…実はもうノリで描いた交錯編と追憶編でも載せようかと思ったんですけど、もう少しクオリティ上げてからにしたいので本編更新です。
それはそうとして絶望編良かったですね!コンプレックス全開モードの日向が大天使ナナミエルに少し救われるのが実にベネ!…この後の展開を知っているだけになお辛いのがさらにね…おのれ小高和剛!そして岸誠二!
ところで日向への陰口の中で「裕福な家の奴はいいよな」って台詞がありましたけど、日向って結構イイとこのお坊ちゃんなんでしょうかね?まあこの作品では関係ないですけど…
あと絶望編EDで弐大が首にしめ縄巻いてるの見て「くまみこじゃねーか!」って思ったのは僕だけではないはず
「ぅお痛ちちち…あの野郎、ヒョロイと思ったらやりやがるぜ…。足腰が立ちぁしねえ…」
「だ、大丈夫ですか?」
「イイ歳こいたオッサンがカッコつけるからよ。歳を考えなさいよね」
二人でホル・ホースを背負いながら、こまる達は一路狛枝に言われた『青いビル』を探して街中を歩いていた。
「おいおい、年寄り扱いしねえでくれよ。こう見えて若い頃…承太郎たちと戦ったころはマッチョでイイ男だったんだぜ~。世界中に俺の帰りを待ってる女が沢山いたもんだぜ…」
「ええ~?本当ですか~?」
「マジよマジマジ。惜しいナァ~、俺があと15年若いかあのアレッシーって野郎の『セト神』とかいう若返らせるスタンドがありゃあよぉ~……あん?」
「どうしました?」
「いや…俺が持ってた『フー・ファイターズ』の入った瓶が見当たらねえと思ってよ…。嬢ちゃん見なかったか?」
「…それなら、おまるとアタシの治療に使ったわよ」
「あ、そうなのか。…で、『ビン』の方はどうしたんだ?」
「ビン?」
「瓶だけ持っててどうすんのよ…?」
「…なんだ、お前知らねえのか?アレよ、『増やせる』んだぜ?」
「…え!?」
「え…マジ?」
「おう。あの『フー・ファイターズ』ってのは元々『プランクトン』かなんかと『融合』したスタンドらしくてよ、スタンドであると同時に生物でもあるんだ。んで、そいつの特性を引き継いでいるから、『水分』さえ与えれば減ってもまた増やすことができるんだぜ。あれだって太一の奴を治した余りに水を与えてまた増やしたものなんだからよ。…で、どうしたんだ?もしかして捨てちまったか?」
「あー…その…」
「…ま、まあそんなところかしら…」
「なんでぇ~、勿体ないことしやがって。…まあいいか、どのみち今の俺じゃ傷が治っても戦力にはなりそうにもねえしな…。あそこに戻ったら、ちょいと休ませてもらうぜ」
「あ、うん…その方がいいかもね…」
(…だ、大丈夫だったのかな腐川さん…?)
(じ、自分でやっといて何言ってんのよ…!…た、多分大丈夫じゃないかしら?アイツもまさかアレが『生き物』とは思わないでしょ…多分)
(ていうか、腐川さんそのこと知らなかったの?)
(うぐ…。し、しょうがないでしょ…。アタシは今のところ『研修生』なんだからアレは支給されてないんだし、…一応アレの『本体』とは学園に居た頃に会ったことがあるけど、正直キモかったからあんまり話聞いてなかったし…)
「もー…」
「…おい、あれじゃあねえか?『青いビル』って奴はよ」
「え?」
ホル・ホースが指差した先には、ビル群の中で一際目立つ青いライトで照らされたビルであった。
「あ、きっとアレだよ!ほら行こう腐川さん、ホル・ホースさん!」
「ちょ…ちゃんとコイツ持っていきなさいよ!」
「あ痛でで…!もうちょい優しく運んでくれぇ~…」
ホル・ホースと腐川の手を引いて、こまるはそのビルへと入っていった。
ビルの地下は地下街へと繋がっており、こまる達はレジスタンスの基地へ向かうために下水道へと続く道を探していた。
「…ねえ、お…『こまる』。ちょっといい?」
「ど、どうしたの?急に改まって…」
「アンタ…アタシの事を『友だち』って呼んでくれたわよね?」
「え?あ…うん」
「何でぇ、お前さんたちまだダチになってなかったのかよ?」
「う、煩いわね!もうなったんだからいいでしょッ!…で、でさ…アンタとは友達だけど、アタシにとっての一番は白夜様な訳よ」
「うん…それで?」
「だ、だから…その、そういうのちょっとマズイって言うか…『背徳的』っていうか…。そんな曖昧な気持ちでいいのかなって思って…」
「…おい、なんか変な方向に行ってっぞ」
「腐川さん…『友達』って知ってる?」
「ばば、バカにしないでよッ!それぐらいアタシだって知ってるわよ!毎日毎日メールとか中身も何も無い薄っぺらな話で時間を浪費して、そんでどっちかに恋人ができるとちょっと疎遠になって…でもしょうがないか、って妥協して…」
「えっと…間違いじゃあないんだけど…」
「なんだその…日本語をトチ狂った方向にエキサイト翻訳したみてーな知識はよ…」
「じ、じゃあなんだっていうのよ…?」
「えーと…。うーん……ごめん、やっぱり私にもよく分かんないや」
「んな…ッ!?あ、アタシの期待を返しなさいよ!」
「…オメーはに肩肘張りすぎなんだよ。『ダチ』ってのはよ、『他人だけど他人じゃねえ』…そんな感じの関係ってことなんだよ」
「…はぁ?増々分かんないわ…」
「要するに、放っておけねえ奴ってことだよ。一人でいるときに、下らねえことでも話していたい…。心細い時、心のどっかで自分を見守ってくれる、発破をかけてくれる…。『家族』とか『恋人』なんて深い関係以外で、そういう風に思い合えるような奴のことを『友達』っていうんだよ。だからもっとフランクに付き合えばいいんだよ。それこそ、他人行儀に苗字じゃなく名前で呼び合うぐらいによ」
「名前…そうだ!腐川さんのこと…『冬子ちゃん』って呼ぶのどうかな?」
「…誰よそいつ?」
「自分の名前でしょッ!?」
「…ハッ!?う、うっかりしてたわ…。一年に一回あるかないかの本当に優しい時の白夜様やアロシャニスさん以外に呼ばれたことなかったから…」
「侘しい青春してんなぁ~…」
「ま、まあとにかく…改めてよろしくね、冬子ちゃん!」
「…う、ぎぎ…ッ!?」
「と、冬子ちゃん!?」
「あがが…ッ!?き、気にしないで…ッ、あ…アタシは慣れないことを体験すると、ず…頭痛が…ッ!?」
「…どんだけ幸せ慣れしてねえんだよ」
「…やっぱり、慣れるまでは『腐川さん』のほうが良さそうだね」
「そ、そうして頂戴…」
頭を抱える腐川を生暖かい目で見ながら、こまる達は先へと進んでいった。
一方その頃、子供たちの本拠地では…
「……」
「おや、どうした新月ボーイ?急にロボなんか持ち出してどっか行っちまったと思ったら怖い顔して戻って来てよ?」
本拠地へと戻った新月をからかう様にクロクマが出迎える。
「…モナカちゃんは何処だ?」
「モナカちゃん?何の用…あ、そうかそうか!ようやっとお前もそのうじ虫みてーな勇気を振り絞る決心をしたってワケか!いいぜいいぜ!オレ様は勇気ある童貞男子の味方だからな!」
「うるさいんだよッ!お前は聞かれたことだけ答えればいいッ!モナカちゃんはどこに居るんだッ!?」
「…私ならココだよ」
「ッ!?」
新月が振り返ると、モナカがにこやかにそこに居た。
「…モナカちゃん」
「怖い顔して戻って来たと思ったら急に飛び出しちゃうからびっくりしたよー。…ところで新月君、召使いさん見なかった?」
「…アイツは、『死んだ』よ」
「え?」
「おいおいおいおいおいおい!…それマジ、どこソースよ?」
「アイツは死んだんだ…。僕は、アイツを殺そうとした…。もう少しで殺せるところだったのに、アイツは神社に逃げ込んだかと思ったら…急に神社が『爆発』したんだ。爆弾でも仕掛けてあったのか…けど、あの爆発じゃ生きている訳が無い…。アイツは、もう死んだ…ッ!」
「…ふーん」
「…それで、僕もモナカちゃんに聞きたいことがある…ッ!アイツは、こう言っていた…『彼女の言い分を伝えに来ただけだ』と…。モナカちゃん…キミなのか?君がアイツに僕を止めるよう命令したのか!?答えてくれッ!そして…嘘だと言ってくれッ!」
「……」
「…うん、嘘だよ」
「!」
「…って言ったら、新月君嬉しい?」
「…は…?」
「ごめんね、それ全部『本当』のことなんだ。私が召使いさんにお願いしたんだよ、苗木こまるさんをこの街から逃げないようにしてって」
「な…んで、なんでなんだよッ!モナカちゃんだって分かっているはずだろ…!?あんな奴にですら僕たちはこれだけの被害を受けたんだぞ!この上未来機関や魔王とまで戦うことになったら…勝ったとしても僕たちにはもう楽園を創るだけの力は残ってないかもしれないんだぞ!?だから僕はアイツを魔王の所に返して、少しでも敵を減らそうとしたのに…あんなことをしたら、増々魔王を怒らせるだけじゃあないかッ!僕等の楽園が…どうなっちゃってもいいの!?」
「……うん、いいよ」
「え……ッ!?」
「ホントはね、モナカは楽園なんてどうでもいいんだー」
「…そ、それ…どういう…」
「と言うかねー、新月君がやろうとしたことがさ、モナカにとって一番の『邪魔』になることだったんだよ。だから、止めさせようとしたの!」
「な…何をいって…!?」
「分からない?じゃあ分かりやすく言ってあげるね。…モナカの『楽園』は、新月君の『楽園』とは違うんだよ。モナカにとっての楽園は、魔王が…『苗木誠が存在しない世界』なんだよ♡」
「苗木…誠…?」
「…アイツが居るだけで、この世界に蔓延している『ジュンコお姉ちゃんの意志』はだんだん薄らいでいってしまう…。ジュンコお姉ちゃんが『絶望の象徴』であるように、苗木誠は『希望の化身』…。アイツさえいなかったら、例え世界がどうなろうと私は構わない。オトナがコドモをどれだけ虐待しようと、コドモがオトナを皆殺しにしようと、私にとってはどうでもいーのじゃー!」
「…ふ、ふざけるなッ!何馬鹿なこと言ってんだよッ!?」
「…私は『本気』だよ?それが『二代目江ノ島盾子』の為に必要なことなんだから」
「は…?二代目…?」
「そう、ジュンコお姉ちゃんの意志を『本当の意味』で継ぐ、二代目江ノ島順子…それが私の求めるものなんだよ。…召使いさんとは途中まで目的が一緒だったから手伝ってもらってたんだけど…死んじゃったんならしょうがないかー」
「…分からないよ。モナカちゃんが何を言ってるのか…さっぱり分からないよ…」
「だからー、新月君はこれからも『モナカの為に』頑張ってよ。『楽園』だなんて建前なんかいいからさ。…モナカの為に、さ」
「…え?」
立ち尽くす新月にモナカは車椅子を動かし近づくと…
チュッ…
「!?」
「んッ…ちゅ…んん…」
何の躊躇いもなく、その唇を奪った。
「え…あ…?」
「えへへ…新月君の初チューとっちゃった♡」
「何…するんだよ?」
「えー?だって新月君ってさ、モナカの事『好き』なんでしょ?モナカなしじゃどうしようもないぐらいに…好きすぎて、時々一人で『エッチな妄想』したりしてるんでしょ?」
「や、やめてよ…やめろよぉッ!!」
「ね?モナカとチューできて嬉しいでしょ?もーっと頑張ってくれたら、それ以上のこともしてあげるよ?だから…モナカのお願い、聞いてくれるよね?」
「く、来るな…来ないでよ…!」
にじり寄るモナカから逃げるように新月はどんどん後ずさっていく。
「新月君は大変だよねー?『優秀』なせいで皆から『期待』されてさ、それを分かってるから期待されてる自分にも『期待』してさ。…そんな自分を肯定するために、他の人よりずーっと頑張って来たんだもんね?」
「…く、来るなって…言ってるだろぉーッ!!」
バチンッ!
壁際にまで追い詰められ、行き場を失くした新月の『恐怖』はモナカへと向かい、その頬を強かに打ち据える。…しかし、新月がその行為に気が付く間もなく
「…けど、モナカは新月君になんにも『期待していない』よ」
「…ッ!!?」
モナカの非情な一言が新月を絶望の淵から逃がさない。
「最初から新月君に期待なんかしてないんだよ。だから『二代目江ノ島盾子』のことも内緒にしてたんだし。だって新月君はある意味で希望の戦士の誰よりも『コドモ』なんだから。身の丈に合わない期待に応えようとして、バカみたいに背伸びし続ける…そんな新月君に期待なんかする訳ないじゃん」
「う…五月蠅いッ!五月蠅い五月蠅い五月蠅いッ!僕の…僕の傍に近づくなぁーッ!!」
バチンッ!バチンッ!バチンッ!
狂ったようにモナカの頬を殴り続ける新月。しかし、口元から血が流れようともモナカは苦痛の表情を浮かべることは無かった。
「ていうかさー、新月君が勝手に『期待されてる』って勘違いしてたんじゃないのー?ホントは皆だって新月君のことなんかどうでも良かったかもしれないのにさ?」
「来るなッ!来るなッ!来るなァーッ!!」
「全部新月君の勘違いだったんじゃあないの?新月君がそうであって欲しいと思って勝手に思い込んだだけなんだよ」
「そ、そんなこと…そんなこと…ッ!!お前に何がッ…」
「分かるよ」
「だって…新月君は『狗』だから」
「い…ぬ…?」
「そう。皆の…私の気を惹こうとして、私の言う事をなんでも頑張ろうとして、…現実を見て簡単に心を折ってしまう、愚かで可哀想なワンコちゃん。そのこと自体は別にどうでもいいんだけど…私はそんなものは求めていない。そんなものじゃ、アイツは殺せないから…!」
新月を見つめるモナカの瞳に、どす黒い『狂気』の色が映り始める。
「現実から逃げるような『狗』じゃあ、あの『バケモノ』は殺せない。神父様が言っていた…『バケモノを殺すのは人間でなくてはいけない』って。だから私はどこまでも『人間』であり続ける。どんな手段を使っても、目的を果たす…そんな脆弱で怠惰で卑怯で狡猾で陰険で…『恐ろしい』人間であり続ける。…だから、新月君のことは大好きなんだよ。私の為になんでもやってくれる、可愛い可愛い『私だけのワンコちゃん』なんだから。ペットを大事にするのも、『人間らしさ』って奴だよね?だから…」
愕然と棒立ちのままの新月にモナカは再び顔を寄せ、
「んぐ…ッ!ちゅ…ぐ…ッ」
「んッ…!チュ…チュク…」
今度は尚濃厚に、再び口づけを交わした。
「これからも、モナカの為に頑張ってね。ずーっとずーっと…新月君が『犬の餌』になるまで、ずーっとね…」
「………」
「くぅ~ッ!相変わらずエゲツねえぜモナカちゃんはよッ!小悪魔…いや、悪魔…いやむしろ一周回って『超人間的』って奴か?『悪意に関して悪魔が人間に敵うわけが無い』ってどっかのゲームで聞いた事あっけど、まさしくモナカちゃんがそれって奴だなーッ!…ま、俺はクマなんだけどな!ギャハハハハハッ!!」
糸の切れたマリオネットのように崩れ落ちた新月をそれを満足そうに見やるモナカを、クロクマの馬鹿笑いが包み込んでいった…。
ビルの地下街から地下鉄へと下りたこまるたちは、崩れた構内を探索しつつ、狛枝から譲られた新たなコトダマを駆使し、どうにか下水道への道を切り開くことができた。
「…できたって言ってもねえ…」
「まさか『駅もホームを丸ごと崩して』下水道への道を無理やり作っちまうとはなぁ…たまげたぜ全く」
「し、しょうがないじゃん!これしか方法がなかったんだから!」
下水道へと降り立ったこまるたちの周囲には、無数の瓦礫が散乱していた。こまるは駅ホーム内を巡回する『ボンバーモノクマ』を利用し、既に壊れかかっている路線を爆発で破壊することで地下へと続く大穴を創り、偶然にも下へと垂れ下がった線路を梯子代わりにしてここまでやってきたのである。
「しっかし派手にやったわね…。とても『処女』のやったこととは思えないわ」
「ちょ…ッ!?何言ってんのさ!?」
「そうか?ジョリーンなんかこの間ビルを一棟ぶっ壊してやがったが…」
「…あのぶっ飛び一族を同じ括りにするんじゃあないわよ。…で、新しいコトダマの調子はどうなの?」
「あ、うん…。結構使えるよ、今迄できなかったことを補う感じのコトダマだし…」
「アー!」
「あは…だよね!」
「あの野郎…持ってんならさっさと全部出せってんだ」
「それにしても…」
「な、何よ?」
「いやさ、私たちしょっちゅう下水道を行き来してるでしょ?臭いとかついちゃわないかなーって…あ、ゴメン!腐川さんに臭いの話は厳禁だっけ?」
「禁じてないしそれってアタシが臭いって遠回しに言ってんじゃあないのッ!」
「気にされんのが嫌ならちゃんと風呂に……あん?」
「ど、どうしたんですか?」
「…おい、なんか聞こえねえか?」
「え?」
「…そういや、なんか騒がしいわね。もうこの辺は基地の近くだってのに…」
「待って。秘密基地の近くなのに騒がしいってことは…」
「…ッ!まさか…」
「急ごう!」
「お、おう!」
嫌な予感を覚えたこまる達は大急ぎで騒ぎの方向…秘密基地の方へと走りだす。近づくにつれ徐々に鮮明になる騒ぎの声、そして不自然な『暑さ』に不安を掻き立てながらこまる達は入り口の梯子を上る。そしてその先で待ち受けていた光景は…
ボォォォォ…ッ!
「キャアアアアッ!」
「た、助け…ぎゃああッ!?」
『ぐへへへへ!』
『やれー!』
『汚物は消毒だー!』
『ヒャッハー!』
あちこちに点在する切り刻まれ、燃えカスとなった大人達の死体。それを成したのは、背中に『ジェットパック』を背負い空中を滑空しながら手にした『火炎放射器』で全てを燃やし尽くす『デストロイモノクマ軍団』。そしてそれを楽しげに観覧するモノクマキッズたちによって作り出された『焦熱地獄』であった。
「な…なにコレ…!?また基地が襲われてる…!?」
「つーかなによあのモノクマ…ッ!?もはやモノクマじゃないでしょあんなの!」
「こいつは…、今迄で最大級にやべえ奴なんじゃあねえか…!?」
『…おーい!』
「…あ、シロクマ!」
『良かった…!皆戻って来てくれたんだね!』
「おいシロ公…、こいつはどうなってんだッ!?」
『それが…、ちょうどケンイチロウって人がやって来た時に、いきなりあのモノクマと子供たちが『寄宿棟』の方から現れたんだ。どうやらあいつ等は、僕たちが知らないルートから穴を開けてここにやって来たみたいなんだ!』
「寄宿棟って…それじゃ、皆は!?」
『今は朝日奈君やケンイチロウさんが応戦しながら、耐熱壁のある貯蔵庫のほうに避難してるよ。けど、逃げ遅れた人たちがまだ大勢いるんだ!あのモノクマじゃ、朝日奈君やケンイチロウさんみたいに戦う力のない人はどうしようもない…。お願い、皆を助けて!』
「…考えるのは後みたいね」
「うん…!今は、アイツらをやっつけよう!」
「なら俺も…うぐッ!?」
「…その怪我じゃまともに動けないでしょ。ここはアタシらに任せて、アンタは避難してる連中と合流しなさい。アイツらにサポートしてもらえば『固定砲台』ぐらいの仕事はできるでしょ?」
「…すまん。シロ公、肩貸してくれ…!」
『うん!じゃあ二人とも、皆を頼んだよ!』
「任せて!…行くよ腐川さん!」
「ハン、誰に…言ってんだデコマルゥッ!行くぞ世紀末モノクマ共!全員モヒカンカットにしてやらぁーッ!」
『どぉーん!』
『消毒だー!』
ゴォォォォッ!
「熱ッ!…もうこれ以上好きにはさせないんだからッ!『コワレロ』!」
ドギュン!
ビュン!
『はずれ~!』
「速い!?あの獣みたいなモノクマと同じぐらい…。なら…!そっちが『炎』なら、こっちも『燃やす』よ!」
コトダマを切り替え、こまるが銃口を再びデストロイモノクマへと向ける。
「喰らえ!『モエロ』!」
ドドドドドドッ!!
『ブギャ~!?』
トリガーを引くと同時に、先ほどより遥かに速い弾速で『連射』された赤いコトダマがデストロイモノクマを撃ち落とす。これが新たなコトダマの一つ、『モエロ』。威力自体はコトダマの中でも低い方だが、それを補って余りある『残弾数』と『弾速』、『連射性』により動きの素早いモノクマを文字通りの集中砲火で回路を焼き尽くすことができるのである。
「…といっても…」
『喰らえー!』
『モノクマ流!』
『ジェッ○ストリームアタック!』
ボォォォォォッ!!
「熱ッ!熱ッ!!…これじゃキリが無いよ…!このままじゃ皆が…」
『うほほーい!』
「…え?キャ…」
『ウバァァァァッ!』
奇襲を仕掛けようとしたモノクマを、こまるの肩に乗った赤ん坊の『G・G・G・O・H』が反射的に能力を使って小さくする。
シュルシュルシュル…
『…アレ?』
「あ…ありがと君。でも…」
『シャギャァァァ!』
「他のモノクマまで…!?ど、どうしよう…」
余りの敵の数に弱気になりかけるこまる。と…
「…あれ?あの柱…」
ふとこまるの眼に入ったのは、先ほどの線路の崩落とモノクマ達の襲撃によりあちこちに『罅』が入った大きな石柱。そしてちらりと横を見ると、計ったようにそこにいた『ボンバーモノクマ』と『サイレンモノクマ』。
「もしかしたら…いけるかも!腐川さんッ!お願い、少しだけ時間を稼いでッ!!」
「ああん?…なんとかできんのか!?」
「多分…イケるかも!」
「…チッ、しゃーねーな!『一分だけ』だぞ!」
「それで充分…だよ!」
陽動の為に派手に暴れはじめたジェノサイダーとほぼ同時に、こまるはコトダマを切り替え『サイレンモノクマ』へと照準を定める。
「まずはコイツを…『ツナガレ』ッ!」
パシュン!
トリガーを引くと飛び出したのは湾曲しながら前進するハート形のコトダマ。それはゆっくりとサイレンモノクマへと向かい、着弾すると
『…!?』
命中した瞬間、ターゲットを探していたサイレンモノクマは突如硬直したように動かなくなる。
「…よし!まずはあの柱の近くまで…全速力!」
こまるがそう言うと同時に、サイレンモノクマは一目散に指示された場所へと走り出す。これがもう一つのコトダマ、『ツナガレ』。ハッキング銃の名の通りモノクマの電子回路を『ハッキング』して『乗っ取る』ことで、一定時間の間モノクマ一体の行動を自由に操ることができるのである。無論乗っ取ったモノクマで同士討ちさせることもできるが、こまるの目的はそこではない。
「…よしそこ!操作解除!そして…今度は『オドレ』!」
ドギュン!
『ぱらりらぱらりら♪』
指定位置までサイレンモノクマを誘導すると今度は『オドレ』のコトダマを撃ち込み、サイレンモノクマを踊らせる。その際に鳴り響くサイレンを聞きつけ何事かと周囲のモノクマが集まっていく。
「…なるほどね、そういうこと!」
「うん!次はアイツに…『ツナガレ』!」
パシュン!
続けてこまるは集まろうとした『ボンバーモノクマ』に再び『ツナガレ』のコトダマを撃ち込み、そのコントロールを奪う。
「ダッシュで移動!目的地は…あの柱の『真下』だよ!」
指示を受けたボンバーモノクマが所定の位置につくと、こまるは操作を解除しコトダマを切り替える。
「お願い…!一発で決まって…お兄ちゃん、私にほんのちょっとだけ『幸運』を貸して!『イン・ア・サイレント・ウェイ』、『ドカン』と『コワレロ』!」
スタンドパワーを籠めて放たれたコトダマはボンバーモノクマに命中すると持っていた爆弾の誘爆も含めて大爆発を起こす。
ドォォォォンッ!
ガラガラガラ…ッ!
ガラガラ…ガラ…ッ!
「…そんな…ッ!?」
ザクッ!
「!」
「デコマル…アタシを忘れてんじゃあねーぞ?」
「腐川さん…!」
ピシッ!!バキバキバキッ…!!
こまるのコトダマとボンバーモノクマの爆発、そして追い討ちのジェノサイダーの鋏の一撃により、壊れかかっていた柱が限界を迎え、根元から倒れ落ちる。その真下には…
『…おろ?』
「ビッグスタチューだッ!!」
「まとめて…ブッ潰れろォッ!!」
ズドォォンッ!!
轟音と共に、石柱は下に集まっていたモノクマたちを巻き込んで崩壊したのであった。
作中でモナカが言ってたプッチの台詞に聞き覚えのある人!
別にプッチの中の人にこの台詞言わせたかったわけじゃあありませんからね!たまたま書いている時にHELLSIGの単行本がそこに…ごめんなさい
次の更新は順調なら20日、滞ったら25日になるのでご了承ください