GS美神の原作後の横島が、恋姫世界に乱入します。
更新は不定期ですが、筆の進むままに書き連ねて行きます。宜しくお願い致します。
一言:何度書き直したか分かりませんが、これが精一杯です。
一節 此処から彼方へ
「右……荒野。左……荒野。後方……やっぱり、荒野。ついでに……上。雲ひとつない青い空」
見渡す限りの荒野。そこに一人ポツンと佇む青年。赤いバンダナを額に巻いたその青年の名は、横島忠夫。この度、長かった十七歳の生活に別れを告げ、やっと十八の誕生日を迎えた男である。
「……ここ何処? 確かオレは……」
呆然としている彼が、何故このような場所にいるかと言うと話は数時間前に遡る。
「神隠し………ですか?」
「そ。まぁ、二日後にその子は発見されたんだけどね」
「それって神隠しじゃなくて、ただの家出じゃないの。何でそれをオカGが調査するのよ?」
「馬鹿ね……。本当にそれだけだったら、
ここは美神除霊事務所。業界最強と名高い凄腕ゴーストスイーパー、美神令子が経営する除霊事務所である。
その事務所の一室に、三人の男女が集まって会話していた。
一人は不機嫌そうな顔でソファーに腰掛けている美女――この事務所の所長である美神令子。
二人目は、令子の母親であり、霊障に対処する公的機関――通称、オカルトGメンの日本支部責任者である美神美智恵。
そして、彼女らの対面に座している青年が、この事務所の丁稚……もとい、バイトの横島忠夫(時給550円。先日昇給)である。
彼らは昨日発生した事件について、美智恵から話を聞いている最中であった。
美智恵が語った所に拠れば、事件の概要は次のようなものである。
・男子高校生が行方不明になった。
・その生徒は、学校の敷地内にある歴史資料館で二日後に発見された。
・発見時、生徒は命に別状はなかったが、“霊力が枯渇した状態”であった。
・生徒は行方不明になっていた二日間の記憶がない。
そして、最後に美智恵はその調査の為に横島を貸して欲しいと告げる。
「横島くんを? 横島くんを貸し出すのは別にいいけど、私たちはいいの?」
「ええ。原因にはおおよその見当がついてるから、令子たちの協力は必要ないわ。ただ、うちの装備じゃこれ以上の対処が難しくてね」
「そこで、横島くんの出番って訳ね。ま、文珠があれば大抵のことは出来るしね。あ、その間の給料はそっちで出してよ? それと、当然レンタル料は貰うわよ」
「令子……」
「な、なによ! 別にいいでしょ!? その間横島くん使えないんだからっ!」
「はぁ……分かりました。レンタル料は協力費ということで事務所に支払います。ただ、横島くんの給料は雇い主である令子が出すのが当然です! うちで肩代わりして欲しいなら、横島くんをオカGに……」
「分かった! レンタル料だけでいいわよ。それで、いつからなの?」
「今からよ。……と、言う訳で横島くん行くわよ」
「……へ?」
被害者が男と言うことで、話半分に聞いていた横島は、情けない声をあげるのであった。
その後、詳細な説明をする為、美智恵は横島を連れオカルトGメンの資料室へとやって来た。
「それで、オレは何をすればいいんですか? 文珠って言っても何でも出来るって訳じゃないっすよ? パピリオたちん時みたいに、文珠の霊力以上のものには効かないですし」
「大丈夫よ。今回は“ある物”を『封』『印』するだけだから。それに、アナタが文珠を使って封印出来ないものは、それこそパピリオたちみたいな中級以上の神魔くらいよ。そうなったら、神魔に連絡して引き取って貰うわ」
「中級神魔以上って……お世辞はいいっすよ。それで、封印するものはそれっすか? 既に結界符が貼られてますけど? しかも、大量に」
「(お世辞じゃないんだけどね……)ええ。銅鏡って知っているかしら?」
「銅鏡……? あれっすよね? 三国志とかに出てくる昔の鏡」
「そう、それよ。この銅鏡が、今回アナタに封印してもらいたいものなの」
横島と美智恵の視線の先。そこには、結界符をこれでもかと貼り付けられた銅鏡があった。
その銅鏡は、男子生徒が銅鏡に触れたのを最後に記憶がないと言う証言と、資料館に保管されていた銅鏡に関する資料、更に現場に行ったオカルトGメンの職員が持ち込んだ見鬼くんが反応したことが決め手となり、今回の騒動の原因と断定。封印処置が決まったそうである。
当初、結界符で四方を囲み封印符で封印を施す予定であったが、オカルトGメンの所持している封印符では封印することができず、仕方なく結界符で囲んだままの状態で
その後、銅鏡が霊波を放出し始めた為、更に結界符を貼り付けたらしい。しかし、放出される霊波が強い為、あと数時間しか結界符が保たないといった状況だそうである。
「封印符で無理なら文珠でも無理なんじゃ……? と言うか、あと数時間しか保たないって」
「文殊なら出来る筈よ。それに、準備もしてもらうしね。それと、結界符については心配ないわ。保たなくなったら、新しい符に替えればいいだけだから。幸い結界符は沢山あるから、一時間毎に替えさせているわ。ああ、この符はさっき西条君が替えたばかりの筈だから、当分の間は気にする必要はない筈よ」
焦る横島に対し、気軽に言い放つ美智恵。短時間での結界符の貼替えなど民間のGSなら、破産へ一直線な状況なのだが、そこは公的機関。道具だけは充実しているオカルトGメンには無用の心配であった。
「私たちとしては、このまま結界符を消費する訳にもいかないから、横島くんの文珠で早急に封印したいのよ。封印さえしちゃえば、あとは何処かの神社に奉納出来るしね」
美智恵の言葉に納得した様子を見せる横島。それじゃ早速、と文珠を取り出した横島が文字を込めようとすると、美智恵からストップがかかる。
「ちょっと待って。その前にやって欲しいことがあるのよ」
「やって欲しいこと……?」
「そ。封印の為の準備ね。文珠はイメージが重要。対象物をより深く知ることで、確実に封印出来ると思うのよ。と、言う訳で……」
そう言うと、美智恵は机の上にダンボールを置く。何が入っているのだろうと首を傾げる横島だったが、そこから取り出された本の山を見ると顔を引きつらせる。机の上に積み上げられた資料の高さが三十cmに及ぶのだから、相当な読書家でもない限り当然の反応であろう。
「何すか、これ?」
「資料の山ね。ああ、そんな嫌そうな顔しないの。全部資料館にあったんだけど、銅鏡についてかなり詳しく書いてあるみたいなのよ。これを読めばきっと封印するときに役立つわ」
「読めばって……これ、全部っすか?」
「そ」
まさかと思いながら尋ねる横島であったが、美智恵の答えは肯定。崩れ落ちそうになる体をどうにか支えながら、横島は資料の一つを手に取る。
「これがエ○本だったらなぁ……これ、何語っすか?」
「中国語ね。それも、かなり昔の」
「これを読めと? 漢文の成績は他に比べればいいっすけど……それでも赤点ギリギリのオレに? しかも、レ点とかないんすけど」
「それはそうよ。中国の文献なんだし、白文に決まっているじゃない。今回は時間もないことだし、文珠で『解』『読』して読んでね。あ、勿論『封』『印』に使う文珠は残すのよ?」
そこまで言うと、美智恵は飲み物を用意するために部屋を出る。美智恵が去った後、文珠のストックを数える横島。最近は文珠を使うような仕事も無かった為、かなりのストックがあった。その数は十個。一個でも万能と言われる文珠が、十個もあれば大抵のことは出来る。
「あ~、十個もあればいける……か? でも、この量だと文珠の効果がどれくらい続くか……あ、漢文を『理』『解』しちゃえばいいじゃん! じゃ、早速……」
それでも、横島は不安そうである。漫画やエ○本以外の読書は苦手なのに加え、『解』『読』の文珠には効果時間がある。効果が続いているうちに読み終えなければ、再び発動しなければならないのだから。
因みに、『解』や『読』の一文字にしないのは、それだと単純に文字を『読』むだけで意味は分からないし、『解』の場合は効果時間が非常に短い。どちらも、英語の勉強の時に試したので間違いはない。
そして、横島が思いついた『理』『解』であるが、その効果は『解』『読』とは大きな違いがある。
『解』『読』の文珠は、翻訳ソフトと同じである。この場合は、漢文で書かれた資料を、文殊の効果が続いている間、日本語で書かれた資料に変換するのである。文珠の効果が切れると、資料は元の漢文で書かれた資料に戻る。
対して『理』『解』の文珠は、理解する対象に関する全てを知ることが出来る。そこで知ったことは文珠の効果が切れた後も、忘れることはない。但し、その効果時間は短く、知りたいことを絞らないと中途半端に理解したり、上手く知識を引き出せなかったりする可能性がある、扱いが難しい文字である。
(ええっと、漢文を『理』『解』するっと……。いや、銅鏡のこと『理』『解』した方が早くないか? 資料読まなくていいし……)
文珠の発動中に、横島が楽をしたいと雑念を抱いたこと。
『解』『読』よりも、遥かに集中を必要とする『理』『解』を横島が選択したこと。
美智恵が席を外していたこと。
このうちのどれか一つでも違えば、この後の結果は変わっていただろう。
文珠の発動と同時に崩壊する結界。
強い光を放つ銅鏡。
宙を舞う資料の数々。
それが、横島が意識を失う前に見た最後の光景であった。
以前から予告だけはしていた恋姫とGSのクロス。不定期での更新になります。
あと、こちらの更新が続く場合は、他が詰まってるときだと思ってください。基本的に息抜きに書いてるので。
そんなわけですが、宜しくお願い致します。
さて、本編ですが。恋姫の“こ”の字も見当たりません。皆様の気のせいではないです。ゴメンなさい。恋姫キャラの出番は次の次からです。
事件について。銅鏡について。
これらは拙作内設定です。
ご意見、ご感想お待ちしております。
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