ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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ダンガンロンパ3視聴完了…

…いろいろと言いたいことはあるが、僕の最終的な答えはこれだ。






霧切さん生きてたヤッホォォォイッ!!77期の皆もなんだかんだ生きてたヤッホォォォイッ!


…さて、良い所を褒めたところで本題に入ろう。


苗木君もうちょっと絡めよおいッ!!最後の最後に77期組の助っ人が来たことは良かったけど、もともとこれは君の物語だろう!たとえ説得の言葉が無かったとしても、それでももっと出張っていいんじゃあないかなぁ!?

そして日向!お前良い所持って行きすぎなんじゃあないかなぁ?もっとさ…恩人の苗木を立てるとか、そういう気の遣い方を…なんて、今更ですかね。それとカムクラはどうなったのかな?ウチのパーフェクト日向みたいに中にまだいるのか、あるいは完全に解け合ってしまったのか…そこんところをもっと知りたかった…!

自分としてはW主人公のロンパを期待していた分、やっぱり77期組の持って行きすぎ感は否めませんでしたが…まあ、ハッピーエンドになったのでまだ良しとしましょう!

…なんていうか、最後の苗木学園長夫妻の描写だけで全部許せた自分がいる。下手になじるよりも、ここはファンとしておおらかに完結を喜ぼうと思います

色々と置いてけぼりな伏線もありますが、そこをこの作品で取り入れてカバーできるよう頑張ってみます!みんな、ニューダンが発売してもこっちも忘れずお付き合いし続けてくださると嬉しいです!


絶望の先にあるもの

「塔和シティの皆さん…いや、世界中の『絶望』とそれに抗う者達よ!大変お待たせしました…『超高校級の絶望』江ノ島盾子、ここに復活―ッ!!」

 唖然とした顔で自分を見上げる者達と、この映像を見ている全ての人たちに向け、江ノ島は高らかに『復活宣言』を果たした。

 

「え、江ノ島っち…!?」

「じゅ、ジュンコお姉ちゃんが…生きてる…!?」

「どうして…盾子ちゃんがここにッ…!」

 当然ながらそれをまともに受け取れるものなど居ない。…苗木を除いてだが。

 

「まったく…相変わらず派手好きだね」

「あー!酷いんだ苗木~、久しぶりに逢ったクラスメイトにそんなこと言っちゃう普通~?」

「あ、あ、アンタッ!江ノ島…なんでアンタがここに居んのよッ!?」

「あれ~?腐川さんもうボケちゃったの?それとも~、残姉ちゃんより残念になるほどこまるちゃんとの友達ごっこが楽しかったの?」

「こいつより残念とか失礼な事言うんじゃあないわよッ!それに、『ごっこ』なんかじゃないわよ!アタシとこまるはちゃんと友達よッ!」

「…そこまで言わなくても…」

「まあまあ落ち着きなよ…。私がここに居る理由なんて、『私の状況』を理解していればすぐに分かることだろう?」

「へ?アンタの状況……ああ、『そういうこと』ね」

「ど、どういうことだべ?」

「…アレがここに居るのは、『今回がココ』なだけよ。…あとは憶えてるでしょ?」

「…あー!そういうことだべか!」

「なら、不思議じゃないね…」

 江ノ島の言葉に現状に得心がいったのか、78期組は早々に混乱から立ち直った。

 

「お、お兄ちゃん…。あの人って、まさか…あの人が…」

「…そうだ。彼女が江ノ島盾子だ」

「ッ!この人が…全ての『元凶』…!?」

「そうとも、苗木こまるちゃん。私こそが全ての元凶、この世界を『絶望』のどん底に叩き落とし、この素晴らしくも絶望的な美しい世界を創り上げた張本人、そして、貴女のお兄さまの苗木誠の『宿敵』である江ノ島盾子ちゃんなのだーッ!」

「お兄ちゃんの…宿敵…!?」

「そんな難しいことじゃあないさ。私は『超高校級の絶望』、この世界の全てに絶望あれ、と願うもの。そして彼は『超高校級の希望』、この世界に希望をもたらすもの。…私と彼は対極の存在、コインの裏と表…。故に私たちは決して『相容れない』…それが私たちの関係なのさ」

「……」

「…まあ、そんなことは今はどうでもいいんだ。今の私はただの『敗者』でしかないのだからね。…さて」

 呆然とするこまるへの応対もそこそこに、江ノ島は子供達へと視線を移す。

 

「やっほーアンタ達!久しぶりだね~、元気してた?」

「じゅ、ジュンコお姉ちゃん…?」

「そうだよ。アンタ達がずっとずっと…耳障りなぐらい連呼してた、ジュンコお姉ちゃんですよー♡」

「ど、どうしてジュンコお姉ちゃんが…?死んだんじゃなかったの…?」

「んー?…それ何処ソースよ?」

「そ、ソース?」

「どこから聞いた情報だっつってんの!」

「そ、それは…僕たちは、モナカちゃんから聞いただけで…」

「ほぉ~?」

 ちらりと視線を向けられたモナカは、今迄の態度が嘘のように、ウサギのようにビクンと身を震わせ竦みあがる。

 

「…で、誰から聞いたの?」

「わ、私は…あの希望ヶ峰学園の中継を見ていて…。中継が終わった後、未来機関の情報を調べていたら、ジュンコお姉ちゃんが死んだって聞いて…召使い、狛枝お兄ちゃんからも間違いないって言われて…」

「ふ~む、要するに未来機関の情報を信じたってワケね?…だったらまあしょうがないか~。アイツらのことだからアタシを殺しとかないと納得いかないだろうしね~、その方が自分達にとって都合がいいし~?」

「…え?ど、どういう意味…?」

「…あー、もうハッキリ言うわ。アタシはまだ『死んでませ~ん』!」

「え…!?」

 江ノ島のカミングアウトに、子供達とこまるは驚愕する。

 

「死んでないって…じゃあ、なんで死んだってことに…?」

「あーあー、その辺はメンドクサイからパス!…という訳で、苗木説明ヨロシク~!」

「…ホント君は、肝心なところで僕に振るのかな?」

「いーじゃんか~?…こんなことするの、苗木だけだよ?」

「…盾子ちゃん」

「…むくろが怖いからそういうのは止めてね」

 

 

 江ノ島から説明を丸投げされた苗木は嘆息しながらも、自身があの闘いで江ノ島に与えた『罰』の実情を説明した。

 

 

「…という訳で、彼女は厳密には死んでいない。だが、僕の『レクイエム』に囚われている以上、決して自由にこちらに干渉することは出来ない。…それが今の江ノ島さんの現状だ」

「…じゃあ、ジュンコお姉ちゃんは…死んでは生き返ってを、ずっと繰り返し続けてるってこと…!?」

「なんじゃそりゃ…!?」

 スタンド能力のことを碌に知らない子供たちや花音、灰慈にとって、その事実は余りにも荒唐無稽で信じがたいものであった。

 

「ちなみに前回でかれこれ『489回目』になるかな~?…あ、ディアボロは150回超えたぐらいで耐え切れなくなって消えたから安心してねー」

「…500回近く死に続けて正気を保ってる辺り、やっぱアンタも化け物ね…」

「つか、改めて聞くと増々やべえ能力だべな。苗木っちのレクイエムは…」

「…けど、それならどうして盾子ちゃんは今回はこうやって話ができるんだろ?今までは碌に話もできないまま死んでたのに…」

 

「ああ…そりゃ僕が『呼んだ』からね」

「!?」

 戦刃の疑問に、苗木は当然のようにそう答える。

 

「呼んだって…アンタが江ノ島をここに連れてきたの!?」

「…今の僕は『レクイエム』の力を完全にコントロールしている。その気になれば、江ノ島さんが『いつ、どこで、どうやって死ぬか』までを思い通りにすることだってできるさ」

「な、なんでそんなことを…?」

「…『必要』だと思ったんだ。この子たちには、江ノ島さんという『現実』をきちんと知ってもらうことがね…」

「…ったく、人の事言っといて自分だって人遣い荒いんだからさ。しょうがないなぁ…」

 嫌味を言いつつもまんざらでもなさそうな江ノ島は、再び子供達へと向き直る。

 

「…で、アンタらアタシに訊きたいことがあるんじゃないの?」

「…ジュンコお姉ちゃん、お姉ちゃんは僕たちを…」

「私たちを助けてくれたのは…モナカちゃんを利用する為だけだったっていうのは…本当なんですか…?」

「……」

「なあ…!答えてくれよジュンコお姉ちゃん!」

「ほ、本当に…あ、僕チンは別にいいんだけど…僕チン達は、ラムネのビー玉みたいな、モナカちゃんの『おまけ』だったの?」

 

「…そうだよ」

『ッ!』

 子供たちの問いに、江ノ島はなんでもないように残酷な答えを返す。

 

「あの時は、手っ取り早く世界をぶっ壊すための使い勝手のいい『手』を探してたのよ。…そう言う意味じゃ、モナカちゃんはアタシにとってこれ以上ない『手』だったからね。ま、ぶっちゃけ…アンタらはたまたま一緒だったからなんかの役に立つかと思って拾っただけだよ」

「…そんな…」

「じゃあ…ジュンコお姉ちゃんは、俺達のことなんかどうでもよかったのかよ…?」

「私たちの事を愛してくれていたのは…全部、『演技』だった…んですか…?」

「…だから言ったじゃん。皆みたいなのが『愛されるわけが無い』って…」

「う、ううう…」

 

 

 

 

 

 

「…モナカちゃん、君少し『勘違い』をしていないかい?」

「え…?」

 急に話を振られ、モナカは思わずポカンとしてしまう。

 

「君さ、さっきから随分と上から目線で話してるけどさ…まさか、『自分だけは特別』…だなんて思っちゃいないよね?」

「…な、何言ってんのさジュンコお姉ちゃん…?私は、ジュンコお姉ちゃんの為に…」

「ブァーカッ!オメーがアタシにどんだけご奉仕しようがどうでもいいんだっつーの!」

「え…?」

「正直なところ、私にとってあなたが塔和グループの人間だと分かった時点で、あなたの『役目』は既に終わっているのですよ。…別にあなたに取り入って塔和グループの技術力を借りるまでもなく、あなたを理由に塔和グループの関係者にさえ接触できれば、塔和グループを『乗っ取る』こと自体そう難しくはありませんでした。…そうしなかったのは、あなたがそこそこ賢しかったのと…私にやたら固執していたので、ちょっといい夢を見させて、後で『事実』を知った時にどんな『絶望』を見せてくれるのか、ほんのちょっぴりだけ気になったからに過ぎません」

「え…意味、分かんないよ…?私は…ジュンコお姉ちゃんの…ジュンコお姉ちゃんがやりたかったことを…!」

「…そう言うところが、『賢しい』っていうんですよ。『本心』を一度も見せていないような人間のやりたかったことを、まるで分かった風になってやってるあなたは…酷く滑稽で、絶望的でしたよ…!」

「あ…え…?」

「そもそも、苗木君のご両親をあんな形で殺してしまったのは頂けないね。彼らとこまるちゃんは私が用意した苗木君に対する『最後の切り札』だ。本来なら、苗木君の力を極限まで削りきった後に、最後の最後の『悪あがき』を防ぐために使う予定だったんだよ。…ジョースター家の一族の『爆発力』を嘗める訳にはいかなかったからね。生憎コロシアイ学園生活では使う機会がなかったが…もし私が君なら、こまるちゃんを絶望させる程度のことに殺したりはしないよ。まあその辺が君の『限界』でもあるんだけどね…」

「……」

「…おーい、聞いてる?聞こえてるかーい?」

「……」

 江ノ島の口から放たれる本音を、しかしモナカは半ばから聞いていなかった。…自分がジュンコお姉ちゃんに『必要とされている』、自分だけがジュンコお姉ちゃんを『理解している』…それがモナカが希望の戦士たちをなんの感慨も無く利用できた理由であり、『2代目江ノ島盾子』という壮大な計画を実行した理由もでもあった。

 

「私だけが、ジュンコお姉ちゃんを分かってあげられる。私が創った『2代目』こそが、江ノ島盾子の跡を継ぐに相応しい」

 

 …それは、江ノ島という拠り所を失ったモナカの、大きくなり過ぎた『自尊心』を支える『希望』であった。…しかし、それはたった今砕かれた。自分にとっての『希望』である、江ノ島盾子という『絶望』によって。

 

「お?良い表情してんじゃ~ん!そう、それ…!分かる?…それが『絶望』なんだよ。今やっとアンタは、私が請い求めていたものを『体感』できたってワケだ。…じゃあ駄目押しにトドメの一言ッ!…アンタも、こいつらも、ぜ~んぶ苗木をぶちのめすためだけの『おまけ』でしかなかったんだよッ!!」

『ッ!!』

 その瞬間、バラバラだった希望の戦士たちの心が、奇しくも一つになった。…『絶望』というものによって。

 

「ひ、酷い…」

「え、エゲツなさ過ぎでしょあの女…!?」

「…こいつらに同情なんざねえけどよ、…この女だけは見てるだけで吐き気がしやがるぜ…」

 初めて目の当たりにした『江ノ島盾子』と言う存在に、こまる、花音、灰慈は初めて感じる感情に恐れ慄き…

 

「マジでイカレてやがるなあの女…!」

「ジョジョはよくあんなの『友達』なんて言えるぜ…」

「…こいつは、もう『善』とか『悪』なんてレベルの存在じゃあない。存在そのものが『生きていてはならない』やつだな…」

 数々の絶望の残党と戦ってきたウェザーたちも、その大元ともいえる存在に冷や汗を流し

 

「…相変わらず、反吐が出るわね」

「うう~…駄目だべ。頭では分かっててもどうしても理解できないべ、江ノ島っちは…」

「…そう、これが…盾子ちゃんなんだよね」

 再びその本性を目の当たりにすることになったかつてのクラスメイトに、78期組もまた複雑な心境でそれを見ていた。

 

 

 

 

「…本当に、君は変わらないね」

 そんな中、苗木は特に動揺した様子もなく、それが当然のように江ノ島に語りかける。

 

 

「あたぼーよ。アタシはアタシよ、アンタが希望でアタシを塗りつくそーが、アタシは絶対に変わってやるもんか。アンタが『希望』であり続ける限り、アタシは『絶望』であり続ける。…言ったでしょ?アンタとアタシは『表裏一体』、同じ存在には…『なりえない』のよ」

「…そうだね。…でもさ、例え絶望でも『気持ち』は共有できるよね?」

「あん?」

「僕が彼らと過ごした時間はあまり長くは無かったけど…でも、この子たちと居る時は、僕はすごく楽しかったよ。この子たちがどんな大人になって、自分の道を決めていくのか…生意気かもしれないけど、『父親』って奴の気持ちが、ほんの少しだけ分かった気がするんだ。…キミはどうなんだい江ノ島さん?『目的』云々は別として、例え出会い自体に大した意味は無くても、彼らと過ごした時間全てが『無駄』だってって、そう言えるのかい?」

「……ったく、ズルいじゃんかその言い方。…ま、確かにアンタらと居た時間が『退屈』だった訳じゃないけどね」

「…え?」

 江ノ島の予想外の発言に、茫然としていた子供たちが反応する。

 

「コロシアイ学園生活の準備してる間はさ、ぶっちゃけただの様子見だったからどうでも良かったけど…。けど、苗木と一緒にアンタらの世話焼いてる時は…馬鹿みたいな『家族ごっこ』をしている時はさ…、ほんの少しだけ…『こんなのもいいか』って、思ったりもしたよ。今だから言うけど、『人類史上最大最悪の絶望的事件』をやるのを迷ったのは…後にも先にもあの時だけだよ」

「ジュンコ…お姉ちゃん…」

「盾子ちゃん…!」

「…驚いた。こいつにも人並みに『良心』があったのね」

「おいおい、勘違いしないでくれよ腐川さん。私に良心なんて便所のコオロギのフンにも劣るモノが在るワケないだろう?これはね…」

 

「…『絶望』だろう?」

 腐川の言葉を否定しようとした江ノ島の言葉を、苗木が引き継いだ。

 

「…は?絶望?」

「うん。江ノ島さんがその時に感じたのは『絶望』…そうだろう?」

「…流石は苗木。よく分かってるじゃあないか」

「ど、どういうことお兄ちゃん?」

「…江ノ島さんは、僕等に、この世界に『絶望』を齎した。けど、僕たちにとっては『絶望』でも、江ノ島さんにとってそれは『希望』なんだよ。この世界の全てに、そして自分自身にすらも『絶望』を感染させる…それが江ノ島さんにとっての『希望』なんだ。…でも、江ノ島さんはその時に初めて自分の希望に『疑問』を持った。一瞬かもしれないけど、自分の希望を『否定』しようとしたんだ。…それもまた、『絶望』なんだ。他者を傷つけ、なにもかもを放棄することだけが『絶望』じゃない。自分の希望を疑い、自分とは異なる希望を見極めることもまた、絶望の在り方の一つなんだよ。『絶滅を望む』のではなく、『絶対を望む』から『絶望』…希望も絶望も、同じ誰かの『望み』なんだから」

「…奇しくも、貴様があの入学式の日に言ったとおり、私様は『絶望に絶望』してしまったという訳だ。まったく…『絶望』をここまでポジティブに捉えられる奴なんて貴様だけだぞ」

「忘れたのかい?…『前向き』なのが僕の昔からの取柄なんだよ」

「…お兄ちゃん…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォォォォォッ!!

『ッ!!?』

 突如、ヒルズの外から轟音が鳴り響いた。

 

「な、何…!?」

「外で…何かが起きてる…!?」

 轟音に混じって、外の大人達の喧騒も聴こえてくる。皆は原因を確かめようと窓ガラスの方へと視線を向け…

 

「…え?」

 しかし、その『元凶』は向こうから姿を現した。

 

「あ、あれは…ッ!」

「ビックバン…モノクマ…ッ!?」

 窓の外からこちらを覗いているのは、操縦者の灰慈がこちらに居る為バリケード代わりの置物になっている筈の『ビックバンモノクマ』であった。

 

「な、なんでアレが動いてやがる…!?おい最中ッ!お前の仕業か!?」

「…私知らないよ。あれを動かせるのは『お父さんとお兄ちゃんだけ』…そう設定したのはそっちじゃん」

「じゃあ、どうして…?」

 

「…はは~ん、さては『アレ』の仕業だな?」

 皆が混乱する中、江ノ島は一人得心がいったようにうんうんと頷く。

 

「あ、アンタッ!まさかアンタが何かやったの!?」

「アタシは何にもしてないよ~?つーかできないし…けど、まあ『間違いではない』かもねぇ?」

「はぁ?」

「苗木、アンタなら想像がつくんじゃあないの?」

「…ああ、だいたいね」

「ちょ…!オメーら、それどころじゃ…ッ」

 そうこうしているうちに、ビックバンモノクマは左手を振り上げこちらに向けて振りかぶった。

 

「ま、まさか…ッ!?」

「…ふ~ん、今回は『こういうこと』ね。成程ね~、確かにこういうもの『絶望的』かもね~!」

「じゅ、盾子ちゃん!落ち着いてる場合じゃ…」

「あー無理無理。アタシは多分どうやっても『避けられない』から。だったら逃げるのもメンドイしここに居るわー」

「じゅ、ジュンコお姉ちゃん…!?」

「それに~…『自分に殺される』なんて早々あることじゃないじゃな~い!こんなの逃げたら勿体ないって~!」

「自分に…って、アンタ何言ってんの…?」

「あー…その辺は後で苗木にでも聞いといてー。んじゃ苗木~、私はここでドロンするね~!」

「…最近『これ』が罰になってるのかが分からなくなってきたよ」

「まーまーいいじゃん。…あ、それと…最後に一つだけ『助言』してあげるよ」

「助言?」

 目の前のビックバンモノクマが今にも拳を振り向こうとしているのにも構うことなく、江ノ島は苗木にこう告げる。

 

 

 

 

「…『未来機関』に行くんなら覚悟しときな。多分すっごく『面白いこと』になるからさ…!」

「…?それは、どういう意味…」

「それは見てのお楽しみー!…ああ、それとあと一つ」

 

 

 

 

 

 

「…プッチはまだ『生きている』よ。殺るんならとっとと行ってきな」

「なっ!?」

「はぁッ!?」

 江ノ島の衝撃の発言に、苗木だけでなくこまるや腐川も思わず声を上げる。

 

「プッチが生きてるって…どういうことよ江ノ島ッ!」

「残念―!ここで時間切れ~!…またね、苗木。愛してるよ♡」

 

ドギャァァァッ!!

 その言葉と同時に、ビックバンモノクマの拳が広間に叩きこまれた。

 

 

「きゃあああッ!?」

「ひ、ひいいいい!」

「み、皆…こっちに!」

「わあああッ!?」

 子供たちを庇いながら皆が逃げ惑う中

 

 

 

「…江ノ島さん」

 『間一髪』で直撃を免れた苗木は、ビックバンモノクマの拳の先…つい先ほどまで江ノ島が立っていた場所に視線を向ける。やがてビックバンモノクマが拳を引くと…その拳と退かれた場所には、『人間一人分ほどの血痕』だけが残っていた。

 

「じゅッ…!?」

「じゅ、ジュンコお姉ちゃんッ!!?」

 それが意味するものを即座に理解した子供たちは青ざめ、その血痕の主であろう人物の名を叫ぶ。

 

「おいオメーら!立ち止まってねーで早く逃げるべ!」

「で、でも…ジュンコお姉ちゃんがッ…!」

「ああ!?…気にすんな!『いつものこと』だべ!どうせその辺で生き返ってるべよ!それよりオメーらは死んだら終わりなんだから逃げるべ!」

「グズグズすんなッ!…次が来るぞ!」

 アナスイの警告通り、ビックバンモノクマは次の攻撃の為に既に拳を振りかぶっていた。

 

「…ッ!モナカちゃん!」

 逃げようとした新月であったが、視界の端にただ茫然と座り込むモナカを捉えてしまい、思わず叫ぶ。

 

「モナカちゃん何やってるんだ!?早く逃げないと…」

「……」

「モナカちゃん!」

「…もう、どうでもいいし」

「え…!?」

 吐き捨てるようにモナカはそう言った。

 

「私の計画もなにもかも壊されちゃった…ジュンコお姉ちゃんも私の事なんかどうでもいいって言ってた…。だったら、今更『何の為』に生きてりゃいいってのさ?」

「そ、そんなの…生きてみなきゃ分かんないじゃん!」

「…もういいんだって。『希望』とか『絶望』とか、所詮モナカには似合わないことだったんだよ。モナカはここで無様におっ死にまーす…」

「ちょ…アンタッ!」

 こまるや腐川も思い留まらせようとするが、ビックバンモノクマがそれを待つはずが無い。再び振り上げたこぶしを、今度はモナカ目掛けて振り下ろした。

 

 

ゴォォォォ…ッ!!

「…ばいばい皆。結構楽しかったよ」

「も、モナカちゃんッ!!」

 迫りくる死の一撃にも、モナカはなんの感慨も無くそれをただ待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …そんなモナカとビックバンモノクマの拳の間に、黒いコートと金髪を翻して苗木が立ち塞がる。

 

「な…ッ!?」

「お、お兄ちゃんッ!?」

 自ら射線上に割り込んだ苗木にモナカもこまる達も困惑の声を上げる。その声を受けながら、苗木は迫りくる拳に相対する。

 

 

「…お前なんかが、僕の邪魔をするんじゃあないッ!!『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』ッ!」

 

 

 

 

 

ドゴォォォンッ!!

 轟音と共にビックバンモノクマの拳が衝突し…

 

 

 

 

「……え?」

 

「…フン」

 しかしそれは苗木と『G・E・R』によって、モナカへと当たる前に『受け止められていた』。

 

「う、受け止めた…!?」

「んなバカな…ッ!?ビックバンモノクマは『50万馬力』だぞ!人間に止められる訳ねえだろッ!?」

「…で、でも…実際止めてますよ!」

 唖然とする一同に、苗木は淡々と事実を告げる。

 

 

「…『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』。その能力は『僕に対するエネルギーをゼロへと還す』というもの。その能力で、こいつのパンチの『運動エネルギー』を『ゼロ』にした。こいつがどれほど凄いパワーを持っていようが、僕にとっては『風船を受け止める』程度のものでしかない…」

「ま、マジか…!?」

「これが…レクイエム…ッ!」

 圧倒的。そうとしか言いようのない『レクイエム』の力に皆も言葉が出ない。そんな中、苗木に救われる形になったモナカが茫然と問う。

 

「…なんで、なんで私なんかを助けたの?」

「言った筈だよ。…キミは生きるんだ、生きなければならない。例え君が望まなくとも、君は僕の『エゴ』によって生かされるんだ。恨みたければ、憎みたければ勝手にすればいい。…だけど、どれほど拒絶されようとも、僕は僕自身の為に…何度でも君を守る。だから君は殺させない」

「…!」

「…おいデカブツ!聞いてたかどうか知らないけどもう一回言ってやる!…僕はこの子に、『生きろ』と言ったんだ。それを拒むにしろ受け入れるにしろ、それを決めていいのはこの子と僕だけなんだよ。だから…お前みたいなものにこの子の命を奪う『権利』なんかないんだよッ!この『偽物』がッ!!」

『…!』

 苗木の啖呵に、ビックバンモノクマの『中』の存在は確実に『動揺』した。

 

「エルメェスッ!」

「おう!」

 苗木の指示を受けたエルメェスが駆け出した。

 

「『キッス』!シールだ!」

 己のスタンド、『キッス』の能力によって生み出された『シール』をビックバンモノクマの腕に貼り付ける。

 

「シールを貼った!するとぉー…ッ!」

 

バリッ!

 次の瞬間、シールが貼られたビックバンモノクマの腕が『2つに分かれた』。

 

「うわッ!?な、なにアレ!?」

「アタシの『キッス』はシールを貼ったものをなんでも『2つに分ける』ことができる!…今だお前らッ!」

「ウェザー!アナスイ!むくろ!」

「了解…!『ウェザー・リポート』!」

「『ダイバー・ダウン』ッ!『潜行』して内側から破壊しろッ!」

「『エアロスミス』ッ!」

「『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』!」

 

『オオオオオオオッ!』

『ウェザァァァァリポォォォォトッ!!』

『ボラボラボラボラボラッ!』

『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!』

 二つに分かれたビックバンモノクマの片方の腕にアナスイの『ダイバーダウン』がその能力、『物体に潜行する』力で潜り込み、外から銃撃する『エアロスミス』と合わせて内外から破壊する。もう片方の腕には『ウェザー・リポート』の放つ『落雷』と『G・E・R』のラッシュが炸裂する。

 

「姐さんッ!」

『…ボラーレ・ウィーア!』

 

ドォォォンッ!

 そして最後に放たれた『エアロスミス』の爆弾が、ビックバンモノクマの腕をそこに貼り付いた『シールごと』焼き尽くす。

 

「そして…シールが剥がれた時、分かれていた物体は一つに戻り…その時にちょっぴりだが『破壊』が生じる!そして分かれていた物が戻るってことはよぉ、両方の腕の『ダメージ』も一つになるってことだ!そんだけ喰らえば…」

 シールが焼け落ちると同時に、ビックバンモノクマの腕が一つに戻り

 

「…テメーみてーな野郎でもぶっ壊れんだろ!ファック!」

 

ドゴゴゴゴッ…!

バキャァァァンッ!!

 それと同時にまるで凄まじい圧力で潰されたかのようにその腕がひしゃげ、次の瞬間には爆音を上げて左腕が吹き飛んだ。

 

『オオオオオオオ…!』

「や、やったッ!」

「スッゲェ…!」

 苦悶の悲鳴のような野太い声を上げ、ビックバンモノクマは後方へとよろめいた。その隙に、苗木は体勢を整えるべく指示を飛ばす。

 

「葉隠君!戦えない人たちを連れて避難してくれ!できればヒルズの外まで逃げてくれ!」

「お、おうッ!オメーら走るべ!…ほらモナカっち、オメーも来るべ!」

「あ…」

「狛枝っちも…っていねーし!?どこ行ったべ!?」

「お、おい!もうそれどころじゃねーだろ!」

「…だーッ!しょうがねえ、狛枝っちなら多分生きてるだろ!…苗木っち、後は頼んだべー!」

 モナカを背負いあげると、葉隠は子供達や灰慈、花音、セレスの猫を連れて一目散に逃げ出していった。

 

「むくろ、エルメェス!二人は十神君の救出に向かってくれ!まだヒルズのどこかに居る筈だ!」

「…分かった!」

「び、白夜さまはきっとヒルズの最上階に居るわ!…でも、そこの鍵が…」

「鍵?…それってこれか?」

 エルメェスが先ほど不比等らから預かった鍵を『胸元』を弄って取り出す。

 

「…!き、きっとそれよ!それどこで…」

「さっき霧切の姐さんの爺さんから貰ったんだよ。…あ、どこに隠してたとかは聞くなよ?」

「んなもんどうでもいいわよッ!そんなことよりさっさとお助けに行きなさいッ!無事じゃなかったらタダじゃあ済まないわよ!」

「うん、分かった…」

 戦刃とエルメェスは十神の救出へと向かう。

 

「…腐川さん、こまるを頼む。二人で安全なところまで逃げてくれ」

「頼むって…アンタはどうするのよ?」

「僕はアレを『潰す』。…プッチも放っては置けないけど、アレを野放しにはしておけない…!」

 苗木は視線の先のビックバンモノクマを見て当然のように答える。

 

「潰すって…無茶だよ!いくらお兄ちゃんでもあんなの…」

 

「WRYAAAAAAッ!!」

 

ビキビキビキ…ッ

「「ッ!?」」

 突如苗木が雄叫びを上げたかと思うと、苗木の瞳と髪の毛が再び『紅く染まる』。それに応じて苗木の全身の筋肉が盛り上がり、体が一回り大きく膨れ上がった。

 

「お、お兄ちゃんが…『変身』した!?」

「ちょ…どうなってんのよコレ!?出る作品間違えてんじゃあないの!?」

 

 

 苗木の髪が紅く染まったッ!

…結論を言ってしまえば、今苗木の体に起きているのは『ドーピング』の一種である。『血液ドーピング』と呼ばれるドーピングは、体内の血液量を一時的に増やすことで運動能力を高めるというものである。苗木は父であるDIOと同じように、自身の体を自由にコントロールできる。苗木はその能力を利用し、体内の血液をコントロールして疑似的にドーピングと同等の症状を引き起こしたのだ。

 今、苗木の体では通常の『10倍』のスピードにまで血流が加速しており、それにより全身の細胞に過剰なまでの酸素を供給させ、心肺機能、及び筋肉の活動を高めていた。…が、当然そんなことをすれば吸血鬼と言えど血管が持たず破裂してしまう。そこで苗木は、自分の『髪の毛』を『血管の延長線上』として利用し、髪の毛の一本一本にまで血液を流すことで体内の血液量を増やし、なおかつ加速した血流に耐えられるように体を創りかえたのである。

 

 それにより強化された苗木の肉体は、かの『柱の男』たちの肉体をも凌駕し、その腕力は握力だけでも『1t』を越えるッ…!

 

「HAAAAッ…!ウェザー!アナスイ!援護しろ!…速攻で片付けてプッチを追うッ!!」

「了解ッ!」

「お、お兄ちゃん!」

「…心配するな。俺達はヨーロッパで既にあの手のデカいのを『3体』倒している。内一体はジョジョ一人で倒したようなものだ。…キミ達はもう十分戦った。後は俺達に任せろ…!」

「アンタら…」

「行くぞッ!」

「…ッ!行くわよこまる!」

「あ…待ってよ腐川さん!…お兄ちゃんッ!」

「ハアァァァァッ!!!」

 

 腐川に引き摺られ広間から退避するこまるの眼前で、苗木たちはビックバンモノクマへと立ち向かっていった。

 




そろそろこっちも終わりの時が…!

ちなみに今回のドーピング苗木のスペックをカーズ風に…

握力…1トン以上
跳躍力…15メートル
視力…両目10.0
聴力…1㎞先のささやき声でも聞き取れる
筋肉…人間の数百倍の自己再生力。四肢欠損程度であれば1分足らずで完治可能
知能…IQ193…ちなみに霧切は200、江ノ島は400、カムクラは測定不能
好きな食べ物…愛する妻の血
目的…世界の希望を守る。絶望であろうと見捨てない。なぜなら苗木は人の可能性を信じているから。苗木にとって、絶望もまた人間の可能性の一つでしかない。それ故に、江ノ島もまた人間である。

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