逆蔵…お前そうやったんか。こんなところで横恋慕差し込まんでも…未来編の逆蔵さんに期待しちゃうじゃねえか…!宗方への「忠誠」をとるか、雪染を利用したことへの「怒り」をとるか、今からワックワクドッキドキだね!
そして妹様無双。久しぶりのオシオキから始まってカムクラへの逆ナン、そしてまさかの御手洗との邂逅。やはり江ノ島が全ての元凶なのだということをよく思い知らされました。…そして相変わらずの残姉ちゃん。
そんで御手洗…まさかお前、罪木と同じパターンか?正直最初に見たときからそうなんじゃないかとは薄々思ってたけど、ホントに江ノ島と絡みがあったとは…。それに詐欺師との会話に出てきた「実験」…いやー、気になりますね!
アニメのおかげで続きを書きたくてしょうがなくなりますね!ガンガン創作意欲が湧いてくるッ!このインスピレーションがあるうちにアニメに追いつきたいなぁ…
ドガァァァンッ!!
『ワアアアアアアッ!!』
『いいぞーッ!やれーッ!!』
モノクマ達による二度目のレジスタンス基地襲撃の翌朝、迫りくるモノクマ達に抵抗していた大人たちの背後から、轟音を立てて巨大なモノクマが姿を現した。当然大人たちは驚いたが、そのモノクマから灰慈の声が聴こえてきて、このビックバンモノクマの存在を説明すると、大人たちは途端に歓声を上げ、それを受けたビックバンモノクマは子供たちへと進撃を開始する。
『それーッ!!』
もちろん子供たちがそれを放っておくはずもなく、凄まじい数の多種多様なモノクマ軍団がビックバンモノクマへと襲い掛かる…が
「テメーらの好き勝手もここまでだ…!消えろポンコツ共ッ!」
ドドドドドドドッ!!
ビックバンモノクマの凄まじい反撃を受け、襲い掛かったモノクマは一体残らずスクラップと化したのであった。
『逃げろー!』
『きゃあああー!』
流石に分が悪いと判断したのか、子供たちは我先にと逃げ出す。ビックバンモノクマはそれを嘲笑うかの如く、なおも子供たちの方向へと悠然と進撃する。
「ハッハッハッハ…!見たか、大人の力を…俺の『力』をッ!もう俺達はお前らの玩具じゃあねえ…ッ!ここからは、俺達がお前らを『狩る』番だッ!ハーッハッハッハッハ!!」
『ワァァァァァッ!』
「おいおい…灰慈の野郎とんでもねえもん隠してやがったな。白夜の坊主の予感的中って訳かい」
「…アレが、あのオッサンの切り札って訳かよ」
「確かに凄まじいが…ううむ」
「なんというか…素直に喜べませんね」
そんな灰慈の操るビックバンモノクマによる蹂躙劇を、こまると腐川を含めた要救助民たちは遠巻きに見つめていた。
「あのモノクマが手も足も出ないのは確かにスカッとするんだけど…なにもあそこまで甚振らなくても…」
「ていうか…これ大人と子供の立場が『逆転』しただけじゃん。ぶっちゃけ、何も変わってないっていうか…」
「人間とはそういうものです。…『被害者』の内はやるまいと思っていても、いざ力を手にすると同じようなことをしてしまうものなのですよ」
「…ケッ、結局どっちにしろ『弱い者いじめ』してんのには変わりねえってか…?」
「…ま、アイツの気持ちも分からないでもないんだけどね」
「我々が何を言った所で無駄…ということか」
「なんかやるせないよね…私が言えた義理じゃないんだけどさ」
「やれやれじゃな…」
「…ねえ腐川さん、ホントにこれで良かったのかな?これで、ホントに全部終わるのかな?…終わって、いいのかな?」
「……」
ドゴォォォン…ッ!
『ワーッ!』
「うぷぷ…イイ感じだね。すっごくイイ感じだよ…!」
「おうおう、ゴキゲンじゃあねえかモナカちゃんよ」
その頃、希望の戦士の本拠地の『塔和ヒルズ』では、ただ一人となってしまったモナカがクロクマと共に外の様子を中継した映像を見ていた。
「まったく張り切ってますなぁー。でも、それでいいんだよ、そのままやりたい放題なっちゃっていればいいんだよ…うぷぷぷ…」
「うぷぷ…お楽しみはこれからだってな。『前夜祭』が盛り上がれば盛り上がるほど『本番』が楽しくなるってなあ…!ギャッハッハッハ!」
「そう…!これからが私の『本当の計画』の始まりなんだよ…!クロクマ、最後まで付き合ってくれるよね?」
「モチのロンだぜモナカちゃん。オレ様はモナカちゃんの為なら地獄の底でも付き合うぜ…ってな!」
「わーい!ありがとうクロクマー!」
「おおッ!?も、モナカちゃん急にくっつかれると…ち、小さなふくらみが…当ててんのか?当ててんのかぁーッ!?」
ピーッ!ピーッ!
「…またかぁ。メンドクサイなあ…」
ポケットから取り出したアラームの鳴る『端末』を手に、モナカは不満そうに眉を顰める。
「…クロクマ、私ちょっと『お人形』の相手をしてくるから、お姉ちゃんたちが来るまでよろしくねー」
そう言い残し、モナカは車いすを操作して広間から出て行った。
「ふぅ~…。まったくモナカちゃんのダイターン!…ぶりには困ったもんだぜ。色男も辛いぜ全く…」
「……」
「…あん?どした?」
一人のモノクマキッズがクロクマの元にやってくると何かを耳打ちする。
「…変な『飛行機』が通り過ぎた?未来機関のじゃねえのか?」
「…」(コクコク)
「誰の飛行機だ?しかも降りようとしたってんならともかく『通り過ぎた』?…ま、どうだっていいか!ラッキーな飛行機の一つや二つほっといてもいいだろ!ギャッハッハッハ!」
ガヤガヤガヤ…!
ビックバンモノクマはあのまま『塔和ヒルズ』まで進撃をつづけ、ヒルズ周辺のモノクマをあらかた一掃すると、灰慈は一旦ビックバンモノクマを降り大人たちをヒルズ前にある広場へと集めた。
「…皆!聞いてくれッ!!」
『……』
「始めに…俺はお前らに謝らなきゃなんねー。俺がいつまでも秘密基地に籠って動こうとしていたのは、『チャンス』を窺ってたからじゃあねえ。…俺は、ビビってたんだ。ガキ共に、モノクマ共に…!笑っちまうよな…こんな奴がリーダーなんてやってて、正直お前らには申し訳ねー…」
『……』
「だがッ!そんな俺の眼を覚まさせてくれた奴が居る!…そこにいる、『コドモ』とも『オトナ』ともつかねー女二人だ」
『……』
大人たちの視線が端の方にいるこまると腐川に向けられる。
「ど、どうも…」
「…そいつらのおかげで、俺はようやく『理解』した!いつまでも待っているだけじゃ、何も変わらねーってことにな!どんなに怖くても、自分の『勇気』を信じ、『希望』を持って闘わなくちゃいけねーってことをな!だからッ!俺はもう逃げねえ!ここからは、俺達の『反撃』だ!このビックバンモノクマさえあれば、それができるッ!この街を、公園のジャングルジムとでも思って占拠して嗤っているガキ共を引きずり降ろして、思い知らせてやろうじゃあねえか!この街の、本当の『支配者』は誰かっつーことをよ!この街は、塔和シティは!俺達の街だァッ!!」
『ウォォォォォォォッ!!』
「ふ、腐川さん…これ、大丈夫なのかな?ちょっと怖いよ…」
「さ、流石に…少しやり過ぎなんじゃあないかしら?あれじゃまるっきり『ナチズム』みたいなもんじゃない…」
「…行き過ぎた『復讐心』はただの『狂気』じゃ。ああなってしまっては、もはや誰にも止まらんよ…」
「救いがあるとするなら、彼らの自信の根底はあの巨大なモノクマだ。…いざとなれば、アレを『破壊』すれば…」
「いや無理でしょ。…いや無理でしょ」
「あれを操縦できるのは今では灰慈さんだけと聞きます。…彼から操縦権を奪うというのも不可能ですな」
「ううむ…。子供たちを止める筈が、いつの間にか『大人』の方を止めることを考えてしまうことになるとは…」
「こんな時、兄貴が居てくれたら…」
「頭領…クソッ!」
余りある力を手にしてしまった大人たちの勢いに、こまる達も戸惑いを隠せずにいた。
「おーい…!」
「…あ、浩子さん…と、シロクマ?」
そこに、物資の配給に行っていた葉隠がシロクマの頭を抱えて戻って来た。
「…こまるっち、ちょっといいかい?シロクマがどうしても話があるんだってさ」
「え!?シロクマが…?」
『こまるちゃん…大変なことになっちゃったね』
「シロクマ!私たちも相談したかったんだ…こんなことになっちゃって、どうしよう…?」
「アンタ、大人たちの蜂起はアンタの望んでたことだったんじゃあないの?こんなことになるなんて、聞いてないわよ…!」
『僕もまさか、灰慈君があんな強大な力を隠していたなんて知らなかったんだ…。灰慈君や大人たちは、モノクマだけじゃなく子供たちにも強い憎しみを抱いている。このままオトナとコドモがぶつかったら、お互いが殺し合うことになるかもしれない…!』
「こ、殺し合いッ!?」
「冗談ではない…!そんなおぞましいことをさせてたまるかッ!」
『その通り…。あれは僕が彼らに求めた『守る力』の範疇を大きく超えている。あのままじゃ、あの力でいつか自分自身を滅ぼすことになってしまう…!』
「身の丈に合わない力は逆に自分自身を滅ぼす…まるでスタンドね」
『そう。あれはまさしく、大人たちの『憎しみ』と『怒り』が形を成したもの…『復讐者』という名のスタンドのようなものなんだよ。暴走する前に、なんとかしなきゃならない…!』
「シロクマ…!なんとかならないの!?」
『…『一つ』だけ、手がある…!』
「あるならさっさと言いなさいよッ!」
『要するに、ことが大きくなる前に『問題』を解決してしまえばいいんだよ。…この街のモノクマは、僕みたいに個別のAIで動いているわけじゃない。どこかに、モノクマ達を動かしている『制御装置』がある筈なんだ』
「制御装置…。でも、それがあるってことは…!」
『…そう。そこにはモノクマを操っているヤツがいる…つまり、制御装置は子供たちの本拠地、『塔和ヒルズ』のどこかにある…!』
「成程…。あのビックバンモノクマが本格的に動き出す前に、街の脅威であるモノクマを止めちまおうって訳かい」
「確かに…敵対するものがなくなれば大人たちの心にも多少の余裕ができるでしょうし、戦力を失った子供ならば説得の余地はある…と、思いたいですね」
「…だが、現状それが可能なのは…」
「……」
「嬢ちゃんたち…しか居ねえよな。なら俺は『反対』だ。流石に危険どころの話じゃあねえ。これ以上この二人にそんな危ない橋を渡らせてたまるかってんだ…!」
「ホル・ホースさん…」
『もちろん、本当なら僕もそんなことをして欲しくは無い…。けど、それができるのは、もう二人しかいないんだよ!この街を救えるのは、君たちだけなんだ!』
「…散々アンタの都合通りに働かせといて、今度は敵の本丸に殴り込みしてこいっての…?アタシらはね…そこまでお人よしじゃあないのよッ!」
「…でも、十神さんを助けるためには…どっちにしろ行かなくちゃ駄目なんだよね」
「そ、それはそうだけど…今行ったところで辿りつける可能性は低いわよ。奴らの出方を見てからでも遅くは…」
「…それじゃ駄目だよ!」
「は!?」
「そんなんじゃ、前の灰慈さんと一緒だよ。チャンスを待ってても、来るかどうかなんてわからない…。なら、自分でそのチャンスを作らないと!今行かないと、きっと後悔するはずだよ!」
「きゅ、急にどうしたの…まさか、アンタ…自分の兄さんみたいになろうとか思ってんじゃあないでしょうね?」
「ち、違うよ!」
「自惚れてんじゃあないわよ!ブラコンこじらせるのは勝手だけどね、アイツの真似ができるのは『アイツだけ』なのよ!苗木誠は、誰かがマネできる人間じゃあないのよ!アンタだって、それぐらい分かってるでしょ!?」
「そ、そんなこと…!ていうか、ブラコンじゃないって!」
「まあそう熱くなるなや。…嬢ちゃんよ、本気で言ってんだな?今回ばかりはオレも助けようがねえ、気を抜いたら…マジで死ぬぜ?」
「…でも、それでも…こんなの、ほっとけないから…!」
『…本当に、成長したねこまるちゃん』
「…それが、『不安』なのよ…」
「え?」
「今のアンタは、前にもましてどっか危なっかしいのよ。なんていうか…ずっと倒れずにいるヤジロベエみたいで、『あと少し、あと少しだけいける』って思ってるみたいな…」
「…きっと大丈夫だよ!それに、倒れそうになっても腐川さんが支えてくれるんでしょ?」
「…ふ、ふん!期待しすぎんじゃあないわよ。…ったく、しょうがないわね。付き合ってあげるわよ」
「…!ありがとう腐川さん!…シロクマ、私たちやるよ!」
『あ、ありがとう二人とも!』
「…やれやれ、こうなっちまったらしょうがねえか。なら…せめて俺達もできる限りのことをしようじゃあねえか?」
「うむ。では、私は子供たちに被害が及ばぬよう皆を統制しよう」
「私も協力しよう」
「ならば我々は傷ついた者達の救護に回りましょう」
「…手伝います!」
「あ、アタシも…!」
「皆はオレが守るぜ!」
「怪我人がでしゃばんな。…俺も手を貸してやるよ」
「僕は出来る限り塔和ヒルズへのハッキングを試みてみるよ。…もしかしたら何か力になれるかもしれない」
「ふむ…ならばワシらは邪魔にならん程度に情報を集めるとしよう。子供たちの思惑も何か分かるかもしれんしな。…すまんなこまる君、本来ならついて行きたいところなんじゃが、流石に戦闘が前提となると足手まといになりかねんからのう…」
「大丈夫!私も頑張るから、おじいちゃんも無理しないでね」
「師匠に限ってそれはないよ。『年の功』ってヤツ?」
「…お気楽な連中ね」
そう毒づいてはいるが、皆がそれぞれ自分の役割を全うしようとしている、その光景に腐川の口元もニヤついていた。
『行くぞテメエら…!ここからが俺達の『戦争』だぁーッ!!』
『ウォォォォォォッ!!』
「…ッ!始まっちまったみたいだね…」
再びビックバンモノクマに乗り込んだ灰慈を先導に、大人たちは塔和ヒルズへと向けて行進を始める。道を阻もうと襲いくるモノクマをビックバンモノクマが踏みつぶし、逃げ延びたものを大人たちが手にしたバットやバール、鉄パイプで寄ってたかって袋叩きにする。先日までの怯えは何処へやら、反撃を恐れることなく一心不乱にモノクマを破壊し、かの串刺し公の如くその首を突き刺し高く掲げる。その光景に、モノクマキッズたちも『恐怖』を覚えたのか建物の陰で縮こまる他なかった。
「この勢いは予想以上だね…。グズグズしてる暇はなさそうだよ…!」
「うん、…行こう腐川さん!」
「わ、分かってるわよ。…ホル・ホース、後の事は頼んだわよ」
「おう。…お前も白夜の坊主を助けてこいよ」
「言われるまでもないわよ…!」
「冬子様、白夜様をどうかよろしく…」
「…勿論です」
皆の声を背に、二人は人知れず塔和ヒルズへと侵入していった。
ビックバンモノクマが外で暴れているおかげか、こまるたちはあっさりヒルズへと入ることができた。ヒルズのエントランスはほぼ無人で、どうやら『希望の戦士たち』の生活区域も兼ねているようであった。
「…今更だけど、こんなところに住まわされてたってことはアイツらも所詮あのモナカってガキにとっちゃ『使い捨ての駒』だったみたいね」
「…うん」
道中、オフィス部へと続く扉を塞いでいたかつて希望の戦士たちが操っていたロボを退けるためにこまるたちは彼らの部屋へと侵入し、そこに置かれていたコントローラーでそれを成したのだが…同時にそれぞれの部屋に置かれていた『日記』から、彼らの心境を読み取ることとなった。
「あの子たちも…苦しんでいたんだね。けど、それを発散させる方法を、『大人を殺す』ことしか知らなかった…それがエスカレートして…こんなことになっちゃったんだね」
「ま、多分ここまで煽ったのはあのモナカってガキでしょうけどね。…あんな『物騒なモノ』を用意するぐらいだから、性根の悪さは相当よ…」
「…子供たちが被ってるあの『モノクマの仮面』のことだよね?大門君の日記には『せんのう』って書いてあったけど…」
「十中八九『洗脳』で間違いないでしょ。多分あの新月とかいうガキにも似たようなことして同じことしか憶えられないようにしたんじゃない?」
「そんなの、SFの中だけだと思ってたけど…」
「アンタらみたいなのが知らないだけで、その程度の技術はとっくに確立されてるわよ。それに、希望ヶ峰学園にはそんな物使わなくても『洗脳紛い』のことができるような奴もいたしね。別に驚くようなことじゃないわ」
「けど…だったら、尚更この争いを止めないと!あの子たち自体は操られてるだけなんだから、そのモナカって子を止めればきっと全部終わる筈だよ!」
「そうね…。全く…江ノ島もどうせ面倒見るならもう少しまともに…いや、それはないわ。あんなイカれた化け物モドキが5人も増えるぐらいなら1人だけの今の方がまだマシよ…」
「…けど腐川さん、腐川さんと江ノ島盾子ってクラスメイトだったんでしょ?こんなことをしちゃうぐらい酷い人なのに、学園に居た頃に気づかなかったの?」
「…い、痛いところを突くわね。そりゃ、アタシらだってアイツがどっかおかしいことぐらいなんとなく気づいてたわよ。けど、アイツは本物の『天才』だった。『困惑』が『疑惑』に変わる前に、アイツは既にアタシらの中に溶け込んでいた。自分の存在が、『絶望』であるということを悟らせないよう、アタシらの中で『偽りの希望』を見せていた。アイツは『絶望』を成す為に、ほんの一時期だけ『希望』になっていたのよ。…気づいていたのはアイツの姉の戦刃と…苗木だけだった筈よ」
「え?お兄ちゃんも…?」
「戦刃に関してはどうしようもなかったわ。アイツ…長年ほったらかしにしてたことを気に病んで江ノ島の『イエスマン』になってたからね。けど苗木は…アイツは違った。江ノ島の『本性』に感づいたうえで…それでもアイツを『信じようとした』のよ。たとえ偽りでも、江ノ島が見せた『希望の輝き』は本物だった。アイツは、そんな江ノ島を信じようとしたのよ。アイツが絶望を抑えきれないのなら、自分がその『はけ口』になってでも、江ノ島に『希望』を見出させようとしたのよ」
「…お兄ちゃん」
「…多分アイツも、アイツなりに悩んだりしたんじゃないかしら?一時期変な様子の時があったし。…けど、結局はダメだった。プッチに唆されて、希望ヶ峰学園の『闇』を知って、…苗木に執着『し過ぎた』ことで、江ノ島は完全に絶望に振り切った。その結果が…『この世界』って訳よ」
「…お兄ちゃんは、江ノ島盾子も救おうとしたんだね」
「ま、戦刃の妹を敵にしたくなかったってのが本音なんじゃないの?…そういう訳だから、苗木はこの世界を生み出してしまったことへの『責任』を感じてんのよ。江ノ島を止めきれなかった、自分への『責任』をね。だからアイツは戦うの。直接の原因じゃないとはいえ、自分が関わってしまったこの世界を、前よりも『ほんの少しだけ良い世界』にする為に…アイツは自分を捨てて闘ってんのよ」
「……」
「これで分かったでしょ?アイツは他の誰かに代わりが務まる物でも、ましてアイツと『同じ』になんかなれっこないわ。アンタも自分の身の程考えて行動しなさい。じゃないと早死にするわよ」
「だ、だからそんなこと思ってないって!」
「どうだか…。アンタの事だから苗木の事も『実の兄以上』になりたいとか思ってんじゃあないの?血縁だって『半分』なんだし…」
「そそ…そんなことないよッ!」
「カマトトぶってんじゃあないわよ。…アタシ知ってんのよ?アンタが夜な夜な『メスの声』で『お兄ちゃん、お兄ちゃん』…ってよがってんの…」
「…ッ!?」
「…な~んて、冗談よじょうだ…」
「な…なんでそのこと知ってんの!?お母さんにしか聞かれてない筈なのに…ッ!?」
「…え?」
「…え?」
「…アタシ、冗談のつもりだったんだけど…!?」
「じょ、じょう…だん…?」
「………」
「………」
「…お、おまる?アンタ…まさかマジに…」
「…ぅうぅぅぅううううッ!!!…そうだよ!ブラコンだよッ!!なんか悪いッ!?」
「ひ、開き直りやがったわコイツッ!!」
「だって…しょうがないじゃん!お兄ちゃんなんか『エロい』んだもん!」
「エロいってなによッ!?アンタなにに発情してんのよ!」
「だって…子供の頃は、ちょっと大人びてるな~…って思ってたぐらいなのに、イタリアから帰って来たら、なんか…『年上のお兄さん』みたいな感じになってて、いつも通りにしてるだけでドキドキして…。雷が怖くてベッドに潜り込んだ時も、昔はなんとも思わなかったのに、最近は『違うこと』にドキドキして眠れなくて…なんかもう、好きになっちゃったんだよ!!」
「だからって駄目に決まってんでしょ!半分でも『実の兄』なのよ!?」
「分かってるよ!分かってるから我慢してるんじゃん!腐川さんの馬鹿!」
「ば…バカって何よこの変態ッ!」
「変態じゃないもん!自分に『正直』なだけだもん!!」
「立場を考えなさいよ!このピンク頭ッ!!」
ギャーギャー…!
…その頃、塔和ヒルズ上階にて…
ガチャ…
「…ごめんねー。『お人形』の相手が長引いちゃってさー。もう、ホントに面倒だよねー?『オトナ』って…」
「……」
「……」
部屋へと入って来るなりそう言うモナカの言葉に、応える者はいない。
「…ま、返事なんか『返せるわけない』よね?それより、やっとだよ…やっとあなた達の『コドモ』がここに来るんだよ…!だから、あなた達はそこで見届けていてよね、『二代目江ノ島盾子』の誕生の瞬間をさ…『特等席』で見せてあげるからね。うぷぷぷぷぷ…♡」
「……」
「……」
一人で満足そうにそう言って、モナカは部屋を出て行った。
「……」
「……」
静寂の中
ガチャ…
「…『これ』ですか、さっさと済ませましょう。…ああ、『ツマラナイ』…」
誰もあずかり知らぬところで、『悪夢』の序章が始まった…
最後のところは、絶女のエピローグのあの伏線をこの作品なりに利用してみました。
ここがどうつながるのか…お楽しみに