ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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まだ番外編の続き書けてないけど音沙汰ないのもアレなので、できてるこっちを更新します
…GW関係ない職場だと大変なんですハイ


永遠の2番手

「腐川さん…大丈夫?」

「なんとかね…まだちょっと頭がグラグラするけど…」

 モノクマの脅威を退けた後、二人は機械室を出て再び外へと向かっていた。

 

「それにしても、アンタのスタンド…『イン・ア・サイレント・ウェイ』だっけ?何をしたって言うのよ…。あんなの近接タイプのスタンド並の破壊力じゃないの…」

「うん…。よくは分からないんだけど、どうも私の『声』を現実のものにできるみたい。でも、『治れ』とか『壊れろ』みたいな直接的なのじゃなくて、『ビリビリ』とか『ボヨーン』みたいな『効果音』…?みたいなのしかできないみたい」

「『擬音』って言いなさいよ。これだから漫画ばっかり読んでる奴は…。能力的には、広瀬康一の『エコーズ』に近いわね。ただ、あっちはあくまで『感覚を伝える』だけで直接的なダメージは無いけど、アンタはむしろそっちに特化してるみたいね」

 あの時スタンドが呟いた言葉からなし崩し的に名の決まったこまるのスタンド、『イン・ア・サイレント・ウェイ』の能力について考察しながら、二人は歩き続ける。

 

「…それとアンタ、その能力は基本的に使用禁止よ。滅多な事じゃ使うのはやめなさい」

「ええッ!?なんで!?」

「なんでじゃないわよッ!そのハッキング銃の『コトダマ』はあくまで『プログラム』だから周りの者に影響はないけど、アンタのスタンドは完璧に殺しにかかってる能力じゃないの!もし流れ弾がアタシにでも当たったら、どうなると思ってるの!」

「あ…」

「…分かったでしょ。碌に『覚悟』もできないまま人殺しになりたくなかったら、よほどのことが無い限り使うのは止めなさい」

「はぁい…。でも、弾が無いんじゃ戦えないよ…」

 と、こまるが愚痴ったその時。

 

「…え?ちょ、ちょっと!腐川さんあれ!」

「え?」

 こまるが指差した先、廊下の向こうには街中にもいたモノクマの仮面を被った子供がこちらを見て立っていた。

 

「あのガキは…」

「だよね?ねえ、ちょっと君…」

 こまるが呼び止めようとすると、子供はそれに応えずどこかへ走り去ってしまう。

 

「あ…、待ってよ!」

「ちょ、ちょっとアンタも待ちなさいよ!」

 見失わないよう、こまると腐川は急いで子供の後を追いかける。

 

「あの子…どこに行ったの?」

「…あ、いたわよ。あの部屋に入っていったわ」

 腐川の指差す先には、こちらの様子を窺いながらある一室に入っていく子供の姿がある。

 

「行こう!」

「…やっぱり行くのね」

 乗り気でない腐川を引っ張って、こまるは後を追いかけて部屋へと入る。部屋の中では、先ほどの子供が棒立ちでこちらを見ていた。

 

「……」

「私、この子見たことあるよ…!」

「そりゃきっと別の奴よ。街中にはこんな被り物をしたガキが沢山いるのよ…」

「クスクスクス…」

「…でも、なんでこんな被り物をしてるのかな?」

「知ったこっちゃないわよ…。こんな状況で遊び回ってるなんて、正気の沙汰じゃあないわ…」

「でも、モノクマに襲われたりしたら危ないよ?」

「『逆』よ…。こいつらはモノクマと一緒になって大人を殺して回ってるのよ」

「ッ!?この子たちが、大人を!?」

「子供が大人を殺すだなんて、いよいよもって世も末ね…。この間まで『殺人鬼』だったアタシが言えた義理じゃあないけど。とはいえ、ガキを攻撃するわけにもいかないしね…。最も、他の連中にそんな余裕が何時まであるか知れたもんじゃあないけど…」

「クスクスクス…」

 不気味に嗤う子供…『モノクマキッズ』とでも言うべきだろう。モノクマキッズはこまるへと歩み寄ると、こまるの腰に掛けられたハッキング銃を指差し、もう片方の手を差し出す。

 

「え…?これ、貸してほしいの?」

「(コク)」

「いいけど…」

「ちょ、ちょっと…!大丈夫なんでしょうね?こんな得体の知れないガキに…」

「だ、大丈夫だと思う…。多分…」

 不安げにハッキング銃を差し出すと、モノクマキッズはポケットから『メモリーチップ』のような物を取り出し、それをハッキング銃に挿入する。やがてハッキング銃から電子音が鳴ると、チップを取り出してこまるへと返した。

 

「あ、ありがと…」

「アンタ…変な事されてないか確認しときなさい」

「う、うん。……あ!」

「ど、どうしたの?」

「腐川さん!弾が補充されてる!」

「へ?」

 怪訝そうに腐川がハッキング銃のメモリを覗き込むと、先ほどまで残弾数が『0』だった『コワレロ』の『コトダマ』が満タンになっていた。

 

「……」(タッ…!)

「あ…待って!」

 それを見届けると、モノクマキッズは何も言わず立ち去ってしまう。

 

「これ、あの子が…?私たちを助けてくれたのかな?」

「…どうでしょうね。あのガキの意志というよりは、誰かからの『お使い』って感じだったけど…」

「お使い?」

「べ、別になんでもいいじゃない!アタマのおかしいガキのやることをいちいち気にしててもきりが無いわよ!」

「そ、そう…だよね…」

「ほら…銃も使えるようになったんだし、ポルナレフのおっさんみたいにのこのこしてないで行くわよ」

「わ、分かった…(ポルナレフって…誰?)」

 どこか焦った様子の腐川に先導され、こまるは再び外へ出るべく行動を開始した。

 

 

 

 

 時折飛び出してくるモノクマを退けながら、二人はどうにか病院の一階にまで到達し、玄関からようやく外へと出ることができた。

 

「やっと出られたわね…」

「でも、ここって街のどの辺なんだろ…?」

「アンタ…、ココに住んでたくせに知らないの?」

「住んでたって言うか…ずっと監禁されてただけだし、出歩いたこともなかったもん…」

「ふぅん…監禁ね…。中々面白い設定してるじゃあないの…」

「…あ、そういえば聞きたかったんだけど」

「な、何よ?」

「腐川さんと十神さんって、お兄ちゃんのクラスメート…『希望ヶ峰学園の生徒』だったんですよね?どういう関係だったんですか?」

「…なんでそんなこと言う必要があるのよ?」

「え…、いや、ちょっと気になって…」

「…別にアンタみたいなマセガキが好きそうな話なんかないわよ。ただの友達、…ちょっとアイツに『借り』があるだけのね」

「借り?」

「アイツはお節介焼きの上に色々謎な人脈を持っていたから、それで色々アタシらの個人的な問題にも首を突っ込んで来たりしてね。…ま結局のところそれで助かっちゃった訳だから、アタシらとしてはアイツに借りを返さないと気が済まないのよ」

「…お兄ちゃんらしいですね」

「ハッ…、ただのお人よしよあんなの。それで良い意味でも悪い意味でもいろんな奴に目をつけられて、面倒事に巻き込まれて…。まあ、なんだかんだで今も協力してやってるのよ」

「へえ…」

「今はアイツとアタシらは別々の組織で活動してるんだけど…、今アタシらが在籍してる『未来機関』ってのが面倒なのよ…」

「え…?腐川さんたち、未来機関の人間なんでしょ?」

「そうなんだけど…。まあアンタに難しいこと言ってもしょうがないわ。どうせ関係ないんだし…」

「ええ…」

「ただこれだけは憶えときなさい。『未来機関』は『正義』ではあっても『正しい』訳じゃあないわ。保護されても、『信頼しきる』のは止めときなさい…」

「え…それってどういう…」

 

 

 

ガチャン

「ッえっ!?」

「…全く、一休みぐらいさせなさいよね…!」

 物陰から聞こえた音に振り向くと、向かいの廃墟の中からモノクマが現れる。

 

『うぷぷぷ…』

「ま、また…!?やっと逃げ切れたと思ったのに…」

「うだうだ言ってる場合じゃないわよ、来るわよ…!」

 爪を振り上げ、襲い掛かろうとするモノクマに身構える二人。

 

 

 

 

 

 その時であった。

 

 

 

 

 

 

「『エンペラー』ッ!!」

ドギュンドギュン!

「「ッ!?」」

 突如轟いた2発の『銃声』、それに二人が驚いた瞬間には、既にモノクマの左目を2つの穴…銃痕が貫いており、モノクマは糸の切れた人形のようにその場に倒れ伏し、爆発する。

 

「な、何…?」

「『銃は剣より』…いや、この場合は『銃は熊よりも強し』かな?んっんー…、当然過ぎて名言でもなんでもねえなあこりゃあ」

「え!?」

 こまる達の頭上、廃墟の屋上から聞こえてきた声に顔を上げると、そこにはまるで西部劇にでてくるカウボーイのような服を着こなした中年の男が『拳銃』を手にして立っていた。

 

「あ、あなたは…?」

「…お、よう腐川の嬢ちゃん!やっぱりここに居たな」

「え!?…ふ、腐川さん知り合いなの!?」

「あ、アンタ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ホル・ホース』!」

「Yes!I am!…ってか?」

 自分の名を呼ぶ腐川と呆気にとられるこまるに対し、男…かつて『DIO』に仕えた『皇帝(エンペラー)』の暗示を持つスタンド使い、『ホル・ホース』はニヒルに笑みで応えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタ、なんでここに居んのよッ!?あの『占いバカ』と同じチームだったんじゃあないの!?」

「いやぁ…それがよぉ、ヘリから降りた途端にあのモノクマ共に襲われてよ。1,2匹ならまだしも軍団で来られちゃ流石にヤバくてな、なんとか逃げ延びたんだが康比呂ともはぐれちまってよ…。それでどうしたもんかと悩んでたとこに、そこの病院の壁がぶっ壊れたのが見えてよ、もしかしたらと思って来てみりゃ…こうなったっつー訳だ」

 颯爽と登場したホル・ホースではあったが、腐川に問い詰められ気まずそうに己の失態を釈明する姿にもはや先ほどの凛々しさは感じられない。まるで短気な上司に怒られるお調子者のサラリーマンのようだ。

 

「ハァ…。まあいいわ、アイツがそう簡単に死ぬとは思えないし、放っておいてもなんとかなるでしょ」

「違ぇねえ。それより…こっちの嬢ちゃんは?」

「え、えっと…」

「…苗木こまるよ。アイツの妹」

「ほぉ…!嬢ちゃんがか。…ってことは、さっき壁をぶち壊したのは…」

「あ、はい。私のスタンドです」

「そりゃあ頼もしい限りだ。頼りにしてるぜ嬢ちゃん」

「え?」

「…アンタ、まさかついて来るつもりじゃあないでしょうね?」

「?いかんのか?…ああ、安心しろや。俺は腐川の嬢ちゃんもこまる嬢ちゃんもストライクゾーン外だ。イイ男は子供にゃ手は出さねーよ」

「そういう問題じゃあないわよ!…それもあるけど、アンタみたいなトラブルメーカー引きずって行ける訳ないでしょ!さっさと占いバカ探してくりゃいいじゃないの!」

「おいおいおいおい、この状況でそりゃあ無えんじゃあねえか?こんな地獄の底みてーなところで個別に動くよりも、まとまって行動したほうが利口っつーもんだろ。第一、俺は誰かと組んで力を発揮するタイプの人間なんだ。そんな俺を一人にするなんざ酷い話じゃあねえと思わねえのか?」

「そ、それはそうだけど…」

「それに…腐川の嬢ちゃんよ、お前姐さん連中に黙って出てきたから碌に準備もしてねえんだろ?俺は万が一に備えての『準備』をある程度してきたから、少しは役に立つと思うぜぇ~?」

「う…わ、分かったわよ。好きにしなさいよ…」

「へっへっへ、了解!」

 ホル・ホースの最もな言い分に、腐川も意地を張り通せずに折れることとなる。

 

 

「あ、あの…」

「ん?」

 そんな二人に、こまるがおずおずと声をかける。

 

「もしかして…腐川さんもホル・ホースさんも、一緒に来てくれるんですか?」

「…当然だろう?こんな吹き溜まりにか弱い乙女を置き去りになんざできねー話だ。第一、置いてったりしたら『大将』に合わせる顔が無えや」

「…う、うう…!」

「な、何よ…不満な訳?」

 顔を伏せて唸るこまるに、腐川が怪訝そうな表情を向ける。

 

 

 

 

「…腐川さん!」

ガバッ!

「あひょ!?」

「おお?」

 突然、こまるは腐川に抱き着いた。いきなりのことに腐川は両手を挙げたままホールドアップした状態となる。

 

「なな…なにすんのよ!?」

「ありがとう!本当に…本当にありがとう二人とも!私、また一人になるんじゃないかってすっごく不安で…二人が一緒に来てくれて、私すっごく嬉しいよ!心から感謝するね!二人と合わせてくれた神様に!」

「素直にアタシに感謝しなさいよ…ああもう!暑苦しいわね、いい加減に離れなさいよ!」

「あ…ご、ごめんね」

「嬉しいこと言ってくれるじゃあないの。ささ、今度は俺の胸に飛び込んできな!」

「え…それは…」

「遠慮すんなって!嬢ちゃんも『大将』や父ちゃん母ちゃんが居なくて寂しかったんだろ?ここは俺の事を父ちゃんだと思って、甘えていいんだぜぇ~?」

「あ、あはは…」

 

ガツン!

ホル・ホースの軽薄っぷりに、見かねた腐川がその辺に落ちていた木材でホル・ホースの尻をひっぱたく。

「おっほう!?…な、なにしやがんだ腐川の嬢ちゃん!」

「なに平然とセクハラかましてんのよこの変態オヤジ!」

「いやいや、これは年長者の余裕という奴でな…」

「…ぷ、あはははは!」

 二人の漫才のようなやり取りに、今まで不安と緊張に支配されていたこまるの表情に笑顔が戻る。

 

「…で、この後どうすんの?アタシはこの街に詳しい訳じゃあないからどこに行けばいいかなんて知らないわよ」

「俺も何度か来たことはあるが、仕事の付き添いで来ただけだから『塔和ヒルズ』ぐらいしか言ったこと無えんだよな」

「うーん…せめて、もう少しこの街のことが分かれば…」

 と、その時ホル・ホースが思いついたように声を上げる。

 

「…そういや、この塔和シティは元々『埋め立地』だって聞いた事が有るな」

「『埋め立地』…ってことは!」

「ああ、もしかしたら本土と繋がっている『連絡路』があるかもしれねえな。フェリーとか橋みてえな…」

「『橋』…腐川さん、どこかでそんなの見なかった?」

「は、橋?…そういえば、向こうでやたらと大きな橋を見たような気がするけど…」

「それだよ!その橋を渡っていけば、きっと町の外に出られるかもしれないよ!」

「…え?あっー…と、そうかもね…」

「…だが簡単にはいかねえぞ?」

「え?」

「俺も放送を見ていたからあのガキ共のことは知ってるが、『大人』を皆殺しにしようって息巻いてる奴等が、そんな馬鹿でも分かるような脱出経路を見落とすとは思えねえ。何か『罠』がある可能性は確実にあるぜ?」

「それは…」

「よく考えなさい。こいつはなんだかんだで経験だけは群を抜いてるわ。そんなこいつが言うんだから、多分なにかあるわよ…」

「ふ、腐川さんまで…」

 様々な修羅場を潜って来たホル・ホースの経験からくる忠告に、腐川も追随するように念を押す。しばし悩んだ後、こまるは顔を上げて二人に言う。

 

「…でも、何事もやってみないと分からないよね。ほんの少しでも逃げられる可能性があるなら、まずは行ってみるべき…だと思う」

「……」

「…ようし!だったら善は急げだ。さっさと行こうぜ!」

「あ、ありがとうホル・ホースさん!」

「気にすんなって!若い奴等が決めたんなら、オジサンができるのはケツ持ちぐれーだ。できる限り手伝ってやっから、やってみようじゃあねーか」

「うん!行こう腐川さん!…腐川さん?」

「えっ?…あ、わ…分かったわよ!」

 何故かあまり乗り気でない腐川を余所に、少女二人と中年一人という奇妙な三人組は街から脱出するべく行動を始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…やばい、完全に『予定外』だわ…。なんとか誤魔化さないと…」

 




短いけど今回ここまで
ホル・ホースの参入は迷ったんですけど、この二人に足らないものを適度に補ってくれるという点から仲間入りさせました。
人が良すぎると思うかもしれませんけど、案外最初から味方だったならこんな感じだったんじゃないかと思ってるのですが…そこんところどうでしょう?

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