いやあ、アイズ・オブ・ヘブンといいジョジョの新作情報が多くて楽しみですね
ダンロン3も発売決定しましたし、それまでにこの作品も進めていけるよう頑張ります!
新たなる道連れ『雪丸竹道』を加え、シロクマに連れられ地下街の奥へとやって来たこまる達は、地下道突き当りの目立たない所に掘られた『穴』からさらに下へと下り、その先につながっていた『下水道』からさらに奥へと進んでいた。
「…へえ、雪丸君って『暴走族』だったんだ」
「…おい、んな適当な言い方すんじゃねえ。俺が所属してるのは日本最強の暴走族、『暮威慈畏大亜紋土』だぜ!その辺の『走り屋』なんかと一緒にすんじゃねえよ!」
「ご、ごめん…」
「…フン、分かりゃあいいんだよ」
「…でも、羨ましいな。そんな風に『自慢できる何か』があるのってさ」
「…お前変な奴だな。暴走族なんて聞きゃあ大体の奴はビビるか見下してくんのによ」
「アハハ…まあね」
「へっ!当たり前だろ、なんたって姉ちゃんの兄貴は『ギャングのボス』なんだぜ!暴走族なんかにビビるかよ!」
「ッ!?ま、マジかよ…」
「へへーん!どうだ、参ったか!」
「ち、チクショウ…やるじゃねえか…」
「…余り私の前でそういう自慢合戦は止めて欲しいのだがな」
「………」
「おいおい腐川の嬢ちゃん、いつまで仏頂面してるつもりだい?確かに臭ぇのは分かるがよ、皆だって我慢してんだぜ?」
「もうとっくに鼻なんてバカになって臭いなんかどうでもよくなってるわよ…!」
「じゃあなんでそんな怖い顔してんだよ?」
「それは……」
「…まだシロクマ君の事を疑っているのか?確かに見た目こそモノクマだが、まだ敵と決まった訳ではないだろう」
「そ、そんなこと分からないじゃない…」
『うう…ボクってそんなに信用できないかなあ…?』
「そ、そんなことないよ!」
「こまる…、アンタももうちっと警戒しなさいよッ!…大体、今のこの状況自体が納得いかないのよ…」
「どう言う意味だ?」
「…『都合が良過ぎる』のよ。出入り口が全部塞がれて行き場を失くした途端に『秘密基地』の場所を知ってるこいつが現れた…。アタシの大っ嫌いなラノベでも使い古したようなこんな『ご都合主義』な展開を疑うなって言う方がどうかしてるわ…」
「そんな言い方しなくても…」
『いや、いいんだよこまるちゃん。…確かに、君たちが地下に入っていったのを見て先回りしていたのは事実だよ』
「ほ、ほら見なさい!」
『でも、それは君たちをただ助けたかっただけなんだ!その気持ちに『嘘』はないよ!』
「なにが助けるよ…そのアタシらに助けられてんじゃあ世話無いわよ」
『うう…面目ない』
「…でも、どうして私たちを助けようとしてくれたの?」
『人を助けるのに『理由』なんて要らないよ!ボクがそうしたいからしただけなんだ』
「…え?」
『こんな大変な時に、僕だけが純白の毛並みを保っている訳にはいかないからね!』
「お、お前…意外とイイ奴じゃねえか」
『えへへ…』
「…ねえ腐川さん、この子やっぱり…」
「アンタ…さっきアタシが言ったことをもう忘れたの?『理由』も無しに人助けする奴には、なんか『裏』があるに決まってるじゃない…」
「でも、お兄ちゃんだってそういうことを…」
「アレはただの『お人よし』よ。アイツの場合は『本能』で動いてるようなものなんだから、機械と一緒にするんじゃないわよ」
「…だが、シロクマ君には『AI』が搭載されているのだろう?そういう思考をする『AI』ならば、不思議ではないのではないか?」
「…その『AI』にしたって、どこの誰が作ったものか知れたものじゃないじゃない。いくら独自の『AI』を持ってるからって、他のモノクマとここまで完全に違う思考してるなんて変じゃない…」
『そんなこと言われても…。そういう性格のAIが搭載されたとしか思えないし、そのAIを誰が、どんな目的で作ったのかはボクにも分からないんだ』
「シロクマにも分からないの?」
『うん。…でも、それは人間だって同じでしょ?自分がどこから来て、どこへ行くのかなんて分からないでしょ?だから、ボクは『自分の心』には正直でいたいんだ!自分が何者か分からないからこそ、自分がやりたいことを精一杯頑張るって決めたんだ!』
「強いんだね…」
「すっげえな、シロクマ…!」
「ま、自分に正直なのは悪くねえことだがよ…」
『えへへ…それほどでも』
「…モノクマなんかに感心してないで、アンタも頑張りなさいよ」
「え…、いや、私は『特別な才能』なんか無いし、頑張ってもたかが知れるよ…」
「その言葉、聞き飽きたわよ…」
ガコンッ…!
『ッ!?』
壁から突き出た『排水溝』から突如聞こえてきた音に皆は思わず身構える。
「な、何…?」
「何って…あんなところから出てくる奴なんざ一つしかねえだろ…!」
ホル・ホースの言葉を裏付けるようにそこから出てきたのは
ボトン!
『いぇーい!』
『ヒャッホー!』
まるでガチャガチャのカプセルの様に次々と落ちてくるモノクマであった。
「こ、こんなところにまで!?」
「おいシロクマ!まさか場所バレしたんじゃねえだろうな!?」
『ち、違うと思う…。多分こいつらは、元からこの辺りに配備されていたモノクマだよ!』
「ああもう…!こんな臭い所でやってらんないわよ………とっとと汚物と一緒に消毒してやんよぉぉぉぉッ!!」
「うおッ!?な、なんだあのメガネ女…急にキャラ変わったぞ!?」
「あ、そうか。雪丸君は初めて見るんだったよね…」
「オイコラおまるぅッ!逆ナンなんかしてねえでとっととこいつらクソ水ん中ブチ込みかがれッ!!」
「し、してないよッ!?」
『うひゃぁ~!モノクマ怖い!』
「やれやれ、増々騒がしくなりやがって…」
モノクマの筈なのに闘えない上によってたかって狙われるシロクマを庇いながらこまる達は交戦を始めた。
「この野郎ッ…!」
ズギュン!
『痛ぇ~!』
「チッ…初撃じゃ無理だったか。俺も衰えたか…なら、もう一発…」
「…ッ!おっさん、後ろッ!」
「あん…?」
ホル・ホースが振り返った先には、既に自分を射程圏内に捉え爪を振り上げるモノクマが居た。
「しまっ…」
『くらえ~…』
「オラァッ!」
ガインッ!
『うひょ!?』
今にもホル・ホースを引き裂こうとした時、鈍い音と共にモノクマがその場でつんのめるように前に倒れ込み、爪はホル・ホースの帽子のつばを掠めて地面に突き刺さった。
「うおっ!?な、何だ…?」
「…ようおっさん、無事かよ?」
「!?」
九死に一生を得たホル・ホースを救ったのは、どこから拾ってきたのか頑丈そうな『鉄パイプ』を誇らしげに担いだ雪丸であった。
「お前さんか…悪い、助かったぜ!」
「へっ、感謝してる暇が有ったら…とっととこいつら片付けるぞ!」
「おうよ!」
雪丸とホル・ホース。『童顔』と『中年』という異色のタッグが誕生した頃…
「え~お集まりのお客様♡本日の『バーバー翔』のカットは全て『店長の気まぐれ』になってございます♡つー訳で…テメエら全員サザエさんカットだァァァァァァッ!!」
「なにその嫌すぎるチョイス!?」
「あ、アトムの方が良かった?」
「そーいうことじゃなくって!」
ジェノサイダーとこまるの華の女子組は男2人のコンビ以上に派手に暴れまわっていた。…主にジェノサイダーが。
そんな皆の戦いぶりを、朝日奈と石丸はシロクマを匿いながら見ていた。元々二人とも雪丸の様に好戦的ではないため、こうしてシロクマを守る役目を担っているのだが、やはり自分達を置いて皆が闘っているという状況は複雑なものであった。
「チクショウ…俺にも、姉ちゃんたちみたいに『スタンド能力』があれば…」
「朝日奈君…」
『…朝日奈君、あまり気負い過ぎちゃ駄目だよ』
「そんなこと言ったって…こんなところでじっとしてるだけなんて、俺我慢できないよ…!」
『でも、だからといって出て行って危ない目に遭ったら、こまるちゃんたちに逆に迷惑をかけちゃうよ?』
「う…」
朝日奈は運動神経抜群ではあるが、雪丸の様に『喧嘩慣れ』している訳ではない。スポーツとは違う、本当の『命の奪い合い』の状況下において、『一般人』の朝日奈がその能力を十全に発揮できるかと問われれば、『Yes』と即答はできなかった。
『…大丈夫だよ。人には皆『与えられた役割』があるんだ。『適材適所』ってよく言うでしょ?きっと朝日奈君にも、本当に必要とされるときが来るはずだよ!』
「シロクマ君の言うとおりだ。悔しいのは私も同じだ、だが、だからといって『無駄死に』するようなことなど決してしてはいけない。ここは耐えるんだ、いいかね?」
「うん…」
ツンツン
闘いを見守っていた石丸の肩を何者かが叩く。
「?なん、だ…?」
『ヤッホー♡』
「……ッ!!?う、うわああああッ!!も、モノクマッ!?」
肩を叩いた張本人、モノクマは恐怖に慄く3人に陽気に挨拶すると爪を振り上げ襲い掛かる。
『た、助けてぇ~!』
「ッ!腐川さん、モノクマが向こうにッ!」
「チィッ!このクソ忙しい時によぉッ!男ども、どっちか行けねえのかッ!?」
「行きてえのは…山々だけどよぉ!」
「お、お前らッ…!もうちっと踏ん張ってくれえッ!」
「踏ん張れと言われてもだな…!」
『ぎゃあああ!痛いぃ~!』
「!シロクマッ!」
モノクマはシロクマに狙いを定めると無抵抗なのをいいことに滅多切りにする。
「糞ッ…!貴様、彼から離れろ!」
バンバンッ!
石丸はモノクマを引きはがすべく腰の拳銃を抜いて撃つ。が…
ガイン、ガイン!
『べー!』
「ぐぅ…やはり効かんか!」
ホル・ホースの様に弱点を正確に狙った訳ではない銃弾は、モノクマの後頭部に当たると甲高い音を立てて弾かれてしまう。
『ああ…時が見える…』
「チクショウッ…!俺には、何にも出来ねえのかよ…!何の『力』もないからって、俺は…『友達』一人守れねえのかよぉーッ!!」
次第に弱りゆくシロクマを黙って見ることしかできない、そんな自分の無力さに朝日奈は慟哭する。
「俺にも、姉ちゃんやおっさんみたいな…『あんな強そうな』スタンドが居れば…
…え?」
そう言って、朝日奈はふと自分に起きている『異変』に気が付く。
「…なんで俺、『スタンドが視えている』んだ?」
つい先ほどまで、自分の眼にはこまる達が操るスタンドが視えず、それが起こす『現象』しか視えていなかった。それがどうしたことだろう。今の自分の視界には、ホル・ホースが手に持つ『拳銃』とこまるの背後に立つ『インディアン風の異形』がハッキリと視えていた。
「おかしいだろ…?さっきまで視えなかったのに、急に視えるなんて……いや、そんなこと考えてる場合じゃあないッ!!俺にスタンドが視えるってことは…」
朝日奈の脳裏に、最初に腐川からスタンドの説明を受けた時に聞いた『言葉』が過る。
『スタンドはスタンド使いにしか視えない』
「だったら、今の俺にも…!」
意を決して立ち上がった朝日奈は、シロクマを痛めつけるモノクマに向き直ると目を閉じる。
(スタンドの能力はスタンド使いの『イメージ』そのもの…だったよな!俺にできること…俺ができることッ!)
心の赴くままに、朝日奈は左腕を水平に突き出すと右手を開いて腕ごと引き、まるで『正拳突き』の『掌底』を撃つような構えを取る。
「…シロクマ!そのまま伏せろ!」
『パトラッシュ…僕はとても眠いんだ……え?』
「朝日奈君何を…」
「悠太君…!?」
朝日奈の不審な行為に思わず振り返ったこまるの眼には、映っていただろうか。いや、視えなかっただろう。
朝日奈の引いた右手の前に渦巻く、『空気のカタマリ』が。
「…ん?おかしいな、数が足りない…」
飛行船の一室で手慰みに手持ちのスタンドの『DISC』の数を数えていたプッチは、その数が自分の記憶より『一枚足りない』ことに気が付いた。
「『ホワイトスネイク』に死体の確認をさせた時にでも落としたか?……まあいい、落とすようなものであれば所詮『運命』から弾かれた『駄作』。大した『スタンド能力』ではないだろう…」
「…『ストレイ・キャット』!!」
勢いよく突き出した掌底の先から放たれた『空気の弾丸』は、シロクマに夢中になっているモノクマの顔面へと一直線に向かい
ガオンッ!
モノクマの左目を抉り取る様に『貫通』した。
『…ほげ~』
ドォン!
『うわあ!?…た、助かった…』
「あ、朝日奈君…今のは…!?」
「も、もしかして…!」
「な、なんだありゃあ…?」
「コイツぁ…驚いたな」
「あぁ~ん…?…ぎゃへへへへ!ご都合主義過ぎだろこの展開!まあ…ラッキーなことは貰っとくか!ハッピーうれぴー!なんっつって!」
驚く周囲を余所に、朝日奈はたった今自分が成したことに自分も驚きながらも、噛みしめるようにそのことを確かめる。
「これが、俺のスタンド…『ストレイ・キャット』…!」
モノクマの襲撃を退けた一同は、再びシロクマの案内の元秘密基地へと向かっていた。
『いやぁ~、本当に助かったよ!ありがとう皆、それに朝日奈君!』
「へへ…気にすんなって!友達だろ!」
「いやはや全く…余りに突然のことだったから驚いたよ」
「お前、スタンドってのを使えるんだったらもっと早く言えっつーの!」
「し、しょうがねえだろ…自分でもついさっき気づいたばかりなんだからよ」
「しっかし…一体いつスタンドに目覚めたんだ?坊主、お前なんか『きっかけ』みたいなもんに心当たりはねえのか?」
「きっかけって言われても……あ、そういえば、さっきの頭に花咲かせてた死体の傍で『変な物』拾ったんだけど」
「変な物?」
「うん、確かポケットに………あれ、無い…!?」
「…さっき襲われたときに溝にでも落としたんじゃあないの?」
「ま、マジかよ~…」
「ったく、しょうがないわね…」
「まあいいじゃねえか。そいつが原因とは限らねえんだからよ。もしかしたら、先天的にスタンド能力の『素養』が有ったのかもしれねえしよ」
「…そういえば、アンタ苗木とも面識があったのよね」
「え?うん…」
「だったら、その時に『矢』にでも触ったのかもしれないわね。このタイミングで発現したのは納得いかないけど、きっかけがあるとすればその時ぐらいかしらね…」
もし腐川とホル・ホース。どちかかが『ストレイ・キャット』の本当の持ち主である『猫草』のことを知ってれば、気が付いたかもしれない。プッチが杜王町で承太郎を襲った際に、その時の騒乱の最中に殺されていた『猫草』からプッチがスタンドを奪っていたという事実に。そしてこの街に、プッチがいるという事実に。…しかし、彼らが『猫草』の存在を知ったのは未来機関としての活動を始めてからであったため、そのことに気づくことは無かった。
『まあ、とにかく助かったんだから細かいことはいいんじゃあないかな?それよりほら、もう少しで秘密基地だから急ごう!』
「そうだね。またモノクマに来られても大変だし…」
「それにいつまでもこんな臭い所にいるのは御免よ…」
『それじゃ、改めてレッツゴー!』
「おーっ!」
新手のモノクマが現れる前に、こまるたちはそそくさとその場を後にしさらに奥へと進んでいった。
やがてしばらく進むと、汚水が真下に流れ落ちる大きな滝のような場所に辿りつき、シロクマはその脇にある梯子の所で立ち止まる。
『やっと着いたね、ここだよここ!』
「ここって…どこにも無いじゃない」
「周囲に人無しと見ると…この梯子の『上』ってことかい?」
『そうだよ!さあ、僕についてきて!』
そう言うとシロクマは軽快に梯子を上っていく。
「…と、とりあえず私達も上に行こうか」
シロクマの後を追おうと梯子に手を掛けるこまる。
「…ちょっと、待ちなさい」
「へ?」
そのこまるの手を腐川が引く。
「ど、どうしたの腐川さん?」
「アンタが先に上ってどうすんのよ…男ども、アンタら先に上りなさい」
「えっ!?」
「おい…そりゃどういう意味だ?俺たちに地雷踏みさせようってのか?」
「ちょ、ちょっと腐川さん!」
「あ―…お前ら、多分ちょいと『勘違い』してると思うぜ」
「勘違い?」
「…こまる、アンタが先になって上って、その後こいつらが上ったらどうなるのか分かってんの?」
「どう、って…?」
「…自分の格好もう一度見直してみなさい」
「恰好…」
腐川に言われこまるは自分の服装を見直す。激しい動きでところどころ薄汚れた制服、自分を縛る忌々しい腕輪、そして『ミニスカート』…
「…あ」
その意図に気づいたのであろう、こまるの顔が羞恥で紅くなる。こまるの視線を追って気づいたのか、朝日奈や雪丸も若干顔を紅くして視線を逸らす。
「ち、違うの腐川さん!私はその、単に先を急ごうとしただけで、そういう『趣味』があるわけじゃ…」
「…もしそうだったらこれからアンタのこと一生『露出狂』よばわりするところだったわ」
「だから違うってぇ!」
『…おーい!どうしたの~?早くおいでよ~!』
「…んじゃ、俺から行こうかね。坊主ども、俺の後から来いよ」
「お、おう…」
「その…姉ちゃん、なんかゴメン…」
「謝らないでぇ!余計に恥ずかしいから!」
「…こいつの貞操観念大丈夫かしら…?」
若干気まずい空気になったが、結局男連中が先になって梯子を上っていった。
今回朝日奈弟にスタンドを持たせるかどうか非常に迷ったのですが、あとあとの展開で戦力が偏りすぎないように考えた結果、おそらく生きていたとしてもこの先出番がない猫草のスタンドを移すことにしました。
彼のイメージと少し違うと思うかもしれませんが、後々生かせれるよう工夫していきますのでお楽しみに
ではまた次回