ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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あかん、ドラクエやってたら全然書けてへんやん…(絶望)


天空と地下にて

チーン…

「「ナマンダブナマンダブナマンダブ…」」」

「……」

 上空に浮かぶ『希望の戦士』達の飛行船。その一室にて、蛇太郎、言子、モナカの三人が大門の写真…というより『遺影』が飾られた『仏壇』に向かって舌足らずの念仏を唱えている。

 

「うっうっう…、大門君、なんで死んじゃったの~…」

「いつもバカばっかりやってスケベで我儘でしたけど…、『基本的』にはいい人でした…。ああ!どうしていい人から死んじゃうんでしょうか!?」

「グスグスッ…、僕チンが大門君にトイレに閉じ込められなんかしなければ、大門君の代わりに僕チンが死んで済んだのに…!リーダーの大門君より、嫌われ者の僕チンが死んだ方がマシだったのに…」

「…あ、そういえば彼リーダーでしたわね」

「うう…うぇえぇぇぇぇんッ!リーダーが死んじゃったら、モナカたちはどうすればいいんだよぉ~!」

 大門の死に泣きじゃくる三人。

 

「な、なあ…なにもそこまでしなくてもいいんじゃあないか?別に死んだと決まった訳じゃあないだろう?」

 そんな三人を困惑した表情で見ていた新月がおそるおそる声をかける。

 

「そんなことないの~!大門君は死んじゃったのぉ~!」

「いや…、別に『死んだ』とは言ってなかったろ?『モノクマキッズ』の報告では、例の『魔王の妹』とその一味にやられて、オトナに捕まって『安否不明』って…」

 

 

「…『不明』ってことは、『死んだ』ってことでしょ?」

「…え?」

「ワイドショーなんかで言ってるでしょ?『意識不明』とか『行方不明』って。新月君さ、あれ聞いてて『不明って言ってるけど絶対死んでるな』って思ったでしょ?…モナカはずっと思ってたよ」

「い、いや…でももしかしたら『人質』とかにされて…」

「だから~、死んでるんだって」

「いやでも、救助だけでも…」

「…死~ん~で~る~の~!大門君は、お星さまになっちゃったの~!大事なものは、目に見えないの~!」

「あらら、新月君モナカちゃんを泣かせちゃいましたね?」

「ぐふふ…こ、これで新月君が仲間外れだね…」

「え、ええッ…!?」

 先ほどまでの悲しい雰囲気は何処へやら、大門の死をネタに新月をからかう三人。

 

「大門君は~、もう動かないのぉ~!おじいさんの~、古時計なのぉ~!」

「わ、分かったよ!…大門は死んだ、そう考えればいいんだろう?」

「…うん!それじゃ、悲しいのは皆同じだね。じゃあ新月君も、大門君の為にお祈りをしよう!…大門君、君は『臆病者』の割には『勇者』として頑張ってたね」

「貴方の事はできるだけ忘れませんから、化けて出ないよう成仏してくださいね…」

「ううう…HEYYYYYYッ!!あんまりだよぉ~ッ!」

「…なんか、済まないな大門」

「…ふう、泣いたらスッキリしたよ。それじゃ、次の作戦に移ろっか!」

 ひとしきり悲しんだところで、満面の笑みを浮かべて再びこまるへと刺客を向けようとするに取りかかろうとするモナカに、新月は困惑したような顔つきになる。

 

「まだ…続けるつもりなのか?それより、『楽園』の建設計画に取り掛かった方が…。いくら『魔王の妹』だからって、これ以上時間をかけていると本当に『魔王』が…」

「…新月君、もうモナカに付き合ってくれないの?」

「そ、そんなことないだろ…!僕らは、共に『楽園』を目指す『仲間』なんだから…」

「…じゃあ、モナカの事『好き』―?」

「なっ…!?い、いきなり何言い出すのさ!?す、好きとか嫌いとか、そういう問題じゃ…」

「…好きじゃ、ないの?」

「だ、だから…そーいうわけじゃ…」

 

 

 

 

「…ねえ、新月君のそういう態度、『オトナっぽい』よ?」

「ッ!?」

「…オトナ?」

「オトナなの…?」

「ば、バカ言うなッ!僕は…死ぬまで『コドモ』のままだッ!魔物になるぐらいなら、死んだ方がマシだッ!そんなの…分かりきってるじゃあないか!」

 モナカの『オトナっぽい』という発言に、急に冷ややかな態度で問いかける言子と蛇太郎に新月は思わずムキになって反論する。

 

「じゃあ、モナカのこと好きー?」

「す、すす、す…好き、だよ」

「やったー!新月君、モナカの事好きだって♡」

「そ、それは…その、『楽園』を目指す為の仲間としてであって、別に…『恋』とかそういうのじゃ…」

「ああ~!新月君がヤケド状態だ!茹でられたタコみたいになってるぅ~!」

「蛇太郎くん、『僧侶』らしく回復魔法の一つでもかけてあげたらどうですか?」

「よ、よ~し!…ホ○ミ!ディ○!リ○イズ!○ュア!ケ○ル!ザオ○ク!ゆうていみやおうきむこうほりいゆうじとりやまあきらペペペペペペペペペペ…」

「きゃはははは!本気でやってますわ、おっかしぃ~!」

「や、やめろッ!僕をからかうな!ていうか、最後の魔法じゃないだろ!?」

 どうやらそういうところは年相応なのか真っ赤になって照れる新月を二人が面白がってからかいだす。

 

「もー!二人ともあんまりからかっちゃ駄目だよ!言子ちゃんも新月君も、大事な仲間同士なんだからさ!」

「…ナチュラルに僕チンが省られたのは、単に名前が言い辛いってだけたよね…?」

「ね、皆で仲良くしようよ。力を合わせて、『魔王の妹』も『魔王』もやっつけちゃえば、もう私たちの『楽園』を邪魔する敵はいないんだからさ!」

「きゃー!流石モナカちゃん、ゲームを楽しみつつ一番の敵もまとめてやっつけちゃうなんて、最高にグレートな作戦ですわー!そういうところが大好きですの!…あ、そういうところっていうか、もう全部大好きなんですけどね!」

「わ、分かったよ…。確かに『魔王』さえやっつけちゃえば後は雑魚ばかりだからね。モナカちゃんの言うことに異論はないよ…」

「流石は『副リーダー』!…あ、もう今は『リーダー』だっけ」

「…リーダー?僕が?」

「だって、勇者の…名前なんだっけ?まあいいや、勇者の『リーダー』の彼が死んじゃったんだから、『副リーダー』の新月君が新しい『リーダー』でしょ?」

「僕が…『希望の戦士のリーダー』に…?いいの?」

「うん!だから期待してるよ、『新リーダー』の新月君♡」

「…あ、ああ…!そうだな、期待してくれ…!」

 

 

 

 

 

 

 

「…大したものだな。あれだけ人を乗せるのがうまいとは思わなかったぞ…」

「むー、それって嫌味?神父様」

「いいや、誉めているのさ。人を使うのは『才能』の内だ。ましてあのようなタイプの人間ほど使う人間の資質が試されるからな…そういう意味では流石と言わせて貰おう」

「ふ~ん…。別にいいけどね」

 子供だけの会合が終わり、一人部屋へと戻ったモナカはプッチと話をしていた。

 

「…ところで、例の『ゲーム』の進行状況はどうなっている?」

「えーとね、私たちが放した『魔物』はまだ結構残ってるんだけど、神父様が連れてきた『魔物』はもう『10人』ほど死んじゃったよ?」

「そうか…」

(あと、『26人』か…)

「…それで神父様、一つ聞いてもいい?」

「…なにかね?」

「報告してきた子が言ってたんだけどさ、最初に死んじゃった魔物なんだけどね、死ぬ前に他の『モノクマキッズ』を殺そうとしてたんだけど、『急に頭からお花を咲かせて死んじゃった』んだって。これって、『盾子お姉ちゃん』と関係があるの?」

「…ああ、もちろんだ。それはいわば『悪』を養分として咲く『絶望の花』だ。それが『36輪』揃った時、彼女は再びこの世に蘇ることができるのだよ」

「へぇ~!それじゃあ、もっともっと魔物たちに悪いことさせて、『絶望の花畑』を創らないとねー!」

「ああ、その通りだ…」

 

 

ブェーッ!ナンダコリャ、コレノドコガ「ミルクセーキ」ダ!タダノラードノ味噌汁ジャアナイカッ!シカモ無駄ニアマイッ!

アレ?ヤッパリマズカッタ?

 

「…向こうは随分騒がしいようだな」

「どーでもいいよ、そんなの~…」

 

ウィィィィ…

「…どこかへ行くのか?」

「うん、ちょっと…『憂さ晴らし』をしにね~…」

ウィィィ…バタン…

「…『利用されている』のは『私』か『彼女』か…。どちらにせよ、『運命』は既に動き出している。君がどう動こうが、『結果』は既に決まっているのだよ。『…モナカ』…」

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、コロシアムと化した地下鉄ホームから逃げ出したこまるたちは途方に暮れていた。

 

「どうしよう…これでもう、逃げ道が無くなっちゃったよ…」

「まさかこの短期間に、ここまで塔和シティを自分達のものに仕立て上げていたとはな…」

「これから、どうすりゃいいんだ?」

「……」

「…ん?おい、あれ見ろ!」

「え?」

 ホル・ホースが指差した先には、先ほどまで瓦礫に埋もれていた場所がきれいに片づけられ、その奥に新たな『地下鉄の入り口』が姿を見せていた。

 

「…な、なんだよ他にも入り口があったじゃあねーか…」

「…いや、私の記憶が確かならあそこはついさっきまで瓦礫の下敷きだった筈だぞ。いつの間に…というより『誰が』瓦礫を撤去したのだ?」

「そんなの…あのガキ共に決まってんじゃない」

「何の為に?」

「さあね…『ボス』をやっつけたご褒美ってところじゃあないかしら?」

「そんな馬鹿な…」

「で、でも!あそこからもしかしたら今度こそ地下鉄にでられるかも!」

「…また『罠』だったらどうすんのよ?」

「え…そ、それは…」

「…だーッ!もう細かいことはいいじゃんか!とにかく行ってみようぜ!罠だったらそん時はそん時だ!」

「言うじゃねえか坊主。そうさなぁ、どの道こんなところでボケッと突っ立ってりゃ鴨撃ちもイイトコだ。それよか少なくとも外よりは安全な地下に行った方がまだマシっつーもんだぜ?」

「そう、だよね…!行ってみなくちゃ、分かんないもんね!」

「うむ…他に選択肢は無いか」

「…し、仕方ないわね」

 先ほどの件もあって不安もあったが、他に向かう場所もないためこまる達はその入口へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 その後ろ姿を、近くのビルの屋上から『何者か』が見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 階段を下りた先には、先ほどのような奇妙な雰囲気はなく、人気は無い物のごく一般的な駅の改札が存在していた。

 

「よ、良かった…。『罠』とかじゃあないみたい…」

「油断すんじゃあねーぞ。…見ろよ、そこかしこにガキ共の『落書き』がありやがる。ナリこそまともだが、ガキ共が入り込んでることは確かみてーだぜ」

「確かに…さっきの様にいきなりロボットに襲われることはなさそうだが、モノクマぐらいはいるかもしれんな…」

「でも、行くしかねーんだよな…」

「そ、そんなことより…暗いのよ…ここッ…!アタシは暗くてじめじめしたところが苦手なんだから、さっさと先に行くわよ!」

「カビみてーな女の癖によく言うぜ…」

「アハハ…。と、とにかく!電車は無理かもしれないけど、この線路沿いに行けば外に出られるかもしれないんだから、頑張ろう!」

「…どうかしらね」

 

 

 渋る腐川を引き摺りながら、こまる達はホームへとやってきた。残念ながらというか予想通り、電車そのものは使い物にならなかったが、幸いにも路線そのものは残っていたため、皆は瓦礫が点在する線路をひたすらに歩いて行った。

 

「しかし…外程ではないが、地下鉄もかなり崩壊しているな…」

「ひでーもんだぜ、まるで『何かが暴れまわった後』みてーだ。こりゃあ何かの拍子に崩落が始まってもおかしかねーぞ…」

「こ、怖いこというなよおっさん!」

「大丈夫だよ!モノクマだって、外よりずっと出会う数も少なかったし、何かある前に外に……ほら!もう少しで……え?」

 いくつ目かの電車の残骸を乗り越え、もうすぐ次のホームへとさしかかろうとしたこまる達。…しかし、彼らの進む先には、もう『道』は存在していなかった。

 

「う、嘘だろ…!」

 こまる達の前に立ち塞がったのは、天井に至るまで壁の如く積み上がった『瓦礫の山』であった。

 

「なんということだ…ここまで来て…!」

「クッソォ!このぐらい登って…」

「やめときな坊主。もし崩れ出したらお前さんがこいつの下敷きになっちまうぜ。…嬢ちゃんもスタンドでブッ飛ばそうだなんて考えんじゃあねえぞ?こんなところでそんな一撃ブチかまそうもんならこいつごと路線までぶっ潰れちまうからな?」

「ぐっ…」

「うう…そんな…」

「…け、結局骨折り損じゃあないの……ん?」

 愚痴を垂れていた腐川が、瓦礫の山の麓に何かを見つけた。

 

「ちょ…ちょっと!コレ…」

「腐川さん?」

「あん?どうした……って、コイツぁ…『康比呂』の…!」

「そうよ、…アイツの『電子生徒手帳』よ…!壊れてるけど…」

 腐川が見つけたもの、それは破損しているものの『アルターエゴ』により通話機能などが拡張された『希望ヶ峰学園電子生徒手帳』…その持ち主は、ホル・ホースとはぐれた筈の『葉隠康比呂』であった。

 

「康比呂…あれ?どこかで聞いたことがあるような…」

「…葉隠康比呂、アタシやアンタの兄貴と同じ『希望ヶ峰学園78期生』の一人よ。ドでかいドレッドヘアーのおっさん顔って言えば分かる?」

「…あ、あの人か!…って、その人の持ち物がここに在るってことは…もしかして…!?」

 こまるは思わず目の前にある瓦礫の山の下に目を向ける。

 

「葉隠さんが、この下に…」

「「いや、それはない(わ)」」

「あれ!?」

 最悪の事態に顔を青くしかけたこまるであったが、直後に同時に返ってきた腐川とホル・ホースのそっけない返答にずっこける。

 

「な、なんでそんなこと分かるんだよ?」

「分かるも何も、アイツがこんな死に方なんてする筈が無いのよ。アイツの『才能』と『スタンド能力』なら、この程度のことすぐに回避できるでしょうからね…」

「彼の才能…?」

「…アイツの希望ヶ峰時代の呼び名は『超高校級の占い師』、理屈もへったくれもないアホみたいな占いだけど、未来に起きることを『2~3割』の確実で『ピタリと』当てることができるわ」

「…意外としょぼくね?」

「おいおい、『2~3割』を嘗めちゃいかんぜ。3~4回に一回は当たるんだ、実際なかなか決まるもんだぜ?」

「しかし、所詮は『占い』だろう?流石にこんな『偶然』までは…」

「…分かってないわね、言ったでしょ・2~3割だけど『ピタリと』当たるって」

「つまり…どういうこと?」

「アイツが本気で当たる時には、その時の時間から状況、人員、そしてどうすれば助かるかまで『寸分違わず』当たるのよ。つまり、この状況を予想していれば『100%』アイツは助かるってことよ」

「ま、マジかよ…!?」

「ついでに言えば、アイツは他人のこととなると当たるも八卦当たらぬも八卦ってトコだけど、どういうわけか『自分に関すること』だけはほぼ必中の的中率を誇んのよね。…ホント、真症の屑気質みたいな奴よ…」

「おまけに、アイツのスタンド能力がそれをさらに引き立てるからなあ」

「どんな能力なんですか…?」

「アイツのスタンドの名は『龍の夢(ドラゴンズ・ドリーム)』。周辺一帯の『風水』を読んでその位置が『吉』か『凶』かを教えてくれるスタンドよ。…アイツ曰く、『中立』を保ってるから敵味方関係なく教えるのが面倒らしいけどね…」

「風水…?風水とは、あの風水のことか?しかし、そんなものただの気休めのようなものではないのか?」

「スタンド能力がその程度な訳ないでしょ?…『ドラゴンズ・D』の恐ろしい所は、『吉』とか『凶』とかの運勢が『目に見えるレベルに誇張される』ところなのよ」

「ど、どういうことだ?」

「簡単に言えば、もし『大吉』の位置に居りゃあ寝ていてもカネが手に入るし、周りで何が起きようが自分の身が脅かされることはねえ。逆に『大凶』の位置に居れば、何もしなくとも次々と『不運』が訪れて…最悪『死ぬ』ってことも有り得るってことだよ」

「そ、そんなに!?」

「その性質とアイツの占いが合致すれば、アイツは『予言した未来の中で自分は最も安全なルートを、相手には最も危険なルートを選ぶことができる』ってことよ。…良く考えてみればあのクソッタレ『ディアボロ』の『ディスペアー』そっくりじゃないの…」

「そういう訳で、アイツがこの程度で死ぬとは思えねえんだよ。…第一、アイツが死にかけてるとこなんざ想像もつかねえしな」

「そういうものなのか…?」

「…でも結局、ここから先に行けないことには変わりないんだよね…」

「ああ、そうだよな…」

 

 

 

 

 

 

こそこそ…

 途方に暮れるこまる達の背後から、足音を忍ばせボンバーモノクマ達が迫る。そして皆を射程圏内に捉えると、にやりと口元を歪ませ手にした爆弾を思い切り投擲する。

 

ひゅるるるるる…

 

コンッ

 しかし、少々勢いがつきすぎたのか、爆弾はこまる達の元に辿りつく前に天井にぶつかり…その反動でボンバーモノクマ達の足元へと転がった。

 

 

『…てへぺろ♡』

 

ドガァァァンッ!!

 

「ッ!?な、何ッ!?」

「ば、爆発だ!すぐそこ…あれ?」

「…あの残骸からしてあの『爆弾の奴』だったみてーだな。だが自爆するたぁマヌケな奴だぜ」

「と、ともかく助かったか…」

「…そうとは限らないわよ」

「え…?」

 

ザッザッザ…

 爆炎の向こうから、何かがやってくる足音が聞こえる。

 

「な、何…?」

 

ガシャ…ザシュ!

 ボンバーモノクマの残骸を踏み越えて煙の向こうから現れたのは

 

『とあーッ!』

「ま、また『新種』のモノクマかよ!?」

「しかもあの装い…まるで『機動隊』ではないかッ!?」

 警察の機動隊のような重装備に身を包み、大きな盾を構えた2体の『ガードモノクマ』であった。

 

「もう、こんな時にッ…!」

 出口を失った苛立ちからか、こまるは様子見も無しにハッキング銃をガードモノクマに向ける。

 

「ちょ、アンタ待ちなさい…!」

「『コワレロ』ぉ!」

 吐き捨てるように放たれたコトダマは、一直線にガードモノクマへと迫り、

 

バシュン!

「…え!?」

『あっかんべー!』

 ガードモノクマの構えた盾に当たった瞬間『霧散』する。

 

「ちょっと…なんで効かないの!?」

「あの『盾』だ!あの盾でガードしたんだ!」

「『プログラムの弾』も防げるのか…。どうやら敵さんもこっちの『対策』をしてきたみてーだな、…だがよぉッ!」

 盾を構えたままにじり寄るガードモノクマに、ホル・ホースは『エンペラー』の銃口を向ける。

 

「その手の奴は俺の『カモ』なんだよ!『エンペラー』!!」

 

ダァン…ッ!

『エンペラー』から放たれた銃弾に対し、ガードモノクマは盾を正面に構えて悠然と待ち構える。

 

『うぷぷ…』

「…随分と余裕そうだが、果たして『前だけ』見てていいのかよ?」

 銃弾は盾目掛けて一直線に突き進み…そして盾にぶつかる直前に右に大きく『迂回』する。

 

『はれ!?』

「大門とかいうガキとの闘いで、俺が『拳銃』のスタンドを使うってことは知ったてみてーだが、勉強不足だな。俺の『エンペラー』は『拳銃』だけじゃあねえ、『弾丸』だってスタンドなんだぜ?だから弾丸の軌道を思う様に変えることなんざお茶の子さいさいよ。そして…お前みたいに『正面』がガチガチの奴は、かえって『後ろ』のガードが甘いもんだぜ!」

 右へと逸れた銃弾はガードモノクマの後方に回り込むと、そこでUターンしてガードモノクマの後頭部へと命中し、前のめりに転ばせる。

 

ズギュン!

『アーッ!?』

「生憎俺じゃあ一撃じゃ仕留められねーが、そんだけ隙だらけなら盾なんざ無意味だろ…嬢ちゃん!」

「は、はいっ!『コワレロ』、『コワレロ』、『コワレロ』ッ!!」

 

ズギュンズギュン!

『そんな~…』

ドガァァン!!

 『エンペラー』の一撃で隙だらけになったところに、すかさずこまるがコトダマを撃ちこみ、盾で受けきれなかったガードモノクマは今度こそ破壊された。

 

「や、やった!」

「す、スゲエ!何が起きたのかさっぱり分かんねえけど、おっさんがアイツコケさせたのか!?おっさんやるじゃん!」

「へへっ、まあな…。だが、腐川の嬢ちゃん…」

「…ええ、分かってるわよ。さっきのアイツの反応からして、どうやらモノクマ共には『スタンドが視えている』らしいわね」

「えっ!?」

「…だが、スタンドというのは『スタンド使いにしか視えない』のだろう?現に我々には視えていない、なのに何故機械の筈のあのモノクマがそれが視えているのだ?」

「そんなことッ…、アタシに訊かれても知らないわよッ!…でも、可能性として考えられるなら、アイツらはスタンドを『明確に視えている』訳じゃあなくて『スタンドの情報』を元に『予測』しているんじゃあないかしら?」

「予測?」

「仮に、仮によ…もしホル・ホースの『エンペラー』のことを事前に知っていて、向こう側に『スタンドが視える人間』が居るとすれば、そいつが視たものを元にスタンドの形状や大きさ、あるいは速度なんかを『分析』してそれをモノクマにインプットしておけば…」

 

 

 

 

ボロッ…

 と、そこまで言いかけた腐川の頭に、『頭上から』なにかがかかる。

 

「…?な、なによ?」

「ど、どうしたの?」

「どうしたも何も、今何か頭に…」

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

「う、うわあッ!?」

「じ、地震かッ!?」

 突如として地下鉄内が大きく揺れ出す。

 

「ち、違う…こいつはッ!糞ッ、さっきの爆弾野郎の爆発で線路内にガタが来たかッ!」

「そ、そんな!」

「ちょ、ちょっとなんでこんな時に…」

 

ガツンッ!!」

「ぷげらッ!?」

「あッ!?」

 地団太を踏む腐川の頭上から今度はかなり大きな瓦礫が落下し、まともに喰らった腐川は白目をむいて倒れ込む。

 

「い、今のモロにいったぞ!?」

「ふ、腐川さん!大丈夫…?」

 

ズアッ!

 と、倒れていた腐川がまるでヤジロベエのように起き上がると

 

「ギャヘへヘヘヘヘ!ジェノサイダー翔、見!斬♡」

 腐川の人格はジェノサイダーと入れ替わっていた。

 

「あちゃ~、このクソ面倒な時に…」

「ちょいちょい!アタシを『残念』みたいに言うなっつーのッ!アタシとあの『鈍臭鉄面皮』と一緒にすんじゃあねーよ!…それよか、こりゃマジにヤバそーじゃね?ていうか絶体絶命?ギャヘヘヘヘヘ!」

 馬鹿笑いをしながらジェノサイダーはこまるの腕をがっしと掴む。

 

「え?」

「逃げるわよ、デコマルッ!…おら男子、死にたくなけりゃついてきな!来たらアタシが殺しちゃうけどな!ギャハハハハハ!」

「お、おい待ってくれよぉ!」

「生き延びてもお前に殺されるのは御免だッ!」

「き、キャアアアッ!!?」

「やれやれ、頼もしいこって…」

 こまるを引き摺るジェノサイダーを筆頭に、皆は坑内が崩れる前に元来た道を全力で引き返す。

 だが、子供たちはそう簡単には行かせない。

 

「…ッ!?ま、待って!?」

「あ、アイツら…待ち伏せてやがった!」

 瓦礫で道幅が狭くなっている場所に、子供たちはモノクマを引き連れて通せんぼをしていた。

 

「マズイ、他の道を…」

「邪魔だコラァーッ!!『メタリカ』ッ!」

 

ドズドズドズドズドズッ!!

『ガ…ビ…』

 ジェノサイダーがモノクマに意識を向けると、突如モノクマの全身から無数の『鋏』が内側から食い破る様に突き出し、瞬く間に一匹残らずスクラップにしてしまった。

 

『ワァ~!』

「スタンドのパワーを全開よッ!あの根暗が寝ている隙にストレス発散させてもらうぜぇ~ッ!雑魚雑魚雑魚雑魚雑魚雑魚雑魚雑魚ッ!!」

 逃げ惑う子供たちを守る様に次々現れるモノクマを、ジェノサイダーはそれを上回るスピードで破壊していく。

 

「す、凄い…もしかして私いらなくない?」

「これがアタシのラッシュボイスよッ!…あ、画面の前のテメーら、お前中の人的に『オラオラ』だろとか言うなよ!アニメとゲームじゃ声優違う奴もいるんだしな!」

「な、何を言ってるのかさっぱりわかんねーけど…とにかくあの姉ちゃん強ぇ!」

「むうう…アレが奴のスタンドか。正直、私が現職だったころに奴がアレを持っていなくてホッとするな…」

「そうなったら警察にゃあアイツは止めらんねーよ。今でも止められる奴は未来機関にだってそうは居ねえんだからな…」

 

 前方で無双中のジェノサイダーにビビりながらも、皆は脱出を急ぐべく坑内を突き進むのであった。

 




今回ここまで
スーダンの舞台のチケットどうにか買えました。…発売初日の昼過ぎの時点で土日枠全部売り切れてた時はリアルに「ファッ!?」ってなりました

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