にかかることはないだろうが…第六支部辺りから密偵が送られるのは時間の問題だろうな。雑魚どもならともかく、あの『聖原』にでも来られれば確実に行動を起こすだろう。…今のひな…カムクライズルを見て、アイツが黙っているはずが無い」

「…八方塞がり、ってことかよ。クソ…ッ!」

 街の復興の為には、どうしてもモナカの管理する塔和の地下工場の設備が必要になる。しかし、臍を曲げて引き籠ってしまったモナカが出てくるのを待っていれば、そうこうしている間に未来機関がやってくる。かといって無理に引きずり出して機嫌を損ねて再び敵に回るようなことになれば、それこそ本末転倒である。

 

 今の彼らには、圧倒的に『時間』が足りなかった。

 

 

 

「…皆、そこでなんだが、一つ『アイデア』があるんだ」

 そこに、タイミングを見計らって苗木は自分が考えていた『策』を公表する。

 

「お兄ちゃん?」

「…何か手があるのか?」

「うん。…要するに、未来機関がこの街に介入できない『理由』があればいいってことだよね?なら、考えがある。…この塔和シティを僕等『パッショーネが掌握』すればいい」

「…はぁッ!?」

「パッショーネが掌握って…どういうこった!?」

「言葉通りさ。そもそも今回十神君達がこの街に来たのは、狛枝さんからの情報を元に十四支部の『独断』で動いたからで、未来機関の『総意』じゃあない。ならば、未来機関にはまだこの街に対する『決定権』はない。…だから、今回の一件を僕たちパッショーネが解決したってことにして、未来機関に正確な情報が渡る前にこの街を『占領』しちゃえばいいんじゃないかと思ってね」

「狛枝が十四支部にしか情報を流さなかったことを、逆に利用するということか…!」

「…けどよ、ジョジョ。んなこと勝手にしちまったら、また未来機関のお偉いさんと仲たがいしちまうんじゃあねえか?知り合いだっているんだろ?」

「…まあね。けど、今は一個人の感情で左右していい状況じゃあない。それに、きっと彼等だって分かってくれるハズさ。…皆にはまた『悪役』をさせることになっちゃうけどね」

「…へっ、気にすんな。アタシ達は『ギャング』だろ?悪役は慣れっこだよ」

「俺達はアンタの決定に従う…。アンタは思うがままにやればいい、俺達はそれを全力でサポートするだけだ」

「うん。…私たちは、あなたを信じてるから…!」

「…ありがとう、皆」

 苗木は申し訳なさそうに謝るが、戦刃たちは全く気にすることなく苗木を肯定する。

 

「だが、占領たって…どうするんだよ?今じゃこの街に『統治者』はいないんだぜ?アンタらがいくら強くたって、たかが4,5人じゃこの街を統治したことには…」

「…それについても『策』はある。…統治者が居ないのなら、『作れば』いい。最も、それが『彼ら次第』だけどね」

「彼ら…?」

 首を傾げる皆を余所に、苗木は子供達の前に来ると視線を合わせる。

 

「…お兄さん?」

 

 

 

「…君たち、『うちの子』になる気は無いかい?」

 

『…は?』

 唐突な苗木の問いに、その場の全員が思わずそんな声を出してしまう。

 

「う、うちの子…って…?」

「ちょ、あんたまさか…ッ!?」

「うん。…僕はこの子たちを全員、『養子』として迎え入れようと思っている。もちろん、この子たちの気持ち次第だけどね」

「それって…俺っち達が、お兄さんの『子供』になるってこと!?」

「ま、待ってよ兄貴!なんでそれがこの街の統治者…リーダーってことだよな?街のリーダーを作ることになるんだよ!?」

「…理由としては、僕が『パッショーネのボス』で、結婚こそしているが『まだ子供はいない』から…かな」

「…えっと…?」

「…成程、彼らを君の『跡継ぎ候補』にするということじゃな?」

「その通りです、お爺様」

 不比等の答えを苗木が肯定する。

 

「跡継ぎ…ですか?」

「…成程な。そういうことか?」

「ど、どういう意味ですか白夜様?」

「…よく考えてみろ。今の苗木はパッショーネという未来機関にも匹敵する巨大な組織の『唯一の支配者』だ。未来機関のように何人かの支部長で権限を分割していない以上、苗木に万が一のことが在った場合にその『跡』を継ぐ人間は必要だ。『能力』でそれを決めるのもいいが、一番手っ取り早いのは『世襲』だ。だが苗木にはまだ子供はいない…だから、こいつらを養子にして『仮の後継者候補』に仕立て上げるということだ」

「確かに…彼らはまだ幼い子供だが、君たちと言う巨大な『後ろ盾』が在れば『統治者』としての体裁はひとまず建てられる、か…?まるで『平安時代』のようだがな…」

「曲りなりにですが、彼らは一時この街を占領して統治した実績がありますしね…」

「ええ。…ただ、彼等だけでは流石に無理があると思うので、灰慈さんにも統治者になってもらいます」

「お、俺もか?」

「まだこの街の『オトナ』と『コドモ』の溝は深い…。『共通の統治者』の下で協力し合うのは難しいでしょう。ですから、『オトナの代表』として灰慈さんが、『コドモの代表』としてこの子たちが『同盟関係』を結べば、ひとまずギブ&テイクの形で大人と子供の諍いはある程度防げるはずです。…細かい問題はあるでしょうが、その辺はお任せするしかないですね」

「そしてその『後見人』を『養父』であるお前とパッショーネが務める、ということか。確かにそれならひとまずの理由にはなるな。未来機関が下手に介入すれば、それはパッショーネの顔に泥を塗ることになるからな」

「宗方たちも、表だって誠君と事を構えることはしたくないだろうしね…」

「…イケる、のかな?」

「まあ、全てはこの子たちの意志次第だよ。僕もそんなことの為だけに義理とはいえ『親子』なんて関係を軽々しく利用したくはない。むしろそっちは『おまけ』だよ。…僕はこの子たちを放っておくことなんてできない。けれど、僕はこの街に留まり続ける訳にはいかない。だからせめて、この子たちを守るために『父親』と言う形でこの子たちとの『繋がり』を作りたいと、そう思ったんだ。だから、この子たちがそれを望まないというのなら構わない。その時はその時でまた考えるさ」

 そう言って子供達へと視線を向ける苗木。そんな苗木を見る子供達の目には、戸惑いや驚愕の色もあったが…全員に『恐れ』の色が表れていた。

 

「…どうしたの?」

「…お兄さん。お兄さんの言ってることはなんとなく分かるよ。ここに来るまでに洗脳が解けたモノクマ…コドモを見かけたけど、皆まだ自分がどういう状況だったのかを理解していないみたいだった。今の皆を放っておいたら、またオトナとコドモの間で問題が起きるかもしれない。だから、僕等が皆を守らなければならないことは…分かっているんだ」

「でも…」

「でも…何?」

 こまるの問いかけに子供たちは互いに顔を見合わせ不安そうに目配せをした後、やがて意を決した顔で代表して言子が苗木に問う。

 

「…その作戦って、お兄さんに『子供が居ない』から成立するんですよね?だったら…いつか、お兄さんに本当の子供ができた時…その時に、私たちはもう『必要なくなる』んじゃあ…ないですか?」

「「!」」

 その言葉に、彼らの事情をよく知っているこまると腐川はその『真意』を知った。彼らは、『また捨てられる』ことを恐れているのだ、と。実の親に見放され、そこから救ってくれた江ノ島にも『無価値』だったと言われた彼らには、もう苗木しか居なかった。

 信じていたモナカに裏切られ、絶望のどん底にあって再会し、自分たちを救い上げてくれた苗木は、彼らに残された『最後の希望』に等しかった。故に…その苗木にまで必要とされなくなった時、自分たちはどうなってしまうのか…それが不安で仕方が無かったのだと。

 

「……」

 そんな面持ちの彼等に、苗木は真顔のままゆっくりと歩み寄り、膝を突いて視線を合わせると…

 

 

 

ビコンビコンビコンビコンッ!!

「痛ッ!」

「あだッ!?」

「きゃんッ!?」

「うわッ!?」

 なんの前触れもなく彼らの額に『デコピン』をお見舞いした。

 

「な、何するの…お兄さん…?」

「そうだよお兄ちゃん!いきなり…」

「…いやさ、流石にちょっとショックでね。僕がそんな『人でなし』だと思われてたことがね…」

「え…?」

「少なくとも、僕はそんな無責任なことは死んだってするもんか。…まあ死んだら死んだで無責任だから死なないけどさ」

「…なんか締まらないわね」

「ともかく!…仮に僕に子供ができても、君たちのことは責任を持つよ。こんな身体だから君たちより長生きだろうし、最後までちゃんと『父親』として努力させてもらう。…ぶっちゃけ、この街のこととかはさほど考えなくてもいい。ただ君たちがどう思っているのかを聞かせて欲しい。…どうか僕に、君たちを守らせてくれないかな?」

「…!」

 どこまでも真摯な苗木の瞳に、子供達は自分たちの心配が杞憂であったことを確信する。苗木誠が、あの江ノ島盾子が敗北を認めたほどの男が、自分たちの親の様なことをする筈が無いのだと。

 

「…それとも、僕じゃあ不安かい?まあ君たちとはまだ10歳も変わらない歳だし、父親には若すぎるかもしれないけどね…」

「そ、そんなこと…そんなことないよッ!」

「……」

「…ホントに、ホントにお兄さんが僕チンたちのお父さんになってくれるの?」

「ああ、僕でよければ…キミ達の『父親』にさせてくれ」

「…ッ!!」

 苗木の『願い』を聞き入れた瞬間、子供達は堪えきれなくなったように泣きだした。

 

「いいの…かな…?僕チンみたいなのが、『幸せ』になっても…いいのかな…!?」

「ああ、いいんだよ。少なくとも、僕はそれを望んでいる」

「お、おれ…俺っち、ずっと思ってたんだ…!あの時からずっと…あいつ等なんかじゃなくて、お兄さんがお父さんで、ジュンコお姉さんがお母さんだったらいいのにって、ずっと…思ってたんだ…ッ!!」

「はは…それは賑やかな家族になりそうだね」

「もう、怖がらなくていいんですか…?『優しい』ことを怖がらなくてもいいんですよね…?」

「そうだよ。…『優しさ』は、誰かを『守る』ことなんだ。時には、それが誰かを傷つけることもあるかもしれないけど、それでも…『脅かす』ものであってはいけないんだ。僕が必ず、それを証明してみせるよ」

「お兄さん…ッ、『お父さん』…ッ!」

「…うん。もう大丈夫だよ、『渚』。もう君は、君たちは…『ただの子供』でいいんだよ」

 

『…ッ!お父さぁんッ!!』

 なんの迷いもなく苗木をそう呼び、子供達は苗木に抱き着き、苗木もそれを温かく受け入れる。

 

「…そうさ。『子供』はこれでいいんだよ。思うがままに馬鹿やって、後で親に泣きついて後悔して…そんで、『大人』になっていくのさ」

「勿論彼らのしたことは取り返しのつかないことだ。…だが、きっと苗木君ならば正しく導いてくれるだろう」

 そんな彼らの様子を、皆もどこかほっとしたように見つめていた。特に、『親』である浩子や隆秋はようやく彼らが『相応の立場』に戻ったことを喜んでいた。

 

「しかし…アンタもとことんまでお人よしね。一応そいつら大量殺人者よ?そんなのをよく『身内』するだなんて考えたものね」

「…僕がそうしたかったんだ。後悔はしないさ」

「フン…。どうでもいいが、精々霧切たちへの説得の内容でも考えておくんだな。知らぬ間にデカい子供が4人もできたなどと知れば、奴らの反応が見ものだぞ?」

「…ま、まあ…なんとかするよ。…むくろ、一緒に説得頼めないかな?」

「フフ…いいよ。私も、この子たちのことはほっとけないから」

「つーことは…アタシらこれからこいつらのこと『坊ちゃん』とか『御嬢』呼ばわりしなきゃなんないワケ?」

「おいおい…ジョーダンきついぜ」

「…ジョジョの決定だ、諦めろ」

「アハハ…でも、お兄ちゃんならきっといい『お父さん』になれるよ。私は…そう信じてるもん」

「…うん、そうなるよう頑張るさ」

 友人や部下に茶化されている苗木に、灰慈がきまりが悪そうに声をかける。

 

「…なあ、苗木誠。こんな時になんだが、その…最中のことなんだが…」

「…ええ。分かってますよ。けど、彼女のことはまだ『保留』にさせてください」

「…やっぱり、自分の親を殺したような奴は…受け入れられねえか」

「それは…正直なところ、無いとは言い切れません。でも、それ以上に、彼女にはまだ『時間』が必要だと思うんです。自分の中の希望と絶望と…『自分自身』と向き合い直す時間が、彼女には必要なんです。…だから、僕はあの子の意見を尊重しますよ。どんな『答え』を出そうとも…ね」

 そう言って苗木は、『誰も居ない虚空』に向かってニコリと笑いかけた。

 

 

 

 

 

 

「…くっさ。ったく…ホントにこいつ息をするようにクサい台詞を吐くんだから…どんだけ『天然ジゴロ』なんだっての…」

 ロビーに侵入させた『蠅型監視カメラ』に向けて笑いかけた苗木に、モナカはモニター越しにそう毒づいた。

 

「つーか盗み見してるのバレてるとか、アイツ一体なんなのさ…?皆も皆だよね、あんな『家族ごっこ』で感動しちゃってさ、あーあキモい……別に、羨ましくなんかないもん。あー…モナカこれからどうしよっかなー?」

 モニターを放り出したモナカはそのまま部屋のベッドに飛び込んだ。落ち込んでるフリをして部屋に引き篭もったはいいものの、あの様子では苗木にはそんなことはバレバレであろう。幸い『モノクマ工場』の権限はまだ自分にあるので、隙を見て地下施設で再起を謀ろうとも考えたが、苗木が去った後にそれをしたところで、なんだか『小物臭い』ような気がしてやる気が起きなかった。モナカは今、絶賛『スランプ中』であった。

 

ピピーッ!ピピーッ!

「…こんな時に、メンドクサイなあ…」

 気だるげに寝そべっていると、ポケットの端末が再びアラームを鳴らす。

 

ピッ

「…なに?」

『…『未来機関本部』から、緊急の通信が入ってるでちゅ!あちしの判断基準を超えた案件でちゅ。至急コントロールをお願いしまちゅ!』

 端末から聞こえてきた声にモナカは嫌そうに眉を顰め…しかし、ふと何かを思いついたような顔つきになる。

「…そうだね。とりあえず、『あそこ』に戻ろうかな。こんなところに居たら苗木誠の希望で『希望酔い』しそうだし…私も、いつまでも『負け犬』でいるのはイヤだしね…!…そういう訳だから、私が戻るまでもうちょい待たせといてー」

『了解でちゅ!』

 ひとまずの方針を決めると、モナカは端末を切って脱走の準備を始める。

 

 

 

 

 

 向かった先で待つ、奇妙な『運命のいたずら』のことなど知る由もなく。

 




という訳で希望の戦士はまとめて苗木ファミリーになりました。
悠太君を生存させたのも全部このためでした。…さすがに苗木がここまで関わっておいてなにも無しというのはあまりにも無体だったので…

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