ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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絶望編8話視聴。

罪木即落ちしてたべ…。いくら77期の中で一番不安定だからって、早すぎですよ…。御手洗も恐怖に負けて江ノ島の言いなりになってしまって、本当になにもかも江ノ島の思い通りって感じですね。…78期の皆は不審に思わなかったのだろうか?それとも、戦刃の台詞からして77期の皆に比べればそこまで仲が良くなかったのかな?

ペコちゃんマジ強いっすね。ナイフオンリーとはいえ残姉と張り合うとは…。やはり「覚悟」の差なのでしょうか?たとえ大神の方が強くても、ジョジョ4部のしげちーと吉良みたいに「殺す覚悟」が多少の差などひっくり返してしまうということなのかな…

そして狛枝、七海、カムクラの邂逅。狛枝は速攻希望堕ちしちゃったけど、カムクラの正体に気づいた七海が心配だ…。ここの七海のような結末になってしまうのか…?雪染も核心に近づいていて、これが未来編でのターニングポイントになりそうですね。


 あと、最新話が分かりづらいとのコメントをいただいたので、改善策の例で最新話に★マークをつけてみました。次の更新の時は別の案を試してみますので、どちらが見やすいか意見を下さるとありがたいです


絶望の予兆

「遅くなってゴメン…。でも、無事で良かった…」

「待ってたぜ『むくろ姐さん』よぉ…!お前らもよく来てくれたぜ!」

「アンタらだけじゃ不安だったんでな。大急ぎで駆け付けてやったんだぜ」

「といっても…間に合った、って胸を張れるような状況じゃあねえみたいだけどな」

「いや…まだ間に合ってるぜ。むしろ『ナイスタイミング』って奴だ」

 『パッショーネ』という思いがけない援軍の登場に、ホル・ホースは怪我の痛みも忘れて歓声を上げる。

 

「ホル・ホースさん…彼らは?」

「ああ、紹介がまだだったな。…こいつらは『パッショーネ』。イタリアを拠点に活動する、未来機関と双璧を成す『ギャング組織』だ」

「ぎゃ、ギャングゥ!?」

ホル・ホースの説明に富士子が思わずぎょっとする。

 

「…まあ、今じゃヨーロッパ中の軍隊崩れも集まって、『多国籍軍』みたいなもんになっちまってるがな」

「ちょ、ちょっと…!大丈夫なの?その…ギャングとか、ヤバくない?」

「いやいや、こいつらを世間一般のギャングと一緒にしちゃいけねえぜ。『絶望の残党』から市民を守り、侵略された土地を奪還し、なおかつ残党共の『更正』にも力を注ぐ、言っちまえば『正義のギャング』達よ!」

「…んな大それたもんになった覚えはないんだがな。成り行きだ、成り行き」

「というか…随分詳しいんですね。違う組織の方なのに…」

「ああ、俺はそのパッショーネの『トップ』やそこのむくろ姐さんと知り合いだからな」

「トップって…」

「…もしかして、それって『兄貴』のことか!?」

 思い当たる人物に至った悠太が嬉しそうに聞く。

 

「兄貴…?」

「…ホル・ホースさん、この子ってもしかして…」

「おう、『葵姐さん』の弟さんだ」

「やっぱり…!どことなく葵さんと似てるから、そうじゃないかと思った…」

「お姉さん、姉ちゃんの事知ってるのか?」

「勿論だよ。…葵さんは大事な『ファミリー』だから」

「ファミリーって…『家族』だよな?…アレ?」

「…そういえば、その『大将』はどこに居るんだ?お前さんたちが居るってことは、大将も来てるんだろ?」

 その問いに、むくろたちは気まずそうに視線を逸らす。

 

「…それが、誠君はまだ『街の中』に居るの」

「何!?なんでだ?」

「ここに来る途中、沢山のモノクマの群れに襲われて…誠君は足止めの為にそこに残ったの。一刻を争う時だからって…」

「残ったって…まさか『一人』でかい!?そりゃ無茶だよ!」

「…いえ、苗木誠様なら不可能ではないかもしれません。あのお方はお強い…尋常ではないほどに」

「いやいや、だからって…」

「うむ。確かに普通なら無謀以外の何物でもないが…彼ならば不思議と大丈夫な気がするな」

「…ま、大将がそうするってことは大丈夫なんだろ。心配は要らねえか」

「ああ、兄貴ならきっと大丈夫だぜ!」

 アロシャニス、ケンイチロウ、ホル・ホース、悠太といった苗木と交流のあった面々は特に心配した様子もなくそう言う。

 

「…なんなのだ、その『苗木』という人に対する信頼感は…?」

「どういう奴だよそいつ…?」

「というか苗木って…もしかしてこまるっちのご家族かい?」

「ああ!兄貴は姉ちゃんの兄貴だぜ!」

「…重複しすぎてワケ分かんないわよ」

「アハハ…」

「…姐さん、そろそろむこうの状況を聞くべきだと思うが」

「あ…!そうだね、ホル・ホースさん。今の状況を教えて…」

「おう、もちろんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…って感じだ」

「モナカ…!やっぱりあの子が…、それで、こまるちゃん達があのビルの中に?」

「ああ。…来て早々で悪いが、早く助けに行ってやってくれ!流石にあの二人だけじゃ危険だからよ」

「うん…!皆、行けるね?」

「「「おう!」」」

 ウェザー、アナスイ、エルメェスがむくろの問いに勇ましく応える。

 

「頼むぜ…!」

「…ところで、さっきから気になってたんだけど、そのもぞもぞしてる『袋』はなんなんだい?」

 葉隠がむくろたちが担ぐ『3つの蠢く袋』を指差し言う。

 

「こ、これは…その…」

「…道中で『拾った』んでな、連れて行けと五月蠅いから仕方なくこうやって運んでやっているんだ」

「運んでって…まさかその中身『人』かい?」

「人っつーかなんつーか…」

「ただの煩いお荷物だ」

 

 

 

 

『…誰がお荷物でーい…ッ!』

「「「ッ!?」」」

 袋の一つから聴こえてきたその声に、石丸、朝日奈、ホル・ホースが驚愕に目を見開く。

 

「い、今の声って…!?」

「まさか、その中に居るのは…ッ!」

『…そのまさかだよ。悪かったな、こんなので…』

『ああ…見えなくても僕チンの悪臭は広がっちゃってるんだね…』

 残りの袋から聴こえてきた声に、それぞれ聞き覚えのある面々は驚きを隠せない。

 

「おいおいおいおい…ッ!?むくろ姐さんよ、なんだってそいつらを…」

「…言いたいことは分かってる。けど、これは誠君の判断なの」

「兄貴が…!?」

「『この子たち』にも、知る『権利』がある。見届ける『義務』がある。…そして、全てを知ったうえで、考える『責任』がある。その為に、私たちはこの子たちをここまで連れてきた。…だからお願い、今だけ黙って行かせて欲しい…」

「…俺は構わねえが、アンタらはどうだ?」

「…それが『例の子たち』かい?言いたいことが無いわけじゃないけど…その辺は同感だね。この子たちはいっぺんきちんと知るべきだ。自分たちがやったことが、どういうことを招いたのかってね」

「…警察官として、彼らに責任を追及するようなことはしたくない。だが、彼らはそうするに値するだけの事をした。…それを認識する為なら、私は構わない」

「俺は…兄貴の言葉を信じるよ。なあ皆、今回だけは見逃してくれないかな?」

「…よく分かんないけど、いいんじゃないの?その人たちが悪い人じゃない…まあ『悪い人』なんだけどさ、大丈夫って言ってるのならいいけど…」

「…俺はどうでもいいぜ。早いとこカタが着くんならな」

 浩子、隆秋、悠太、富士子、雪丸、羽山はそれぞれ複雑な表情ながらもそれを容認する。

 

「…ごめんなさい」

「良いってことよ。…お前ら、くれぐれも姐さんたちの足を引っ張んじゃあねえぞ?」

『…分かっている。おまえらはともかく、『お兄さん』の言う事は信じられるからな』

「…お兄さん?」

「…おーい、皆!」

 と、そこにハッキング作業をしていた太一がやってきた。

 

「おや、太一っち、どうしたんだい?」

「今、塔和ヒルズ内の監視カメラの映像を少しだけハッキングできたんだ。それで、こまるさん達の状況が少しだけ分かった!」

「マジか!?」

「うん、…どうやら彼女たちは屋上に停泊している『飛行船』を目指しているみたいだ」

「飛行船?」

『エクスカリバー号だ!』

「えくすかりばー…?」

『…僕たちの『本拠地』さ。あのビルの屋上にあるのか…』

「それともう一つ。…未来機関の『人質』になっている人がヒルズのてっぺんに捕まっているみたいだ」

「…十神の坊主か!」

「十神君が…!?」

「うん。…どうやらその人が閉じ込められている場所の『鍵』も、例のモナカって子が持っているみたいなんだ」

「ってことは…目指すはモナカただ一人って訳かい」

『モナカちゃん…』

 

 

「…おっと、どうやら間に合ったようじゃな」

 そこに、どこからともなく不比等と五月雨が戻って来た。

 

「爺さん…どこへ行ってたんだよ?」

「まあその辺をな。…見慣れん顔があるが、味方と見ていいのかな?」

「あ、はい…。今からこまるちゃんたちの後を追う予定です」

「ほう、ならばグッドタイミングという奴じゃな」

「な、なんだよ?」

「…実はさっき、ボロボロの格好した『白髪の男』の人がヒルズの中に入っていったの」

「白髪…ッ!?ま、まさか…アイツか…!?」

「アイツ?」

「…お前さんも知ってる白髪の男だよ…」

「…!?まさか…」

 ホル・ホースの言葉に、戦刃もその人物の正体に気が付く。

 

「…どうやら心当たりがあるようじゃな」

「ああ、最高にバッドなニュースだが…今ならまだ間に合うかもしれねえ…!」

「…うん!」

「なら、これも持って行け」

「これは…『鍵』?」

「その男の人が落としていったの。なにかの役に立つかもしれないから…」

「…分かった、ありがとう」

「姐さん、そろそろ…」

「分かってる…急ごう!早く追いつかないと…」

「頼むぜ!」

「任せときな…!」

 より一層の決意と焦燥を胸に、むくろたちはヒルズへと向かって走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 一方、屋上を目指していたこまるたちは途中で見つけた『ある部屋』に入り…絶句していた。

 

「な…なにここ…!?」

「ちょ、ちょっと…!こんなの聞いてないわよ!?」

 他の部屋と比べて明らかに異質な石壁のその部屋。真冬のような冷たさすら感じるその部屋に漂うのは、辺り一帯に撒き散らされた『血』の錆びた鉄のような臭い…。そして中央にでんとおかれた『カメラ』を取り囲むように、赤黒い血で染まった『拷問器具』が部屋の四方に鎮座されていた。

 

「い、嫌な予感しかしないと思ったら…こまる、早く出るわよ!時間の無駄よ!」

「…ま、待って!これ…なにかな?」

 こまるがふと足元に視線を落とすと、そこには擦り切れてはいるが血で書かれた『文字』のようなものが残っていた。

 

「これ…血で書かれてるけど字だよね?ねえ、これなんて書いて…」

 

 

「……」

「わあああッ!?」

「ぎゃあああッ!?」

 ふと振り返ると何時の間に居たのか、灰慈が入り口で苦虫を噛み潰したかのような表情で立っていた。

 

「あ、アンタ…ッ!ついて来るなら早いとこそう言いなさいよッ!」

「……」

「あの…灰慈、さん?」

「…ここ、だったのか」

「へ?」

「お前ら、ここがなんなのか分かってねえようだから、教えてやるよ。ここは…『拷問部屋』だ。アイツ等は、ここで俺達の『身内』を拷問してやがったんだ…ッ!」

「ご、拷問…!?」

「お前らが最初に基地に来た時、トラックのモニターで放送やってただろ…?」

「…!アレ、ここの状況を映していたってワケ…!?」

「ああ、ほぼ毎日みてーにな。…あいつ等は、俺達を基地から炙り出す為に、ここで俺達の身内を切り刻んで見せつけてやがったんだ…ッ!…まあ、逆にビビって尚更出て行くことはなくなったんだがな…」

「そんな…酷すぎるよ…!」

「あのケバ女の仕込みね…。胸糞悪いったらありゃしないわ…」

「分かったろ、ここは俺達にとって『絶望の象徴』とも言える場所なんだよ。…なにせ、あの基地に居た『オトナ全員の身内』がここで殺されたんだからな…」

「…全員?」

「どうしたの?」

「いや…だって『変』じゃない。なんであいつ等そんな狙い澄ましたみたいにあそこに居た連中の身内だって分かったのよ…?」

「…可能か不可能かの問題じゃあねーッ!!アイツ等は、それを『実際にやった』んだッ!それは疑う余地のねー事実なんだよッ!…あの奥の部屋があるだろ?」

 灰慈が指差したのは、拷問部屋のさらに奥にある一際異臭の漂う閉ざされた扉。

 

「多分…あそこは『死体置き場』だろうな。ガキ共の玩具にされた大人たちが放り捨てられてるだろうぜ。…なんなら見とくか?もうあいつ等に対する『慈悲』なんて消え失せると思うぜ…?」

「別に、そんなもんないわよ…。ただ、ちょっと気になっただけで…」

「あの、灰慈さん…。あの子たちだってやりたくてやった訳じゃ…それに、聞きたいことが…」

「…行くわよ、こまる」

「え?で、でも…」

「今のアイツに何言ったって無駄よ…。訊きたいことは山ほどあるけど、今のアイツに聞いたってロクな返事が返ってくるはずが無いわ。…ホラ早く」

「あ、うん…」

「…おお、先に行ってろ。俺はここのことを…外の連中に知らせなきゃならねえからよ…」

「……」

 怒りの表情のまま立ち尽くす灰慈をその場に残し、こまる達は仕方なく部屋を立ち去った。

 

 

 

「…ねえ、腐川さん。本当に灰慈さんに聞かなくて良かったの?その…会長さんが言ってたこと…。それに、『洗脳』の事も説明した方が…」

「どうせ聞いたってアイツの都合のいい様に言い訳されるだけよ。恨み言はあの悪霊でお腹いっぱいよ。…今のアイツに何を言ったって、自分たちは間違ってないの一点張りよ。あんなもんがある以上、建前は十分にあるんだからね」

「……」

「それに、ちょっと『気になった』ことがあるのよ」

「気になる…?」

「…だって、おかしいじゃないの。いくらあのガキ共が優秀でも、あそこにいた連中の身内だって確信をもってやれるわけがないじゃない。顔も名前も知らないような奴をさ…」

「…じゃあ、どうして…?」

「…多分だけど、アイツらの中に『裏切り者』が居るわ。オトナに紛れて、コドモに情報を流している奴がね…」

「裏切り者…!?」

「多分だけど、今迄の基地の襲撃もそいつの仕業ね。…問題は『誰なのか』ってことだけど…」

「だ、誰なの…?」

「…今は言わないでおくわ」

「え!?な、なんで…」

「まだ確信が無いし…それに、言ったらアンタ絶対に動揺するもの。そんな状態であのクソガキと戦うなんて危険すぎるわ。…カタが着いたら教えてあげるから、今は我慢しなさい」

「わ、分かったよ…」

「…もっとも、すぐに分かるかもしれないけどね」

「え?」

「なんでもないわよ…ほら、行くわよ!」

「う、うん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …時は前後して、塔和シティの街中…

 

ガシャ…

「…ふう、これで全部か。大したことはなかったけど時間を喰ったな…」

 街中の交差点の中央で、一人の青年が一仕事終えたかのように息をつく。…その足元には、実に『千体近く』もの多種雑多なモノクマの『残骸』が山を作り、青年はそのてっぺんに腰掛けていた。

 

「モノクマでこれだけのバリエーションを用意できるあたり、あのモナカって子も『商才』はあったのかもしれないな。…平和な時に生かして欲しかったけれどね」

 

 

 

『ワアァァァァ…ッ!!』

 と、そこに塔和ヒルズの方向から歓声とも雄叫びとも取れる声が響いてくる。

 

「…っと、休んでいる場合じゃないか。『奴』のことも有るし、早く行って向こうを終わらせないと…」

『…せ…!…せッ…!』

「…ん?今何か…」

 ふと、歓声の中に明確な意味のある言葉を覚え、青年は自身の桁外れの聴力に『自分のスタンド』を上乗せしてそれを聞きとろうとする。

 

『…ろせッ!殺せ!殺せ!殺せッ!』

「…ッ!どうやらマジにヤバいみたいだ…。こうなったら、『出し惜しみ』してる場合じゃないか…ッ!」

 その物騒な言葉を聞きつけるなり、青年は立ち上がると全身に力を籠める。

 

 

「…WRYYYYYYYッ!!!」

 雄叫びと共に全身の筋肉が膨れ上がり、青年の服を押し上げる。それに伴い青年の瞳が『金から紅』へと変わり、その輝くような金髪がまるで染めたかのように根元から赤く『変色』する。

 

「待っていろ『こまる』…、今すぐに行くッ!」

 

 

ドォンッ!!

 力強いジャンプで足元のスクラップの山を崩しながら、青年は一筋の紅い閃光となってビルの間を跳びまわり塔和ヒルズへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

トントントン…

「…ここが最上階みたいだね」

「間違いないわ…!白夜様の「スメル」が濃くなってるもの…!」

「…それで判断するんだ」

 こまる達はやっとのことで十神が捕まっている所でもあり屋上へと続く『最上階』へとやって来た。

 

「…でも、ここからどうやって上ろう?階段は全部シャッターが降りてるし…」

「下手にぶっ壊せばモノクマを呼ばれるかもしれないしね。唯一入れそうなのは…あの扉だけみたいね」

 腐川が正面にある立派な扉を指差し言う。

 

「とにかく行ってみようか。他にないし…」

「そうね」

 他に道も見当たらないため、二人はとりあえずその扉の先へと入っていった。

 

「…ここは?」

「随分気色悪い広間ね…ガキ共の『集会所』ってトコかしら?」

 扉の向こうには、奥に立派な椅子がちょこんとおかれた広間…希望の戦士たちの『作戦会議室』であった。

 

「あ、あれ…!大門君の…仏壇?半分壊れてるけど…」

「足元にご丁寧に魔法陣まで…とことんガキが好きそうな部屋ね」

「…奥に道があるよ!行ってみよう、もしかしたら十神さんが…って早!?」

「おまる!なにやってるの、早く行くわよ!」

「ま、待ってよぉー!」

 

 

 

 椅子の脇にあった小道を進むと、その先には『梯子』が存在した。ダメもとでと思い二人は梯子を上り、そこにあった部屋に入る。すると…

 

 

「…な、何…この部屋…!?」

「どこもかしこも…『江ノ島盾子だらけ』じゃないの!?」

 簡素な寝具と机だけが置かれた物置のようなその部屋には、至る所に『江ノ島盾子』の写真が貼り尽くされていた。

 

「この人が…江ノ島盾子。確かに…むくろお義姉ちゃんにちょっと似てる…かな?」

「双子なんだから似てて当然でしょ。…にしても、アタシの記憶にあるのに比べたら随分そっけない顔の写真ばっかね」

「え?そうなの?」

「アイツ苗木の前じゃ気持ち悪いぐらいの笑顔だったわよ。そんだけ苗木のことを意識してたってことでしょうけど…ま、だからってコイツに同情なんかしてやらないけどね」

「そうなんだ…あ、この写真…!」

 こまるが見つけた写真には、江ノ島と一緒に笑顔で映るモナカの姿があった。

 

「この子がモナカだよ」

「成程…いかにも性根の腐ってそうな顔してるわね」

「そうかな?別に普通な感じだけど…」

「江ノ島と一緒にこんな無邪気に笑えるような奴にロクな奴はいないわよ。…それより、こんなものがあるってことはどうやらここはそのモナカって奴の部屋らしいわね」

「………」

「…どしたのこまる?」

「いや、ちょっと…変っていうか、『違和感』があるって言うか…」

「…どうでもいいけど、もうこんなところに用は無いでしょ。奥にもう一つ梯子があったし、早く先に進むわよ」

「あ、うん…」

 自身が感じた『違和感』に後ろ髪を引かれつつも、こまるは腐川に促され部屋を辞した。

 

 

 

 

 

 

 通路のさらに奥にあった梯子を上ると、一見壁のように見える『隠し扉』があり、そこを通ると屋上は目と鼻の先というところまで来ることができた。

 

「よし!あとはあのエレベーターに乗って屋上に…」

「…ちょっと待って。この香りは…ッ!」

「…あ!?ちょっと、どこ行くの腐川さん!」

 何かを嗅ぎつけるなり突っ走っていった腐川を追いかけると、腐川は広間の一角にある鍵のかかった『鉄格子』の前に居た。

 

「間違いないわ…!この先に白夜様がいるッ!」

「そ、そうなの?…でも鍵が無いんじゃ…あッ!」

「な、なによ?」

「いや、今思い出したんだけど…腐川さん地下鉄の時みたいに『メタリカ』で鍵作って開けられないの?」

 

 

「…ッ!!?そ、その手があったわッ!」

「気が付かなかったの!?」

「う、煩いわね!アタシだってこう見えて結構緊張してんのよ!ド忘れぐらいするわよ!」

「ま、まあ…とにかく、早く開けてあげなよ!」

「…いえ、それは『まだ』よ」

「え…!?ど、どうして…?」

「まだアタシ達は何も終わらせていないわ。こんな中途半端な状態で白夜様にお会いしても、白夜様は絶対に褒めてくれないわ。白夜様ともあろう人が未だにこんなところに囚われているってことは…今白夜様は『動けない』状態にある筈よ。だとしたら、こんな時に下手にお助けする方がよっぽど白夜様を怒らせてしまうわ。『俺なんぞに構ってる暇が有ったらさっさとアイツらを倒して来い!』…ってね」

「…そう、なんだ」

「ええそうよ。だから…白夜様、もう少しだけお待ちください。必ずカタをつけて…お助けに戻ってきます!だから…信じて待っていてください」

「…腐川さん」

「…行くわよこまる。白夜様を一分一秒でも長くお待たせする訳にはいかないわ!」

「…うん!行こう、腐川さん!」

 互いに強い決意を燃やし、二人は屋上へと続くエレベーターへと乗り込むのであった。

 

 

 

 

 

 

「…ふん。俺を待たせるなよ、冬子」

 そんな二人の来訪を知ってか知らずか、鉄格子の奥で囚われの身の十神はぽつりとそう呟いたのであった。

 




今回ここまで

今回ちょっと短かったのでEOH編もついでに更新します。よかったら見てね!

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