…という訳で今日もやります
ホントは絶望編観てからやろっかなー?…と思ったのですが、それはまた後程にしておきます
…しかしそろそろ息切れしてきました。自重して9話の感想はまた今度にしようかなー?(フラグ)
『俺達が生贄だと…!?』
『ふざけんなクソガキーッ!テメエらガキだけで死んでろー!!』
モナカの真意を聞いた大人たちは当然のことながら憤慨し、モニターの向こうのモナカに罵声を飛ばしていた。
「ど、どういうことだよ…!?この街で起こったことは全部、兄貴に『復讐』する為だけにやったってことなのか!?」
「…そういうことだろうな」
「そのために、世界全部を巻き込んで戦争おっ始めようってか…心底イカれてるぜあのガキ…ッ!」
周りの大人たちが感情のまま怒っているおかげか、事情を知る要救助民の皆は比較的冷静に事態を飲み込めていた。
「…なあホルっち、あの子が言っていたのは本当なのかい?その…こまるっちの兄貴が、あの子の大切なジュンコお姉ちゃん…だっけ?そいつを『殺した』ってのは…」
「…厳密にはチト『違う』が、大体そんなもんだ。大将はあの『コロシアイ学園生活』を終わらせるために江ノ島盾子と戦い…そして倒した」
「その復讐の為に、あの子はこの街そのものを誠君の『呼び水』にしようとしたということか…」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「…アンタらにとっちゃ、複雑な気分だろうね」
言いようのない表情でモニターを見ているのは、隆秋、太一、富士子、雪丸、ケンイチロウの5人。あのコロシアイ学園生活の中で大切な人を失った面々であった。
「…彼女の気持ちは、正直わからないでもない。だが…だからといってここまでするというのは…」
「…僕たちは悲しみに耐えられた。『大人』だったから。…けれど、いくら天才といってもあんな『子供』にそれを割り切れと言うのは…難しかったのかもしれない」
「…けど、『同情』はできてもさ…」
「…『許す』ことは到底できぬ…か」
「しかし、彼女はどういうつもりなのでしょうか?」
「…どういうことですかアロシャニスさん?」
ふと疑問を口にしたアロシャニスに羽山が尋ねる。
「ここまで計画を暴露してしまえば、もはやあのコントローラーを『壊す』などという選択肢などあり得ないでしょう。…例え灰慈殿やこの場の大人たちがそれを望んだとしても、それはつまりこまる様に『戦争の引き金』を引かせることになる。…そのようなことを冬子様が許す筈がありません。灰慈殿を叩きのめしてでも、それを阻止するでしょう」
「…うむ。じゃが彼女は自分の計画の全てをあろうことか『自分自身』で全て暴露した。味方など居ない『孤立無援』の状況でじゃ。…それが不気味でしかたないわい」
「そうだよね…。私には、あの子がまだ何かを『隠している』気がするよ…」
アロシャニスの言葉に不比等、五月雨の探偵コンビも同調する。
「…姐さん、大将…!頼む、間に合ってくれ…!」
その頃、塔和ヒルズの最上階まで来ていた戦刃たちも、モニターから聴こえてくる会話の内容に思わず足を止めていた。
「ここでのことが全部、私たちを…誠君を呼び寄せるために…!?」
「モナカちゃん…そんなことの為だけに…!?」
「俺達がジュンコお姉ちゃんにとって『おまけ』なんて…そんなの信じられるかよッ!」
「で、でも…嘘言ってる感じじゃないような…あ!も、もちろん僕チンが勝手にそう思ってるだけだけどさ…」
「…だが、姐さん。そうなると『今の状況』は奴の思い通りの展開と言う事にならないか?」
「俺達はまんまとおびき出されたって訳かよ…」
「…ううん。そうとは限らないかも」
「え?何でっすか?」
戦刃の言葉にエルメェスが首を傾げる。
「もし私たちをすぐにでもこの街に呼ぶつもりだったのなら、未来機関じゃなくて私たちの方に要救助民の情報を流す方が確実だし、そもそも通信衛星を破壊する必要だって無い筈だから。…だから多分だけど、モナカにとってはまだ私たちを呼び寄せる『準備』ができてないんじゃないかなって…」
「準備…?戦争が起きてからってことか?」
「そうなのかもしれないけど…正直なところ、『ただの戦争』なら私たちが介入する理由は無いの。未来機関の問題は未来機関がカタをつける。互いに余計な手出しはしない。…それが誠君と私たちがパッショーネに戻る時に天願会長と宗方副会長と交わした『条件』だったから」
「…単にそれを知らないだけじゃないのか?『お兄さん』の優しさにつけこんで、戦争さえ起きれば来るって思ってるだけなんじゃ…?」
「ぼ、僕チンには…モナカちゃんが『お兄さん』を『絶望』させるって言ってた、そっちのほうが気になるなあ…」
「絶望…?誠君が?」
「…んなもん無理だろ。あの江ノ島盾子ですらジョジョを絶望させられなかったんだぜ。あんなガキにんなことできる訳が…」
「…ッ!!まさ、か…ッ」
かつて『絶望』に身を置いていた経験からか、それともあのコロシアイ学園生活での経験からか…戦刃はある『結末』に思い至った。
「ど、どうした姐さん?」
「…ある!一つだけ…誠君がこの街に介入する『理由』になって、なおかつ誠君を『絶望』させるに足る『結果』が…ッ!」
「なんだって!?」
「だとしたら…まだ『終わってない』!むしろ、彼女にとっては『ここから』の筈…皆、急ごう!早く行かないと間に合わなく…」
『シャガァアアアッ!!』
「ッ!?なんだ!?」
奇声と共にあちこちの通路から大量の『ジャンクモノクマ』、『ビーストモノクマ』、『デストロイモノクマ』が戦刃たちへと襲い掛かる。
「まだこんなに残ってやがったのか…!」
「う、うわあああッ!?」
「下がってろガキ共ッ!…さっさと片付けるぜ!」
「無論だ…」
「…そこを、どけぇッ!!」
戦えない面々を後ろに下げ、戦刃たちはモノクマの群れを迎撃する。
…その光景を、最上階のエレベーターを上った先の屋上から一人の青年が見ていた。
「…困るんだよね、今君たちに来られるとさ。だから…もう少し足止めされていてよ。『彼女の計画』が完遂するその時までさ…」
「……」
「…じゃ、後は頼んだよ」
戦刃たちを襲っているモノクマに指示を出しているらしいモノクマキッズにそう言い残し、青年は眼前のエクスカリバー号へと入っていた。
そして、そのエクスカリバー号の中では…
「苗木を…『絶望』させるですって…!?」
「そうだよ…。それが私の、そしてジュンコお姉ちゃんが『人類史上最大最悪の絶望的事件』の『グランドフィナーレ』にしようとしていた『望み』なんだよ」
「…そんなもんの為に、俺達をこんな目に遭わせやがったってのか…ッ!?」
「私たちを散々に利用したのも、そんなことの為に…!?」
「ごめんね、二人とも。…でもしょうがないんだよ。それがジュンコお姉ちゃんがやりたかったことなんだから。…なら、私が代わりにやってあげないと駄目でしょ?」
口では謝ってもまるで悪びれた様子の無いモナカに灰慈と言子はなおも怒りを燃やす。
「…ねえ、苗木誠ってアンタの家族?」
「え?…う、うん。私のお兄ちゃんなんだけど…」
「なんでアンタの兄貴がこんな大事の渦中にあるワケ?アンタの兄貴とそのジュンコお姉ちゃんってどういう関係だったのよ?」
「えっと…私にもよく分からないんだけど…」
イマイチ状況を飲み込めない花音がこまるに質問していると
「…オメーの目的は分かったけどよ、ハッキリ言って良いか?…そりゃ『無理』だべよ」
そう断言したのは、あの葉隠であった。
「え?む、無理?」
「…どうして?」
「だってよ…あの江ノ島っちが2年がかりで考えた『コロシアイ学園生活』でも、苗木っちは一瞬だって『絶望』したことなんか無かったんだべ?確かにオメーがやろうとしていたことはとんでもねーけど…それであの苗木っちが絶望するとはとても思えねーべよ…」
「…そうね。むしろ『逆効果』じゃないかしら?下手したらアイツ一人で戦争だって止められそうだし…。アンタが『2代目江ノ島盾子』になった程度じゃ、何も変わらな…」
「…それは違うよ」
「え?」
スクッ…
そう言って、モナカは『立ち上がった』。
「た、立った…!」
「立った…?モナカが立った…!?」
「…そのネタはもう終わったわよ…ッ!」
モナカの嘘を知らなかった灰慈と言子は驚くが、モナカは構わずこまるの方へと歩み寄る。
「な、何…?」
「モナカね、お姉ちゃんたちにはもう一つだけ『嘘』をついてたんだ」
「え?」
「お兄ちゃんさ、今迄の話を聞いてこう思わなかった?…なんでここまで計画しておいてこいつはさっさとコントローラーを壊さなかったのか?…どうしてこいつは自分の計画をここまでペラペラしゃべっているのか?…ってさ」
「…ッ!そ、そうだ!やっぱりおかしいぜ!もし本当に爆発するのなら、とっととやってりゃいいのによ!」
「…それじゃ『駄目』なんだよ」
「はぁ…?」
「『絶望』が『絶望的』なことをしたって、そんなの『普通』だもん。本当の『絶望』っていうのはさ…『希望』を抱いた人間が同じことをやってこそ意味があるんだよ…!」
「き、希望…?」
「ほら、耳を澄まして聞いてごらんよ。外の人たちの声をさ…」
「え…?」
『さっさと壊せー!ガキ共をぶっ殺せーッ!!』
『殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せッ!!』
「み、皆何言ってんだよ…!?やめろよ皆ッ!」
「やめてくださいッ!子供を…子供を殺すことを助長するなどッ!!」
「…クソッ!止まりっこねえよこんなもん…」
「これがアイツの狙いか…!もうこいつらは正気じゃあねえ…、アイツらの言うところの、正真正銘の『魔物』になっちまいやがった…」
「やれやれ…冗談じゃないよこんなの…」
隆秋やケンイチロウ達が制止しようとするが、復讐心で半ば我を忘れた大人たちは到底止まるものではなかった。
「こ、殺せって…何言ってるの…!?」
「聞こえるでしょ?…これがオトナ達の声、あなたが育てたオトナの『希望』なんだよ…!」
「わ、私が…育てた?」
「ちょ…何言ってんのよ!それじゃまるでこまるが悪いみたいじゃないのッ!」
「…だってそうでしょ?無気力で絶望しきっていたオトナを煽ったのも、希望の戦士を倒してコドモと戦ったのも、オトナ達に『希望』を与えてここまで連れてきたのも…全部苗木こまるさんのせいじゃん」
「わたしは、そんな…」
「あなたの活躍は実際凄かったよー。私や召使いさんのサポートがあったとはいえ、希望の戦士を全員やっつけて、オトナ達を奮い立たせた…『普通の女の子』がやることにしては余りにも度が過ぎるほどにね。それがあなたを『変えてしまった』。本来なら下の連中と一緒に居る筈のあなたは、いつの間にか『オトナ達の希望』になってしまった。あなたがそれを望まなくても、あなたの行動がオトナ達にとっての『希望』になってしまった。…あなたはもう、引き返せないところにまで来ちゃったんだよ…!」
「え…あ…」
モナカの言葉の一つ一つが、こまるの心に突き刺さっていく。その感じる筈のない痛みに、こまるは恐怖すら忘れただ後ずさるしかない。
「だからあなたはそのコントローラーを壊す。それがオトナの望んだ『希望』なんだから…!」
「し、しないよそんなことッ!」
「そうよ!誰が好き好んでアンタなんかを『2代目江ノ島盾子』なんかにするもんですか…」
「そ、そうですッ!…アンタなんかに、ジュンコお姉ちゃんの『2代目』が務まるわけが…」
「…だから、それは『違う』んだって」
「…は?」
再びの否定に腐川も言子も思わずポカンとしてしまう。
「ち、違うって…何が違うのよ?」
「言ったでしょ?モナカはお姉ちゃんたちにもう一つだけ『嘘』をついたって。…『それ』なんだよ」
「それって…どういう意味よ!?」
「もう、物わかりが悪いナァ~。…さっきから言ってるじゃん。『絶望』が『絶望的』なことをするより、『希望』が『絶望的』なことをする方がずっとずっと絶望的だって。…それがよりにもよって『超高校級の希望の妹』だったら、尚更絶望的だと思わない…?」
「…ッ!?」
「ま、まさかッ!?オメーは…」
「…そう。『2代目江ノ島盾子』になるのは私じゃない。…『苗木こまる』さんだよ」
『ッ!!?』
その言葉に、広間の全員、要救助民、そしてヒルズ内で戦闘中の戦刃たちの目が驚愕で見開かれる。
「私が…『2代目江ノ島盾子』に…!?」
「苗木誠の妹が、この街のオトナ達の『希望』がコドモを大量虐殺する。…それは未来機関にとっても、パッショーネにとっても到底無視できない事態になる。…そうすれば、苗木誠は必ずここに来る。真相を確かめにね…」
「な、何を…言ってるの?そんなの…」
「勿論、その程度じゃ絶望するとは限らないけどね。…でも、真実を目の当たりにして、眼前で起きている醜い戦争を見た時、苗木誠はどうするかな?…例え力づくで戦争を終わらせたとしても、オトナ達も未来機関も納得しないだろうね。なにしろ…『2代目江ノ島盾子』はそこにいるんだから」
「な、なななな…ッ!?」
「コイツ…何、言ってんの…?」
モナカは自分の想像したシナリオを嬉しそうに語るが、葉隠も花音もその不気味さにそれ以上の言葉が出ない。
「…苗木誠は『希望そのもの』、絶望を決して許しはしない。だからこそ、苗木誠は他の誰かに引導を渡されるぐらいなら自分の手で決着をつけるだろうね。…『最愛の妹』を自らの手で『殺して』ね。その時に、苗木誠はそれでも『希望』で在りつづけられるかな!?…優しいもんね、苗木誠お兄ちゃんは♡」
「…あ、アンタは…こまるを『2代目』に仕立て上げて、なおかつそのこまるを苗木に殺させようって言うの…!?」
「私が…お兄ちゃんに、殺される…?」
ギィィ…
「…成程。それが君の『本当の計画』だったんだね」
『ッ!?』
再び扉が開かれ入って来たのは、あちこち焦げ付きボロボロになった服をそのまま着ている狛枝であった。
「こ、狛枝っちッ!?」
「狛枝…アンタなんでここに…ッ!?」
「あれ?召使いさん生きてたんだ?新月君が死んだって言ってたのに…」
「いやあ結構ヤバかったよ。正直僕一人じゃ死んでたかもね。…けど、『君たちのおかげ』で命拾いしたよ。苗木こまるさん、腐川さん」
「…え?」
「君らがくれた…『フー・ファイターズ』だっけ?アレのおかげで死にかけからなんとか助かったんだよ」
「ま、待ちなさいよ!あの量じゃ怪我を全部治すなんて…ッ」
「まあね。…けど、忘れたかい?僕は『超高校級の幸運』なんだよ。…あの『フー・ファイターズ』ってさ、『水分』さえあればワカメみたいに増えるんだよね。…例え『血』でもさ」
「ッ!?まさか…」
「そう!賢者さんにゴミ屑みたいにされたときにさ、『偶然』僕の血で『フー・ファイターズ』が増えたのを見てね、『キラークイーン』で自爆したようにみせかけて、増やした『フー・ファイターズ』でなんとか動けるぐらいには回復できたんだよ!」
「…どこまでも面倒な『才能』ね…!けど、それにしたってなんでここに居るのよ!?アンタ…『アイツ』に見つからないようにするんじゃなかったのッ!?」
「…そうだよ。だからこそ、ここに居るんじゃないか」
「はぁ?」
首を傾げる腐川に狛枝はしょうがないなとばかりに説明する。
「…今の『彼』は、『あの頃』とは逆に『自分の価値』を見失って何もかもに興味を失くしている。それはつまり、自分から進んで『厄介ごと』に首を突っ込んだりはしないってことじゃあないかな?…ならさ、その厄介ごとの『渦中』にいれば、『彼』と会うことは無いといえるんじゃあないかな?」
「…へ、屁理屈を…ッ!」
「屁理屈上等さ。…『彼』と遭わない為ならね。それより…魔法使いさん、聞かせて貰ったよ。君の計画、その全てをね…」
「…ふぅん。で、どうなの?」
モナカの問いに、狛枝は喜色を隠し切れない様子で答える。
「…素晴らしいよッ!なんて素晴らしい計画なんだ!苗木こまるさんが『絶望』することで、絶望と希望の戦いを激化させ、最後には『超高校級の希望』である苗木君すらも絶望させるッ!…そうなったら、もうこの世界で考えられる限り最高の『絶望』が誕生するッ!…けれど、絶望は所詮希望の『踏み台』でしかない。『絶対的希望』に最も近かった苗木君が『絶対的絶望』となった時、必ずそれを『倒す者』が現れる!それこそが…『絶対的希望』と言うべき存在なんじゃあないかな…!」
「…こ、この期に及んでこいつは…ッ!」
狛枝の狂った演説に唖然とする灰慈、言子、花音。そして前にもましてひどくなった価値観に怒りと動揺を隠せない葉隠と腐川には目もくれず、狛枝はこまるへと視線を向ける。
「…さあ苗木こまるさん。それを早いとこ壊しちゃってよ…。そして、僕に見せてよ…『絶対的希望』が生まれる瞬間をさ…ッ!」
「ひッ…!」
「こ、狛枝っち!いい加減にするべ!」
「…テメーまだ刻まれ足りねーかッ!」
「…おっと、それ以上近づかない方がいいよ。…『キラークイーン』!」
狛枝が『キラークイーン』を呼び出す。…しかし、警戒する腐川たちを攻撃しようとはせず、何故か『右手』を突き出したままじっとしていた。
「…何の真似だ?」
「分からないかい?…『キラークイーン』は既に『爆弾』を創っている。…『十神白夜』と言う名の爆弾をね…!」
「なッ…!?」
「と、十神っちが爆弾に!?」
「君の大切な人を失いたくなかったら…そこで見ててよ。あのコントローラーが壊れるまでさ…」
「…ク、ソ…がァ…!」
「…これでいいかい?魔法使いさん?」
「うん!ナイスフォローだよ召使いさん。…けど、苗木こまるさんの邪魔だけはしないでね」
「分かってるさ」
邪魔が入らなくなったのを確認すると、モナカは改めてこまるへと向き直る。
「さ!苗木こまるさん、一つ派手にやっちゃってよ!心配しなくても、後の事はモナカがやっとくからさ。壊した瞬間の映像を、未来機関にリアタイで送信できるように準備してあるからさ。…『苗木こまるさんが2代目江ノ島盾子を襲名しました』って、モナカのメッセージ付きでね」
「や、やだ…!そんなの…」
「…き、気にすんな!どうせ全部そいつのハッタリだ!そんなとんでもねえこと…よく考えりゃできる訳ねえだろ!お前がやれねえってんなら、俺がやってやる!貸せ!」
「だ、駄目だよッ!そんなことしたら、子供達が…」
「…あ、アンタッ!現実逃避してんじゃないわよッ!」
「そうです!お姉さん、駄目ですよ!お姉さんがそんなことをする『理由』なんてないんですからね!」
「…『理由』、ね。そうだよね、こまるさんにはそうするだけの『理由』が無いのなんて分かってるよ。だから…もう『準備』しておいたよ」
「準、備…?」
「こまるさんの『復讐』の為に協力してって…『お父さん』と『お母さん』にね」
「…は?」
「おしっこは済ませた?復讐で狂う用意はできた?この世のなにもかもを憎んで、全てを破壊する覚悟は決まった?…なら、イッツ・ショー・ターイム!」
パンパン!
モナカが手を鳴らすと、再び扉が開き大きなモニターを抱えたモノクマキッズが入ってくる。呆然とするこまるたちの前で、モノクマキッズがスイッチを入れるとモニターに何かが映し出される。
「これ、は…?」
「あの『拷問室』じゃねえか…何の真似だこりゃ?」
モニターに映っているのは、先ほど見たばかりの拷問室の中。やがてカメラは動き出し、その奥にある『死体置き場』の扉を開ける。
ギィィ…バタン!
「………………え?」
そこの積み上げられた、夥しい数の死体。そして、その手前には真新しい『男女の首つり死体』が吊るされていた。やがてカメラはその内の女性の方へとズームインしていくと、女性の着ているワンピースの裾になにやら血で書いた『文字』のようなものが滲んでいた。…その文字は、反転していたが確かにこう見えた。
……『こまる、まこと』と…
コツコツコツ…
映像が終わるとモノクマキッズは足早に去っていった。そして
「……」
「…うぷぷ、うぷぷ…うぷぷぷぷ…!」
モナカは、予想通りのこまるの反応に、抑えきれない笑い声を発していた。
「…な、なんだったんですか今の…?」
「この期に及んでオトナを殺した自慢かよ…?どこまでも狂ってやがる…!」
「ていうか意味不明…どしたのアンタら?」
映像の意味を理解できない言子と灰慈、花音はそんなモナカに怒りを向ける、が…
「………」
「…ちょ、ちょっと…待ってくれ。今の二人、どっか見たことが…」
「…う、そ…でしょ…?」
しかし、あの映像に映っていた男女…それに『見覚えのある』こまる、葉隠、腐川の動揺…特にこまるはまるでそのまま死んでいるかのように血の気を失くし、ただ茫然としていた。
「ど、どうしたんですか?もしかして…知り合いだったとか?」
「知り合い…どころじゃ…ないわよッ…!」
「俺達は…一度しか会ったことねえけど…、それでも…顔はハッキリ憶えてんだ…!だってよ、あの二人は…」
「…ああ?」
「うぷぷ…苗木こまるさん。教えてあげたら?あの二人が誰なのかって。…あなたなら、分かるでしょ?」
ドサッ…
崩れ落ちたこまるは、幽鬼のような目のまま、あの映像に映っていた『文字』を反芻する。その真実を、認めたく無い様に。
「…こまる?…まこと…?」
「…きっと、最後の力で必死に床に書いた文字が、引きずられた拍子に服に滲んじゃったんだねー!いいなー、今際の際に『愛する子供の名前』を書くなんてさ。…モナカはそう言うのとは無縁だったから、ホント…羨ましいよ…」
「うそ…うそだ…うそに、きまってるよ…」
擦れるような声で否定の言葉を呟くこまる。しかし、モナカは無情にそれを否定し返す。
「嘘じゃないよ。あなたと苗木誠のお父さんとお母さんは…」
「…死んだんだよ」
「嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」
地も裂けんばかりのこまるの絶叫が、塔和シティに響き渡った。
狛枝は邪魔しますよどこまでも。
なんだ原作通りかよ、と思った皆さん。…こんなもんで終わりとは思わないでくださいね。もっとやりますよ、後々ね…うぷぷぷ…