ジョジョの奇妙な冒険、第?部『マジカル・オーシャン』   作:piguzam]

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最近毎日更新してるけど、手抜いて書いてるからまだ逝ける。

……何時落ちるかわからないけどwww


ブッ殺すわッ!!それ以上足を広げたらブッ殺してや(ry

 

カポーン

 

「ふい~……気持ち良いなぁ~」

 

ジムでの特訓が終わり、俺は鮫島さんに案内された男子浴場とやらに浸かっている。

これまた温泉そのものじゃないのか?と思える程豪華な設備だ。

そのだだっ広い空間で一人寂しく汗を流し、浴槽……というかデカイ湯船でゆったりとしてる。

 

「とりあえずアイツ等、スタンドのコントロールは完璧に出来る様になったし、明日LESSON3を教えたら何とか普通に使えるだろ……後は、2人次第ってか」

 

1人の空間でそうボヤきながら、俺は肩まで身体を湯船に沈めてゆったりする。

さすがにここまで早く仕上がるなんて予想もしてなかったっつうの。

 

『――ッ!?』

 

『――ッ!!』

 

「ん?……何だ?」

 

と、あの2人の底なしともいえる才能、というか精神力の強さに呆れていた俺の耳にサウナの中から人の声が聞こえてくる。

ありゃ?もしかして先客が居たの……。

 

ガチャッ

 

「フゥ~……アリサちゃんのお家ってサウナがあって良いよね~。ウチもお姉ちゃんが家のお風呂に造ろうかなって言ってたんだけ……」

 

「へぇ~そうなの……ってどうしたのよ、すず……か?……」

 

「…………ん?」

 

俺より先に入ってきてた人に挨拶しとこうと思って目をやれば、何故か出て来たのは髪をタオルで湯に浸けない様に纏め上げ、ハンドタオル一枚で身体を申し訳程度に隠してるアリサとすずかだった。

 

 

 

…………あれ?

 

 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

3人揃って何も言わず、只硬直してお互いにポカンとした顔を晒す俺達。

すずか達の思ってる事は分からんが、言える事は唯一つ。

何でここに居る?その歳で痴女の気でもあんのか?

そう思っていれば、アリサとすずかの目が渦巻きの様にグルグルと回りだし、顔色が下からグングンと真っ赤な色合いに染まりだすではないか。

あーヤバイ、これはぜってえに……。

 

「「――キャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!?」」

 

叫ばれるパターンだな。

もう耳が痛くなるほどのハウリングボイスで叫びながら、すずかは自分の身体を抱きしめてその場に座り込み、アリサはストーン・フリーを呼び出して俺に殴りかかってくるが……。

 

「ストーン・フリーの射程距離は2メートルだって教えただろーが?」

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァアッ!!』

 

しかもオラオラですか?全部俺に叩き込む気だったんですかアリサさんよ?

俺達の距離は4メートル、どう考えても射程距離外だっての。

とりあえず何時殴りかかられても良いように体ごとアリサ達の向きに振り返る。

 

「な、なななな何でアンタがここに居るのよぉおおッ!!?イヤッ!!そんな事よりにコッチ見るなこのバカぁああああああああああッ!!!?」

 

「あ、ああ、あっち向いててッ!!?お願いだからッ!!?」

 

そして俺が2人の方に振り向くと、2人は更に金切り声を上げて俺を非難する。

おかしい、コレって俺が悪いのか?

俺はツルペタに興味は無ぇし、小学生で反応なんざしねぇよ。

そうは思いつつも、涙目で俺を睨みつけてくるアリサの視線が面倒なので、俺は2人に従って反対側に向き直り、再び湯船に身体を落とした。

 

「……っていうか、何でお前等ココに居るんだ?ココって男湯なんだろ?」

 

風呂の入り口のトコにそう書いてあったしな。

 

「えッ!?ウソッ!?」

 

「こ、ここって男湯ッ!?ノエルが間違えちゃったのッ!?」

 

と、俺の呟きを聞いて心底驚くお二人さん。

ノエルさんに連れられてここに来た様だが、普通そんな事間違えたりするか?

そんなポカやる様な人には見えなかったけどな。

 

「た、大変だよアリサちゃんッ!?ここが男湯なら、他にも男の人が沢山ッ!?」

 

「でも裸で女湯に行く訳にもいかないでしょうがッ!!着替えは鮫島が持ってくるまで無いし……」

 

「あぁ、その鮫島さんが言ってたけど、俺の後は誰も来ないって言ってたぞ?」

 

他の人はもう全員入った後らしいからな。

背中越しで表情は分からねぇけど、俺の言葉に安堵して大きく息を吐く2人。

まぁ女の子が男の前で裸なんて見せたくねぇか……俺もさっさと出よう。

 

「とりあえず、俺はもう身体温まったし、出るからお前等が使えよ。二人共そのままじゃ寒いだろ?」

 

湯船にタオルを浸けるのはマナー違反だが、とりあえず下半身を隠すために仕方無くタオルを沈めてお湯の中で腰に巻き付ける。

 

「ちょ、ちょっと待ってッ!?」

 

「い、いいい今湯船の中に入るから、まだあっち向いてなさいッ!!振り向いたらブッ潰すわよッ!?」

 

何処をでしょうか?

スタンドがあるから冗談ともとれねぇ恐ろしい事を平然と言ってのけるアリサ。

そんなとこには痺れねぇし憧れもしねぇよ。

とはいえ、自分から何かを潰される趣味がある筈も無く、俺は溜息を吐きながらアリサの指示に従って待ち、それを確認したアリサとすずかは湯船に恐る恐るといった具合で浸かっていく。

 

「……うぅ」

 

「見られちゃった……はぅ」

 

何やら背中越しに哀愁に染まった声が聞こえてくるんだが……。

 

「あー、その、なんだ……あんま気にすんな。俺は気にしねぇ」

 

「気にするよッ!?男の子に見られちゃったんだよッ!?」

 

「気にするに決まってるでしょこのバカッ!!乙女が裸見られて何とも思わない筈ないわよッ!!」

 

乙女て。

もはやなんと言おうと二人は気落ちしたままだろう……面倒くせ。

とりあえずここから出てサッサと夕食に向かおう。

 

「分かった分かった。とりあえず俺は先に出るから、風邪引かねー様にしとけ」

 

それだけ言って俺は風呂から上がり、服を着替えて脱衣所から外へ出る。

……何か脱衣所の前でニコニコしてるノエルさんと鮫島さんが居るけど、関わるのもメンドくせえからスルーして、俺は風呂場を後にした。

そんでまぁ夕食の時間になった訳だが……いやはや、スゲエ豪華だったよ。

まず執事とメイドは一緒には食事しないとかで、ノエルさんと鮫島さんが俺達の給仕に回った訳だけど、そうすると食事をするのは必然的に俺とアリサ達、そしてデビットさんとマリアさんの5人って事になる。

たったそれだけの人数だってのに、出てくる料理の豪勢さと言ったら、本当一生に一度食えるか食えないかってレベルの食事ばっかりだった。

しかも一つの食事がでる度に、作ったであろうシェフの人が俺に向かって頭下げながら「お口に合いましたか?」なんて聞いてくるんだもんなぁ。

ぶっちゃけ凄く美味かったです。

でも、庶民の味が恋しかったです、ごめんなさい。

しかも面倒くせえ事に……。

 

「うぅ~~……」

 

「……はぅ」

 

「……何だよ?」

 

食事中だってのに、俺の向かい側の席にすわってるアリサとすずかが顔を真っ赤にしながら唸ったり落ち込んだりしつつチラチラと俺を見てくる。

その視線が気になっていまいち食事に集中出来ないんだ。

だから俺は普通に質問したんだが、アリサは俺の声に目尻を吊り上げてくる。

 

「別に……何でもないわよ」

 

絶対何でもなくは無いと思うが……大方あの風呂の一件を引き摺ってんだろう。

でも一言言わせて頂くなら、俺は別に何もしてはいない。

それでもああいう視線を送ってくるって事は、まぁ怒りのやり場が無いみてーだ。

しかし俺にはどうしようも無い……って事で半ば二人から送られてくる講義の視線を無視しながら食事にありつくしかなかった俺であった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

さて、食事も済んで、今俺はすずかとアリサの2人と一緒にアリサの部屋に居る。

もうすぐ良い子は眠る時間なので、俺達は3人ともパジャマに身を包んでる訳なんだが……。

 

「「……」」

 

どうにも風呂場でのダメージがデカ過ぎるのか、二人共顔を真っ赤にしたまま俺と目も合わせようとしない。

その所為で部屋の中にはシーンとした静寂に包まれてる。

この状況が好ましくねぇのは判ってるし、原因が俺だってのも判ってはいるんだ。

でも、俺からしたら別に見たくて見た訳じゃねぇんだが……しょうがねぇか。

 

「……なぁ二人共、俺が悪かった。だから機嫌直せって」

 

本当なら、文句は2人を彼処に放り込んだノエルさんに言ってくれと言いたかったが、このままじゃ明日まで引っ張りかねない。

だからまぁ、俺から頭を下げる事にした。

明日は予定通りLESSON3を教えるってのに、2人がこの調子じゃ進まねぇからな。

そして俺が頭を下げたのを見た2人は何故か居心地悪そうな表情を見せる。

 

「……別に、アンタに対して怒ってる訳じゃ無いわよ」

 

「うん。定明君は何も悪くないもん」

 

そして2人が呟いた言葉は、俺は別に悪く無いという言葉だ。

 

「いや、まぁそうなんだけどよ……」

 

ここまでスッパリと言われてしまうとコチラも何も言う事が出来ない。

かといって2人がこのままじゃ明日俺が困る。

さてどうしたもんか……俺が風呂場の出来事を忘れりゃ良い話か?

 

「ならよ。俺がさっき風呂場で見た記憶を消すから、それで勘弁してくれ」

 

そう考えた俺は2人にそう提案する。

 

「え?き、記憶を消すって……スタンドで?」

 

「あぁ、俺のヘブンズ・ドアーを使えば、あの時見た俺の記憶だけをピンポイントで消せるから、ソレで何とか機嫌直せ。明日は朝イチでLESSON3をやるから、ちゃんと集中出来ないとお前等に練習をさせられないんだ」

 

俺の言葉に疑問の声を上げたすずかに言葉を返しながら、俺は明日やるLESSONの内容を頭の中で思い浮かべる。

明日やらなきゃいけないのは、2人のスタンドが持ってる能力を使う事だ。

この能力の把握をしておけば、後の応用は全て2人のイメージ次第。

スパイス・ガールはちょっと難しいだろうけど、そのかわりパワーとスピードにおいてはアリサのストーン・フリーを上回ってる。

この2つが上回ってる事と、アリサのストーン・フリーの応用力の高さのバランスは良い感じに取れてるし、どっちかを贔屓したワケじゃねぇ。

って、話が逸れちまったな。

 

「兎に角、さっき見た事はちゃんと忘れるから、明日はキチンと練習に身を入れて欲しいんだよ。それで良いな?」

 

確認するように2人に声を掛けながら、俺はヘブンズ・ドアーを呼び……。

 

「ち、ちょっと待ちなさいッ!!アンタは何も思わないのッ!?」

 

出そうとしたら、何故かアリサによく解らねえ事を聞かれた。

無論、アリサの言いたい事が分からず、俺は首を傾げる。

 

「何も?……何もって何だよ?」

 

「だ、だからその……ア、アタシ達の……」

 

「は、はだ……裸を見て……さ、定明君は、何も思わないのかなー?って……」

 

「ハァ?」

 

俺はアリサとすずかの言葉を聞いて、素っ頓狂な声を挙げてしまう。

既に2人の顔色は赤を通り越して深紅色に染まり、目尻にちょっと涙が出てる。

って何言ってんだコイツ等?

 

「別に何も思わねぇけど……」

 

意味が分からずそう返せば、アリサの目の吊り上がりが更に増す。

 

「何でよッ!?女の子のは、はだ……裸を見て、何で何も思わないのよッ!?」

 

「そ、そうだよッ!!それってちょっとおかしいと思うッ!!」

 

「いや、別におかしくは無えだろ?確かに入ってきた時はビビッたし、見ちまって悪かったなーとは思ったけどよ、それぐれえだぞ?」

 

「うぅ~~ッ!!!?」

 

「おかしい。絶対おかしいわコイツ……明らかに異常よ」

 

俺の返答に「納得いかない」って表情を見せながら唸り声を挙げるすずか。

そしてブツブツと呟きながら俺に怒りの目を向けるアリサ。

何で俺が異常者認定受けなきゃいけねーんでしょうか?

そんな2人を尻目に、俺は後ろ髪をポリポリと掻いて目を細めてしまう。

 

 

 

「じゃあ聞くけどよ?お前等って俺の事好きなの?」

 

 

 

確かに俺に惚れてるってなら何も思わない事に怒るのは判る。

でもそんな雰囲気全然無かったからな?完璧ノエルさんのやった偶然だし。

そんな事を考えながら2人を見ていると、2人は俺の言った言葉にポカンとした顔を見せてきて……。

 

 

 

「ふ、ふぇぇえええええええええッ!!?す、すすすッ!!?」

 

「ば、ばばば、馬鹿じゃないのアンタッ!?べべべべ別にアンタの事なんかす、すぅッ!?す、好きでもないんだからッ!!変な勘違いすんなッ!?」

 

 

 

次の瞬間、盛大に爆発した。

しかもアリサに至っては顔を真っ赤にして怒りを顕にしながら、枕で俺をバフバフと殴ってくるってオマケツキで、だ。

まぁこんな状況で面と向かって聞く言葉じゃねぇのは重々承知してっけどな。

 

「なら別に俺がお前等の裸見て何も思わなくたって良いだろーが?只、俺はお前等が嫌な気分になるだろーと思って、自分の記憶を消すって言ってんだぜ?」

 

「そ、そんなの要らない気遣いよッ!!別に記憶なんて消さなくても、明日はちゃんとやるからッ!!アンタもその話題蒸し返さないでッ!!」

 

「う、うんッ!?別にそんな気を使ってくれなくても大丈夫だよッ!?」

 

「ホントか?……まぁ、なら良いけどよ」

 

とりあえずは別に記憶を消さなくても良いらしい、この話しはコレでお終いだ。

長々と引っ張るのも面倒くせえからな。

そこで話を切り上げて、俺は寝る準備の為に出していた荷物を片付け始める。

 

(うぅ~ッ!?私のバカバカバカッ!!あそこで定明君にちゃんと……す、好きだよって言えば良かったのにぃ~……はぁ~あ)

 

(い、行き成りにも程があるのよアイツはッ!?何であんな簡単に好きなのかって面と向かって聞いてこれるワケッ!?羞恥心ってモンが無いんじゃないのッ!?)

 

そして荷物を片付けて2人が座っているソファーに戻れば、今度は恨みがましい視線をぶつけられる。

しかしソレに取り合ってたら寝る時間が減っちまうからスルーした。

 

「とりあえず、今日はもう寝ようや。明日もあるし……ってそういや、俺は何処で寝たら良いんだ?」

 

思い出した様に重要な事をアリサに尋ねてみる。

よく考えたらこの部屋にはベットが一つしか無いし……まさか?

何か嫌な予感が頭を過りアリサに視線を向ければ、彼女は速効で視線を逸らす。

更にすずかに視線を向ければ、彼女は顔を真っ赤にして俯いてしまう。

 

「……お……同じ、ベットよ……嫌なの?」

 

……どうやら俺は、この2人と一緒に寝なくてはいけないらしい。

そりゃねぇぜ、神様仏様、アリサ様。

まぁ覚悟を決めて同じベットで寝ましたがね?

えぇ、俺の予想通り寝付いた2人が俺を抱きまくらの様にしてしがみついてきたよ。

お陰で熱くて寝苦しい夜になっちまった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「おはよう、定明君。昨夜は良く眠れたかね?」

 

現在の時刻は早朝の7時。

昨日と同じ様に離れにあるジムに来ていた俺は現れたデビットさんに挨拶された。

俺も挨拶に従って向き直り、デビットさんに一礼する。

 

「おはようございます……あんまり寝れなかったッスね」

 

だって熱かったからなぁ……しかも逃げようとしたらアイツ等唸るし。

俺の返答が予想通りだったのか、デビットさんは苦笑いしてた。

 

「本当なら客間を貸すべきだったんだろうが、アリサから客間は要らないと言われてね。娘の我侭に付き合わせてしまって、申し訳ない」

 

「いや、まぁ良いッスよ。俺1人の為に部屋貸してもらうのもどうかと思うんで」

 

実際子供の為に部屋一つ貸してくれる家は普通ねぇよな。

そう答えながら、俺は屈伸したり伸びをしたりして身体を解す。

 

「そうか……所で、アリサとすずかちゃんは一緒じゃ無いのかね?」

 

「あの2人なら、まだ着替えてますよ」

 

朝方の話だが、俺は2人よりも先に目が醒めてしまったんでザ・ハンドを使って自分を瞬間移動させて、ザ・抱枕状態から抜けだしたのだ。

そんで前の晩にアリサから朝は鮫島さんが起こしにくると聞いてた俺はソファーに座って、待っていたってワケ。

つっても、ホンの5分くらいで鮫島さんが来たからそこまで暇じゃなかった。

鮫島さんのモーニングコールで起きたすずかとアリサに、俺はまたあのジムに居るから着替えたら来いとだけ伝え一応鮫島さんにも覚えてもらってからココに来た。

 

「ふむ。唐突なんだが、アリサも君に会ってから更に生き生きとしてるよ……定明君、これからもアリサの事をよろしく頼む。叶うなら、君がアリサの居る聖祥に転校して欲しいとは思ってるんだが……」

 

「いやいや、それは無理ッスよ?俺ん家そこまで金ねーし、俺も今の学校のダチが大事ッスから」

 

「ハハッ。判っているとも。只そうなってくれればなという、私の思いだよ」

 

そんな思いを小学生の俺に話さないで欲しいッス。

そんな風に男二人で会話していると、鮫島さんとノエルさんを伴ってすずかとアリサが昨日と同じ様に体操服姿で現れた。

 

「ごめんね定明君、待ったかな?」

 

「昨日よりは早く来たつもり……って、何よ?その『ピンポン球』は?」

 

2人は俺の近くまで来たが、俺の側に置かれたネット状の箱の中に入ってる大量の『ピンポン球』を見て首を傾げている。

まぁコレはLESSON3に入る前に使うモンだから、ココに来る前に部屋の側で控えていた鮫島さんに頼んで用意してもらったモノだ。

 

「おう、二人共良く眠れたか?」

 

眠れてなかったら俺の寝苦しさを返せと言いたかったが、2人は俺の質問に笑顔を浮かべて口を開く。

 

「うん。昨日いっぱい運動したから、良く寝れたよ」

 

「アタシも良く寝れたわ。快眠で目覚めもバッチリって感じ」

 

「そりゃ良かった……今日は昨日に比べるとやる事がそこそこ多いから、まずは軽く柔軟運動して身体を解しときな」

 

俺の最初の指示を聞いたアリサとすずかは素直に答え、さっそくノエルさんと鮫島さんに手伝ってもらいながら柔軟運動を開始した。

俺はそれを横目で確認しつつ、今日の課題をこなした後、家に帰ってから何をしようかと考えていたりする。

取り敢えずは学校の宿題して、後は……。

 

「定明、終わったわよ」

 

そう考えていると、アリサが元気よく話しかけてきたのでそちらを振り向く。

すずかも柔軟が終わったようで、2人並んで俺の前に立っていた。

 

「ん。そんじゃ、昨日言ったLESSON3に入る前に、まずはおさらいだ。二人共スタンドを出してくれ」

 

2人にスタンドを呼び出す様に言うと、2人は直ぐに各々のスタンドを呼び出す。

それを見届けた俺も同じ様にスタープラチナを呼び出した。

 

「さて、まずは今からやる事だけどよ、昨日とは正反対で俺が攻撃するからすずか達は俺の攻撃を防御するなり避けるなりしてくれ」

 

「反撃はしても良いのかしら?」

 

「それは構わねーけど、あくまでこの訓練の目的はお前等がスタンドの防御になれる事だからな?これをこなせば、例えいきなり襲い掛かられたとしても対応出来る様になるだろーよ。昨日の段階で攻撃は良く出来てたからな」

 

「うん、分かったよ」

 

「りょーかい。キッチリ守りきってやるわ」

 

「うし。じゃ、行くぜ?」

 

一応前置きはしながら2人が準備OKになった段階で、俺はスタープラチナを連れたまま2人に走って近づく。

ソレを見た2人はまず射程距離の間隔を縮められないように後ろへと引いた。

2メートルという短い区間を、ギリギリの状態でキープしてる。

多分俺の攻撃を釣りだして、その隙を狙おうとしてるんだろう。

それ自体は悪くない戦法なんだが、後ろを気にしながら下がる2人では、俺の走るスピードの方が断然早いからな。

 

『オラァッ!!』

 

案の定、その距離は直ぐに縮まり、俺はまずアリサのストーン・フリーに一発左のパンチを繰り出した。

それを見た瞬間、アリサはストーン・フリーの腕を交差して顔面の防御を固める。

だから、俺はその防御してる腕の下。

つまり肘部分を狙って、フックを打ち込む。

 

バァンッ!!

 

「きゃッ!?」

 

そうする事で、ストーン・フリーの防御を上向きにカチ上げた瞬間、スタープラチナの開いた右手を差し伸ばし……。

 

パチンッ

 

「あいたッ……」

 

軽めのデコピンをお見舞いしてやった。

その軽い痛みのショックで混乱したのか、ストーン・フリーの存在が掻き消える。

アリサはというと、デコピンされた額を抑えて、床に座った状態で俺を睨んでた。

 

「ほい。まずは一発だ「隙ありッ!!」ってねーよ」

 

俺がアリサを倒した瞬間を狙って、俺の後ろからすずかがスパイス・ガールの右ストレートをお見舞いしてきた。

俺はその場で直ぐ様回転して向き直り、スタープラチナにパンチを受け止めさせて力で固定する。

 

グッグッ

 

「あ、あれッ!?外れないッ!?」

 

そうする事で、すずかはスパイス・ガールの拳を引き戻そうと躍起になり、本体の防御が完全に疎かになってしまう。

まぁまだ操ってそんなに日が経ってねぇし、何より2人は戦い自体が初めて。

普通に生きてきた女の子にしては大分筋が良いけどな。

そんな事を考えながら俺は苦笑し、スパイス・ガールの握られた拳を外そうと奮闘するすずかの前に俺自身が移動、すずかの直ぐ側に立った。

 

「えいッ!!えいッ!!ど、どうしよ「お~い?」……え?」

 

頑張って手を外させようと奮闘するすずかの側に立って声をかけてやると、すずかはキョトンとした顔で振り向いてきた。

オイオイ、これは昨日すずか自身がやった戦法だろうに。

驚きでフリーズしてるすずかに、俺は苦笑したまま俺の手ですずかに軽くデコピンを打ち込んでやる。

 

パチンッ

 

「あうッ!?」

 

すずかはアリサと同じ様に額を抑えて後ずさってしまい、スパイス・ガールもその存在を消してしまう。

 

「ほい。これで2人に一発ずつだな?」

 

「あうぅ~……参りました」

 

「ア、アンタねぇ……ちょっとは手加減しなさいよ」

 

2人を見渡しながら言うと、床に座り込んでるアリサが俺に恨みがましい視線を送りながらそんな事を言ってくる。

あれ?ひょっとして俺、スタープラチナで撃ったデコピンの力加減間違えたか?

 

「悪い、アリサ。痛かったか?ちゃんと力加減はした筈なんだが……」

 

ちょっとアリサの態度がおかしいと思った俺はしゃがみ込んでアリサの両手に手を伸ばして掴んだ。

 

「へ?ちょっ!?」

 

何やら騒いでるアリサを無視して手を額からどかし、俺はソコを注視する。

手の平に抑えられてた額は別に赤くも無く、力加減は間違えていない。

もしかして衝撃が中に通ったのか?

スタープラチナのパワーは半端じゃねぇから有り得ない事じゃねぇけど……。

 

「だ、大丈夫よッ!!私が言ってるのは、もう少し手を抜きなさいって事ッ!!」

 

「あ?何だそっちか……てっきりアリサに怪我させちまったかと思ったぜ」

 

焦って損したな。

 

「オ、オデコは何とも無いわ。アンタがちゃんと手加減してくれたから……し、心配してくれて……その…………アリガト」

 

「いや、怪我がねぇんなら別に良い」

 

兎に角心配は無い様だったので、俺はアリサの手を引いて立たせた。

すずかの方は座り込むまではいってなかったので、俺達の事を待ってた。

 

「むぅ……」

 

何か不満そうな顔で、ってお前もか。

2人揃って不平不満が多いなと感じつつも、2人の前に立って講義を再開した。

 

「とりあえず、今の中で何が駄目だったかっていう事だけど、まずアリサ。お前はあの時、俺の攻撃を防御できたと思って少し安心したろ?」

 

「……そうね。アンタより早くガードに入れたから大丈夫だって思ったわね」

 

「そりゃ悪手だ。スタンドはイメージ次第で動きを変えられる。どんな事でも絶対に大丈夫なんてのはねぇ。ゲームだってそういう無敵武器はあんまりねぇだろ?」

 

「あぁ、確かに。その言い方なら判るわ」

 

「そう。スタンドは確かに強い存在だけど、無敵って訳じゃねぇ。だからまずコレは対人戦の練習だと思ったら良いぞ?相手が繰り出した攻撃に合わせて撃破、なんてのも可能だからよ」

 

「それって、昨日アンタがやってたヤツの事ね?アタシとすずかの攻撃を同じ攻撃で跳ね返してた」

 

今の言葉で昨日の光景が浮かんできたんだろう。

スタンドのラッシュを同じラッシュで弾き返す、謂わばラッシュの速さ比べ。

これは対人どころか銃弾とか飛来物でも使えるからな。

 

「あぁ。基本的にスタンドの攻撃はあのラッシュを使え。そうすりゃ大抵の攻撃は相殺出来る。只ラッシュに色々混ぜ込むっていうオリジナリティは必要だぜ?」

 

「分かったわ。やってみる」

 

「良し……次にすずか」

 

「うん。私は……やっぱり、掴まれた手に躍起になっちゃった事かな?」

 

出来の良い生徒は先生好きです。

振り返って俺のアドバイスを待っていたすずかに話し掛けると、すずかは自分の問題点をキチッと理解してた。

 

「そう。あそこで手のみに意識がいったのがマズかったな。あの場合はキックで追加攻撃を加えたり、片手でラッシュしてみるのも良い。外の攻撃で手を外さないとならねぇ状況を作ってやればいいさ」

 

「うん。頑張ってみるよ」

 

俺のアドバイスを聞いたすずかはニッコリと笑いながら胸の前で手にムンっと力を入れてやる気をアピールしてくる。

 

「まぁ、すずかは運動もかなり出来るし、直ぐにスタンドの動きをマスターするだろうよ。お前はホントにスタンドとの相性が良いと思うぜ?」

 

「そ、そうかな?エヘヘ……」

 

かなり高い評価を聞いたすずかは照れ笑いを浮かべて、指と指をチョコチョコさせながら恥ずかしがっていた。

そんな感じで照れているすずかに笑顔を見せつつ、俺は再びスター・プラチナを呼び出して2人から少し離れる。

 

「最後に2人に共通して言えるのは、ちょっと別の事に意識が行くとスタンドを解除しちまうって事だ。コレは地道に回数を重ねねぇと慣れないから、普段からスタンドの操作に慣れていく様にしといてくれ……そんじゃあ二回目、始めるぞ?」

 

2人が再びスタンドを呼び出して俺に頷いたのを確認。

俺達はまた距離を詰めて、スタンドの防御訓練を行った。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「……フム……皆様、10分が経ちましたぞ」

 

ストップウォッチを持って時間を計ってくれてた鮫島さんの声を聞いて、俺達は一旦訓練をストップさせる。

第一段階の防御訓練、これにて終了だ。

 

「もう10分経ったっていうのッ!?くぅ~ッ!!もう少し時間があれば……」

 

「結構良い所まで行けたんだけどなぁ……やっぱり定明君には敵わないや」

 

「お前等マジ容赦ねぇな。何発か貰いそうになるとは思わなかったよマジで」

 

ホントにコイツ等の成長速度どうなってんの?

俺が5年がかりでモノにしたスタンドの攻撃をホンの10分足らずで食らいつくとかおかしくね?アレか、成長性Aなのか?

今回も時は止めずに相手出来たけど……これ続けてたら本気でヤバかったかも。

まぁそこから大体30分の休憩を挟んで、次はピンポン球を使った練習だ。

既に休憩して気力もMAXな2人の前に立ち、俺はピンポン球を一個取り出す。

 

「良し。じゃあ次だけど、次はこのピンポン球を使うからな。コレを銃の弾丸に見立てて……」

 

立ったまま俺の説明を聞いている2人に声を掛けつつ、俺はピンポン球をスタープラチナに持たせて、手の中で指を撃鉄代わりに弾かせる。

 

ドギュンッ!!

 

そうする事でピンポン球は結構速いスピードで撃ち出され部屋の壁にブチ当たる。

 

「まずこのピンポン球を弾いて防御する事と、その次は実際にピンポン球を撃ってもらうからな」

 

2人が問題無いと頷いたので訓練を開始したが、コレも先の防御訓練の成果か、全てキッチリ防御を成功させ、朝食を食べてからスムーズに次の訓練に入れた。

 

 

 

 

 

まぁ入れた事は入れたんだが……。

 

 

 

 

 

ドギュウンッ!!

 

撃ち出されたピンポンは明後日の方角へと向かい、設置された的から外れる。

 

「あぁ、もうッ!!何で真っ直ぐに飛ばないのよッ!!?」

 

「うぅ……これ難しいなぁ。まだ一発も当たらないよ」

 

思ったようにいかずブチ切れるアリサの横で、すずかが嘆く声が聞こえる。

所変わって場所は外。

バニングス家の敷地内にある大きな庭。

そこに設置されたアーチェリー用の的に向かってピンポンを当てるって練習な訳だけども、まだアリサ達は一発も当てていない。

ピンポン球ってのは軽くて丸いので、風の影響とかをモロに受けやすい。

だから真っ直ぐ飛ばすには難しい力加減が必要だ。

間違いなくベアリング弾より難易度が高い。

それもキチッと説明しておいた筈なのに、まだ一発も当ててないトコを見ると、まだ二人共スタンドの力加減が上手く出来てねぇんだろう。

そんな2人の様子を、俺は欠伸混じりに見ている。

 

「……二人共、後10分で今日の練習は終わりだかんな」

 

怒ったり落ち込んだりと対照的な2人にそう言って、俺は練習風景を眺める。

そう、本来なら今日の内にLESSON3まで行く予定だったんだが、今日はアリサ達に予定が入ってしまったんだ。

朝食を食ってる時にあのなのはって子から連絡があって、今日皆で遊ぼうとお誘いがあったらしい。

そのお誘いを2人が受けたので、今日の練習はここまでにしたんだ。

まぁ俺も早く帰れるから別に良いんだけど。

 

「とりあえず、また今度練習見てやっから、今日はお開きにしたらどうだ?俺も家に帰って宿題せにゃいけねーしよ」

 

ピタッ

 

そう言うと、何故か落ち込んでたすずかと怒ってたアリサが動きを止め、俺の方に振り返って来た。

 

「え?定明君は私達と来ないの?」

 

「何で一緒に行くって話になってんだよ?お誘い受けたのはオメエ等だろーが」

 

寧ろ俺は帰る気マンマンだったりするんですけど?

さすがに今日は家でゆっくりして……。

 

バチンッ。

 

と、俺が帰ってからのプランを考えていたら、今までとは違ってピンポン球が当たる音が聞こえてきた。

その音の鳴った方に視線を向けると、アリサとすずかが同時にピンポン球を発射して、同時に的に当てているではないか。

しかも二人共ド真ん中。

 

「……ねぇ、定明?賭けしましょうよ?」

 

「は?……賭けって何だ?」

 

俺に背中を向けたまま、突如俺に賭けを持ち出す意図が分からなくて、俺はアリサに問い返してしまう。

 

「私とアリサちゃんが、連続でピンポン球を真ん中の赤いゾーンに当てたら、私達と一緒になのはちゃんと遊ぶっていうのはどうかな?」

 

そして、俺の問いに答えたのは言い出したアリサではなく、さっきまでとは表情が打って変わってニッコリと良い笑顔を浮かべてるすずかだった。

え?何その賭け?そして俺が勝った場合の支払いが何も言われてないんですが?

そう声に出そうとする前に、これまた良い笑顔のアリサが俺に向かって振り返ってくる。

 

「そうね。じゃあ賭けは何球にする?ン?10球?100球?」

 

オイちょっと待っ……。

 

 

 

 

 

「「違うわね(よ)1000球よ(だよ)」」

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァアアアッ!!』

 

『WAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAANNABEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!』

 

 

 

 

 

俺の静止する声を無視して発射される大量のピンポン球。

そして賭けの結果は――。

 

 

 

 

 

「じゃあ鮫島ッ!!行き先は翠屋ッ!!よろしくねッ!!」

 

「ホッホ。畏まりました。アリサお嬢様」

 

「楽しみだね、定明君♪」

 

「お前等俺を家に帰す気無いだろ?」

 

 

 

 

 

見事に俺の立てた一日のプランがブッ潰されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 






誰かタイトルに良い案を下ちゃいo(#゜Д゜)_‐=o)`Д゜)・;ンナモンネーヨ!

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