ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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婆さんや、ダンガンロンパ霧切の4巻はまだかね?いつまでたっても番外編の霧切編が書けないよ、ふがふが…


逃げ惑う者達との邂逅

「このこのッ!!」

ドギュンドギュン!

『痛え~!』

 廃墟と化した街並みの中で、こまる達は襲い掛かるモノクマと闘っていた。

 

『ひゃっほい!』

『待て待て~!』

「…ッ!2匹撃ち漏らした!こっちに来る!」

「2匹ぐれーなら任しときな!」

 こまるが撃ち漏らしたモノクマに、ホル・ホースは正面に立って向きおうと右手を開く。

 

「『エンペラー』!」

メギャン!

 次の瞬間、開いた右手の中に突如『拳銃』が出現し、ホル・ホースはなんの躊躇いもなくそれを握るとモノクマへと銃口を向ける。

ズギュンズギュン!!

『ありゃりゃ…』

『また来週~』

 ホル・ホースの『エンペラー』から放たれた銃弾が、モノクマの弱点の左目を正確に撃ち抜き破壊する。

 

「ふえぇ…ホル・ホースさんって強いんですね!」

「へへっ、まあな…」

「その『拳銃』がスタンドなんですか?」

「おう。俺の『エンペラー』はこの『拳銃』もだが『弾丸』もスタンドなんだぜ。だからある程度なら弾丸の軌道を自由自在に操ることができる。…最も、リボルバーだから一度に撃てるのは『8発』が限度な上に、銃弾が多いほど操作も大雑把になっちまう。しかも、嬢ちゃんのそれはプログラムの弾を撃ち込むからモノクマのどこに当たっても効き目があるが、俺のは実弾と変わらねーから弱点の『左目』に正確に撃ちこまねーと効果がねえ。だから、基本は嬢ちゃんに頑張ってもらって、俺はそのカバーぐらいしかできねえから勘弁してくれよ」

「…だったら、ホル・ホースさんもコレ使えばよかったんじゃあないですか?」

「俺は自分の信頼したハジキ以外使わねえ」

「そうですか…でも、これってどういう仕組みなんですかね?」

「うん?」

「私今までよく分からずにこのハッキング銃使ってたんですけど、何がどうなってモノクマに効き目があるのか分からなくて…。プログラムをハックしてコードが…みたいなことは聞いたんですけど…」

「さあな…、俺も詳しいことは知らねえからよ。腐川の嬢ちゃんはなんか知らねえか?こいつは十神の坊主が創ったもんなんだろ?…嬢ちゃん?」

「腐川さん?」

「…ブツブツ」

 ホル・ホースとこまるの呼びかけに、腐川は俯いたままブツブツと呟くのみで応えない。

 

「ブツブツ…」

「あの…腐川さん!」

「ひゃう!?いい…いきなり何すんのよ!?」

「ご、ごめん…それで、腐川さんは何か知らない?」

「な、何の事よ?」

「だから、このハッキング銃のこと。私原理とかよく分かんなくて…プログラムがハックしてコードがどうこうとか…」

「うろ覚えにも程があるでしょ…。正確には、プログラムコードを電波で飛ばして、対象の『機械』にハッキングを仕掛けることができる、よ…」

「…よく分からんが、凄い銃だ!…ってことだよね?」

「…ッ!?全く伝わってない!」

「あ、安心しろや。俺には分かったからよ…」

「…そういえば、この銃って『どんな機械にも効く訳じゃない』よね?効く機械と効かない機械で違いがあるのかな?」

「よく分からないけど、その銃はある隠密作戦用に白夜様が作らせた物らしいわよ。だから、その作戦で狙撃する必要の無い物以外には…き、効かないように設定してるんじゃないの?」

「…よく分からないけど、一つだけ分かったことがあるよ」

「何よ…?」

「この銃は『人間には効かない』んだよね。クリ○タルボーイに銃が通じないみたいに…」

「た、例えが古いな…。俺の世代のレベルだぜ…」

「ていうか、あんたあんな馬鹿げたスタンド持っといてまだ火力不足な訳?」

「だ、だからこそだよ!私じゃまだあのスタンドを制御できないから、もうちょっと手加減できたらいいなぁ~…って」

「だったら早く制御できるようになりなさいよ。アタシもいつまでもダイナマイト抱えたままなんて御免よ…」

「そんなぁ…」

「…そんなにヤベえのか?嬢ちゃんのスタンド…」

「アンタも気をつけなさい…。流れ弾が当たったら一発でお陀仏よ」

「…嬢ちゃん、後で俺と狙撃の練習しような」

「ホル・ホースさんまで~…」

 そんな他愛ない会話をしながら、3人は橋を目指して歩いていく。

 

 

 

 

 

 しかし、モノクマたちもただやられている訳ではなかった。

 

コロン…

「ん?」 

 ふと3人の前に『黒い物体』が転がってくる。

 

「何だろ…?」

 微かに赤く明滅するそれにこまるが近づこうとした時、

 

「「…!危ない(危ねえ)!離れなさい(離れろ)!」」

「うひゃ!?」

 寸でのところで二人に引っ張られ物体から離れた瞬間

 

 

ドガァァンッ!!

「きゃあ!?」

 黒い物体は爆発を起こした。

 

「い、今のって…『爆弾』!?」

「それ以外の何だっていうのよ…!」

「やれやれ…お客さんだ」

「え…?」

 ホル・ホースと腐川の見上げる先、脇にそびえ立つ送電線の上から『ソレ』は降りてきた。

 

 

 

 

 

『消えてなくなれー!!』

 どこぞの戦闘民族が言いそうな台詞と共に、背負った籠から爆弾を構えるのは、機動隊のような装備に身を包んだ2体のモノクマ…『ボンバーモノクマ』であった。

 

「ちょ…あの籠の中身、全部爆弾!?」

「こいつは面倒な奴が出てきたな…。嬢ちゃんたち!近づき過ぎんなよ、下手に至近距離で自爆でもされようものなら諸共お陀仏だぜ!」

「わ、分かってるわよ!」

 初めての武器を使うモノクマに戸惑いつつも、爆弾を撃たれないよう爆撃される前にこまるとホル・ホースは銃撃を放つ。

 

「『コワレロ』!」

「『エンペラー』!」

ドギュンドギュンドギュンドギュン!

『あちょー!』

『グエー!』

 間髪入れず銃弾を撃ちこみ動きを抑制するが、完全に封じ切ることは出来ず爆弾が1つこまる達の方へと飛ぶ。

 

「来たぞぉ!躱せぇ!」

「きゃああ!」

「うひぃぃ!?」

ドガァァン!!

 3人の中心へと落下した爆弾を、皆は散開してどうにか回避する。

 

「だ…大丈夫ですか!?」

「な、なんとかな…しかし、44のおっさんにはちとキツイぜぇ~…」

「けどこのままじゃジリ貧よ…。どうすんのこまる?」

「どうしよう…」

「どうにかうまいことあいつ等だけを『自爆』させりゃいいんだが…」

「自爆……そうだ、もしかしたら…!」

 なにかを思いついたこまるは再びハッキング銃をモノクマへと向ける。しかし、これから撃つのは『コトダマ』ではない。

 

「『イン・ア・サイレント・ウェイ』!」

ブオン!

 こまるの呼び声に応じ、再びあの羽飾が特徴のスタンド『イン・ア・サイレント・ウェイ』が姿を現す。

 

「あれが嬢ちゃんのスタンドか…!」

「ちょ、ちょっとアンタ!こんなところでぶっ放すつもり!?」

「大丈夫!私に良い考えがあるの!…多分」

「…その台詞、失敗するようにしか聞こえねえんだがなあ…」

 不安げな二人を余所に、こまるはハッキング銃の銃口をモノクマへと向け…そこからやや下へと向けモノクマの『足元』に狙いを定める。

 

「お願い、うまくいって…!」

 己のスタンドに願いを込め、こまるはその言葉を叫ぶ。

 

 

「『ツルーン』!!」

 叫びと共にハッキング銃の銃口から放たれた『ツルーン』という文字の弾丸。それはモノクマの足元に当たると一瞬光り…しかし何も起こらない。

 

「ちょ…『不発』じゃない!アンタどうすんのよ!?」

 ピンピンしているモノクマに焦る腐川。そんな彼らに、モノクマは再び爆撃を開始しようとする。

 

 

「…『不発』?ううん、違うよ腐川さん…」

 そしてボンバーモノクマが爆弾を投げようと前に一歩『踏み込んだ』瞬間…

 

 

 

「…『狙い通り』だよ!」

ツルーン!

『うひょ?』

 ボンバーモノクマ達は突如氷の上で『滑った』かのようにバランスを崩し、その場に尻餅をついた。

 

コロコロコロ…

『ん?』

 その拍子に、背負っていた籠から爆弾が零れだし、明滅し始め…

 

 

『…やっちゃった♡』

ドガァァンッ!!

 ボンバーモノクマを2体まとめて巻き込んで爆発を起こした。

 

「や、やった!やったよ腐川さん、ホル・ホースさん!」

「…こいつぁたまげた。中々芸達者なことができるスタンドじゃあねーか」

「あのスタンド…『声をダメージに変える』だけじゃなく『声の性質を物体に付与』させることもできるみたいね。…少しは扱いやすくなったと見るべきかしら」

「ねえ、腐川さん!見てくれた?うまくいったよ!私、このスタンドを使いこなしたよ!」

「う、うるさいわね!見ればわかるわよ!…ったく、このお子様染みた性格が治らない限り『半人前』は取れそうにないわね」

「…まあまあ、その辺は俺達大人がカバーしてやりゃイイだけじゃあねーか。スタンドビギナーに高望みなんざしちゃあいけねーぜ?」

「そうね…。……って、アンタと一緒にするんじゃあないわよッ!アタシはまだピチピチの19歳よ!アンタみたいなロートルのおっさんと一緒にしないで頂戴!」

「チッチッチ、俺の中じゃセーラー服を着れなくなった時点で『大人』なんだよ。まだ『研修生』だからっていつまでもそんな『コスプレ』してるよーな奴をマジモンの女子高生と同じ扱いにはできねーなぁ~」

「なっなっな…ぬわんですってぇ!アンタねえ、人が気にしていることをッ!!」

「け、喧嘩はやめよーよぉ!」

 そりの合わない二人を宥めながら、こまる達は先を目指して進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 それからしばらくして、こまる達は橋へと向かう為にとあるホテルの廃墟を通り抜けようとしていた。

 

「…はぁ、はぁ…」

「大丈夫か嬢ちゃん?」

「ちょ、ちょっと…疲れたかも…」

「だ、だらし…ないわね…。アタシより、若い癖に…」

「ふ、腐川さんだって…。仕方ないじゃん、私1年半も閉じ込められてたから、運動不足なんだよぉ…」

「あ、アタシはいいのよ…。『文学少女』だから…」

「『少女』なんて呼ばれる年でもねえくせに…。しゃあねーな、そこの部屋で一休みすっか」

「「さ、賛成~…」」

 運動不足のこまるとインドア系の腐川の体力の都合上、3人はホテル内の客室の1つで一旦休憩することにした。

 

「はぁ~…。ホテルは壊れてるけど、ベッドは無事でよかったぁ…」

「…これで外に死体が転がってなきゃなお良いんだけどね」

「こんな状況で贅沢言っちゃあいけねえよ。休めるだけラッキーと思わにゃあ」

 3人が一息ついていると、ふとハッキング銃を手にしたこまるが呟く。

 

「…それにしても、この銃どういう目的で作ったんでしょうね?」

「え?」

「どーいうこった?」

「だって、この銃って『未来機関』の作戦の為に作って、作戦に必要な機械だけをハッキングできるんだよね?…でも、ここに来る道中、道を塞いでた『塔和グループ製の電気自動車』をこの銃で動かすことができた…。なんでモノクマだけじゃなく、『塔和製の機械』までこの銃が効くのかな?」

「(ドキッ)」

「…そういえばそうだよなぁ。百歩譲って、十神の坊主があのモノクマの存在の事を知っていて、対モノクマ用の武器としてそいつを作ったってんならまだ分かるが、なんで塔和の機械までハッキングの対象に設定したんだ?」

「そうですよねえ。…腐川さんなにか聞いてません?」

「…へぇッ!?ななな、私は何も知らないわよぉ!?」

「ホントかよ…」

 訝しげに腐川をジト目で見ながら、ホル・ホースは一服しようとポケットから煙草を取り出し火をつけようとする。

 

「…あ!ホル・ホースさん、タバコは駄目ですよ!」

「うぇえ!?おいおい~…、オジサンの数少ない楽しみなんだから勘弁してくれよ~」

「女の子の前でタバコ吸ったら嫌われますよ!体にも良くないですし、我慢してください!」

「へいへい…。お嬢ちゃんたちが寝るまで我慢しますかねえ、っと」

 こまるに注意され、渋々煙草を引っ込めるホル・ホース。

 

「…ん?」

 と、所在なさ気に辺りを見回してた彼は、テーブルの上にある物を見つける。

 

「…雑誌か。客の忘れもんかな?暇つぶしにはなるだろ。どれどれ…『塔和シティの成り立ち』ィ?かーッ!塔和の自己顕示もここまで来ると寒気がするねぇ…」

「…でもなんか気になりますね。私も見ていいですか?」

「おう」

 

 

 

 

 ホル・ホースとこまるが読んだ雑誌の内容は以下のようなものであった。

 

 塔和シティの中心である塔和グループ。今から200年以上前に設立された『塔和製鉄所』を前身とし、事実上の塔和グループ初代会長である創業者『塔和得慈』の手腕によってわずか数十年足らずで製鉄業のみならず様々な事業を開拓し、世界トップクラスの『十神財閥』や『SPW財団』には一歩及ばぬものの国内においては最大規模の企業へと成長を遂げた。彼の活躍が有ったからこそ、今日の塔和グループと塔和シティの安寧が保たれているのである。

 

「…とまあ、こんな感じではあったが…」

「ますます分かんなくなったよ…。見る限りじゃいい会社みたいなのに、なんでこんな敵対するようなことをしたんだろ?」

「…ふん。どんな綺麗な建前の企業にだって、後ろめたいことの1つや2つはあるもんよ。裏でどんな汚いことやったか知れたもんじゃあないわ…」

「そうなのかなぁ…」

「…ま、そういうことは後で考えりゃいいじゃあねーか。それより、そろそろ行くとしようじゃあねーか」

「そうだね…」

 ホル・ホースに促され、こまるたちは休憩を終え再び探索へと戻ろうとし、部屋を出ようとした…その時であった。

 

 

 

 

 

ガチャリ

「……え?」

 たった今部屋を出ようとしたこまるの頭に、そんな音と共に堅い物があてがわれる。

 

「動くな…質問に答えてくれ。…君は、『コドモ』か?」

「え…あ…」

「ちょっと、アンタどうしたの…」

「…待て腐川の嬢ちゃん」

「へ?」

「…おい、そんなか弱い女の子に物騒な物突きつけるなんて、『大人』として恥ずかしくねーのか?」

「え…?ちょっと、アンタ何言って…」

「君も動くな!」

「!?なっ…!」

 様子のおかしいこまるに近づこうとして、腐川はその場で停止する。何故なら、部屋の入り口の直ぐ脇に、こまるの頭に『拳銃』を突き付ける『男』が立っていたからである。…そして、腐川はその人物の顔に、どこか見覚えがあった。

 

「アンタ…まさか…!」

「お喋りはしないでもらおう。君も『あちら側』ではないとは言い切れないからな。そちらの男性は違うだろうが…まず君に答えて貰おう。もう一度聞く、君は『コドモ』か?」

「わ、私…は…」

 瞳に若干の狂気を孕んだ男の有無を言わせない殺気に、こまるはおどおどしたまま何も話せない。

 

「…ん」

 と、こまるに視線を向けていた男は、ふとこまるの右腕に填められた『腕輪』に目が留まる。

 

「その腕輪は…!もしかしたら君も…」

「え?」

 腕輪を見た瞬間、男の突き刺すような殺気が収まり、こまるに向けられてた拳銃を降ろす。

 

「こまるッ!離れなさい!」

「は、はい!」

 銃から解放されると、こまるはすぐさま踵を返して腐川の元へと向かう。それと入れ替わるように、ホル・ホースが腐川とこまるを庇うように前に出てその手に『エンペラー』を構える。

 

「さて、今度はこっちが質問させて貰おうか。…おたく何者だ?」

「…済まない。私が早とちりだったようだ」

「な、何一人で納得してんのよ!大体アンタ誰なのよ!」

 ホル・ホースと腐川の問いに、男は懐から黒い手帳…『警察手帳』を取り出し、それを開く。

 

「私の名は『石丸高秋』。こう見えて警察官だ…こんなことにさえならなければね」

「け、警察官!?」

「…やっぱりね」

「…なんつーこったい」

 三者三様の対応を余所に、石丸高秋は3人に向けて頭を下げるのであった。

 




原作では、このホテルで手に入るのは石丸父の殺すリストだけでしたが、今作では要救助民を「できる限り」助けていく予定なので物語の途中で合流するという形をとることにしました。
…問題は朝日奈弟と葉隠母以外のキャラが分からないということなんですよね。顔と殺すリストの情報で大体のキャラ付していますので、イメージと違う!という方はご了承ください。
ではまた次回

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