ジョジョの奇妙な冒険、第?部『マジカル・オーシャン』   作:piguzam]

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タ~イ~ト~ル~(´Д⊂ボヘェ


『成長』しろ、お前等!『成長』しなきゃあお前達は『栄光』を掴めね(ry

現在の状況、ヘビーです。

アリサから何も聞いてないのに敢行されたお泊り会。

その理由は両親にスタンドの存在がバレてしまったらしいが……。

 

「……んで?何で親父さんとお袋さんにスタンドの事がバレてんだよ?」

 

理不尽に怒鳴り散らさず、なるべく状況を聞きやすくするために、俺はアリサにゆったりとした口調で問い質す。

さすがにこんな事態はまるっきり予想外だ。

チラッとソファーに座るデビットさんを見れば、さっきまでの笑顔じゃなくかなり真剣な表情で俺達を見ていた。

 

「そ、それは……実は――」

 

バンッ!!

 

と、俺の質問を聞いたアリサが戸惑いながらも話し出そうとした瞬間、部屋の扉が大きな音を立てて豪快に開かれる。

その音に何事かと思って扉へと視線を向ければ……。

 

「ごめんなさい、遅くなっちゃ……まぁまぁ!?貴方が定明君かしらッ!?昨日はウチの娘を守ってくれてありがとう~ッ!!」

 

何やらテンションの高い妙齢の金髪女性が扉の前で仁王立ちしていた。

しかも部屋に入って俺を見つけた瞬間満面の笑みを浮かべながら話しかけてくる。

ってこの人、今『娘』って……やっぱ……。

 

「ママッ!!お帰りなさいッ!!」

 

「お帰りマリア……だが、大切なお客様の前なんだから、もう少し静かに入ってきなさい」

 

「ホッホ、お帰りなさいませ、奥様」

 

「あら、ただいまアリサ♪それとアナタ?そんな堅苦しくしなくても良いじゃないいですか。アリサを守ってくれた彼にお礼を言うだけなんですから」

 

アリサの母親って訳だ。

突如豪快に登場したアリサの母親に、アリサは嬉しそうな顔でおかえりと言う。

鮫島さんは一礼し、デビットさんは少々呆れていた。

何ともまぁ、豪快な御人で。

そう思ってアリサの母親を見てると、彼女は満面の笑みを浮かべたまま俺に近づいてきて、俺に視線を向けてくる。

 

「ごめんなさいね定明君。大切な娘を助けてくれた人に会えると思うと凄く興奮しちゃって……私がアリサの母親のマリア・バニングスです。気軽にお姉さんと呼んで」

 

気軽過ぎだろ。

 

「あー……デビットさんにも言いましたけど、あんまその件は気にしないで下さい……俺は城戸定明ッス。よろしくお願いします」

 

「ハァイ、よろしくね」

 

俺の疲れきった挨拶にも動じず、マリアさんは微笑みを浮かべて応対する。

なんつうか、嵐の様な人だな……アリサの母親ってのも頷けちまう。

って今はそれどころじゃねぇ、アリサの話を聞かなきゃな。

完璧に勢いを削がれたが、俺は気持ちを入れ替えて再びアリサに視線を戻す。

 

「はぁ……兎に角、昨日何があったか話してみろよ?」

 

「……実は――」

 

マリアさんが席に着いて俺達をニコニコしながら見てる中、俺はアリサに昨日の出来事を話してもらう……。

 

 

 

事件があったのは昨日の夜、アリサがすずかの家から自宅に帰って、両親に誘拐事件の事を説明するために忍さんに同行してもらい、デビットさんとマリアさん、そして鮫島さんを含めたバニングス家の重鎮に誘拐事件の出来事、そして忍さん達夜の一族の事を話し、アリサ自身が自分の意志で契約を結びたいと思った事、そしてその確認を両親に取るために話していた時だそうだ。

ちなみに俺は昨日自分の両親は俺のスタンドの事とか知らないから何も言わなくて良いと忍さんに言っておいたので、母ちゃん達は契約していない。

 

 

 

話が逸れたが、結果だけ言えばデビットさんにマリアさん、そして鮫島さんもアリサの意志を尊重し、自分でしたいようにすればいいと言ってくれたらしい。

更にデビットさん達は今までの付き合いも含めて、自分達も契約を交わす事を約束してくれた。

その話し事態は滞り無く終わったそうだが、ここからが問題。

昨日誘拐され、何時もより神経が過敏になっていたアリサは、部屋の窓枠に止まって部屋の中を凝視していたカラスと目があってしまい、一種のパニックを起こしちまったそうだ。

まぁ夜中に部屋の中を凝視してくるカラス、更に夜だった事もあって、カラスの黒い体が見えず闇に2つの目玉が浮かんで、自分をギョロリとした目で見ている様に感じてしまったんだと。

その瞬間にアリサは叫び声を挙げ、スタンドを発現させてしまった。

所謂、自分の身を守るって防衛本能が過剰に働いたんだろう。

その結果は、カラスの止まってた窓枠と壁の一部を根こそぎブチ壊すという結果になり、それを見たデビットさん達は驚きのあまりひっくり返っちまったそうな。

そしてデビットさん達が復活すると会議は紛糾。

やれその力はどうしたとか何かの病気かとデビットさんは焦り、マリアさんは病院に電話しようとして間違えて時報に電話する有り様だったそうな。

折角忍さんが俺のスタンド能力の事を伏せて、俺が犯人達の気を引いたお陰で2人が助かったというでっちあげ話は全ておじゃん。

結局本当の事を全て話してしまい、今日俺がここに来る事と相成った。

 

 

 

……ってオイ。

 

「……まさかンな事でスタンドが暴走するとか……何てこった」

 

アリサの口から語られた余りにも情けない話に、俺は再び天を仰いで声を漏らす。

オイオイ……ちょっと幾ら何でも過剰に反応し過ぎだろアリサェ……。

 

「ほ、ホントにごめん……で、でもッ!!夜遅くにカラスがジーッとアタシの事見てたのよッ!?スタンドが暴走したってしょうがないじゃないッ!!」

 

コイツ開き直りやがった。

自分でも情けないとは思ってるんだろうけど、認めたくねぇからってカラスの所為にしてやんなよ。アイツ等だって一生懸命生きてんだから。

目の前で顔を真っ赤にしながら吠えてくるアリサに俺は溜息を吐いてしまう。

 

「ハァ~……まぁ、バレちまったモンはしょうがねぇとして……やっぱデビットさん達は、アリサにスタンドを持たせるのは反対っすか?」

 

とりあえずアリサから視線を外し、俺はソファーに座って難しい顔をしてるデビットさん達に声を掛ける。

 

「……娘の事を考えるなら、そのスタンド等という得体の知れない力を持たせるのは、余り歓迎出来ない……」

 

「パ、パパッ!?」

 

重々しくそう口にするデビットさんにアリサは驚愕の叫びを挙げるが、俺としてはその返答も予想出来てた。

だって、自分の知らない内に、自分の大事な家族に勝手に異能を与えられてたりしたらそういう返答になるだろう。

だからデビットさんの言い分は良く判る。

 

「やっぱそうですよね。だったらアリサからスタンドを取り出し「だが」ましょ……え?」

 

デビットさんの思いを理解して、俺はアリサからスタンドを取り出そうと提案したんだが、その提案の途中でデビットさんが口を挟んできた。

一体なんだろうと思って顔を向ければ、デビットさんは苦笑し、マリアさんは逆にニコニコしてた。

 

「定明君が娘の、アリサの為を思ってその力を与えてくれたというのは、アリサ自身から聞いている。アリサに何も言わず勝手にやっていたなら兎も角だが、娘の為を思って自分の持つ力を分け与えてくれた事を非難する程、私は落ちぶれちゃいないさ」

 

「そうですね……それに自分の娘が凄い力を持ってるなんて、なんだか誇らしいですし」

 

「ママ……パパ……」

 

何処までも娘第一に考えてくれてる事を感じたアリサは、2人の笑顔を見ながら口元を手で覆い、感激した様に声を漏らす。

デビットさん達はそんなアリサから視線を外すと、また俺に顔を向けてきた。

 

「定明君、そのスタンドという力は、アリサに危害を及ぼしたりするのかい?」

 

「いや、それは無いッス。あくまでスタンドってのは、本人の精神の力で動くモンであって、本体に攻撃をしたりはしないですけど……」

 

「フム……ならば、コントロール出来る様になれば、アリサの身は守れるかね?」

 

俺の言葉を聞きながら顎に手を当てるデビットさんは、続けて質問を飛ばす。

多分、スタンドが有ることの有益さが知りたいんだろう。

他ならぬ自分の娘の身を守る事が出来るのかって聞いてるんだ。

 

「それに関しては問題無いと思います。さっきの話を聞いた限りじゃデビットさんとマリアさんは、俺がアリサに貸したスタンドの破壊力を知ってるみたいですし……」

 

確認を取るつもりで質問を混ぜながら言葉を返すと、2人は頷きを返してくる。

そこで俺はデビットさん達だけで無く、すずか、忍さん、ノエルさんも視界に収めた。

 

「忍さん達にも関係あるんで言っときますけど、俺がすずか達に貸したスタンドは、応用力が効くスタンドなんです」

 

「応用力?……つまりどういう事なのかしら?」

 

「はい。まず皆に覚えて貰いたいのは、スタンドって存在は原則、一体につき必ず一つ、何かしら固有の能力を持ってるって事です。例えば……」

 

質問してきたマリアさんと、その場に居る皆に一つずつ説明しながら、俺はポケットから一枚の紙を取り出す。

これはエニグマの能力で3年前にファイルしたある品が入ってる。

それを中央のテーブルに置き、中を開くと……。

 

「ッ!?……私は、夢でも見てるのか?それともマジックか?」

 

「わぁ~ッ!?美味しそうねこのラーメンッ!!」

 

「何と……長生きしてきましたが、この様な現象は初めてでございます」

 

その紙の中にファイルされてたホカホカのラーメンを見て、初見のマリアさん達は皆一様に驚きを露わにしていた。

アリサ達は一度見てるからかそこまで驚いてはいなかったけど、やっぱまだ慣れないのか、少しだけ目を見開いている。

っていうか若干一名違う方向でビックリしてね?

 

「コレがまず、俺が持ってるスタンドの一つの固有能力なんです。こんな感じで指定した物をその時の状態のままで保存できるって能力でして……」

 

「なんともはや……凄い力を持ってるものだ、君は」

 

紙を畳んで仕舞いそこにあったラーメンが跡形もなく完全に消えてしまうと、デビットさんは目を丸くしたまま葉巻に手を伸ばし、途中で止めた。

まぁこの部屋未成年が大量に居るからな。

副流煙は体に毒だし、自重してくれたんだろう。

 

「まぁそんな感じで、アリサとすずかに貸したスタンドにも固有の能力が備わってるんですが……この能力の応用は、身を守る防御にも色々応用出来るんです」

 

「成る程ね~。じゃあ定明君から見て、アリサとすずかちゃんはどのぐらいでスタンドの制御が出来る様になるのかしら?その時間次第では、アリサに付けるSPの量を増やそうと思っているんだけど……」

 

アリサ達に渡したスタンドの能力、その応用が防御にも長けていると教えると、デビットさんは何度も頷き、マリアさんは2人がどのぐらいでスタンドをモノにするかと聞いてきた。

 

「あぁ、それッスけど……何かもう俺がココに泊まる事は確定事項にされてるみたいですし……」

 

暗に勝手に自分の未来を決められたという文句を篭めてアリサとすずかに視線を送る俺だったが、2人はササッと俺から視線を外しやがる。

ったく……今度からこーゆう事が無い様に注意して行動しねーとな。

そう考えながら俺は面倒くさいって気持ちを乗せた溜息を吐きつつ、質問してきたマリアさんに視線を戻す。

 

「とりあえず、今日の夕食までにスタンドの出し方、抑え方をキチッと教えておこうと考えてます。それで、デビットさんにお願いがあるんスけど」

 

「ム?何だね?」

 

「はい。俺が2人にスタンドの扱い方を教えるのは良いんですけど、ここに居る面子以外、誰にも見られない場所を貸して欲しいんです。さすがにこの力の事はなるべく他の人には見せるつもり無いんで」

 

俺が頼みたい事は、所謂秘密の特訓場みたいな場所を貸して欲しいって事だ。

さすがに普通の部屋で練習をやる訳にゃいかねぇしな。

 

「成る程。そういう事なら早速手配しよう」

 

俺の言葉を聞いたデビットさんは成る程、と頷くと鮫島さんに指示を出し、その指示を受けた鮫島さんが何処かへと電話をし始めた。

そして一言二言話すと、鮫島さんは電話を切り、此方に振り返る。

 

「お待たせしました。離れにある訓練場をそのまま使って頂いて構いません。人払いは全て済ませてありますので、誰かに声を聞かれる心配も無いでしょう」

 

「良し、では全員で行こうか?」

 

鮫島さんの言葉を聞いたデビットさんはソファーから立ち上がると、部屋の全員に出発を促して扉へと歩いていく。

え?全員ってまさか?

 

「えッ!?パ、パパ達も行くのッ!?」

 

俺と同じことを疑問に思ったのか、アリサが焦りながらもデビットさんに聞く。

その声を受けたデビットさんは、表情を緩めてアリサを見つめた。

 

「勿論だとも。大事な娘が頑張る所を見たいからな……そうだろう、マリア?」

 

「当たり前ですよ。ウチの娘が超能力が使える初めての瞬間。それを見ない手は無いわね~?」

 

完全に物見遊山気分だな。

 

「ママまで……もう、分かったわよ」

 

親の楽しそうな表情と言葉に、アリサは溜息を吐きながらも承諾する。

見れば忍さんとノエルさんも乗り気の様だ。

そう思っていると、すずかがニッコリと笑いながら俺に近づいてくる。

 

「定明君。私頑張るから、色々教えてね」

 

「当然だけど、アタシにもちゃんと教えなさいよね」

 

すずかに便乗して、アリサは指を俺にビシィッと突き付けて半ば命令してくる。

ったく、言われなくてもちゃんと教えてやるっての。

でもその前に……。

 

「教えてやるのは良いけどよ。二人共その格好でやるつもりじゃねぇだろーな?」

 

俺は2人のおめかしした服装を見ながらそう注意する。

スタンドを操るってのは精神力を使うって事だから、体を動かさなくても長時間スタンドを操れば自然と汗が出てくる。

首を傾げて分からないって顔をしてる2人にそう説明してやると、2人は動きやすい格好に着替えてくる、と鮫島さんを伴って部屋を飛び出していった。

すずかの分は、ノエルさんが色々と持ってきてるそうなので、心配無いとの事。

ならばと俺と忍さん、そしてバニングス夫妻は先に訓練場へと向かった。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「おぉ~……こりゃスゲエ」

 

そんなチープな言葉しか出て来ないぐらい、訓練場は凄かった。

見たこともないトレーニング器具が並べられた場所に、大人数が一度に組手をやる為の広大な組手スペース、しかもサウナにマッサージチェアや自販機まである。

ここは温泉か。

 

「ハハッ。私達の家を守ってくれるSPを鍛えるための施設だからね。これぐらい無いと、いざって時に備えられないのさ……とは言え、アリサの時は何も出来なかったがね」

 

最初はこのスペースを誇らしげに語ってたデビットさんだが、一昨日の誘拐事件の事を思い出してか、少し顔に影が挿してしまう。

まぁ確かに、幾ら鍛えてても活躍出来なきゃ意味ねぇからな。

そんな事を考えていると、自分の気を入れ替える為か、デビットさんは葉巻に手を伸ばす。

それを口に加えたのは良いが……。

 

「……ん?(ゴソゴソ)……ライターを忘れたか」

 

どうにも葉巻を吸うためのライターを持ってくるのを忘れてしまったらしい。

探しても無いので、落ち込んだ表情のまま葉巻を仕舞おうとしたので……。

 

「ほい。これどうぞ(ボッ)」

 

魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)の能力を使って、葉巻の先に小さな十字架(アンク)の形の炎を生み出してあげた。

 

「うおッ!?お、驚いたな……有り難く使わせてもらうよ」

 

最初こそビックリして仰け反るというリアクションを取ったデビットさんだが、それが俺の出した炎だと判り、笑顔でお礼を言いながらその炎で葉巻に火を着けた。

そして葉巻を吸って煙を吐き出すと、デビットさんは幾分かリラックスした表情を浮かべながら俺に目を向けてくる。

 

「しかし定明君。君のスタンドというのは、普通の人には見えないのでは無かったのかね?今の炎は私にも見えたんだが……」

 

「今のッスか?今のは確かにスタンドの能力で作ったモンですけど、アレは空中にだした時点でデビットさんの咥えてた葉巻に火が当たりましたから、そこでエネルギーが見える様になっただけです。炎を操るスタンドそのものは見えませんよ」

 

原作でも、普通の人がアヴドゥルの出したマジシャンズ・レッドの炎がテーブルに燃え移ったのをちゃんと視認してたからな。

まぁ急にテーブルが燃え出したとしか認識出来てなかったけど。

 

「な、成る程……色々と、ルールが有るという事か……では、アリサとすずかちゃんのスタンドにも、何かしらのルールが存在するのかね?」

 

「有りますよ?今日は夕食前にその辺りまで教えていこうと思ってま……」

 

バァンッ!!!

 

「ま、まま、待たせたわねッ!!定明ッ!!」

 

「ご、ごめんね。ちょっと遅くなっちゃった」

 

と、デビットさんとスタンドの事で話し合っていると、又もや豪快に後ろの扉が開かれ、そっちの方からアリサとすずかの声が聞こえてきた。

 

「別にそこまで遅くはね……ぇ……けど……」

 

しかし、声のした方に振り向いて2人を視界に収めた俺は、色んな意味でフリーズしてしまった。

いや、余りにも俺の予想の斜め上どころか月までブッ飛んだ光景に言葉が出ない。

 

「な……何よ?なんか文句あんの?」

 

「え、えと……この服、似合わないかな?」

 

俺が振り向いた瞬間固まってしまった事が気に障ったのか、アリサは目を少し吊り上げて怒りを露わにしていた。

一方ですずかは自分の服を引っ張りながら不安そうな顔をするが、俺がタマげたのはそこじゃねぇ。

 

「……何で体操服なんざ着てんだよお前らは?」

 

しかもブルマって……聖祥はブルマなのかよ。

 

「ア、アンタが汗かくって言ったから、汚れても良い格好にしたのよ」

 

「コレなら汚れても気にならないもんね」

 

「いや、確かに気にはならねぇだろーけどよぉ……」

 

デビットさんなんか驚きすぎて葉巻落としてるんだけど?

自宅のトレーニングルームに体操服とブルマで現れる家の娘……なんだかなぁ。

2人の後ろでニコニコしてる鮫島さんとノエルさんが下手人なんだろうけど、アンタ等一体何がしてーんすか?

 

「……まぁ良いか。そんじゃ二人共、さっそく始めるぜ?」

 

「ドンときなさいッ!!何でもクリアしてやるわッ!!」

 

「えっと、よろしくお願いします」

 

片や自信満々に、もう片や丁寧にお辞儀をして、俺主導のスタンド練習教室が幕を開ける。

 

「良し……そんじゃ二人共、スタンドの基本的な出し方は昨日教えたとおりだが……その遣り方じゃ、出す度に物が壊れちまう。それは判るよな?」

 

一つ一つ確認するように2人に声を掛けると、2人は首を縦に振って肯定する。

それを見て、俺も一度頷く。

 

「それは2人がスタンドをコントロールする程の精神力が無いって事の証だ……だから、お前等は『成長』しなきゃならねぇ……スタンドをコントロールして、自分の手足の様に操る精神力を身に付けなきゃならねぇんだ」

 

「……アタシもすずかも、まだ精神が未熟って事ね……教えてよ定明。私達は何をすれば良いの?」

 

「まず2人がやらなきゃいけねぇのは、スタンドを完全に自分の手足としてコントロールする事だ。だからLESSON1。まず2人は今からスタンドを出す時に、怒りとかを浮かべるんじゃなくて、『自分はスタンドを出せて当たり前』って気持ちを持て……スタンドは自分の精神エネルギーの具現化したヴィジョン。ならそれをコントロール出来て当たり前と思わなきゃ、先へは進めない」

 

スタンド講義が続く中、2人はジッと黙って俺の言葉を聞いてる。

 

「そうすれば、スタンドは本人の感情をこなすって形で出るんじゃなくて、謂わばもう一人の自分って形で顕現するからよ……二人共、目を閉じろ」

 

そして、スタンドの講義が終了した時点で、俺は2人に目を閉じる様に指示した。

2人はその指示に何の疑いも持つ事無く目を閉じ、次の指示を待っている。

次は第2段階、自分の中にいるスタンドの存在を認識する事だ。

 

「目を閉じたな?……じゃあ次は、自分の中に居るスタンドの存在をしっかりと感じ取れ。出ろと念じるんじゃ無くて、自分の中の何処に居るかを探し当てるんだ」

 

「「分かったわ(よ)」」

 

俺の指示に従って、2人は瞑想する様に口を閉じて黙りこむ。

静寂が辺りを包む中、2~3分程してすずかが小さく「あっ」と呟いた。

どうやらキタようだな。

 

「分かる……上手く口じゃ言えないけど、確かに()()よ」

 

「うん。アタシも分かった。感覚っていうのかしら……ちゃんと()()わ」

 

すずかに続いて、アリサも感じ取れた様だ。

2人して目を閉じたまま、薄く微笑みを浮かべている。

 

「感じ取れたな?じゃあLESSON2だ……呼んでやれ……ソイツ等の名前を」

 

俺の言葉が聞こえたかは分からないが、2人は微笑みの形にしてた表情をグッと締め直して、大きく息を吸い込む……新しい『スタンド使い』の誕生だ。

 

 

 

 

 

 

――そして、アリサとすずかは閉じていた目をカッと見開き……。

 

 

 

 

 

「――『ストーン・フリー』ッ!!!」

 

「――『スパイス・ガール』ッ!!!」

 

ドギュウゥゥゥンッ!!!

 

 

 

 

 

自分と共に立ち向かうもの(スタンド)として、俺が貸したスタンドを呼び覚ました。

 

『……』

 

『……』

 

足を宙に浮き上がらせ、2人の側に立つ2体の人型のシルエットを持つスタンド。

まずアリサのスタンドだが、かなり細身で全体の色はオーシャンの様に淡く薄いブルーと、所々に黒いワンポイントの色がある。

見た目はマネキンに近く凸凹が少ないが、ライトグリーンのサングラスの様なモノを着けている。

これがアリサに渡した近接パワー型のスタンド、『ストーン・フリー』だ。

しかしアリサのスタンドに対する概念が甘いのか、所々の像が『ほつれている』。

この『ほつれている』って表現はストーン・フリーにだけは正しい。

何故なら、コイツは『糸』の『固まり』だからだ。

ストーン・フリーは近接パワー型に分類されるが、それはこの立体の事を表わす。

コイツの特性は、『糸としての概念を操る』って事にある。

だから立体じゃなくスタンドの糸として使えば遠距離にもいけるし、編み込めばネットとか色んな物に応用が効くんだ。

アリサは一発目の暴走の時からストーン・フリーを立体の形で表しちまったからまだちゃんとストーン・フリーを『糸の固まり』だと認識出来てねぇんだろう。

これは後でちゃんと教え……。

 

「……アタシのエネルギーの……糸として出たエネルギーの『固まり』」

 

所が、俺がストーン・フリーの特性をアリサに教える前に、アリサはストーン・フリーの特性を瞬時に見抜きやがった。

嘘だろオイ……まだちゃんと出して5分も経ってねぇぞ?

驚く俺を他所に、アリサはストーン・フリーを見つめながら更に言葉を紡ぐ。

 

「線が集まって固まれば『立体』になる……この概念がストーン・フリーッ!!」

 

アリサがそう叫んだ瞬間、ストーン・フリーの飛び出しほつれた糸が縫い合わされ、ヴィジョンを確固たる立体の形で留めてしまった。

 

「まさかこんなに早くストーン・フリーの特性を理解するとはな……グレート」

 

賞賛だけじゃ無く呆れやら何やらもたっぷりと篭めてそう言ってやると、アリサはストーン・フリーを出したまま胸を張って踏ん反り返った。

 

「ふっふーん♪どんなもんよ?もう暴走なんてさせないんだから」

 

「その自信はどっから出てくんだよ……まぁ、おめでとさん。アリサ」

 

「と、とと、当然よこんなのッ!?このアタシに出来ない訳無いでしょッ!!」

 

俺の労いの言葉を聞いたアリサは顔を明後日の方向に向けながら若干目尻を吊り上げて言葉を返してくる。

普通に労ったらコレだ……ちっとは感謝しやがれっての。

まぁアリサが理不尽なのは今に始まった事じゃねぇし、根は良い奴だから別にムカツキはしねぇ。

 

「さ、定明君ッ!!私もちゃんと呼べたよッ!?ほらッ!!」

 

と、アリサの態度にやれやれって首を振っていると、アリサの隣でスタンドを呼び出したまま待っていたすずかが俺に声を掛けてくる。

その声に従ってすずかを見れば、ちゃんとすずかの後ろにもスタンドが出ている。

しかもアリサよりもちゃんと安定した形でだ。

 

「ん……あぁ、すずかもちゃんと出来てるぜ。おめでとう」

 

「えへへ……あ、ありがとう、定明君」

 

俺の言葉を嬉しそうに聞いてたすずかは、鼻歌でも歌いそうなぐらい上機嫌だ。

まぁストーン・フリーは特殊なスタンドだから仕方ねぇっちゃ仕方ねぇけど。

すずかの後ろに立つスタンドの全体像だが、まず色が凄い。

何が凄いかって言うと、全体的にピンク色だからだ。

しかも薄いショッキングピンクで、胸部も女性らしく盛り上がっている。

このスタンドもストーン・フリーと同じく近接パワー型に分類されるスタンド。

その名も『スパイス・ガール』だ。

このスパイス・ガールにもちゃんと能力が備わっているんだが……。

 

「スパイス・ガールの能力って、一体どんな力なのかなぁ?」

 

やはりすずかはまだスパイス・ガールの能力までは認識出来ていなかった。

でも、それが普通なんだよなぁ。

ストーン・フリーは糸の状態から人型になるには立体にするってプロセスがある。

だからこそ、自分のエネルギーが糸という形で出てると分かる。

だがすずかのスパイス・ガールは違う。

人型を構築するのに何か条件が居るって訳じゃねぇからな。

そういう理由で、すずかがスパイス・ガールの特性をハッキリと理解出来ないのは当たり前の事なんだ。

原作じゃ最初に現れた時はスパイス・ガール自身が意志を持ってたが、このスパイス・ガールはまだすずかの制御下に入ったばかり。

慣れればスパイス・ガールも喋るだろうけど、今はまだ何も言わないだろう。

 

「おーし、とりあえずLESSON2までは終了したな……そんじゃあ二人共、次はそのスタンドを戻してみな。やりかたは単純に『戻れ』と思えば良い」

 

とりあえずササッと次の項目に進む為に、俺はすずか達にスタンドを一旦解除す様に言い渡した。

それを聞いた2人はサッとスタンドを消したので、コチラも問題無し。

後はそれを繰り返して、スタンドの出し入れを瞬時に出来る様になるまで反復練習をさせていく。

 

「ふ~む……アリサとすずかちゃんは成功した様だが……」

 

「私達にはスタンドが見えないから、どうにも暇になっちゃいますね」

 

まぁ外野の皆さんはスタンドが見えないので仕方ないが、そろそろ実践的な事を教えこんでいくとすっか。

 

「よーし、二人共。スタンドを出したままにしろ」

 

ちょうど仕舞ったタイミングで2人にそう言うと、2人は無言でストーン・フリーとスパイス・ガールを呼び出す。

もう声に出して名前を呼ばなくても出せる様になったみてえだ。

 

「そんじゃあ、お二人さんが予想より早くスタンドの出し入れを覚えてくれたんで、そろそろLESSON3に入っていくが、その前にスタンドのルールってヤツを話していくぜ?」

 

「ルール?そんなのがあるの?」

 

「ある。そんでこのルールってのはかなり重要だからしっかり覚えてくれ」

 

かなり重要って言葉を聞いて、アリサ達はまた表情を引き締めて静かになった。

それを見計らい、俺は言葉を紡ぐ。

 

「まず、スタンドには色々な種類があるんだけど、すずかのスパイス・ガールとアリサのストーン・フリー。この2つは近接パワー型ってのに分類される」

 

俺はそこで言葉を区切ってザ・ハンドを呼び出し、自分から2メートルぐらいの位置まで移動させるが、ソコから先はどう命令しても進めなくなる。

 

「これが近接パワー型の射程距離の限界。大体2メートルってトコだな。見ての通り、本体からはそんなに離れられない」

 

やってみな?と目線で訴えると、2人は自分のスタンドを前に進ませる、

しかし俺のザ・ハンドと同じく2メートルくらいの位置からはウンともスンとも動かなかった。

それを理解したアリサが、少し口をへの字に曲げる。

 

「随分動ける位置が短いけど、その代わりにパワーが凄いって事なの?」

 

「そうだ。今まで嫌って程体験したお前等なら分かるだろ?あの素早い、というか人間には絶対に不可能なスピードでパンチを振るう威力ってヤツをよ」

 

「うん。充分過ぎる程身に染みてるよ」

 

昨日までを思い出しながらか、すずかは表情に影を見せる。

まぁあんだけ好き勝手にスタンドが暴れて部屋がブッ壊れたんだから理解しててもらわねぇと俺が困るっての。

 

「そしてルールその2。コレは近接パワー型に共通して言える事だが、スタンドが傷つけば、本体のお前等も同じ場所が傷つく」

 

傷つく。その単語に2人はしっかりと反応してグッと唇を噛み締めた。

まぁ誰だって好き好んで自分から傷つきたくはねぇもんだ。

 

「まぁでも、だ。まずスタンドはスタンドでしか触れられない。だから例え剣で刺されようが銃で撃ち抜かれようが、スタンドは傷つかないからそんなに心配入らねぇよ」

 

「その前に銃で自分を撃たれたら終わりでしょうがッ!!」

 

俺の苦笑しながらの励ましにアリサは吠え、すずかは顔を青くするが……。

 

「いやいや。お前等に貸したスタンドなら銃弾ぐらい拳で弾き返せるぞ?」

 

銃弾とか剣がスタンドに効かないのに対して、スタンドの拳や蹴りなんかはしっかりとイメージすれば銃弾でも何でも触れる事が出来る。

掴んだり頭突きとかも出来るからなぁ。

 

「まぁその辺の技術は追々磨いていくとして……とりあえずLESSON3は明日だ」

 

「えぇッ!?ま、まだ大丈夫だよ私ッ!!」

 

「そうよッ!!アタシだってまだ全然やれるわッ!!」

 

俺の言葉を聞いた2人は目を見開いて講義してくるが、俺は苦笑を浮かべていた。

やれやれ……まだ『終わり』だなんて言ってねぇぞ?

そう思いつつも、このままでは2人が引き下がらないと思ったので、俺は手の平を2人に向けてストップを表示して口を開く。

 

「待て待てって二人共。まだ今日の特訓が終わりだなんて言ってねぇぞ俺は?」

 

そう言うと、俺の言葉の意味が分からずにポカンと口を開けて呆けるお二人さん。

 

「俺は只LESSON3は明日って言っただけで、今日はまだもう少しやるぜ」

 

「な、なんだ……そういう意味だったんだ……良かった(ぼそっ)」

 

「紛らわしい言い回ししてんじゃないわよッ!!もうッ!!……で?今から何をするの?」

 

アリサ達はそれぞれ安堵したり怒ったりしてるが……その余裕が何時まで保つかね?

 

「なぁに、大した事じゃねぇさ。とりあえずスタンドの出し入れが任意で出来る様になったワケで……『星の白金(スタープラチナ)』」

 

俺はにこやかに笑いながら、史上最強のスタンドという声も名高いスタープラチナを呼び出す。

全スタンド中NO,1と言われる精密動作性、パワー、スピードを兼ね備えている。

更に原作に出てきたスタンドの中では唯一髪の毛が生えている、尤も人間に近いスタンドとしても有名だ。

さすがに素人とはいえ『2対1』じゃあコイツを出さないとちょいと恐えからな。

俺がスタンドを出した意味が分からずボケッとしてる2人に、俺は人差し指を向けて挑発する。

 

「今から10分間、2人で好きな様に俺を攻撃してみな……スタンドの使い方を身体で直接覚えるんだ」

 

「「ッ!?」」

 

俺の提案を聞いた2人は絶句とも言える表情で俺に視線を送ってくる。

更にアリサ達の後ろ側の壁に居たデビットさん達も同じ様な表情を浮かべていた。

まぁ皆揃ってアリサ達の持ってるストーン・フリーとスパイス・ガールの破壊力を良く知ってるからな、俺の言葉が自殺行為に思えるんだろう。

 

「な、何でアンタを攻撃しなきゃいけないのよッ!?」

 

「そうだよ定明君ッ!!危ないから止めようよッ!?」

 

俺の言葉の意味を理解したのか、フリーズ状態から帰ってきた2人はこの訓練自体をしたくないらしい。

2人揃って口々に止めようと言ってくる。

けどまぁ、コレしか方法が無えんだよなぁ、実際。

 

「あのよぉ。スタンドの練習してんだから、スタンドが使える俺が相手するに決まってんだろ?安心しろって、コイツのポテンシャルと能力は半端じゃねーから、そう簡単に怪我なんかしねーよ」

 

「で、でも……や、やっぱり危ないよッ!!」

 

だがそれでもすずかは食い下がり、ひたすら俺の身を案じてくる。

口では言ってこないがアリサも同意見なのか、表情を苦いモノに変えていた。

やっぱコイツ等は優しい……優しすぎんだよ……仕方ねぇ、強引にやるか。

 

「残念だがよぉ、コレは絶対に何時かやらなくちゃならねぇんだ。スタンドで物を掴む力加減、弾き、防御するタイミング……それはこーゆう練習をしねーと駄目なんだ」

 

俺が昔練習した時は、ずっと1人でひたすらスタンドで攻撃するモーションの反復練習をこなしたり、時を止めた中で自分に向けてナイフを投擲させ、ソレをひたすら弾く練習とかもいっぱいやった。

でも、あの練習は効率があんまり良くねぇ上に、すずか達にやらせるにはちと危険過ぎる。

 

 

 

――だから、ココは心を鬼にしてでもすずか達と戦う。

 

 

 

ん~でもなぁ、何かすずか達にヤル気を出させる様な案は無ぇモンか……あっ、そうだそうだ?だったらもうDQN君を復活させるとか言えばやる気になるんじゃね?

物は試しって事で……。

 

「ったく……じゃあもう良いぜ。なら俺はスタンドを返してもらって居なくなるだけだし、お前等が嫌いなあのDQNネーム君からも助けてやらね「すずかッ!!真っ正面からいくわよッ!!」お?ヤル気に「うん、アリサちゃんッ!!今ここで確実に仕留めるッ!!」あ?」

 

最初は効果あったなぐらいにしか思って無かったけど、どうにも俺の発破はヤル気ならぬ殺る気を出させてしまったらしい。

2人は覚悟を決めた目で俺を捉えつつ真正面から突っ込んでくる……やべっ。

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!』

 

『WAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAANNABEEEEEEEEEEEEEEEEE!!』

 

しかも初っ端から拳と蹴りのラッシュ、って成長し過ぎだろお前等。

コイツぁ俺も気合入れねぇとな。

俺は後ろに下がりつつ、スタープラチナに渾身のラッシュを繰り出させる。

 

『オォォラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!』

 

素早く、正確に、でもパワーは少し抑え気味に繰り出したラッシュで弾幕を張りつつ、2体のスタンドが繰り出すラッシュの悉くを弾き返す。

うん、やっぱスタープラチナは強さが飛び抜けて……。

 

「ちぃッ!!すずかッ!!スピード上げるわよッ!!」

 

(やらなきゃアタシの前から居なくなるですって?上等じゃないッ!!叩きのめしてそんな事言えなくしてやるわよッ!!)

 

「うんッ!!容赦は要らないよねッ!!」

 

(定明君が私の前から居なくなるぐらいなら、我慢して戦う方がマシだよッ!!)

 

おーいお二人さん?かんっぺき目が据わってるぞ?

そんなにDQNネーム君は嫌か?嫌なのか?

っていうかマジでヤベエ、ドンドンとラッシュのスピードが上がってきやがる。

おっかしいなー?俺アヌビス神のスタンドは貸してねぇ筈だけどなー?

このままじゃマジで俺もやべぇ……しゃーねぇ、少しズルさせてもらうぞ。

 

『オラァアッ!!』

 

ゴギィインッ!!!

 

「つぅッ!?」

 

「きゃあッ!?」

 

ラッシュを弾く手が追い付かなくなりそうになった瞬間、スタープラチナのパワーを更にワンバンド上げて、ストーン・フリーとスパイス・ガールのラッシュ諸共弾き飛ばして距離を取る。

その際に2人が悲鳴を上げるが、スタンドが弾かれた衝撃が伝わって尻餅を着いただけに終わる。

まぁ、さすがに怪我だけはさせない様に調整したからな。

 

「イタタ……もう一度いくよ、アリサちゃんッ!!」

 

「おっけーおっけー。トコトンやったろうじゃない、すずかッ!!」

 

だが2人は直ぐ様起き上がるとまたスタンドを展開し、即座に突っ込んでくる。

しかも目は闘志の炎が物凄い事溢れ出てた。

……こりゃあ俺もちょいとだけ、覚悟しといた方が良いかもな。

 

「ブッ飛ばしなさいッ!!ストーン・フリーッ!!!」

 

『オォオラァアアッ!!!』

 

「ここだよッ!!スパイス・ガールッ!!!」

 

『ウリャァアアアアアッ!!!』

 

そう考えながら、迫るアッパーとハイキックを捌く為に戦闘態勢に入る俺だった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「良し、10分経ったから終了すんぞ……初めてだ、こんなに疲れるとは……」

 

たった10分、されど10分ってぐらいに内容の濃い練習だったよ。

いやもうコイツ等戦闘指南要らないんじゃね?ってぐらいに強かった。

っていうか初めての操作でスタンド上手く使い過ぎだぞ。

さすがに時を止める事はしなかったが、それでも厄介極まりなかったぜ。

 

「ハァ……ハァ……も、もうダメ……」

 

「フゥ……フゥ……疲れたよぉ……」

 

俺は息を荒らげながら立っているが、スタンド初使用のすずかとアリサは床に倒れこんでゼィゼィ言っている。

額も何も汗でボトボトになっちまってるから、体操服が重たそうだ。

 

「ハァ……ハァ……汗、気持ち悪い」

 

「うん……服がボトボト……」

 

「だ、大丈夫ですか?すずかお嬢様?」

 

「アリサお嬢様も、コチラのスポーツドリンクを……」

 

そんな2人を甲斐甲斐しくお世話するのは、ノエルさんと鮫島さんだ。

二人共起き上がる気力すら沸かないのか、されるがままにされてる。

俺の時もそうだったけど、やっぱ最初の頃はスタンドを動かす事にエネルギーを大分使っちまうし、更に動いてたから余計疲れたんだろうな。

俺も自分の分のスポーツドリンクを受け取って、ジムの壁に背中を預けて座る。

冷たいスポドリが心地いいな。

 

「ふぅ……しっかし、ありゃタマゲたぜ……まぁあの調子なら心配要らねぇだろ」

 

ボヤいていると、デビットさんとマリアさん、忍さんが俺の傍に近寄ってきた。

 

「お疲れ様だね、定明君……大丈夫かね?」

 

「俺は大丈夫っすけど、アリサ達の方は良いんスか?」

 

未だに床から起き上がってねぇんですけど?

そんな疑問を口にしても、マリアさんは微笑むだけだった。

 

「良いの良いの。後でちゃんと褒めてあげるし、お客様の定明君に誰も付いていない訳にはいかないでしょ?」

 

「それに、君はアリサの我侭で今日、家に来てるんだしな……で、どうだったかな?ウチのアリサと……」

 

「私の所のすずかは?かなり凄い音がしてたけど、あれって何の音?」

 

まぁそんな感じで今の戦い、そして2人を見てたデビットさんと忍さんが完走を求めてくる。

俺は軽くスポドリを口に含んで喉を潤してから2人に向き直った。

 

「忍さんの言ってる音なら、スタンドで殴り合ってた音ですね……感想って言われても、どうも何も無いッスよ。ありゃ何なんですか?二人共初心者のやる動きじゃ無いッスよ。アリサは隙がありそうなモンならソコを突いてくるし、すずかに至ってはスタンドと同時攻撃やらかしたんスよ?もうビックリなんてモンじゃねぇ」

 

さすがにアレは焦った。

何せスパイス・ガールにラッシュさせたかと思ったら、すずか本人が突っ込んできて「えいッ!!」とか言いながら殴りかかってくるんだもんな。

夜の一族は身体能力高いって言ってたけど、ホントにアレはビビッた。

俺の言い分を聞いたデビットさん達は、娘の成長ぶりに苦笑してる。

 

「あー……なんというか……」

 

「すずかって意外にアグレッシブだから……」

 

そんな一言で片付けられる程生易しいモンじゃねーってアレは。

さっきの特訓についてそう考えていると、デビットさんが咳払いして立ち上がる。

 

「兎に角、3人共汗だくになってるから、一度風呂に入ってくるといい。その間に食事の準備も終わるだろう……定明君、今日の夕食は楽しみにしていてくれ」

 

「フフッ、シェフの皆さんが張り切って作ってくれましたからね」

 

「はい。ありがとうございます」

 

微笑みながら嬉しい事を言ってくれたデビットさんとマリアさんに感謝の言葉を返すと、2人は微笑みながらジムを後にし、アリサとすずかはノエルさんに抱えられて2人仲良く風呂場に連れて行かれた。

忍さんは家で恭也さんが待ってるらしく、このまま帰るそうだ。

そして最後に残った俺だが、鮫島さんに案内してもらいながらジムを後にし、男子専用の大浴場へと向かい、今日の疲れと汗を洗い流すのであった。

 

 




さぁ~そろそろ原作へ行きたい!!!

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