さて、この話ではニューダンの面子も出てきますが、ここの独自設定として彼らは希望ヶ峰学園の『79期生』…つまり苗木たちの一年後輩という設定になってます。あくまでここだけの設定ですので、本編の3部とは切り離して考えてください
あと天海の才能は下馬評で一番有力候補な「冒険家」にしてます
では…この作品のカニファン的なお祭り騒ぎをお楽しみください
あと出演キャラがめっちゃ多いので読みづらいかも知れませんが、ご了承を
Great Days (V3のネタバレあります)
♪~♪♪~
希望ヶ峰学園に、ピアノの音色が鳴り響く。曲目はモーツァルトの『ピアノ・ソナタ 第16番ハ長調』だ。若干たどたどしいものの耳を澄ませばどこかで聴いたことがある様なその音色は、学園の音楽室…ではなく、とある教室から聞こえていた。
「…ど、どうかな…?赤松さん」
「うん!前よりずっと良くなってる!やっぱり最原君、やればできるんだよ!」
「そ、そうかな…?」
演奏を終え、ピアノの前で息をつくのは希望ヶ峰学園『79期生』、『超高校級の探偵』の才能を持つ少年『最原終一』。その隣で笑顔で彼の演奏を褒めるのは同じく79期生『超高校級のピアニスト』の『赤松楓』だ。
二人は週に2、3度この赤松の為に用意された『研究教室』でピアノのレッスンを行っていた。ここは元々、希望ヶ峰学園の『カムクラプロジェクト』の為の研究施設の一つだったのだが、学園長…霧切仁によるプロジェクトの解体後、壊して更地にするのももったいないということで、研究器材を全て取っ払ったのち、生徒一人一人に専用の『才能の研究教室』という形で用意されたものである。なのでここは、赤松にとって寄宿舎の自室以外の『もう一つの自室』とでも言うべき場所であった。
…最も、現在交際したてほやほやのこの二人にとってここはレッスンを建前にしたデートスポットに近いのだが。
「じゃあ、今度は一緒に連弾してみよっか!曲は…チャイコフスキーの『くるみ割り人形』がいいかな?」
「あ、うん…分かったよ」
「うん!それじゃ早速…」
と、演奏を聴いているうちに自身も弾きたくて我慢できなくなった赤松が飛び乗る様に椅子に座り、そそくさと鍵盤に手を伸ばすと
ピトッ…
「「あッ…」」
まだ切り替えのできていなかった最原の鍵盤上に残った手と指が重なり、二人は思わず声を上げて顔を見合わせ…やがて同時に真っ赤になって手を引っ込める。
「ご、ごめん…」
「う、ううん…こっちこそ、ごめん…」
「…さ、さあー!早く演奏しよっか?私がリードするから、最原君ついてきて!」
「う、うん!」
「じゃあ、せーの…!」
♪♪~♪~
迷いのない美しい旋律に、少したどたどしい旋律が後に続く。演奏前に予想外のハプニングがあったとはいえ赤松は流石であり、演奏が始まると照れも動揺も消え失せその凛とした表情と音色には一点の曇りもない。
(…赤松さん、綺麗だ…。でも…)
「…ほら、最原君!遅れてるよ!」
「わ…ご、ごめん…!」
(やっぱり赤松さん、ピアノの事になるとちょっと怖いなぁ…)
そんな赤松の横顔に見とれていた最原を赤松が窘めながら、二人の連弾は続いて行く。
「…いーっすねぇ、いっすねぇー…!唯吹もあんな風に音楽デートとかしてみたいっす…
!」
「オメーの音楽について行ける男がいんのかよ…?」
「マウンテンゴリラの『ドラミング』ならいい勝負なんじゃない?にしし!」
「和一ちゃんも子吉ちゃんも酷いっす!いつか唯吹にだって、白馬に乗った王子様が来てくれる筈なんすから!」
「…むしろ白馬よりもハーレーに乗って来そうだけどな、音楽性的に考えて…」
「…むッ!こら君達!赤松君の部屋の前で何をこそこそしているんだッ!?」
「うわ、やっべ…石丸だ!」
「あらら見つかっちゃった…お、良いこと考えた!…うわー石丸先輩、赤松ちゃんの部屋の前でなにしてるんですかー!?(棒)」
「ほげッ!?」
「なんとッ!?」
「それ逃げろー!」
「ちょ、待てって!」
「あ!待ちたまえ君達…」
ガラッ
「王馬君!?…って、石丸先輩こんなところで何してるんですか!」
「あ、赤松君…!これは、違うのだ…そう、誤解なのだよ!」
「…これは、また王馬君の悪戯かな。ハァ…本当に、仕方がないなぁ…」
…そんなデートをこっそり盗み見する澪田、左右田、そして最原たちと同じ79期生の『超高校級の総統』こと『王馬小吉』のおせっかいトリオに注意を飛ばす石丸であったが、王馬に嵌められて誤解を解くのに四苦八苦する。そんな彼等も含めて、二人の連弾をBGMに今日も学園の生徒達は日常を謳歌していた。
カタカタカタカタ…
「…ど、どうかなぁキーボ君?新しいセンサープログラム…」
「ハイ!…お、おおッ…おおおおおおッ!!」
キュピーン!
「わあッ!?」
「す…凄いですよ不二咲先輩!視界がこんなにクリアになりました!それだけじゃありません、サーモグラフィーに二酸化炭素探知機、それに電子機器へのプラグイン機能までついてるじゃあないですかッ!!」
「よ、良かったぁ…。入間さんが頑張ってくれたから、僕もそれに応えないとって思ったから…」
「ケッ!あたりめーだろうが!オレ様の天才的な改造をオメーのチ○コみてーなちんけなプログラムで台無しにしやがったら、テメーのチン○もいでやるトコだったからな!」
「うえええッ!?」
「ちょっと、入間さん!そういう下品なことは控えなさいって言ってるでしょ!」
「ひいッ!?な、なんだよぉ…この間オメーのカメラパワーアップしてやったんだから大目に見ろよぉ…!」
「パワーアップって貴女ね…確かに性能は良くなったけど余計なものをつけ過ぎよ。『プリクラ機能』とか『顔入れ替え機能』とか…」
「…ちょっと待って欲しい!」
「花村?」
「入間さん…キミに一つだけ言っておかなくちゃならないことがある」
「な、なんだよ…?」
「フゥ……ッ、不二咲クンのおち○ちんは、かなりデカいッ!!」
「ファッ!?」
「な…何だとぉ!?」
「間違いないさ!こないだお風呂場に忍び込んで確認したからね!」
「うわあああッ!?は、花村先輩何言ってるんですかぁッ!!」
「いやね、これだけは言っておかないとどーにも納得がいかなくてね…」
「僕が納得できませんよぉッ!」
「…ッ!こんの…エロ魔人がッ!!」
スパーンッ!
「あひんッ!」
「…あのー、僕は忘れられているんでしょうか?」
「うっせぇ!股間に○ンコもマ○コも無え奴は黙ってろ!」
「ちょっと!今のは聞き捨てなりませんよ、ロボット差別は犯罪です!」
79期生、『超高校級の発明家』の『入間美兎』と花村による放送コードギリギリの下ネタトークに狼狽する不二咲と、それに青筋を立ててハリセンツッコミをかます小泉。それを79期生、『超高校級のロボット』である『キーボ』は性別が無いためついて行くことができず置いてけぼりを喰らっていた。
「…霧切先輩、例の件…どうなったかそろそろ教えて貰ってもいいかナ?」
「…何度も言っているでしょう。いくら私でも、財団から『石仮面』を借りるのは無理よ」
「しかし、貴女は財団と深いつながりのある苗木先輩の『正妻』だろう?彼の名を出せばそれぐらいはできないのかな?」
「無理よ。そんな手を使った所で、承太郎さんはすぐに見抜いてしまうわ。…そもそも、誠君自体石仮面を持ち出すことには反対しているのよ。そんなことをしたら貴方…説教じゃあ済まないわよ?」
「むぅ…やれやれ。『マヤ文明』の遺産と言われている石仮面…民俗学を学ぶものとして機会があればお目にかかりたいと思っていたけど、ここまで拒否されては仕方がないネ…」
「アハハハー!是清もいい加減諦めなよー。響子が『会長』に嫌われるようなことする訳ないのにさー!」
「…夜長さん、そういう言い方はやめてもらえるかしら?」
「…そういう夜長さんこそ見たくないのかい?君の部族に伝わる生き血を捧げる風習も、元は石仮面がルーツになっていると聞いているけれど…?」
「う~ん…ホントはそうだったんだけどね、おバアに石仮面が本当にあるって言ったら『絶対に触れてはならない、見てはならない』…って、物凄い剣幕で怒鳴られちゃったから、しょうがないかな~って。神様も『先人の教えに従え』って言ってたしねー!」
(賢明な判断ね。…本当はマヤ文明なんてレベルの代物じゃあないんだけれど、それを言ってしまうと増々面倒になりそうね…)
「…ところで話は変わるけれど霧切先輩。先輩は『降霊術』に興味はあるかい?僕の見立てなら先輩ならきっと素養が…」
「悪いけれど、貴方の『お姉さんの友達』になるつもりは当分無いわ。諦めて頂戴」
「…本当に隙のない女性だネ。けれど、だからこそいい…!」
「アハハハハー!是清は本当にしつこいねー!」
「…ふぅ。こんなの私の柄じゃあないのだけれど…やれやれね」
『超高校級の民俗学者』である『神宮寺是清』が霧切に苗木のコネを使ってSPW財団の重要資料を借りだせるよう頼むが、前もって苗木から断るよう頼まれており、自身も探偵の勘から嫌な予感しかしない霧切は無碍も無くあしらっている。その光景を見て、79期生の『超高校級の美術部』の『夜長アンジー』は無邪気に笑っていた。
「キエェェェーッ!!」
「どりゃああッ!!」
「むぅんッ!」
ガキィィンッ!!
「んあああああッ!!?」
「なんという闘気の嵐…!あの3人を中心に小宇宙が渦巻いているぞッ!!」
「こ、これが…『ジャパニーズカラテ』の極致なのですか!」
「…いや空手も糞もねーだろ。こいつら全員『我流』じゃねーか。…大神は道場開くレベルだけどよ」
「終里に至ってはもはや喧嘩だしのぉ…。だが、あの二人の様な達人と拳を交わせば、アイツも己の基礎の未熟さに気が付くはずじゃあ…!」
「いやアンタはアイツを何にするつもりだよ。アイツ基本体操選手だろうが…」
「ほぉぉぉぉ…ッ!流石ですねお二人ともッ!転子の『ネオ合気道』とこれほどまでに渡り合えるなんて…!」
「へっ!こんなもんまだまだ朝飯前だぜ!逆に腹が減って来たぐらいだぜ!」
「茶柱転子…お主が師と共に練り上げた『ネオ合気道』、確かに見事だ。だが…!我とて『大神流武術』の看板を背負う者!例え挨拶代りの手合わせとて、負けるわけにはいかんッ!!」
「望むところですッ!見ててください夢野さん…転子は、この勝利をあなたに捧げます!チェストオォォォォッ!!」
「だりゃあああッ!!」
「破ァァァァァッ!」
「…だ、だったら…ウチのことも少しは気にせいーッ!んあーッ!?」
『超高校級の合気道家』、『茶柱転子』と終里、大神という正面きっての近接格闘においては戦刃を除けば学園…いや日本最強レベルの3人の手合わせは一挙一足ごとに暴風を巻き起こし、茶柱に誘われた『超高校級のマジシャン』『夢野秘密子』を始め観戦していた田中、ソニア、大和田、弐大を巻き込み体育館を壊しかねないほどの戦いを繰り広げていた。
「…勝負だ!どうだッ、キングの3カードだぜ!」
「フルハウス」
「クイーンの4カードですわ」
「アハハ…ごめんね、またロイヤルストレートフラッシュだ」
「にゃ…にゃにぃぃぃッ!!?」
「おいおい…セレス嬢がクイーン総取りしてるのにロイヤルってことは、ワイルドカード込みかい…」
「…まったく、狛枝君が相手では私の『超高校級のギャンブラー』の肩書きも形無しですわ」
「いやぁ、そんなことはないよ。僕はあくまで『幸運』なだけさ。ギャンブルにおける『駆け引き』に関しては僕なんかセレスさんの足元にも及ばないゴミみたいなものだからね」
「…まあ、そういうことにしておきましょう。運だけじゃなくイカサマまで素面でやってくる苗木君に比べればはるかにマシですしね。それより山田君、東条さん、賭け金の配当をお願いしますわ」
「フフフ…承知しましたぞセレス殿」
「や…やめろーッ!俺の全財産ーッ!!」
「見苦しいですわ。…取り押さえてくださります?春川さん」
「…百田、カッコ悪いよ」
「ぐげぁッ!?」
「それでは…一番の狛枝さんは賭け金の総額の6割、二番のセレスさんが3割、三番の星君は1割…そして、ビリの百田君は0…ということで」
「うぐぐ…チクショウ~!ハルマキィ~…」
「欲しいものがあるからってギャンブルなんかに頼るからそうなるのよ…バーカ」
「あ、あのぉ…今更ですけど、こんな堂々と賭けポーカーなんかしていいんですかぁ…?」
「別に現金賭けてる訳じゃないから問題ないですわ。購買でしか使えない『メダル』を賭けてポーカーしてると公になったところで、所詮子供の遊びとかしか思われませんもの」
「…最も、それを使って物を手に入れて換金すれば同じ事だと知られればそこまでですがな」
「ま、そこはまさしく『沈黙は金なり』って奴だな。…で、どうする?まだやるか百田?」
「…ッ、ったりめーだろうがッ!!来月支給分のモノクマメダル100枚全賭けだぁッ!!」
「そうこなくては、カモ…もとい、勝負し甲斐がありませんわ」
「ちょ…百田、アンタいい加減にしときなよ。来月また素寒貧になってもいいの?」
「止めるなハルマキッ!男には…男にはよぉ、絶対に譲っちゃいけねえ時があるんだ!俺にとって、今がそれなんだぜ!宇宙に轟く百田解斗!俺の明日は、今ここにあるッ!!」
「…『宇宙服のレプリカ』欲しさですっからかんになっといて、何言ってんだか…」
「うぐ…し、仕方ねえだろ!オメーにはわかんねーかもしれねえが、俺にとって宇宙に纏わる物は『浪漫』なんだよ!男ってのは、浪漫を追いかけなくちゃカッコよくなれねーんだよ!」
「うむ!全くその通りですな、浪漫の無い男子なぞイチゴ大福のイチゴと餡子と餅抜きみたいなものですぞッ!!」
「…それ残ってるの表面の粉だけだよね?」
「…ハァ。…なんで私、こんなの好きになっちゃったんだろ…?」
「春川さん。こういうのは、『惚れた方が負け』なのよ。…それに、こうやってわざわざ付き合っているのなら、満更悪い気はしないのでしょう?」
「…うっさい。殺されたいの…?」
「ぴぃぃッ!?」
「あらあら…うふふ」
「よっしゃあッ!これが正真正銘、俺の本気の一番だぜ!」
「フッ…いいぜ、偶には馬鹿にも付き合ってやるさ」
「では私も、そろそろ本気でいきましょうか…」
「ああ…素晴らしいよ!宇宙飛行士…僕らの中で最も『未知』に挑む才能を持った君の本気がどれほどのものなのか、今からワクワクが止まらないよ…!さあ!僕を踏み台にして、君の才能を魅せてくれ!」
「…ち、チクショー!テメーらなんか怖くねーッ!ヤローブッコロシャァァァァ!!」
最近購買に入荷した、アメリカの宇宙開発局から寄贈されたという『宇宙服のレプリカ』欲しさに、過去に収監経験のある『超高校級のテニスプレイヤー』の『星竜馬』、セレス、狛枝という度胸と幸運に秀でたギャンブラー集団に果敢にポーカー勝負を挑む『超高校級の宇宙飛行士』『百田解斗』の雄叫びを、付き人として控えている『超高校級のメイド』の『東条斬美』、山田、罪木、そして『超高校級の保育士』であり同時に『超高校級の暗殺者』である『春川魔姫』が呆れながら見守っていた。
グワァラゴワガキィーンッ!!
「な…んだとぉ…ッ!?」
「や、やった!ホームランだ!」
「うおー!スゲーベゴン太っち!あの桑田っちからホームランかっ飛ばすなんてよ!!」
「…チックショーッ!!ストレートしか投げねーからって、あんなのアリかよ~…」
「トンボさんなんかはもっと早く飛べるから、トンボさんを捕まえる感覚でやったらうまくいったよ!」
「マジかー…俺の球トンボに負けてんのかよ。クッソー…だったら、それより速くなってやらあッ!!素人にホームラン打たれてんじゃあ、俺のプライドが許さねえぜッ!!」
「その意気だべ桑田っち!…で、西園寺っちはそこで何してるんだべ?さっきからずっと蹲ってっけど…腹壊したけ?」
「んなわけないじゃんド腐れドレッド!…アリさん潰して遊んでるに決まってるでしょ~♪最近妙にアリさん増えてるから潰しがいがあるんだよねー!」
「またんな一円にもならねーことを…」
…ゾクッ!
「…へ?」
「な、なんだべ…今の?なんか『寒気』がするような…」
「…何してるって、言ったの…?」
「ご、ゴン太…?」
「聞き間違いだよね…?今、アリさんを…折角ゴン太と田中先輩が頑張って育てたアリさんたちを、潰して楽しいって…聞こえたんだけど…」
「な、何…」
バキィッ!!
「うひぃ!?」
「ば、バット…握りつぶしたべッ!?」
「ねえ、西園寺先輩…ゴン太の聞き間違いだよね?西園寺先輩がそんな人な筈が、あるわけないよね…!」
「あ、あ…あう…!?」
「…ま、まあまあ落ち着けやゴン太!いくら西園寺パイセンがガキっぽいからって、んな小学生でもやらねーことで遊ぶわけねーだろ?今のは…そう!間違えて踏んじまったアリを供養してたんだよな、な?」
「…!」(コクコクコクコク!)
「…なんだ、やっぱりそうだったんだね!ゴン太の聞き間違いで良かった。疑ってごめんなさい、西園寺先輩。女の人を疑うなんて、ゴン太はまだまだ一流の紳士には程遠いなぁ…」
「そ、そう…だよね…」
「…た、助かったべ…」
「ふぃー…胆冷やしたぜ」
「…あ、ありがとアゴヒゲ…じゃない、桑田…」
「おお、気にすんなや。…ところで、代わりと言っちゃなんだけど今度可愛い踊り子さんと合コンとかセッティングできね?」
「…やっぱ最悪、このクソアゴヒゲ!」
校庭で野球に興じていた桑田と『超高校級の昆虫博士』の『獄原ゴン太』と葉隠であったが、たまたま見物していた西園寺の趣味がゴン太の逆鱗に触れてしまい、その体格も相まって凄まじい迫力のゴン太をワタワタしつつもどうにか宥めていた。
「……」
「……」
「……」
「……」
「…いい加減出て行け肉饅頭。それが嫌ならせめてその恰好をやめろ。不愉快極まりない…!」
「…フン。『完璧な自分』を見るのがそんなに苦痛か?御曹司としての才覚と責任感、冷静にして冷酷な判断力…そしてなにより権力者の象徴である『脂肪』。それら全てが揃ってこそ『十神白夜』は完成する。…貴様こそいい加減それに気づいたらどうなんだ?」
「…勘違いするな。俺は貴様に俺自身を一ミリたりとも重ねあわせてなどいない。俺は俺だ、貴様がいかに『理想の十神白夜』を演じようが、俺こそが『真の十神白夜』だ。だから貴様のソレはあくまで『十神白夜になりきれない出来損ない』でしかない。愚民どもが俺を否定し、貴様を肯定しようが関係ない。俺がそれを認めぬ限り、十神白夜は『俺』しかいないのだよ。…俺が気に入らんのは、貴様がここにいると湿気が籠って本が読みづらいだけだ。だからさっさと消えるか、その醜い体型に見合った服にしろ」
「…フン、流石だな。俺はそこまで傲慢にはなれん。やはり貴様を完全に模倣するのにはまだまだかかりそうだな」
「当然だ。俺が、十神白夜が『詐欺師』如きに務まる物か」
「何、まだ時間はある。卒業までにもっと精度を上げて…いつか、『お前』を超えてやるさ。他の誰でもない…俺の力でな」
「…フン。やってみろ、愚民が…」
…ガッシャーンッ!
「ッ!?な、なんだ!?」
「…野球のボールのようだな。…校庭に桑田と獄原がいる。どうやら獄原のホームランボールのようだな」
「…どいつもこいつも、この俺の邪魔ばかり…!」
「短気は損気だぞ。この俺を見ろ。脂肪とは余裕の表れ、糖質は怒りを抑える…やはり大切なのは脂肪と糖質だな」
「黙れッ!!」
「…す、素敵…!白夜様…やはりあんな偽物とは格が違うわ…ああ、濡れるッ!!……それはそうと、獄原と桑田ブッ殺すッ!!」
図書室で静かに本を読みながら舌戦を繰り広げる十神と十神に成りきった詐欺師の様子を、興奮しきった様子の腐川が陰から見つめていた。
「…っと、こんな感じでどうっすかね?」
「わあ…!なんだか不思議な模様ですね…でも可愛いです!」
「お気に召してもらったようで何よりっす」
「ふむ…ネイルアートとやらには詳しくないが、この模様に意味はあるのか?」
「はいっす。これは俺がエジプトを旅している時に憶えたんすけど、エジプトって5000年ぐらい前からネイルアートみたいなものがあって、これは『夫婦円満』を意味する模様らしいっす。舞園さんたちと会長がずっと円満であるように…って思って描かせて貰ったんすけど…」
「…ありがとうございます天海君!」
「いえいえ…けど、俺がそんなおせっかいするまでもなく皆さんならきっと大丈夫だと信じてるっすけどね」
「えへへ…あ!だったら辺古山さんもやりましょうよ、ほら!」
「わ、私もか!?…ど、どうしましょう坊ちゃん…?」
「…いいんじゃあねえか、別によ。縁起がいいことに越したことはねーだろ」
「そ、そうですか…」
「…それに、よ。俺も…なんつーか、偶にはお洒落したオメーが見てみてー気がするっつーか…」
「…!坊ちゃん…」
シャッ!
「ちょ…葵さん…!こんなの恥ずかしい…」
「大丈夫だって!ねえ皆、ちょっと見てよ!」
「え…わあッ!むくろちゃん可愛いです!」
「でしょでしょ?白銀ちゃんに色々用意してもらったんだよ!」
「むふー…!流石は戦刃先輩。江ノ島先輩の双子なだけあって、磨けばどこまでも光る原石だったよ…!白地のワンピースで清楚さアップ!会長とお揃いのテントウムシのブローチでキュートさを演出、髪はウィッグでセミロングにして大人っぽさも追加!いやー…久しぶりにいい仕事した気分だよ~!」
「こ、こんな服着たの初めて…む、無理…!もう無理だから、脱がせて…!」
「何言ってるの!せっかくいろんな服用意したんだから、もっと試してみようよ!そんで、一番可愛いのを誠に見て貰おうよ!」
「ッ!!?む、無理無理無理無理…ッ!こんなの、誠君に見られたら…恥ずかしすぎて、死ぬ…!!」
「大丈夫ですって!きっと誠君なら可愛いって言ってくれますよ!むくろちゃん可愛いんですから、もっと自信持ってください!」
「…そ、そう…なの、かな?じ、じゃあ…ちょっとだけ…ちょっとだけね」
「よっしゃあ!超高校級の軍人解た…ファッションショーの始まりや!」
「フッ…大変だな、戦刃」
「…あ、折角だし辺古山ちゃんも一緒に着てみない?」
「…?……ッ!?な、何故そうなるッ!?」
「だって辺古山ちゃんもいつも道着か制服着てるとこしか見たこと無いし、偶にはお洒落するのもいいんじゃあないかな~って!」
「…それはいい考え。辺古山さんも着るべき」
「い、戦刃…貴様ッ!?」
「私だけ恥ずかしいのは不公平…お洒落に疎い者同士、ここで腹を括ろう?」
「む、無理だ!私にそんな恰好…大体、坊ちゃんの目の前でそんな…!」
「…って言ってみてくださいっす。きっと一撃KOっすよ」
「ホントかよ…?」
「…ぼ、坊ちゃん…?」
「あー…ペコ。その、なんだ…さっきも言ったが、俺だってオメーが綺麗になるのは悪くねえと思ってる。と言うより、なんだ…俺は、綺麗なお前が見てみてえ」
「…ッ!」
「勿論これは『俺個人』の希望であって、命令じゃあねえ。だからお前が無理だってんなら無理強いはしねーが…どうだ?」
「…そ、そういうことであれば……分かりました!おい白銀、どうせやるなら徹底的にやってくれ!私とて女だ、半端に着飾った姿を坊ちゃんに見られたくはないからな!」
「了解しましたぁ!むっふっふ…前々から辺古山先輩も弄り回してみたいと思ってたんだよね~!ああ~、銀髪赤目とか尊いを通り越してネ申だよ~!」
「そ、そのワキワキする手をヤメロォ!!」
79期生、『超高校級のコスプレイヤー』の『白銀つむぎ』主導の元始まった戦刃と辺古山のファッションショーを、舞園と朝日奈がキラキラとした目で盛り上げ、それを遠巻きに九頭竜と面白半分でその流れを唆した『超高校級の冒険家』である『天海蘭太郎』が見物していた。
ガガガ…ガガガガッ!!
「むぅ…そっちお願い、『ハイエロファント』!」
『了解だ!』
「ぬおッ!?おいカムクラ、そっち止めてくれよ!」
『自分でもう少し踏ん張ってください。こっちも『片手』ではこれが限界です』
「んなこと言ったって…ああ、もう時間が…」
ピーッ!
「…やった、勝った。ブイッ…!」
『フ…我々の連携には届かなかったようだな』
「クッソー…!もうちょっとだったのになぁ~…」
『だから最初から僕一人に任せておけば良かったんです。調子に乗って『一人で2Pプレイ』などするからこうなるんですよ』
「うっせーな!お前だって割と乗り気だったじゃあねーか!」
『…記憶にありません』
「瞬間記憶能力持ってるくせに都合良いこと言ってんじゃあねーよッ!!」
「…ふぁ…眠…」
「…流石に疲れたか。もう朝から5時間ぐらいぶっ通しでス○ラトゥーンしてるからなぁ、そりゃ眠いわな」
「うん…日向君、一緒に寝よ…?」
「あいよ。…花京院、アンタも少し休めよ。いくらスタンドだからって遊んでばっかじゃあ千秋に影響するかもだからな」
『ああ、そうさせてもらおう。…まあ、千秋が寝てしまえば私も休むようなものなのだがな』
「まあそうだな。…んじゃ俺も、せっかくの休みだしひと眠りするか。千秋、お休み」
「おやすみ~…zzz…」
「…愛してるよ、千秋」
『…これが、希望が齎す『平穏』ですか。…ツマラナイ、本当にツマラナイ……だが、このツマラナイ時間が妙に心地いいのは…何故なのだろうか』
「…zzz」
『…創、貴方ならきっと…『それが人間だよ』、とでも言うんでしょうね。人間…そうか、僕も所詮、一人の『人間』だったということですか。…悪くない、気分です』
七海の部屋で仲良くゲームに熱中し、やがて疲れてベッドで眠る日向と七海。そんな緩やかで穏やかな時間を、日向の頭の片隅でカムクライズルは噛みしめる。…かつての自分ならあり得なかったであろう、そんな時間を愛おしいと思うようになった、変わりゆく自分を確かめながら。
「……」
そんな希望ヶ峰学園を、『現希望ヶ峰学園生徒会長代行』である苗木は屋上から眺めていた。
「…おっす苗木、何してんの~?」
「江ノ島さん…」
後ろから声をかけてきた江ノ島を一瞥し、苗木は学園に視線を戻して答える。
「…いや、『平和』だな…って、思ってね」
「ふ~ん…そう、これが『平和』。アンタがプッチから、DIOの因縁から…そしてこの私から取り戻した、糞つまんない『日常』だよ。…アンタは、これで満足なの?」
「…さあ、ね。いつまでもこんな時間が続くとは限らないし、どの道いつかは変わらなきゃいけない時もある。だから、君を肯定するわけじゃあないけれど、これで満足するわけには…いかないだろうね」
「……」
「…けど、少なくとも…今この瞬間を、皆の『笑顔』を守ることができた…そのことにだけは、僕は誇りを持てる。この先どんな未来が待っていようと、それがある限り…僕は後悔しないよ」
「…あっそ。ホント、どうしようもないお人よしで馬鹿なんだから…」
「『前向き』と言ってくれないかなぁ?…それが僕の、ずっと変わらない長所だと思ってるんだから」
「うぷぷ…ま、精々頑張んなよ。言っとくけど、アタシはまだ諦めた訳じゃないからね。アンタが少しでもアタシを失望させたら、アンタの『希望』がほんの少しでも陰るようなら…アタシは何時でも、何度でも『絶望』を撒き散らす。そのこと、忘れんじゃあないよ?」
「勿論だよ。…君を受け入れると決めた時から、その覚悟はできているさ。だから…君も今を、『生きる事』を楽しんでくれ。君が絶望を…この日常を壊すことをほんの少しでも躊躇ってくれているのなら、僕がやってきたことに意味があったと、胸を張れるさ」
「ヘンッ…なら、アタシを退屈させんじゃあないよ、『希望』」
「ああ、望むところさ『絶望』」
希望ヶ峰学園は、今日も平和である。
ここ最近思った3つの出来事!
1!…帽子と髪の毛が一体化しているフレンズ「知っているか、フレンズはたばこの臭いをかぐと…鼻の頭に血管が浮かぶ!」
「!?」
富や名声より愛が大切なフレンズ「嘘だろ、承太郎!?」
煙草を口の中に入れながらジュースを飲めるフレンズ「ああ、嘘だぜ。…だが、のけもの(たつき監督)は見つかったようだな」
2!…ジードのマグニフィセント回のフカイデワールドさんとの会話がジョルノとプッチやヴァニラとにダブって見えた。もし原作で出会ってたらこんな感じになってたかもなぁ…
3!…スパチュン、進撃のゲームにモノクマはどうよ?そりゃビックバンがいるからなくはないけど…(項が弱点じゃ)ないじゃん
以上、どうでもいい雑記でした